【競泳 本多灯選手】
東京オリンピックの男子200mバタフライで銀メダルに輝いた本多選手。苦戦が続いた競泳ニッポン男子で唯一のメダリストになった本田選手は、ニュースター誕生と話題を集めました。本多選手の身長は、オリンピック決勝に出場した選手の平均から10㎝も低い173㎝。体格のハンディを覆して世界の頂点を目指すため、もともと評価されていた「効率のいい泳ぎ方」をさらに追求しようと決意しました。オリンピック以降、得意のバタフライだけでなく、4つの泳法を泳ぐ個人メドレーにも本格参戦。その努力の成果を発揮したのが、今年3月の代表選考会でした。400m個人メドレーで、この種目の第一人者・瀬戸大也選手を抑えて優勝。本多選手は、本命の200mバタフライと合わせて2冠に輝いたのです。
迎えた6月の世界水泳選手権。2種目での出場が決まった本多選手は、初日の400m個人メドレーを決勝7位でフィニッシュ。得意種目の200mバタフライでの巻き返しを誓います。レースは序盤から、絶対王者・ハンガリーのクリシュトフ・ミラーク選手が驚異的なペースで飛ばし、大きくリード。隣のレーンで泳いだ本多選手は必死に王者を追いかけ、最後まで食らいついて3位フィニッシュ。日本のエースとして今大会、日本に最初のメダルをもたらしました。
【競泳 花車優選手】
これまで、レジェンド・北島康介選手を筆頭に偉大な先人たちが活躍を続け、“日本のお家芸”とも言われる平泳ぎ。この種目で誕生したニューヒーローが、22歳の花車選手です。香川県で生まれ、県内屈指の進学校・丸亀高校出身。高校2年生で出場したインターハイでの泳ぎが平井伯昌コーチの目に留まり、東洋大学へとスカウトされました。でもこの時は、競技を続けるか、医学部を目指すかで悩んでいたほど学業面でも優秀でした。その頭脳は競技にも生かされ、どんな体の使い方をすればうまく体を動かせるのかと常に思考を巡らせている頭脳派のスイマーです。東洋大学に進学後、1年生の時に出場したユースオリンピック200m平泳ぎで金メダルを獲得。将来を大きく期待されましたが、3年生の時に腰痛で約3ヶ月も泳げない日々が続きました。それでも花車選手は体の構造を学び、腰を痛めにくいキックの習得に励むなど、逆境をバネに成長につなげてきたのです。
花車選手がコツコツと力をつけてきた成果を発揮したのは、大学生最後の大会として臨んだ、今年3月の代表選考会でのこと。オリンピック代表選手らを抑えて優勝し、自身初となる日本代表の座を射止めました。さらに社会人として出場した今年5月の日本選手権でも初優勝を飾り、好調を維持したまま6月の世界水泳選手権に挑みます。迎えた200m平泳ぎ決勝。花車選手は前半をあえて抑え気味にレースを運び150m時点でも6位でしたが、ラスト50mから怒涛のスパート。同着2位で銀メダルに輝き、この種目で日本勢3大会連続メダルを実現させました。
【シンクロ飛込 金戸凛&三上紗也可選手】
今年6月から7月にかけて、ブダペストで行われた世界水泳選手権。女子シンクロ板飛び込みに出場した金戸選手は現在19歳。祖父母も両親も飛込でオリンピックに出場した経歴を持つ、華麗なる飛び込み一家に育ちました。しかし親子3代オリンピック出場を期待する周囲のプレッシャーに悩み、ケガの影響もあって、東京オリンピックの代表入りを逃してしまいます。自分がオリンピックに出られなかったことで、祖父母・両親のすごさを実感した金戸選手は、改めて世界の舞台を目指す決意を固めました。一方の三上選手は21歳。2019年の世界選手権で5位に入賞し、東京オリンピックにはメダル候補として出場。予選は5位と素晴らしい滑り出しでしたが、プレッシャーからか、準決勝で普段ならしないミスをしてしまい、16位で敗退。パリでのリベンジを誓いました。
そんな2人が「シンクロ飛込」でペアを組んだのは昨年の11月。ペア結成からわずか3ヵ月後の今年2月、代表選考会に出場した金戸・三上ペアは、短い練習期間にもかかわらず見事な同調性を披露。東京オリンピックなら銀メダル相当の高得点を叩き出して優勝し、世界水泳選手権の切符を手にしました。そして迎えた女子シンクロ板飛び込み決勝。2人は、世界の舞台でも実戦経験の少なさを感じさせない素晴らしい演技を披露します。パワーで劣る金戸選手は、三上選手の演技を崩したくないと筋力トレーニングで脚力を強化しました。信頼し合う固い絆と、地道なトレーニングの積み重ねが実を結び、2人はみごと銀メダルを獲得しました。
【アーティスティックスイミング乾友紀子選手】
1990年、滋賀県に生まれた乾選手。幼稚園の時から、当時はシンクロナイズドスイミングと呼ばれていたアーティスティックスイミングに興味を持ちました。小学6年生で、日本代表の井村雅代コーチが指導する大阪の「井村シンクロクラブ」に所属。英才教育を受けます。乾選手は170㎝の長身で、長い足を生かした、しなやかな演技が持ち味。2009年に日本代表入りして以来、エースとして日本を牽引し、16年のリオオリンピックではキャプテンを務め、8人で泳ぐ「チーム」と、2人で泳ぐ「デュエット」の2種目で、それぞれ銅メダルを獲得しました。しかし3大会連続出場、最年長の30歳で臨んだ昨年の東京大会では、コロナ禍も響き日本はメダルなしに終わります。オリンピックが終わると井村コーチは、日本代表のヘッドコーチを勇退。世界水泳選手権にソロで出場を目指す愛弟子・乾選手のコーチに就任しました。
アーティスティックスイミングのソロはオリンピック種目ではないため、やや注目度の低い種目です。しかし乾選手は、今年の世界水泳選手権ではソロに専念。井村コーチは、乾選手に過去最高難度のプログラムを組みました。テーマは「大蛇」。絶え間なく全身を動かし、おろちの動きをプールで表現する振り付けは、トレーニングも過酷でした。酸欠で手足が震え、井村コーチは万が一に備え、救助要員を控えさせるほどでした。そんなコーチとの二人三脚の努力が実を結び、乾選手はテクニカルルーティン、フリールーティンの2種目で金メダルを獲得。世界水泳選手権のソロ種目で2つの金メダルを獲得したのは、日本勢初の快挙でした。
【アーティスティックスイミング佐藤友花&陽太郎選手】
2015年大会から、世界水泳選手権に導入されたアーティスティックスイミングの混合デュエット。今年の大会で日本代表として出場したのが、姉の友花選手・20歳と、弟の陽太郎選手・17歳の姉弟ペアです。陽太郎選手は5歳の時からアーティスティックスイミングを始め、中学1年生だった17年、日本選手権に男子選手として初出場し話題を呼びました。友花選手は、東京オリンピックの補欠選手に選ばれたほどの実力者。19年のシーズン終了後に友花選選手が陽太郎選手を誘い、コーチに直談判してペアを結成しました。
佐藤ペアの強みは「同調性」です。細かく指定しなくても、雰囲気や体の角度までぴったり合わせられるのは、兄妹ならでは。息の合った演技で選考会を勝ち抜き、世界水泳選手権への切符を手にしました。世界の舞台でも佐藤ペアは躍動します。ターザンをテーマとしたテクニカルルーティンでは、ゾウの鳴き声などの効果音に合わせ野生動物の動きを足技で表現し、日本勢ではこの種目過去最高となる銀メダルを獲得。サムライをテーマにしたフリールーティンは、高さのあるリフトなど次々と技を決め、三味線の音に合わせて細かい足技も披露。世界水泳選手権初出場ながら、2つ目の銀メダルを獲得しました。
来週のスポーツ伝説は……
8/8(月) 高校野球 土屋正勝投手
8/9(火) 高校野球 牛島和彦投手
8/10(水) 高校野球 川島堅投手
8/11(木) 高校野球 前田幸長投手
8/12(金) 高校野球 川上憲伸投手
お楽しみに!!