スポーツ伝説

12月28日~1月1日の放送内容

【マラソン 大迫傑選手】

 大迫選手は2018年のシカゴマラソンで、日本人初の5分台となる2時間5分50秒の日本新記録を樹立したトップランナーです。しかし、2位以内に入れば東京オリンピック代表に内定する19年9月のマラソングランドチャンピオンシップでゴール直前で遅れを取って3位に終わり、代表内定を逃します。残る代表の枠は1つだけ。1回で決められなかった悔しさをバネに、ケニアで2ヵ月半もの合宿を行った大迫選手は、最終選考レースの1つである今年3月1日の東京マラソンに出場しました。
 このレースで大迫選手と日本人トップの座を争ったのは、2時間4分台を狙うと宣言していた18年のアジア大会王者・井上大仁選手です。二人は20キロ過ぎの中間地点まで先頭集団で競い合いますが、23キロ付近で先に遅れを取ったのは大迫選手でした。先頭集団から少し離され、25キロ地点では、井上選手と7秒の差が開いていました。しかしこの事態を冷静に受け止めた大迫選手は、32キロ過ぎで井上選手に追いつくと、そのまま日本人トップに躍り出たのです。そのまま、日本人トップの2時間5分29秒で4位に入った大迫選手。これは自身が持つ日本記録を21秒更新するもので、2度目の日本新記録でした。この結果により、大迫選手は東京オリンピック3番目の代表にも内定しました。



【大相撲  華吹大作氏】

 現在50歳の現役最年長力士・華吹大作さん。11月場所の番付は、東序二段101枚目でした。1986年、中学卒業後に立浪部屋に入門すると、3月場所の前相撲で初土俵を踏み、5月場所に序ノ口でデビュー。以後ほとんど休むことなく、今年も中止になった5月場所を除き休まず皆勤。最高位は三段目ですが、入門から35年、現役で土俵に上がり続けています。令和に改元された直後の、2019年5月場所で、華吹さんは「昭和・平成・令和の3時代に本場所で相撲を取る」という史上唯一の記録を達成。通算成績は、11月場所を終えた時点で、664勝758敗。6場所皆勤しても、年間42番しか取れないことを考えると、驚異的な数字です。
 今年の3月場所では、親子ほど年の離れた力士たちを相手に4勝3敗と勝ち越し。華吹さんは5月末に50歳の誕生日を迎え、7月場所の初日に、昭和以降では初となる「50歳の現役力士」という記録を達成したのです。現在、記録が残っている史上最年長力士は、江戸時代に活躍した関脇・宮城野関の52歳。あと2年頑張れば、華吹さんにまた一つ、大きな勲章が加わります。



【プロ野球 涌井秀章投手】

 これまで、埼玉西武ライオンズで9シーズン、千葉ロッテマリーンズで6シーズンプレーしてきた涌井投手。昨シーズンロッテではわずか3勝止まりで、若手の成長で先発の枠からも外れたため、登板機会を求めてトレードを志願。今シーズンから楽天に移籍しました。今年でプロ16年目、6月に34歳となった涌井投手。スタミナのあった若い頃と違って、長いイニングを投げるためには、球数を減らさなければなりません。そこで自分に課した目標が、新しい変化球をマスターすることでした。涌井投手は、現役時代に独特の変化をするシンカーを投げていた小山伸一郎コーチに教えを請い、独自のシンカー“こやシン”を身に付けました。
 この“こやシン”を要所で使って、開幕から快調に白星を重ねていった涌井投手。8月5日の福岡ソフトバンクホークス戦では、強力打線を相手に  9回ワンアウトまでノーヒットピッチングの快投を披露します。結局、川島慶三選手にセンター前ヒットを打たれて偉業達成は逃しましたが、その1安打のみで移籍後初の完封勝利、無傷の開幕6連勝を飾りました。その後、開幕からの連勝は8まで伸び、終わってみればリーグトップタイの11勝を挙げた涌井投手。自身5年ぶり4度目となる最多勝のタイトルを獲得し、史上初の「3球団で最多勝獲得」という快挙も達成したのです。



【競泳 池江璃花子選手】
 
 2019年2月に体調不良を訴え、合宿先のオーストラリアから緊急帰国して検査を受けた結果、白血病であることが判明した池江璃選手。池江選手はその直前に行われた、18年のパンパシフィック選手権 100mバタフライで日本新記録を樹立し、主要な国際大会では初めての金メダルを獲得しました。その後に開催されたジャカルタ・アジア大会では、日本勢の1大会最多となる6冠を獲得し、MVPも受賞。東京オリンピックのメダル候補として大きな期待を集めるようになった矢先の病気発覚でした。
 それから10ヵ月後の昨年12月にようやく退院した池江選手は、今年3月、406日ぶりにプールで泳ぐ姿を公開して世間を驚かせました。延期された東京オリンピック開幕まであと1年となった今年7月23日には、東京・国立競技場で開催されたセレモニーで、オリンピック聖火がともったランタンを持って登場。それから1ヵ月後の8月末、今度は泳ぎで世界に勇気を届けます。東京都特別水泳大会の女子50m自由形で久々のレースに臨むと、日本学生選手権・個人種目の派遣標準記録を突破する好タイムをマークしたのです。池江選手は現在、24年のパリオリンピックを目指し、トレーニングを続けています。



【駅伝 青山学院大学】 
 
 2015年から大会4連覇と、箱根駅伝で圧倒的な強さを誇った青山学院大学。しかし5連覇を狙った19年の大会では総合2位に終わり、東海大学に優勝をさらわれました。各大学の実力が接近し、近年稀にみる群雄割拠の大会になると予想された2020年の箱根駅伝。令和最初の大会で、王座奪還に燃える青山学院を牽引したのは、新人の1年生と、前年まで補欠だった4年生でした。まずは往路。「先手必勝」を掲げ、3年生のエース・吉田圭太選手を1区に投入した青山学院は、トップと18秒差の7位で2区にタスキをつなぎます。この最長区間“花の2区”に抜擢されたのが、1年生の岸本大紀選手でした。
 岸本選手は期待に応え、最初の3kmで先頭集団に追いつくと、その後も他の大学のエースたちを向こうに回し、尻込みすることなく先頭集団をキープ。残り500mで仕掛けると、6人抜きのトップで3区にタスキをつないだのです。しかし3区で抜き返され、4区を迎えた時点では、トップと1分21秒差の2位だった青山学院大学。ここでタスキを受け取ったのが、4年生の吉田祐也選手でした。これまでの3年間、出番のなかった吉田選手。最初で最後の箱根路となった4区で、吉田選手は13・7㎞地点でトップに立つと、これまでの記録を24秒も上回る、衝撃的な区間新記録をマークしました。以降、青山学院は一度もトップを譲らず、前年、東海大学が作った記録を6分46秒も更新する大会新記録でみごと優勝を果たしたのです。



来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!
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