【競歩 池田向希・山西利和選手】
暑さ対策のため、東京から札幌へと開催地が変更されたオリンピックの競歩。それでも、男子20キロはスタート時の気温31度、湿度63%という過酷な環境でした。そんな中、先頭集団を形成したのが池田選手と山西選手です。23歳の池田選手は高校時代まで大きな実績がなく、入学した東洋大学陸上部でも当初は選手兼マネージャーという苦労人。結果が出なければ選手を続けられないという危機感の中で努力を重ね、2019年の世界選手権で6位入賞。国内の選考レースで優勝し代表の座をつかみました。一方、京都大学出身の肩書きで話題を集めた25歳の山西選手。学生時代から年代別の世界大会で優勝し、19年の世界選手権で優勝。東京オリンピックでも金メダル大本命と呼ばれていました。
オリンピック本番のレースは、その山西選手が6人の先頭集団を引っ張り、残り3キロを切って一気にスパート。これに反応したイタリアのスタノ選手と池田選手。この3人による最後の大勝負が始まりました。この展開、実は池田選手の想定通りの展開でした。暑さ対策も抜かりなく、「自分は他の選手よりも有利だ」とプラス思考を保てたと言います。最後はスタノ選手が差を広げ、池田選手は惜しくも9秒差で2位。山西選手は23秒差での3位でフィニッシュ。この種目では日本勢初となるメダル獲得をふたりで果たしました。
【競泳 本多灯選手】
2019年に世界ジュニア選手権200mバタフライで銀メダルを獲得するなど、同世代では抜きん出た実力を見せていた本多選手。でも世界の舞台でシニア世代と戦うだけの力はまだありませんでした。そんな本多選手にとって飛躍のきっかけとなったのは、一本の電話。オリンピック2大会連続金メダルの北島康介さんから、競泳国際リーグへの参加を打診されたのです。海外トップ選手と5週間にわたって切磋琢磨したことで大きな刺激を受けた本多選手は、直後に行われた昨年12月の日本選手権200mバタフライで初優勝。さらに今年4月の日本選手権でも自己ベストを更新して優勝し、オリンピック代表に内定したのです。
上り調子でオリンピック本番を迎えた本多選手。ただ、夢の舞台で硬くなったのか予選は6位通過。準決勝は自己ベストから1秒余り遅い全体8位のタイムでなんとか決勝進出を果たします。決勝では序盤から積極的な泳ぎでトップ争いに加わると、最後のターンを4位で折り返します。メダルをかけた残り50m、必死の泳ぎで追い上げると、またも自己ベストのタイムを叩き出して2位でゴールをタッチ。東京オリンピックの競泳日本男子陣にとってメダル第1号。そして、200mバタフライでは日本男子5大会連続でのメダル獲得となり、競泳ニッポンに希望の灯りをともす銀メダルとなりました。
【大相撲 白鵬翔関】
大相撲史上“最強”ともいわれる白鵬関。身長192㎝、体重155kg、恵まれた体格と反応の良さを武器に勝利を重ね、45回の幕内優勝、通算1187勝など、数々の大記録を打ち立てました。2001年3月の春場所で初土俵を踏んでからわずか6年後、07年5月の夏場所後に22歳の若さで第69代横綱に昇進。順調な出世に見えましたが、その裏には涙ぐましい努力がありました。15歳でモンゴルから来日した当時、体重はわずか62kg。体を大きくするため、1日5ℓの牛乳を飲んだり、1日に3回も泣いたという厳しい稽古にも耐え、頂点まで駆け上がったのです。14年にわたって綱を張り続けてきた白鵬関も、右ヒザの故障などから晩年は途中休場を含め、6場所連続で休場するなど肉体的限界が近付いていました。
最後の土俵は、休場明けで臨んだ今年7月の名古屋場所です。初日は実戦からしばらく離れていたこともあり、新小結・明生関に土俵際に押し込まれる場面もあったものの、なんとかしのいで掛け投げで逆転勝ち。持ち味の対応力の良さで徐々に勝負勘を取り戻し、勝利を重ねて行きます。そして14日目まで無敗を続け、千秋楽は同じく全勝の大関・照ノ富士関と直接対決。かち上げから大振りの張り手、右四つから強引な左小手投げの連発で優勝を引き寄せました。勝利の瞬間、右腕を振り下ろすガッツポーズを見せ、雄叫びを上げた白鵬関。進退をかけた場所で、全勝優勝という最高の結果を出してみせたのです。
【大相撲 妙義龍泰成関】
相撲の名門・埼玉栄高校では、武隈親方の豪栄道関と同学年。2009年5月の夏場所に初土俵を踏んだ妙義龍関は、同世代の力士が次々に引退していく中、35歳の現在も現役を続けています。努力家で関脇まで昇進したものの、大関への足掛かりがなかなかつかめず、今年9月の秋場所の番付は西前頭10枚目でした。初日から4連勝と好調な出だしから10日目で早くも勝ち越しを決めると、12日目を終えて9勝3敗。トップを行く横綱・照ノ富士関を星1つの差で追う展開になりました。
13日目に大関・貴景勝関と対戦。過去13連敗中と苦手な相手に、14度目の対戦でついに初勝利を挙げました。続く14日目も大関・正代関と対戦。立ち合いの速攻で左前まわしを取ると、一気に前に出てわずか3秒で寄り切り。会心の一番で大関相手に2連勝を果たし、千秋楽の逆転優勝に望みをつないだのです。しかし大一番で気合が空回りしたのか、妙義龍関は肩透かしで敗北。初優勝は叶いませんでしたが技能賞を受賞し、2013年5月の夏場所以来、実に8年ぶり・6度目の三賞に輝きました。
【大相撲 宇良和輝関】
得意の足取りなど、様々な技を駆使して土俵を沸かせる幕内力士の宇良関。三役を目前にした2017年9月の秋場所2日目、先場所に痛めた右ヒザのケガが悪化して途中休場。次の場所から5場所連続で全休を余儀なくされました。番付は三段目まで陥落。なんとか復帰したものの、19年1月の初場所で再び右ヒザを痛め、次の場所から4場所連続で全休。番付はさらに下がり、19年11月の九州場所で復帰した時は序二段でした。しかし幕内復帰を決して諦めなかった宇良関。小さな体では関取は務められないと、肉体改造に取り組みます。持ち前の技にパワーが加わった宇良関は順調に番付を戻し、今年7月の名古屋場所で実に3年10ヵ月ぶりに待望の幕内復帰を果たしたのです。
名古屋場所で、みごと10勝を挙げた宇良関。続く9月・秋場所の番付は東前頭6枚目まで上がり、10日目には横綱・照ノ富士関と対戦。横綱戦は実に4年ぶりでした。照ノ富士関も、ケガで序二段まで陥落しながら再び這い上がり、今年大関復帰と、横綱昇進を果たしています。同じ経験を持つ横綱相手に、宇良関は1分32秒の大熱戦。敗れはしたものの、その相撲人生同様に決して勝負を諦めなかった宇良関には、観客席から大きな拍手が送られました。
来週のスポーツ伝説は……
11/15(月) プロ野球 斎藤佑樹投手
11/16(火) プロ野球 雄平選手
11/17(水) プロ野球 岩田稔投手
11/18(木) プロ野球 山井大介投手
11/19(金) プロ野球 西浦颯大選手
お楽しみに!!