スポーツ伝説

8月30日~9月3日の放送内容

【パラバドミントン 里見紗李奈選手】

 中学1年生の時にバドミントンを始めた里見選手は2016年、高校3年生の時に交通事故に遭い、脊髄を損傷。両足に障がいが残り、車いす生活になりました。そんな里見選手に、車いすでできるバドミントンを勧めたのは父親でした。17年の春、地元・千葉にある車いすバドミントンのチームを見学。やってみると楽しく、ほぼ毎日通うようになりました。そこへ声を掛けたのが、チームの設立者である村山浩選手です。
 村山選手の指導を受け、めきめきと才能を伸ばしていった里見選手は、17年の暮れに日本選手権に出場。競技を始めて1年経たない内に、シングルスで準優勝を果たします。パラリンピック出場の夢が、グッと現実に近付いた瞬間でした。急成長を遂げた里見選手は18年、車いすバドミントンのエース・山崎悠麻選手のダブルスパートナーに選ばれ、日本代表として国際大会にも出場するようになります。シングルスでも、19年に世界選手権優勝。シングルス・ダブルスの両方で、世界ランキング1位に上りつめました。東京パラリンピックでは、シングルス・ダブルス両方で金メダルを期待されています。

  

【パラバドミントン 鈴木亜弥子選手】

 鈴木選手は、生まれつき右腕が肩より上に上がらないという障害を抱えています。小学3年生の時にバドミントンを本格的に始め、埼玉県の大会で優勝経験のある父親の指導でどんどん才能を伸ばしていきました。はじめは健常者に交じって戦っていた鈴木選手。高校時代には、全日本ジュニア選手権のダブルスで準優勝に輝きました。大学3年生からは健常の大会と掛け持ちで、パラの大会にも出るようになった鈴木選手。社会人になった2009年、初めて世界選手権に出場し優勝。10年にアジアパラ競技大会で優勝したところで、いったん引退します。
 しかし、東京パラリンピックでパラバドミントンの正式採用が決まると15年秋に5年ぶりに競技に復帰。16年2月、全日本選手権で優勝すると、かつての感覚を取り戻していきました。この年の11月、アジア選手権に出場した鈴木選手は、シングルス決勝で中国の楊秋霞選手に敗れ、準優勝に終わります。しかしその楊選手にも、10ヵ月後の国際大会の決勝で初めて勝利。17年11月の世界選手権でも楊選手に勝ち、大会も8年ぶりに制しました。東京パラリンピックでは、パラバドミントン初代女王を目指します。


 
【柔道 渡名喜風南選手】

 どのオリンピックでもメダルが期待される日本のお家芸、柔道。東京大会でその先陣を切った女子48キロ級・渡名喜選手には、どうしても負けられない因縁の相手がいました。2018・19年の世界選手権決勝で敗れいる、ウクライナのダリア・ビロディド選手です。身長148㎝の渡名喜選手に対し、ビロディド選手は172㎝。「自分の間合いでは技が届かない」と苦手にしてきました。そこで渡名喜選手が取り組んだのは、モンゴルへの武者修行でした。これまでの試合経験からモンゴル選手の体幹がとても強いことに注目し、代表合宿に参加。渡名喜選手は苦手克服のために自分を見つめ直しました。
 金メダルを目指す渡名喜選手の前には、強敵ばかりが立ちはだかりました。準々決勝では、前回・リオ大会の金メダリストと対戦。腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを収め、メダル獲得が懸かった準決勝へ。ここで対戦したのが因縁の相手、ビロディド選手でした。今回は鍛え直した体幹を武器に、主導権を渡さなかった渡名喜選手。因縁の相手から見事な勝利を収めました。続く決勝戦では、世界ランク1位の選手と熱戦の末に敗れ、惜しくも金メダルは逃しました。でもこの銀メダルは東京オリンピックにおける日本勢第1号のメダルであり、夏季・冬季オリンピックで日本選手が獲得した通算500個目のメダル。大きな節目のメダルとして、オリンピックの歴史に刻まれました。



【柔道 髙藤直寿選手】
 
 前回のリオ大会では“金メダル候補”と言われながら銅メダルに終わった、柔道男子60キロ級・髙藤選手。あれから5年、再び挑んだオリンピックの舞台で遂に金メダルを勝ち取りました。以前の髙藤選手は“トリッキー”と評されるほどの多彩な技が魅力でしたが、それはリスクと表裏一体。格下の相手に取りこぼしもありました。そこで髙藤選手は「負けない柔道」を目指し、筋力トレーニングで下半身を強化するともに、これまで以上に審判の傾向にも気を配るようになったといいます。畳の外でも、リオ以前は暴飲暴食を繰り返し、練習へは遅刻の常習犯といった破天荒ぶりで問題児と呼ばれ、日本代表の井上康生監督自ら丸刈りになって猛省を促したほどでした。
 それが一転、今では誰よりも柔道を追求する“柔道オタク”と呼ばれるようになり、世界選手権でも連覇するほどの安定感を手に入れたのです。東京オリンピックの決勝戦、決着は延長戦の末に相手の反則が重なっての勝利。まさにこの5年間目指してきた「負けない柔道」が実った瞬間でした。



【柔道 大野将平選手】 

 圧倒的な強さでリオを制し、東京オリンピックで連覇を期待された柔道男子73キロ級・大野選手。ただ本人は優勝候補と言われても、常に気持ちを張り詰めた状態にしていました。その理由は、かつての苦い経験があるからです。2013年の世界選手権で優勝し、連覇を目指した翌年、格下相手にまさかの敗戦。それ以降、普段の稽古では自分の弱さと向き合い、最悪の状況を想定して練習することで、国際大会7年間無敗の結果を残してきました。
 ところが今年5月、新型コロナ禍で遠ざかった実戦感覚を取り戻そうとロシアへの武者修行に出かけた際、書類の不備で帰国の飛行機に乗れず、現地で5日間の足止め。大事な時期に練習量が減った結果、肉体の強さを示す数値も想定外に落ちてしまったのです。オリンピック直前に不測の事態。しかしこんな時こそ、大野選手の「常に最悪を想定する」思考法が実ります。ロシアから帰国後、もう一度自らを追い込んでトレーニングを重ねると、肉体の強さを示す数値は本番2日前に過去最高を記録。万全の状態でオリンピックを迎えました。大野選手は初戦から準々決勝まで、オール1本勝ち。準決勝を延長の末に競り勝つと、決勝は今年の世界選手権王者と激突。9分を超える大熱戦の末、支え釣り込み足で技ありを奪い、日本男子では4人目となるオリンピック連覇の偉業を成し遂げました。



来週のスポーツ伝説は……

9/6(月) 競 泳 大橋悠依選手
9/7(火) 柔 道 阿部一二三&詩選手  
9/8(水) 卓 球 伊藤美誠選手
9/9(木) 野 球 稲葉篤紀監督
9/10(金) ソフトボール 後藤希友投手

お楽しみに!!
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