スポーツ伝説

10月18日~22日の放送内容

【車いすバスケットボール日本代表】

 9月5日、東京パラリンピック閉幕の日に行われた、車いすバスケットボール男子決勝。決勝トーナメントに進出した日本代表は、準々決勝で強豪オーストラリアを退け、準決勝で2018年・世界選手権優勝のイギリスを撃破。決勝に進出し、前回リオ大会の覇者・アメリカと対戦しました。これまでメダルを獲ったこともなかった日本がここまで勝ち進んだだけでも相当な快挙ですが、アメリカとも互角に渡り合う堂々の戦いぶりを見せます。
 前半が終わって5点差をつけられていた日本。後半の第3クォーターに逆転し、最終第4クォーターも途中まで優位に立っていましたが、最後の勝負所でアメリカに逆転されます。日本は60対64で敗れましたが、初の銀メダルに輝きました。さらに鳥海連志選手は、国際車いすバスケットボール連盟から東京パラリンピックの男子MVPに選ばれました。
  

  
【パラ競泳 富田宇宙選手】

 熊本県出身の富田選手は3歳から水泳を始め、地元の済々黌高校水泳部で腕を磨きましたが、2年生の時に網膜色素変性症を発症。高校卒業を機に一度プールを離れましたが、大学卒業後にシステムエンジニアの仕事をしながらパラ水泳の世界へ進みます。7年に及ぶブランクをハードなトレーニングで補うと、2015年に国際大会デビューを果たし活躍。ところが目の病状が急激に悪化し、17年、最も障がいが軽いクラスから最も障がいが重い全盲のクラスへ移ることに。このクラス変更で、ずっと一緒に練習していたパラリンピックメダリストの木村敬一選手と同じクラスとなり、親友の2人は国際大会でしのぎを削るライバル関係となったのです。
 富田選手にとって初のパラリンピック出場となった東京大会。男子400m自由形で銀メダルを獲得した富田選手は、200m個人メドレーでも銅メダルを獲得し、大舞台でいきなり結果を出してみせました。そして3つ目のメダルが懸かる、100mバタフライ決勝。目指すは当然、初の金メダルですが、このレースにはライバルの木村選手も出場します。4度目のパラリンピック出場になった木村選手も、唯一金メダルだけを手にしていませんでした。そのことをよく分かっていながら全力で泳いだ富田選手。結果は木村選手が勝利して悲願の金メダルに輝き、富田選手も2位で銀メダルを獲得。パラリンピック競泳史上初の日本人選手によるワンツーフィニッシュが実現したのです。


 
【パラ競泳 山田美幸選手】

 生まれつき両腕がなく、両足の長さも異なる山田選手が水泳を始めたのは、5歳の時でした。水の中なら不自由なく体を動かせることから、すぐに泳ぐことに夢中になったといいます。小学4年だった2016年にリオパラリンピックをテレビで見て、出場を夢見るようになりました。そんな世界の舞台への挑戦を支えてくれたのは家族の存在でした。ところが19年、そんな最愛の父がガンで帰らぬ人に。山田選手もショックで1ヵ月近く泳げなかったといいます。それでも、今年3月の日本選手権では50mと100mの背泳ぎで日本新記録を樹立して優勝。一躍メダル候補としてパラリンピック代表入りを果たしたのです。
 東京パラリンピック開会式翌日の8月25日、競泳女子100m背泳ぎに登場した山田選手。「スタートもターンも自分の中では100点満点」と振り返るほどの出来で、前半から積極的にレースを展開します。35m過ぎで、世界記録保持者でもあるリオの金メダリストに抜かれましたが、2位をキープしたまま泳ぎきり、銀メダルに輝いたのです。これは東京パラリンピックの日本勢第1号メダルとなり、14歳でのメダル獲得は、パラリンピック史上日本人最年少記録でした。山田選手は2種目めの50m背泳ぎでも前半から攻めの泳ぎを見せ、みごと2つ目の銀メダルを獲得しました。
 


【パラ競泳 山口尚秀選手】
 
 山口選手の魅力のひとつは、恵まれた身体能力です。身長187㎝で、足のサイズは30㎝。足にフィンを付けているのかと見間違うほど大きなべた足から繰り出す強いキックと、肩甲骨まわりの柔軟性を生かしたダイナミックな泳ぎで、100m平泳ぎ・知的障害クラスの世界記録を何度も更新してきました。「尚秀」という名は、山口選手が生まれた2000年シドニーオリンピック女子マラソンで金メダルに輝いた高橋尚子選手の「尚」と、元メジャーリーガー・松井秀喜選手の「秀」から取ったもの。その由来どおり、世界の舞台で見事な結果を残してきました。
 山口選手が、本格的にパラ競泳の世界に挑んだのは17年のこと。特別支援学校高等部1年生の時に競技を始めると、2年後の19年、18歳で初出場した世界パラ水泳選手権で世界記録を更新し優勝。競技歴2年で世界のトップスイマーとなり、東京パラリンピック代表に内定したのです。そして迎えた100m平泳ぎ決勝。山口選手は前半から先頭につけてレースを引っ張ると、後半もリードを保ち、自身が今年5月にマークした世界記録を0秒23更新。「金メダルと世界新記録」という2つの快挙を同時に達成しました。



【パラトライアスロン 宇田秀生選手】 

 宇田選手は滋賀県出身の34歳。小学生時代からサッカーに明け暮れ、高校では滋賀県の代表として活躍するほどの実力者でした。しかし大学卒業後の2013年、仕事中の事故で右肩から先を失ってしまいます。この人生最大のピンチで支えになってくれたのが、事故に遭う5日前に結婚した妻・亜紀さんです。彼女の「なんとかなる」の言葉が、将来への不安をかき消してくれました。退院後、リハビリの一環で始めた水泳がきっかけでトライアスロンに出会うと、15年、地元で開催された大会でいきなり準優勝。2か月後にはアジア選手権で優勝と、一躍トップ選手の仲間入りをします。
 一時は世界ランキング1位にまでのぼりつめ、メダル候補として期待されて臨んだ東京パラリンピック。宇田選手の強みは、サッカー経験で培った持久力が生かせるバイクとラン。その前のスイムでいかに先頭集団にくらいつけるかがポイントです。まずは苦手のスイムで粘りを見せ8位で終えると、続くバイクで一気に3位とジャンプアップ。そして最後のランで前を行く選手を1人かわし、2位でゴールテープを切りました。トライアスロンで日本勢がメダルを獲得したのは、パラリンピック史上初。オリンピックを含めても、日本勢初の快挙でした。

 

来週のスポーツ伝説は……

10/25(月) 女子バスケットボール日本代表
10/26(火) ゴ ル フ  稲見萌寧選手  
10/27(水) クライミング 野中生萌&野口啓代
10/28(木) レスリング  須崎優衣選手
10/29(金) レスリング  向田真優選手

お楽しみに!!
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