【柔道 井上康生監督】
日本勢のメダルラッシュで沸いたリオデジャネイロオリンピック。その中でも男子柔道は、金メダル2個・銀メダル1個・銅メダル4個とメダルを量産しました。全7階級でのメダル獲得は、4階級での開催だった1964年の東京大会以来、52年ぶりとなる快挙。4年前のロンドン大会では、銀メダルと銅メダルが2つずつで、柔道がオリンピック競技に採用されてから初めて「金メダルなし」という屈辱を味わっていました。そんな状態からお家芸復活を託されたのが、シドニー大会100キロ級の金メダリスト・井上男子代表監督です。
井上監督による日本柔道の改革には、大きく分けて2つの特徴がありました。ひとつは、それまでの量を中心としたトレーニングを改め、科学的なトレーニングにより選手の肉体改造に取り組み始めたこと。そしてもうひとつが、柔道本家のプライドを捨て、世界各国の様々な格闘技を学ぶことでした。ブラジリアン柔術・サンボ・モンゴル相撲、500年以上の歴史を持つという伝統の格闘技・沖縄すもうなど、様々な格闘技の練習を取り入れ、時には現地に赴いて地元選手との対戦を繰り返したことで、日本人選手の対応能力は飛躍的に向上。その成果が、全階級でのメダル獲得という結果につながったのです。
【競泳 萩野公介選手・瀬戸大也選手】
リオで史上最多、41個ものメダルを獲得した日本選手団。そんなメダルラッシュの流れを呼びこんだのが、大会2日目に行われた競泳男子400m個人メドレーで、今大会の日本勢金メダル第1号となった萩野選手。そして、同じく銅メダルを獲得した瀬戸選手です。競泳日本勢のダブル表彰台は1956年のメルボルン大会以来、60年ぶりのことでした。
萩野選手と瀬戸選手は、共に1994年生まれの同級生で、小学校時代から競い合う間柄でした。しかし、4年前のロンドン大会では萩野選手だけが代表に選出。17歳にして銅メダルに輝きます。常に萩野選手がリードしてきた2人の関係性ですが、大学入学後、瀬戸選手は大舞台での強さを発揮するようになりました。2013年の世界選手権、男子400m個人メドレーでは萩野選手に競り勝ち、日本勢としてこの種目で初の金メダルを獲得。15年の世界選手権でも自己ベストを更新して優勝。世界選手権での大会2連覇は、日本人選手として史上初の快挙でした。一方の萩野選手は、15年の世界選手権前に自転車で転倒し、右ヒジを骨折。辛いリハビリの毎日を送ることになります。
そして迎えたリオ本番の決勝レース。萩野選手は序盤こそ瀬戸選手にリードを許しましたが、2泳法目の背泳ぎで逆転。その後も攻めの姿勢を崩さず、悲願の金メダルに輝いたのです。
【卓球 水谷隼選手】
リオで2つのメダルを獲得した、卓球の水谷選手。これまで全日本選手権での優勝は8回、世界選手権でも幾度となくメダルを取ってきましたが、オリンピックの表彰台は自身にとっても初の快挙でした。17歳の時に出場した全日本選手権で史上最年少のシングルス優勝。ダブルスとジュニアの優勝と合わせて三冠王に輝きました。以後、シングルスは5連覇。日本のエースとして、卓球界を牽引してきました。
若くして日本のトップに上り詰めた水谷選手。しかしオリンピックでは、北京・ロンドンと2大会連続で敗北。世界の壁の厚さを思い知らされ、一時は極度のスランプに陥りました。それだけに、3度目の大舞台となったリオデジャネイロオリンピック、男子シングルスで悲願の銅メダルを決めると、大きなガッツポーズを見せて喜びを爆発させました。
【競歩 荒井広宙選手】
リオオリンピック・競歩50kmで、日本人初の銅メダルに輝いた荒井選手。その強さの秘密は、歩型――すなわち、歩くフォームの美しさにあります。歩型について厳しいルールがあり、失格する選手も多い競歩ですが、荒井選手は一度も歩型違反で失格した経験がありません。
社会人1年目には、当時日本歴代4位となる好タイムを記録して世界選手権に出場。ロンドンオリンピックへの出場は叶いませんでしたが、翌年に自衛隊体育学校へ進むと、それまで雲の上の存在だったトップ選手たちとハイレベルな練習を重ね、リオへの出場権を獲得。そして今回の偉業を達成したのです。競歩の歴史に、新たな名を刻んだ荒井選手。その自己ベストは、今回金メダルを獲得したスロバキアのマテイ・トート選手のタイムを上回っており、将来は世界一に輝く可能性も十分です。
【カヌー 羽根田卓也選手】
日本人がメダルとまったく無縁だったカヌー競技で、快挙が達成されました。スラローム・男子カナディアンシングル決勝で、日本の羽根田選手が、日本カヌー界初となるオリンピック銅メダルを獲得したのです。
カヌーの国体選手だった父・邦彦さんの勧めで、小学3年からカヌーを始めた羽根田選手は、中学3年生の夏にジュニアのナショナルチームのヨーロッパ遠征に参加。そこで外国の強豪たちに速さを見せつけられ、「自分も世界で戦いたい」と決意。高校卒業後の2006年、更なる飛躍を求めて、カヌーの本場・スロバキアに渡りました。スロバキアで出逢ったコーチと二人三脚でトレーニングを積み、強豪たちと切磋琢磨して、腕を磨いていった羽根田選手。08年の北京オリンピックでは14位。4年後のロンドンでは7位と着実に順位を上げ、去年、リオでオリンピックと同じコースを使って開催されたテスト大会では銀メダルを獲得。そしてスロバキアに渡って10年経った今年、ついに大輪の花を咲かせたのです。
来週のスポーツ伝説は……
10月3日(月) プロ野球 ターメル・スレッジ選手
10月4日(火) プロ野球 稲葉篤紀選手
10月5日(水) プロ野球 八木智哉投手
10月6日(木) プロ野球 里崎智也選手
10月7日(金) プロ野球 落合博満監督
お楽しみに!!