現地時間の8月5日に開会式を迎えたリオデジャネイロ オリンピック。8月21日までの17日間、28競技・306種目が行われます。
今週は、オリンピックにまつわる伝説の数々をご紹介しました。
【陸上・リレー チーム朝原】
数ある競技・種目の中で、「日本人選手のメダルは難しい」と言われるものの1つが、陸上短距離種目です。特に男子100mは外国勢が9秒台でしのぎを削る中、日本勢はこれまで1人も10秒の壁を破ったことがありません。そんな短距離種目でも日本人選手が唯一戦える種目が、男子4×100mリレーです。2000年のシドニー大会で6位入賞。以降、前回のロンドン大会まで、日本チームは4大会連続で決勝レースに進出しています。08年の北京大会では、銅メダルを獲得しました。その時のリレーメンバーは、塚原直貴選手・末續慎吾選手・高平慎士選手・朝原宣治選手の4人。アンカーを務めた36歳の朝原選手を軸としたチームワークの良さから、“チーム朝原”と呼ばれていました。
朝原選手は北京大会が4度目のオリンピック。10年以上に渡って日本短距離界を引っぱってきました。その朝原選手を中心に作り上げたのが、正確かつスムーズなバトンパス。日本チームが採用したのは、技術的に高度なアンダーハンドパス。この方法は受け渡しがとても難しい反面、減速が少ないというメリットがあります。このアンダーハンドパスに磨きをかけ、迎えた北京大会。アメリカ、ナイジェリアなど強豪チームが相次ぐバトンミスで予選敗退する中、日本は完璧なバトンパスで決勝に進出。決勝のレースでもすばらしいバトンパスを見せ、4人一体のチームワークで見事にメダルをつかみました。
リオ大会のリレーメンバーは、レース当日に決まります。 有力候補は、日本人初の9秒台の期待がかかる桐生祥秀選手、ロケットスタートの山縣亮太選手、陸上界期待のニュースター・ケンブリッジ飛鳥選手など、個々の走力では史上最強ともいえるメンバーが揃っています。
【マラソン 金栗四三選手】
1896年、ギリシャの首都・アテネで開かれた第1回オリンピックから始まったマラソン。オリンピックの歴史と共に歩んできたマラソンは、今も昔もオリンピックの花形種目のひとつです。第1回大会でのマラソンは約40キロの距離で行われ、優勝タイムは2時間58分50秒。現在の大会記録は、北京大会での2時間6分32秒で、世界最高記録は2時間2分57秒となっています。これに対し、正式な記録ではありませんが、もっとも遅い記録というのもあります。そのタイムは54年8カ月6日5時間32分20秒3。この記録を作ったのが、後に“日本マラソンの父”と呼ばれた金栗選手でした。
1912年のストックホルム大会でマラソンに出場した金栗選手は、レース途中に熱中症によって意識を失い、無念の途中リタイヤ。近くの民家で介抱され、気がついた時は既にレースの翌日でした。ところがこのリタイヤは、途中棄権ではなく行方不明扱いでした。これに目をつけたのが、55年後のスウェーデン・オリンピック委員会。67年に行われたストックホルム大会55周年記念式典に金栗選手を招待し、ゴールさせるという粋な演出を用意したのです。その瞬間、場内には「日本の金栗、ゴールイン。タイムは54年8カ月6日5時間32分20秒3。これでストックホルム大会の全日程を終了します」というアナウンスが流れました。
今回のオリンピックでマラソンに出場するのは、男子が佐々木悟選手、北島寿典選手、石川末廣選手。女子は伊藤舞選手、福士加代子選手、田中智美選手です。
【射撃 蒲池猛夫選手 オスカー・スバーン選手】
リオオリンピックの障害馬術に出場する桝井俊樹選手は、1969年生まれの46歳。今大会では日本選手団最年長です。「行くだけで終わりじゃない。団体でそれぞれが力を発揮すれば、入賞も夢じゃない」リオへの出発前、桝井選手はこう意気込みを語りました。
日本人最年長金メダリストの記録を持つのは、84年のロサンゼルス大会、射撃男子ラピッドファイアピストルに出場した蒲池選手、当時48歳。1歳半の孫もいた“おじいちゃん選手”として話題を集めました。蒲池選手はメキシコ、ミュンヘン、モントリオールと3回のオリンピックに出場しましたが、毎回メダル候補といわれながら、モントリオールでの12位が最高順位でした。大きなケガもあり、一度は引退しましたが、ロサンゼルス大会前に現役復帰。48歳にしてようやくつかんだ栄光でした。
世界における最年長メダリストはというと、スウェーデンの射撃選手スバーンです。スバーン選手は1908年、60歳の時に行われたロンドン大会でオリンピック初出場。団体で金メダル、個人でも金と銅に輝きます。4年後、64歳で出場したストックホルム大会でも団体で金メダル。これが、オリンピックにおける最年長金メダリストの記録です。さらに、20年のアントワープ大会でも団体で銀メダルを獲得。この時、実に72歳。これがオリンピックの最高齢出場記録であり、同時に最年長メダル記録でとなりました。
【体操 加藤沢男選手】
今大会の日本選手団で金メダル獲得を期待されている選手のひとりといえば、体操の内村航平選手。昨年の体操世界選手権で前人未到の個人総合6連覇を達成した内村選手は、オリンピックは今回で3回目の出場です。前回のロンドン大会では個人総合で金メダルを獲得。その他に、これまでの2大会で、銀メダルを4個獲得しています。既に5個のオリンピックメダルを保持している内村選手ですが、過去には、もっと多くのメダルを獲得した選手がいました。メキシコ、ミュンヘン、モントリオールの3大会に出場し、計12個のメダルを獲得。“ミスター体操”と呼ばれた加藤選手です。
加藤選手の強さは、“体操の教科書”とも称された美しい演技にありました。実は普段の生活ではO脚と猫背に悩み、姿勢が悪いというコンプレックスを持っていた加藤選手。だからこそ演技では人一倍気を使い、常に意識して背筋を伸ばすように心がけていました。またO脚でも両ひざがつき美しい立ち姿になるよう、普段の練習で両足を固定し、内側に絞るように矯正。その結果、足がしなったような曲線美が生まれ、高得点を生んだのです。
【円盤投げ アル・オーター選手】
オリンピックでの連覇はとても難しく、それだけに大きな価値があります。今回のリオオリンピックでは、4連覇を狙う日本人選手が2人います。女子レスリング53キロ級の吉田沙保里選手と、58キロ級の伊調馨選手。達成すれば、女子ではオリンピック史上初の偉業となります。オリンピック個人種目での4連覇は、これまでにたった3人しか達成していない記録なのです。1人は、“ヨットの神様”セーリングのパウル・エルブストレーム選手。そしてもう1人は、“陸上のスーパースター”走り幅跳びのカール・ルイス選手。この2人はもともと優勝候補といわれていましたが、残る1人はそうではありませんでした。
円盤投げのオーター選手は、20歳で出場した1956年のメルボルン大会で初の金メダルを獲得。そこから60年のローマ、64年の東京、そして68年のメキシコと、4連続で金メダルを獲得します。しかもすべて、オリンピック新記録というおまけ付きでした。結果だけ見ると圧倒的なチャンピオンですが、実は4回とも優勝候補ではなく、アメリカ予選を1位で通過したことさえありませんでした。しかしいざオリンピック本番になると、信じられない集中力と勝負強さを発揮し、毎回オリンピック記録を更新しての4連覇という偉業を達成したのです。
来週のスポーツ伝説は……
8月 8日(月) 大相撲 大鵬関
8月 9日(火) 高校野球 我喜屋優監督
8月10日(水) 高校野球 今宮健太選手 vs 菊池雄星選手
8月11日(木) 高校野球 柴田勲選手 vs 尾崎行雄選手
8月12日(金) 高校野球 藤浪晋太郎選手 vs 北條史也・田村龍弘選手
お楽しみに!!