スポーツ伝説

4月5日~9日の放送内容

【プロ野球 安田猛投手】

 早稲田大学から社会人野球を経て、1971年のドラフトでヤクルトから6位指名された安田投手。身長173㎝ほどの小柄な体格ながら、左サイドスローから投じられる抜群の制球力、緩急自在の投球術、機敏な動きの“ペンギン投法”で1年目から活躍します。ルーキーイヤーの72年には、防御率2.08で最優秀防御率のタイトルを獲得してセ・リーグ新人王に選ばれ、翌73年も2年連続で防御率トップに輝きました。スピードこそ130キロほどでしたが、マウンド度胸でバッターを打ち取っていった安田投手。特に勝負強さを見せたのが、巨人・王貞治選手との対戦です。決して速くないのに手首をクルッと回し、遠心力を使って投げることでバッターの手元で伸びてくるボールに、王選手は通算対戦打率2割5分4厘と抑えこまれました。
 東京六大学野球の時からライバルだった、法政大学出身のホームラン打者で阪神の田淵幸一選手との対戦も名勝負でした。ヤクルト2年目の73年、安田投手は「シーズン81イニング連続無四球」という今も破られていない日本記録を作っています。この記録はライバル・田淵選手から始まり、田淵選手で途切れるという、何とも因縁めいた巡り合わせでした。


【マラソン 鈴木健吾選手】

 国内開催のレースでは最も歴史の長いマラソン大会で、オリンピックや世界選手権の男子代表選考レースでもあった「びわ湖毎日マラソン」。この伝統あるレースが、今年限りで滋賀での開催が終了となりました。その最後のレースで主役となったのが、鈴木選手です。鈴木選手は大学長距離界を代表するランナーでしたが、社会人に進んでからはケガに苦しみ、東京オリンピック代表を懸けたマラソングランドチャンピオンシップも7位と振るいませんでした。東京オリンピックの代表を逃した鈴木選手は、目標を次の2024年・パリオリンピック出場に切り替えます。その再スタートの舞台に選んだのが自身5度目のフルマラソンとなる、今回のびわ湖毎日マラソンだったのです。
 レースはハイペースで進み、33キロを過ぎたところで先頭集団は鈴木選手を含め3人に絞られました。勝敗を分けたのは36キロすぎの給水地点。ドリンクボトルを取り損ねた鈴木選手は、とっさに判断を切り替え、ここでスパートをかけます。すると35キロから40キロのラップタイムは、この日最速の14分39秒をマーク。驚異的なラストスパートで後続を引き離し、2時間4分56秒の日本新記録でゴールテープを切ったのです。この記録は、大迫傑選手が昨年3月にマークした日本記録を33秒も縮めるだけでなく、日本人選手が初めて2時間4分台に突入した歴史的なレースとなり、「最後のびわ湖」に花を添える形となりました。


  
【ジャンプ 小林陵侑選手】

 小林選手は今や、日の丸飛行隊の絶対的エース。大きく飛躍したのは、わずか3シーズン前の2018-19年シーズンのことでした。このシーズンだけでワールドカップ初勝利を含む13勝をマーク。葛西紀明選手の持つ日本男子最多のシーズン6勝を抜き、同時に日本男子初のワールドカップ総合王者に輝いて、世界にその名を知らしめました。次のシーズンも3勝を挙げ、ワールドカップ通算は16勝。この時点で、葛西選手が持つ日本男子最多の通算17勝にあと1勝と迫ります。葛西選手と小林選手は、所属チームの監督と選手という師弟関係であり、選手としてはライバル関係。但し、日の丸をつけて戦うときは頼もしい仲間でもあります。その葛西選手の記録にあと1勝として始まった今シーズンでしたが、コロナ禍の影響で調整不足のままワールドカップが開幕すると、序盤の戦いではトップ10にも入れず、まさかのスランプが続きました。
 しかし今年の元日に行われた試合で今シーズン初優勝を遂げると、そのまま好調を維持して臨んだ第22戦。全員が飛び終えた時点では2位でしたが、競技終了後に1位の選手にジャンプスーツの規定違反が発覚し、まさかの逆転優勝でワールドカップ通算18勝目が転がり込んできました。レジェンド・葛西選手が24シーズンかけて積み重ねた勝ち星を、小林選手はわずか3シーズンで抜いてしまったのです。


【テニス 大坂なおみ選手】
 
 大坂選手にとって、今年の全豪オープンテニスで最大の山場となったのが、幼い頃から憧れていた絶対女王セリーナ・ウイリアムズ選手との準決勝でした。大坂選手は第1セットの序盤こそ苦戦したものの、その後はセリーナ選手を終始圧倒し、ストレートで勝利。大坂選手の放った時速193キロの弾丸サーブに、セリーナ選手が一歩も動けないシーンもありました。アメリカのジェニファー・ブレイディ選手との決勝戦でも、第1ゲームからサービスエース2本を叩き込むなど力の差を見せつけ、ストレートで快勝。2年ぶり2度目の全豪オープン優勝を飾りました。
 これで大坂選手は、ツアー再開後、棄権2試合を挟んで公式戦21連勝。この躍進を支えたのは、2019年末にコーチに就任した、ウィム・フィセッテ氏でした。フィセッテコーチは、大坂選手の唯一の課題であったメンタルを改善。大坂選手を「女王のメンタル」へと導いたのです。そんな大坂選手が次に目指すのは、全仏オープンとウィンブルドンを制しての、4大大会・完全制覇。絶対女王への道は、まだまだこれからです。



【NFL トム・ブレイディ選手】 

 2000年のNFLデビューから20年。“NFL史上最高の選手”とも呼ばれるスーパースターのブレイディ選手。その長いキャリアの中でも、昨シーズンは過去にない新たな挑戦の1年でした。プロ入り以来、司令塔のクォーターバックとして数々の栄光を築き上げてきたペイトリオッツを離れ、バッカニアーズへ移籍したのです。契約内容は、2年で日本円にしておよそ55億円。40歳を越えての超大型移籍は、大きな話題となりました。
 ブレイディ選手が加入した効果もあって、それまでリーグ屈指の弱小チームと言われていたバッカニアーズは、シーズンもプレーオフも勝ち上がり、スーパーボウル進出を決めました。バッカニアーズにとっては18シーズンぶり。ブレイディ選手にとっては、43歳にして史上最多となる10度目の夢舞台でした。2月8日、チーフスとのスーパーボウルの幕が上がりました。前半からブレイディ選手が3つのタッチダウンパスを通して大量リードを奪います。結果、31対9でバッカニアーズは18シーズンぶり、2度目の頂点に立ったのです。MVPに選ばれたのは、もちろんブレイディ選手でした。ペイトリオッツ時代の6回とあわせ、7回目のスーパーボウル制覇であり、さらに自身の最多記録を更新する通算5度目、史上最年長43歳でのスーパーボウルMVP受賞と、移籍1年目にして最高の結果を残してみせました。



来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!
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