【プロ野球 工藤公康監督】
福岡ソフトバンク・ホークス、工藤監督の最大の目標は、日本一連覇。昨年オフの就任会見で、工藤監督は「秋山監督の強いチームを継続していくとの強い意志を表した、僕にぴったりの番号」と、秋山前監督と同じ背番号『81』を選択しました。ただ、踏襲したのはスタイルではなく勝負強さ。ここまでのシーズンの戦いでは、開幕から工藤流が徹底され、送りバントなどが少ない、投手出身監督らしい采配が光っています。
初采配となった開幕戦は、2007年以来の黒星スタート。それでもベンチにドンと構えている姿は、現役時代に優勝請負人と呼ばれた工藤監督ならでは。日本シリーズに14回出場して、11回の日本一を経験しているだけのことはあります。「勝率は5割で行けばいいんですよ。オールスターまでは。そこからムチを入れていく」と、工藤監督。就任直後から「茶髪」「試合中のガム」「唾を吐くこと」「ユニフォーム姿でのネックレス着用」などを禁止してきましたが、それ以外は静観の構え。「プロだから、もがいてどん底から這い上がるしかない。結果が出なければそれまでということ。責任は私がとります。監督って、それでいいと思います」と話しています。
【プロ野球 田辺徳雄監督】
地味なキャラクターながら、名采配がクローズアップされているのが、西武ライオンズの田辺監督。昨シーズン、成績不振で休養した伊原監督の代行を務め、「選手を熟知している最適の人事」と、オフには正式就任が決まりました。就任後は、評論家の低評価を覆す頑張りを見せ、さっそく今シーズンの台風の目に。開幕5連勝は1991年の黄金期以来、24年ぶりの記録です、最大の武器は、選手の掌握術。「並みの19歳ではない」と起用した2年目の森友哉選手など、生え抜きの“田辺チルドレン”を育てて結果を残しているのが特徴です。2002年から、長いこと2軍の指導者として過ごしたキャリアを活かし、現在のレギュラーはほとんど田辺チルドレン。チームは今、「監督のために」という固い信頼で結ばれています。
田辺監督は、現役時代から不平不満を漏らしたことがないという人格者。監督をバトンタッチされた時には、伊原スタイルの管理野球を大幅に緩和しました。「選手にはのびのびとプレーして欲しい。ヒゲを伸ばしていたって、ぶかぶかのユニフォームを着ていたって、ピッチャーは勝ち星、バッターはヒットやホームランを打ってくれればいい」と語った田辺監督。これが田辺野球なのです。
【プロ野球 川崎徳次投手】
激動の人生を送ったプロ野球選手の一人、南海・巨人・西鉄で活躍した川崎投手。プロ入り後に軍隊に招集され、すさまじい戦闘を体験。終戦後には強制収容所での抑留生活を送るなど、苦難の連続でした。しかし1946年に帰国すると、すぐに南海と巨人から誘いを受け、プロ野球に復帰。選んだのは、中島治康兼任監督が熱心に勧誘した巨人でした。とはいえ、やはりブランクは大きく、このシーズンの登板はわずかに1試合。それもセネタースの大下弘選手に、プロ野球新記録となる1シーズン20本目のホームランを許すという、ほろ苦い復帰戦でした。続く47年は、フォームを変更し、2種類のシュートを武器に勝ち星を積み上げます。24勝でチームトップ。翌48年には、27勝で最多勝に輝きました。特筆すべきなのは、49年4月26日の大映戦。8本のホームランを浴び、13失点を喫しながらの完投勝利。この時際立ったのは、打者としての川崎投手でした。4安打を放ち、3本がホームランという離れ業。ピッチャーの1試合3本塁打は史上初で、1試合9打点も当時のプロ野球記録でした。実はこの試合まで、川崎投手はホームランを1本も打ったことがなかったというから驚きです。
【男子柔道 松岡義之選手】
1984年ロサンゼルスオリンピック男子柔道65㎏級は、1回戦から手に汗握る熱戦を展開。日本代表の松岡選手は、決勝で韓国選手から豪快な背負い投げで有効を奪うと、試合の主導権を取り続けて見事な優勢勝ち。1日目の細川伸二選手に続いての金メダルを獲得し、全国的に無名の存在から、一気に世界レベルへと駆け上がりました。最後まで背負い投げで攻め続けた松岡選手。それは、「先生のためにメダルを獲りたい一心だった」からでした。背負い投げは、大学時代の藤猪コーチの得意技。コーチの悲願を達成するという、強い意志の表れだったのです。
学生時代はタイトルとは無縁。しかし大学で藤猪コーチと出会ったことで、内に秘められた資質が引き出されて行きました。勝負の駆け引きと相手の懐への飛び込み、低い姿勢で仕掛ける背負い投げを徹底的に叩き込まれたのです。藤猪コーチは、世界選手権4連覇などの偉業を達成しながら、1980年のモスクワオリンピックを日本がボイコットしたなどの不運があり、オリンピックとは無縁。その夢を、松岡選手に託しました。
【大 相 撲 照ノ富士関】
モンゴル出身力士で5人目の大関となった照ノ富士関。7月場所からは、最高位の横綱を目指してスタートを切ります。平成生まれ初の優勝力士で、平成生まれ初の大関。これまでの大関昇進の基準は「三役で3場所合計33勝以上」が目安。照ノ富士関の場合は、33勝の条件は満たしていましたが、3場所前は平幕で8勝止まりでした。しかし関脇で準優勝と優勝という抜群の成績をあげ、三役をわずか2場所で通過という異例の大関昇進が実現したのです。もちろん本人の頑張りが一番ですが、優勝を飾れたのは、日馬富士関が白鵬関を千秋楽で下すアシストがあったからこそ。しかも優勝パレードでは、その横綱が旗手をつとめる異例の出来事となりました。
小食で、趣味はネットサーフィン。精神面の強さはピカイチで、「集中すると目の前が真っ黒になる。それから、土俵で倒す相手の姿が徐々に見えてくる」のだとか。好きな日本語は『叶う』。「叶うという字は、口にプラスと書く。プラスのことを話していると、夢は叶う」と独自の解釈を披露。闘争心を支えるハングリー精神も持ち合わせており、「早い時期に横綱へ推挙するという話が出るのでは」と、横綱審議委員会の各委員も期待しています。
来週のスポーツ伝説は……
6月29日(月) プロ野球 森友哉選手
6月30日(火) プロ野球 三浦大輔投手
7月 1日(水) プロ野球 松岡弘投手
7月 2日(木) 大 相 撲 佐田の海関
7月 3日(金) レスリング 柳田英明選手
以上の5選手をご紹介します。