スポーツ伝説

4月25日~29日の放送内容

【パラアルペンスキー 村岡桃佳選手】

 北京パラリンピックの花形種目・パラアルペンスキーで大活躍を見せたのが、村岡選手です。4歳の時に病気の影響で下半身がまひした村岡選手は、1本のスキー板の上に座席が付いたチェアスキーに乗って滑るクラスの選手です。2度目のパラリンピックとなった前回の平昌大会では、金1個・銀2個・銅2個と、出場した5種目すべてでメダルを獲得する快挙を達成。しかし金メダリストになったことで、勝たなければいけないというプレッシャーに襲われ辛かったといいます。
 村岡選手はスキーから少し距離を置こうと、夏季競技の「車いす陸上」に挑戦し昨年の東京パラリンピックにも出場を果たしました。気持ちをリセットできた村岡選手は、車いす陸上のトレーニングを通じて体幹部分の筋力が付き、ターンの安定性も上がるという副産物を手に入れます。“夏冬二刀流”の挑戦は、本職のスキーに大きな効果をもたらしたのです。今回の北京のコースは、転倒者や途中棄権が相次ぐ難しいコースでしたが、村岡選手は自分の滑りに徹し、「滑降」「スーパー大回転」「大回転」の3種目で金メダル、「スーパー複合」で銀メダルを獲得。最後の「回転」は5位に終わり、平昌大会に次ぐ「全種目メダル獲得」とはなりませんでしたが、全種目完走を果たしました。


 
【パラアルペンスキー 森井大輝選手】

 高校2年生の時に交通事故で脊髄を損傷。病室で1998年の長野パラリンピックを観たことがきっかけで、座って滑るチェアスキーを始めた森井選手。パラリンピックには今大会までに5大会連続で出場し、銀4個・銅1個のメダルを獲得しています。唯一獲っていないのが、金メダル。今度こそ表彰台の頂点に立つと闘志を燃やした森井選手は、自宅の一部をジムに改装。外国勢に負けない筋力アップに励み、その結果、体重は5キロアップしました。また持ち前のスピードとターン技術を生かせるよう、所属会社・トヨタ自動車のエンジニア達と連携してチェアスキーを改良。より速く滑るために、体と道具、両方を磨き上げ、今年3月に6回目の大舞台となる、北京パラリンピックに臨みました。
 3月5日、パラアルペンスキーで最初に行われた種目が「滑降」でした。今回のコースは、スタート直後にガケのような急斜面が待ち受ける難しいコースで森井選手も練習で滑ってみて、恐怖心すら感じたそうです。それでもトップを目指す攻めの滑りに徹しました。この姿勢が実り、森井選手は滑降でいきなり銅メダルを獲得。5大会連続メダルの偉業を達成しただけでなく、翌日の「スーパー大回転」でも銅メダルを獲得し、日本選手団を大いに盛り上げました。

    
   
【パラノルディックスキー川除大輝選手】

 生まれつき両手足の指の一部がない障害を持つ、パラノルディックスキー・川除選手。身長は160㎝ほどと小柄ですが、強靭な下半身と体幹の強さは世界でもトップクラスで、“雪上のマラソン”と呼ばれるクロスカントリースキーを、ストックを持たずに両腕を大きく振る走法が持ち味です。北京パラリンピックでは開会式で日本選手団の旗手を務めるなど、本番前から注目されていました。
 川除選手がメダル獲得のため重視していたのが、レース後半です。直前合宿では、疲れが出る後半でも持ち味の腕の振りをキープできるように、水を入れたペットボトルを両手に巻きつけ、負荷をかけて練習を積んできました。その成果が、クロスカントリースキーの「男子20キロクラシカル」で存分に発揮されます。川除選手は序盤から積極的なレース展開でトップに立つと、狙い通りのレース運びを展開。腕の振りは最後まで鈍らず、最後は2位と1分30秒以上の大差をつけて金メダルを獲得したのです。21歳での金メダルは、冬のパラリンピックでは日本男子最年少記録でした。


 
【競泳  青木玲緒樹選手】

 競泳・平泳ぎの青木選手は、小学生の時に日本代表の平井伯昌コーチから「才能はピカイチ」と認められた逸材です。中学生になると日本のトップ選手が集う合宿にも参加するなど、将来を期待された選手でした。しかしその後は記録を伸ばせず、壁に突き当たります。世界選手権にようやく出場できたのは、大学を卒業した2017年。しかも好不調の波が大きく、アジア大会ではメダルを獲れても、世界の舞台ではなかなか頂点をつかめませんでした。昨年の東京オリンピックにも100m平泳ぎで出場しましたが、自己ベストより1秒以上遅いタイムで、予選19位の敗退と悔しい結果に終わりました。
 そんな青木選手が、27歳で挑んだ今年3月の日本代表選考会でついに覚醒し大躍進を見せます。まずは3月2日、100m平泳ぎで日本記録を0秒69更新する、1分5秒19の好タイムで優勝。もし東京オリンピックでこの記録を出していれば、銀メダル相当のタイムでした。青木選手は翌日の50m平泳ぎでも日本記録を0秒37更新する30秒27で優勝。2日連続の日本新記録という快挙とともに、世界選手権の代表にも内定しました。平井コーチから「今が一番の成長期」と言われる遅咲きの27歳が6月の世界選手権で目指すのは、もちろん悲願の表彰台です。



【競泳  水沼尚輝選手】

 これまでオリンピック・世界選手権の競泳で、日本人男子メダリストがいない種目のひとつが「100mバタフライ」です。この種目で、いまメダル獲得を期待されているのが、水沼選手。その経歴は、日本代表選手の中では極めて異例です。中学・高校時代は際立った実績は残せず、強豪大学やスイミングクラブに所属して世界を目指す選手が多い中、水沼選手が決めた進路は新潟医療福祉大学への進学でした。その大学では、練習内容を「量」から「質」へ転換。最先端のトレーニングに果敢に挑んで記録を伸ばし、日本のトップスイマーへと成長していったのです。卒業後は大学の職員となり、新潟を拠点に実力を磨いた結果、東京オリンピック代表にも選出。地方から世界の舞台への挑戦権をつかんだのはこれまでの競泳界の常識を覆す快挙でした。
 東京オリンピックの100mバタフライでは、全体の10位で準決勝敗退した水沼選手。しかし今年3月、世界選手権の100mバタフライ代表選考会で水沼選手は世間を驚かせます。予選を7位で通過し、決勝は記録が出にくいといわれる、大外1レーンで泳ぐことになった水沼選手。それでも、逆に自分の泳ぎに集中できたと言います。レースは前半3位でターン。得意の後半、プール半ばで抜け出し1位でフィニッシュ。13年間破られなかった従来の日本記録を0秒14更新する50秒86で優勝し、世界選手権代表内定も勝ち取りました。

  

来週のスポーツ伝説は……

5/2(月) プロ野球 万波中正選手
5/3(火) プロ野球 松川虎生選手  
5/4(水) プロ野球 高部瑛斗選手
5/5(木) 大相撲  若隆景渥関
5/6(金) 大相撲  霧馬山鐵雄関

お楽しみに!!
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