【プロ野球 真中満監督】
大混戦を制したのは、昨シーズン最下位のヤクルト・スワローズ。14年ぶり7度目のリーグ優勝は、まさにミラクル。12球団最年少、44歳の新人・真中監督の指導力が光りました。10月2日、ホームの神宮球場の夜空に舞った7回の胴上げは、野球史に残る名シーンとなりました。
昨年オフに監督に就任する際、フロントに出した条件はひとつ。選手時代からのチームメイトで指導者としても組んできた、当時の三木肇2軍内野守備走塁コーチを参謀として迎えることでした。真中監督がテーマとしたのは、『自分で考えて動く』。選手を統率するためにはどうしたらいいかを考え抜いた末に出した結論は、「何もしないことが優勝の極意だった」からでした。打撃は杉村コーチ、作戦面は三木コーチ、投手のことは高津コーチと、分業制を確立。自身を一歩引く立場に置くことで、コーチと選手をやりやすくしているのだそうです。
【プロ野球 島田誠選手】
島田選手は、小柄な体を大きく見せ、1970年代後半から80年代、日本ハム・ファイターズのリードオフマンとして活躍。打撃・守備はもちろんのこと、走塁でもファンを魅了し、“スピードスター”阪急ブレーブス・福本豊選手の最大のライバルの1人でもありました。
伝説のハイライトは、1979年6月5日。後楽園球場で行われた西武戦。3回、島田選手はフォアボールで出塁すると、さっそく2塁への盗塁に成功。3球目には3塁へ。この時のマウンドは、ルーキー森繁和投手と、プロ26年目の大ベテラン野村克也選手でした。島田選手は絶妙なタイミングのスタートで、見事ホームスチールを成功。1イニングで二盗・三盗・ホームスチールの3つの盗塁を決めることを、パーフェクト・スチールといいます。この快挙に野村選手は、「こんな経験初めてや。恥をかいた」とぼやきました。
【プロ野球 遠井吾郎選手】
阪神タイガースで活躍した遠井選手は、恰幅のいい体格や温厚な人柄から“仏のゴローちゃん”として親しまれました。最大の伝説は1970年7月21日、広島市民球場でのオールスター第3戦。遠井選手は4回代打で登場すると、ライト線の鋭いヒットを放ちます。この時、ロッテのアルトマン選手が転倒するアクシデントがあり、シングルヒットのはずが3点ランニングホームランに。ホームに戻った時には、「足がもつれて頭がクラクラだった」という遠井選手。その姿に、ベンチの巨人・川上監督や出迎えた選手たちは笑い転げたといいます。さらにこの日は、6回にも逆転タイムリーを放ってMVPに輝くという、遠井選手にとってまさに夢の球宴となりました。
阪急一筋に実働20年。これは桧山進次郎選手に更新されるまで、最年長記録でした。
【ラグビー 五郎丸歩選手】
日本代表が世界を驚かせた、ラグビー・ワールドカップ・イングランド大会、日本対南アフリカ戦。奇跡が起きにくいといわれるラグビーで、世界ランク13位の日本が、3位の南アフリカを破りました。この快挙の原動力となった五郎丸選手は、34点中ひとりで24得点。1次リーグ4試合での58得点は、出場20チームの全選手の中で2位。トップのスコットランドのレイドロウ選手にわずか2点差でした。
2002年から日本ラグビー協会は、国際的に通用する選手の育成を目指して『エリートアカデミー制度』を導入。このプロジェクトで最初に選ばれた10人の中の1人が、五郎丸選手でした。早稲田大学時代は1年生の時からレギュラーに抜擢され、3度の大学日本一を経験。卒業後は社会人のヤマハ発動機にプロ契約で入社しますが、2年目で会社のプロ契約が廃止に。他の企業からの移籍オファーも多数あったそうですが、結局社員として再スタートを切りました。チームの縮小など苦しい状況はありつつも、このチームでの優勝が目標です。
【ラグビー リーチ・マイケル選手】
ラグビー日本代表で強烈なキャプテンシーを発揮したリーチ選手。ワールドカップの南ア戦で、日本は強豪相手に大善戦。29対32で迎えた試合終了直前、日本はペナルティーキックのチャンスを得ました。誰もが引き分けを狙うと思っていたにもかかわらず、キャプテンのリーチ選手は「トライで勝ちに行く」と、スクラムを選択。ヘスケス選手が左隅に飛び込む、奇跡の逆転トライを演出したのです。
就任時からその才能を高く買っていたジョーンズヘッドコーチから、正式にキャプテンの依頼があったのは去年の4月。でもリーチ選手は即答を避けました。「やるべきではないと感じた。ぼくは日本で生まれたわけではない。もしキャプテンになったら、ラグビーファンが減ってしまうと思ったからです」と、リーチ選手。でもリーチ選手は、高校・大学・社会人と、日本の強化システムで才能を開花させました。現在は母国ニュージーランドのスーパーラグビーのチーム・チーフスに所属し、世界最強のニュージーランド代表・オールブラックスに選出されても不思議はないといわれたワールドクラスのトップ選手。しかし2013年に日本国籍を取得しました。
来週のスポーツ伝説は……
11月 9日(月) プロ野球 石川雅規投手
11月10日(火) プロ野球 池山隆寛選手
11月11日(水) プロ野球 岡林洋一投手
11月12日(木) プロ野球 秋山翔吾選手
11月13日(金) 大リーグ イチロー選手
以上の5選手をご紹介します。