• 2018年12月14日

    社長インタビューを終えて

     今週のOK!Cozy Up!は、『激動の平成にスクープアップ!』と題して、経済界の個性溢れる社長たちのインタビューをお送りしました。月曜と火曜がジャパネットたかた創業者の高田明さん。水曜と木曜が崎陽軒社長の野並直文さん。そして金曜日が築地銀だこを展開するホットランドの社長、佐瀬守男さんです。いずれも非常に興味深いお話を聞くことができました。この様子は、radikoタイムフリー、ポッドキャスト、YouTubeで配信しています。詳しくは番組ホームページをご覧ください。


     高田さんや佐瀬さんには叩き上げの経営者の凄みを感じましたね。お二人とも物腰も柔らかで話し方も丁寧なのですが、言葉の力強さ、そしてふとした間に「お前次なに聞いてくるんだ?ちゃんとした質問しろよ?」と言うかのようなオーラを出すんですね。ただ私が気圧されていただけなのかもしれませんが・・・。
     また、野並さんは崎陽軒の三代目。こちらは先代、先々代が守ってきた看板を受け継ぎ、守っていくという別の形のプレッシャーが重く肩にのしかかっていました。ある意味、家業なのですから仕事への理解と情熱は誰よりもある。それをどうやって社内に浸透させるのか?特に食品という、直接お客様の口に入るものを扱っている以上、品質だけでなくその理念もしっかりと従業員に浸透させなくてはモラルハザードが起きてしまいます。そこで作り出した経営理念は、以外にも否定形から入るというものでした。


     ナショナルブランドとして全国展開するのではなく、あえてローカルブランドに徹する。広げるのは簡単でも、我慢してそこに居続けるというのがどれ程大変なことか。安易に一時の利益拡大に走らずに地に足のついた経営をするというのは、オーナー企業の強みの1つであるのかもしれません。

     この経営理念の浸透は、経営トップにとって共通の課題。高田さんともインタビュー中にそんな話題になりましたが、横にいたジャパネットの社員さんに「言えるか?」と抜き打ちテストをいきなり始めてしまいました。高田さんは、
    「どんな立派な理念があっても、従業員に浸透しなかったら意味がない。こういったものはすぐに形骸化してしまう。書くだけではダメ」
    と、朝礼の時やこうした抜き打ちテストなど、折に触れて社員が経営理念に触れる仕組みを作ることに腐心したそうです。このことは、今社長をされているJリーグのVファーレン長崎でも続けているといいます。あなたは、自分の会社の経営理念、言えますか?私は・・・、全くダメですね(笑)

     さて、今回の社長インタビューは消費者にもっとも近い分野の企業トップが揃いました。その中でも食品はまさに生活に密着するもの。ということで、消費増税の影響をどう見るかも聞いてみたんですね。
     すると、実は正反対の反応が返ってきました。築地銀だこの佐瀬社長は「参った」。一方、崎陽軒の野並社長は「今回はさほど影響ない」。なぜこの違いが出たのか、そこには軽減税率の扱いが絡んでいました。崎陽軒はそのビジネスモデルからして、持ち帰りオンリーの業態です。ですから、無条件で軽減税率適用となり、値段を変える必要はありません。一方、銀だこの方はイートインなのかテイクアウトなのか、どちらの需要も大きいだけにどう判断していいものか非常に迷うところ。この辺の判断の複雑さは軽減税率の議論が始まった頃からこのブログや番組で議論していますが、現場の苦労はことほど左様に尋常なものではありません。そして、小売り大手各社はこんな、ある種乱暴な対応を検討しているようです。

    <2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。>

     外食の10%税率の時の税込み価格に内食の方も合わせるということだそうです。これならきちんと消費税を転嫁できるので企業は損をせずに済みますが、消費者からすると消費税アップで苦しい上に、持ち帰りで少しでも負担を軽くしようという努力も許されなくなるということになります。いくら現場のオペレーションが煩雑になるとはいえ、そもそもこんなことが可能なのは大手だけでしょう。
     私はもともと、消費税増税そのものがこのタイミングではおかしいと思っていますし、その負担軽減策としての軽減税率は本来救済すべき人々以外の富裕層にまで恩恵が及ぶ時点で愚策であると思っています。が、この大手小売りの軽減税率対策は、現場従業員の負担軽減を差し引いても、軽減税率をも上回る天下の大愚策といっても過言ではないと考えます。
    というのも、これ、消費増税で経済が冷え込み、軽減税率で財務省もちょっと税収を損するのですが、その損をした分が消費者に帰るならまだしも、企業が自分達の利益にしてしまおうということですからね。
     「一将功成りて万骨枯る」ではありませんが、企業のみが利益を維持拡大させ、その分経済全体が冷え込む上に大して財政再建に資することもない。
     まぁ、私企業の判断ですから、我々にはそれを止めるすべを持ち合わせていませんが、企業も社会の一員である以上、その責任というか、自分達が良ければいいの部分最適ではなく、マクロ的な全体最適から判断をすることは出来ないのでしょうか?今回インタビューした3人の社長は揃って、企業は社会の一員であることを強調していました。

     最後に、松下幸之助の考えた「企業の社会的責任」という3つのポイントを紹介して本稿を閉じたいと思います。

    <1.企業の本来の事業を通じて、社会生活の向上、人びとの幸せに貢献していくこと。
    2.その事業活動から適正な利益を生み出し、それをいろいろなかたちで国家社会に還元していくこと。
    3.そうした企業の活動の過程が、社会と調和したものでなくてはならないこと。>
  • 2018年12月06日

    国際航空宇宙展を取材して

     先週の水曜日、東京ビッグサイトで行われた国際航空宇宙展に行ってきました。それはお前の趣味であって取材ではないだろうという声も聞こえてきそうですが、しかし行ってみるといろいろ勉強になりました。


     国内外の航空・宇宙産業各社が出展し、3日間で延べ2万7千人あまりを動員した今回の展示会。航空機からロケット、果ては無人機や衛星に至るまで様々な先端技術を各社が披露していました。素人の私がざっと見て何がわかるんだという話ではあるのですが、印象としては無人化、自動化とアプリ化の流れなのかなというところ。残念ながら日本は戦後GHQが航空技術の研究を禁止されていたのが尾を引いたこともあり、日本企業は一部を除き完成機を製造していません。それゆえ、今回の展示会でも個々の部品をPRするものが多く、なかなか全体のコンセプトを展示するのは難しかったようです。一方でボーイングやエアバスといたった欧米各社は自分たちの機材の紹介にとどまらず、それがどう世界を変えるのか、生活を変えるのかという全体のコンセプトの提案を行っていて、ん~、ここにも戦後レジームが残っているのか...と少し暗い気持ちになりました。

     そして、この全体コンセプトの中心にいたのが無人機です。たとえば、アメリカの無人機メーカー、ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ社(GA-ASI)は無人機とそれを操縦する一連のシステムをパッケージにした遠隔操縦航空機(RPA)システムを紹介していました。
     その名も、ガーディアン。
     これは民間用途向け、民間空域を飛び、レーダー、カメラなどの装着が可能。アメリカの税関・国境警備局で現在運用されているそうで、360度海洋レーダーとカメラの組み合わせで不審船の特定などの船舶運航管理、捜索・救助、海図作成、水産資源管理、災害監視などリアルタイムの状況認識が必要な場面で威力を発揮しています。驚くべきはその航続時間で、何と48時間。人間が乗らないとそんなに長い時間飛んでいられるのかぁと驚きますが、これであれば現在は有人機が飛んでいる尖閣周辺の警戒監視もずいぶん楽になります。那覇の海上自衛隊のP3-C部隊を取材したことがありますが、その精強さに驚くとの同時に、人繰りの面でかなり現場に負担がかかっているのも目の当たりにしました。

    ガーディアン.jpg
    長崎県壱岐で実証実験を行ったガーディアン

     いろいろお話を伺うと、このガーディアンにはポッドと呼ばれる組み込みキットを乗せ換えることができ、そのポッドのバリエーションの中にはソナーもあるそうです。今はソナーで収集した潜水艦や艦船のスクリュー音を上空を飛ぶP3-Cにいるソナー員たちで聞いているわけですが、この音をリアルタイムで地上で聞くことが可能。さらに音声がデータとしてくるわけですから、音声の波形をAIで照合してどの船なのか、その船が今までどういった航跡を辿っているのか、この船とコンタクトをしたかもしれない船はどんな船なのかといった副次的なデータまでズラっと並べて検索することが可能なのだそうです。今、東シナ海から日本海では北朝鮮船舶と他国船舶の間での積み荷のやり取り、いわゆる"瀬取り"が問題になっています。だいたい、船舶の所属国がカムフラージュされているので捜査が非常にやりづらいといわれていますが、こうした複雑なカムフラージュをあっという間に丸裸に出来るかもしれません。

     さらに、48時間飛び続けられるということで、たとえば災害時に問題になる無線の周波数の問題も解決できるそうです。警察・消防・自衛隊、さらに自治体で各々違う周波数の無線を使っていて互換性がないので、緊急時に情報のやり取りがやりづらいというのは前から指摘されてきました。共通の周波数を設定して情報のやり取りを一元化するなどの対策も現場では取られてきましたが、このガーディアンに専用ポッドを取り付けることで、緊急の空中無線中継器としてそれぞれの無線機をいつも通りに使いながら、それを上空で各々の周波数に変換して瞬時に再配信。リアルタイムでの情報共有を可能にすることができるそうです。

    ガーディアンコクピット2.JPG
    無人機ガーディアンのコクピット。有人機と同じようなインターフェイスになっている。

     こうして、ポッドを付けたり降ろしたりすることで一機で様々な用途に対応可能というのが、私の感じたアプリ化の具体的な事例です。このGA-ASI社のアジア太平洋担当国際戦略開発リージョナル・ディレクターのケネス・ラビング氏も説明の中で、
    「このガーディアンはトラックである」
    と表現していました。トラック、つまり積み替え可能なプラットフォームであり、使い方はメーカーで定義することなく様々なポッドを開発して自由にカスタマイズしてほしいということです。

     そして、そのポッドの中には兵器に類するものもあり、有事の際にはミサイルや機関砲といった武器のポッドを装着して出撃することが"理論上は"可能であるとの説明も受けました。アメリカでは米軍の知見も織り込みながら開発をしているので、そうした互換性があるのもうなづけるところです。

     こうした、ある意味の"軍民共用"のプラットフォームは何もGA-ASIに限ったものではありません。例えばヨーロッパの航空機メーカーエアバスのヘリコプターについても説明を受けたのですが、最新鋭のヘリコプターは30分ほどの換装時間で空対地ミサイルや機関砲などを乗せ換えることが可能とのことです。やはり平時は警戒監視等に使い、有事の際には換装して対応する。各国で予算も限られる中、そうした有事平時共用の発想というのは今後のトレンドになっていくのでしょう。

    エアバスヘリ.JPG

     さて、こうした今後のトレンドの中にあって、日本だけは独特の"壁"にぶち当たります。戦後一貫して問題となってきた、憲法9条に代表される"戦力"の定義と兵器と民生品を分けようとする姿勢です。縷々説明してきたように、かつての民生品と軍用品の仕様が全く異なっていた時代には考えられなかったような共用が今は可能となっています。その時、その装備は軍用品となって規制を受けるのか?災害対応の民生品なのか?平時は災害対応として使う無人機も、換装すれば敵基地攻撃能力を持つ可能性があるから配備はできません!というような、世界の潮流から2周も3周も遅れた議論をまた繰り返すのでしょうか?敵基地攻撃能力を疑われるから共用の研究はできません!ということになるのでしょうか?いい加減、法律に現場が合わせるのではなく、現場を把握したうえで法律を変える方向に議論を持っていかなくては、取り返しがつかないほど乗り遅れてしまいかねません。

     今回の国際航空宇宙展には中国企業は見かけませんでした。が、この分野、最もカネをかけて研究しているのは中国です。その国と、我が国は対峙しているということを忘れてはいけないと思います。
  • 2018年11月26日

    世論調査の読み方

     週明けの月曜日は毎週のように世論調査の結果が出てきます。各社月に一度を目安に世論調査をしていますが、スケジュールがかぶるとインパクトが薄れるということで上手いことズラしています。従って、ほとんど毎週世論調査が発表され、それがニュースになるというわけです。今週は、読売と日経が世論調査の結果を発表しました。

    <読売新聞社は23~25日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は53%で、前回10月26~28日調査の49%から4ポイント上昇した。不支持率は36%(前回41%)。>

    <日本経済新聞社とテレビ東京による23~25日の世論調査で、安倍内閣の支持率は51%となった。10月の前回調査では48%だった。不支持率は4ポイント下がり38%だった。安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領と1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速すると合意したことについては「評価する」が67%で「評価しない」は21%にとどまった。>

     両社ともにこの3連休、23日~25日に調査しています。両社とも、18歳以上の男女に対し、RDD方式と呼ばれるコンピューターで無作為に発生させた番号に電話を掛けるという方式。この世論調査の手法は、かつては固定電話にしか掛けなかったので世論を反映していないのではないかと言う批判が出ていましたが、近年は携帯電話も含めて掛けています。同じ手法で同じタイミング、さらに同じような質問をしていますから、結果もまぁ当然似通ったものになりますよね。内閣支持率や日ロ交渉についての評価などは1、2%の違いはあれど同じような評価となっています。

     そんな中ただ一つ正反対の結果が出たのが、外国人労働者の受け入れ拡大でした。日経は見出しを立ててこのネタで記事を一本書いています。

    <日本経済新聞社の23~25日の世論調査で、人手不足が深刻な分野に限って外国人労働者を5年間で最大34万5千人受け入れる政府の方針について聞いたところ、賛成は41%にとどまった。反対は47%だった。>

     一方の読売は記事化はされていませんが、本紙には調査項目を載せているので引き写しますと、
    <◆政府は、これまで医師や研究者など、専門的な技能を持つ人に限ってきた外国人労働者の受け入れを、単純な労働に就く人にも拡大する法案を、今の国会に提出しています。あなたは、外国人労働者の受け入れ拡大に、賛成ですか、反対ですか。
    ・賛成 48 ・反対 42 答えない10>
    ※11月26日付読売新聞東京最終版10面 本社全国世論調査結果より

     日経は昔から調査結果一覧を載せませんので記事中から類推するしかないのですが、どうやら「人手不足が深刻な分野に限って外国人労働者を5年間で最大34万5千人受け入れる政府の方針について聞いたところ」と出ていますから、具体的な数字を挙げて質問をしたのでしょう。すると、賛成41%に対して反対47%という回答がありました。たしかに数字を見せられると、しかもそこそこ規模の大きな市と同じレベルの数となると脅威を感じます。反対が多くなるのもわかります。
     対する読売は、上記調査項目の引き写しの通り、今もすでに医師、研究者が日本に入ってきているんです。これにもう少し門戸を開くのが今回の法案なんですよ~、さて皆さんどうですか?という聞き方。こうなると、なるほどすでに入ってきているのがちょっと増えるだけかと思って賛成が多くなるかもしれません。結果、賛成48%、反対42%という数字になりました。

     同じタイミングで同じ手法でも、質問の仕方が少し違うだけでここまで結果が異なるのだということをまざまざと見せつけられる思いです。今回読売は見出しを立てて記事にしたわけではありませんでしたが、これ、読売の結果は「外国人労働者受け入れ拡大、賛成多数!」「ほぼ半数が賛成!」といった見出しを立てることは結果だけを見れば可能です。見出しに引っ張られて、世論は賛成なのか...と思う人が出てもおかしくないわけです。
     逆に、思い切り否定的な聞き方、例えば「外国人労働者が増えると日本人労働者の賃金も上がらなくなると言われています。また、市区町村のサービスが外国人労働者向けに偏り、サービスが低下する恐れがあるともいわれています。今あるコミュニティが壊れる可能性も指摘されています。あなたは、外国人労働者の受け入れ拡大を狙いとする入管難民法改正案に賛成ですか?反対ですか?」と聞けば、おそらく6割7割は反対と答えるでしょう。

     ことほど左様に、世論調査も聞き方一つで結果が変わるということです。調査そのものは規模の大きな組織でないと出来ないことですし、価値があるとは思います。それだけに、出し方の問題が大きい。各社だいぶ改善されてきましたが、質問項目をすべて明らかにすることが重要だと思います。できれば、興味を持った人たちが各々分析できるように、個人を特定できない形にした生データをウェブ上に上げてくれるといいのですが、ある意味このデータも会社の財産のようなものですから難しいのでしょうね。
     各社10個程度の質問項目の中から記事として特出ししてくるわけですが、この選び方にもニューズバリューや社論などへの"忖度"があるわけですから注意が必要です。たとえば、こんな記事。

    <読売新聞社の全国世論調査で、来年10月の消費税率引き上げに伴うキャッシュレス決済のポイント還元制度に「反対」は62%に上り、「賛成」の29%を上回った。>

     わざわざ年代別の賛成反対の割合を棒グラフで示すほどの気合の入れ方で報じているわけですが、私が感じたのはその唐突感。普通であれば、まず消費税増税そのものへの賛否があって、その上で負担軽減の手法を聞くのがセオリーってもんですが、この記事は見出しも何も消費税増税はもう決まったという体で書かれています。増税そのものへの賛否は、ウェブ上ではお金を払わないと見られない部分、記事の最後にちょろっと書かれているだけです。ちなみにその結果と言うと、

    <◆消費税率は、来年10月に、8%から10%への引き上げが予定されています。予定通り、10%に引き上げることに、賛成ですか、反対ですか。
    ・賛成 44 ・反対 51 ・答えない 5>

     なるほど、過半数が反対という結果だったので特出しは出来ないということになったんですね。10月の中旬に消費増税総理決断と打ってこの方、負担軽減策などを書き続けることで増税そのものは不可避であるとの刷り込みを図ってきましたが、結果は前回10月末の調査と変わらず反対が過半数。世論は冷静に足元の経済を見て消費増税の痛みを認識しているのではないでしょうか?私には、ここもニュースの一つと感じるのですが...。
  • 2018年11月19日

    平成の財政とは?

     来年4月一杯をもって平成が終わるということで、様々な分野で振り返りが行われています。朝の番組OK!Cozy Up!でも、先月のスペシャルウィークに"激動の平成にスクープアップ!"と題して特集しました。前回は政治に関わる方々にインタビューしましたが、次回がもしあればそれ以外の各界の大物にも平成を振り返ってお話を伺いたいと思っています。

     さて、メディアの振り返りの取り組みだけでなく、政府内の機関でも様々な振り返りの動きがあります。今朝の読売新聞の一面には、財務省の諮問機関の振り返りについて報じています。

    <財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、2019年度予算編成に向け、20日に麻生財務相に提出する建議(提言)の原案が判明した。国の借金が大きく膨張した平成30年間の財政運営に対し「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める圧力に抗あらがえなかった時代」と厳しく総括している。こうした状況から脱却するため、高齢者の医療費負担の引き上げなどの歳出抑制を求めた。>

     財政制度等審議会は財務大臣の諮問機関で、企業経営者や学識経験者たちで構成され、毎年春と秋の2回"財政運営のあるべき姿"を提言していると、記事中では説明されています。ま、あるべき姿と言いますが、元財務官僚の高橋洋一さんや、かつてこの審議会の臨時委員をされていた長谷川幸洋さんは、財務省のご意向通りの提言が出され、財務省のご意向通りの報道になるということをいろいろな場で暴露されています。今回の建議原案も同じものと考えて差し支えないでしょう。とにかく財政の膨張を抑えにかかる財務省、その30年間の総括としては「さもありなん」というところですが、「政治に押しまくられて財政拡大に押し切られた」という被害者面をしているところに疑問を感じます。財務省、かつての大蔵省という省庁の突き詰めた役割としては勘定方ですから、日本国全体の経済のことなど考えずに収支が黒字にさえなればいいということなのかもしれません。が、その前にすべて公務員というものは「全体の奉仕者」でありますから(憲法15条)、日本国民全体の幸福を最大化するためのツールとして、経済全体を見ることだって仕事の一つのはずでしょう。
     では、この30年でこの国がどれだけ成長できたのか、GDP成長率の動きを見てみますと...、


     この中の図表1-1-4を見ると、平成2年に8.4%成長をしてからあれよあれよという間に成長率は転げ落ちていき、3年後の平成5年度にはマイナス成長にまで落ち込んでしまいました。同じ「抗えなかった時代」であれば、"デフレの圧力に"抗えなかった時代としなくてはおかしいでしょう。それが、なぜ"負担先送り圧力に"抗えなかった時代なのか...。国の財政を家計に見立て、とにかく財布の中の赤字を減らせば他がどうなってもいいという緊縮ポリシーを如実に表していますよね。

     どうせ家計に見立てるのならば、たとえば雨漏り続き、泥棒に入られ放題の住まいに予算を手当てして家を強くしようとか、稼ぎ頭のお父さんやこれから面倒を見てくれる子どもたちにより良い教育を施すのにお金を使ったりするとか、お金の使い方にはいろいろあるはずなのに、とにかくケチケチ家計礼賛ばかり。ウェブ記事には載せられていなかったので紙面から転記しますが、提言案のポイントとして5つが挙げられていました。

    <▽平成30年間の財政運営を厳しく総括。将来世代に負担を先送りと指摘
    ▽社会保障制度の改革を目指し、「年齢ではなく能力に応じた負担」に転換
    ▽後期高齢者の窓口負担の引き上げや、介護の利用者負担の見直し
    ▽国立大に支給される運営費交付金の配分見直し
    ▽防衛装備品の調達は、今後5年間で計1兆円以上、効率化が必要>

     教育費や防衛費も、とにかく減らせ減らせのケチケチ母さんですねぇ。
     そもそも一般的な家計と違い、この"お家"は自分でお金を刷れるわけですから破産はほぼあり得ないとか、借金はあるかもしれないがそれに匹敵するぐらい資産もあるから、借金が増えたからといってすぐに破産することはあり得ないとかいろいろ矛盾があるので、家計に例えるのは私は大嫌いなのです。しかしながら、メディアはそうした矛盾まで説明せずに安易にこの家計のたとえ話を使います。その方が批判が出来ないからです。
     ドラマで連帯保証人になったばかりに人生が真っ暗になってしまったとか、借金でクビが回らなくなり家族みんな路頭に迷うことになったとか、「借金は悪!」というのは日本人に刷り込まれてしまっています。それを下地に、「国だって同じですよ!借金は悪!」といえば、誰も反対できない錦の御旗のように見えてしまいます。そして、「この悪い借金を残念ながらこの国は重ねてしまいました。せめて、我々の世代で完済しましょう。借金の負担を次の世代に引き継ぐなんてやめましょう」と言えば、特に孫を持つような世代には琴線に響きます。さらに、「借金を返すために増税をしますが、少し我慢してください。次の世代のためです」なんて言われれば、なるほどそうか、我慢するのは日本人の美徳だよななんて受け入れてしまうわけですね。
     ここで完全に忘れ去られているのが、増税でなくとも収入を増やすことが出来るという点です。先ほどの家計のたとえ話で言えば、なぜ家全体の年収を増やすことを考えないのかという点。お父さんの給料が2倍になれば、やり繰りは相当ラクになりますよね。「国だって同じですよ!」景気を良くして税収を増やせば、財政の自由度だって上がるはずなのです。

     ところが、そういったことを主張すると、「そんなバクチみたいなこと、国がやるのは危険すぎます!」という批判が必ずやってきます。たしかに、平成の30年のほとんどをデフレの中で過ごした日本人にとって、給料が劇的に上がるというのは経験の少ないことかもしれません。それゆえ、「たしかにウチの給料も上がらないんだから国だって同じだよなぁ」となり、堅実に借金を返すなら増税かぁと渋々ながら増税に賛成する向きも出てきますね。

     そこで考えなければならないのが、先ほども挙げた憲法15条です。財務省とて「全体の奉仕者」なんですから、まずは30年間も給料が上がらない日本経済にしてしまった自分たちの仕事ぶりに対して真摯で深い謝罪と反省こそ必要なのではないでしょうか?財政審も、その役割は財務大臣の諮問機関なのですから、「全体の奉仕者」たる財務官僚の仕事ぶりに対してきちんとチェックしなくてはいけないはず。評論家然として「負担先送り圧力に抗えなかった」なんて被害者面して財務官僚たちにおべんちゃらを言っている場合ではありません。
    平成30年間の経済成長がなぜこんなに低調だったのか、私は財政と金融が噛み合わなかったことが大きな原因ではないかと思っていますが、有識者の集まりなんでしょうから納得のいく総括を出してほしいと思います。
  • 2018年11月15日

    影響は、軽微?

     日ロ首脳会談や入管難民法改正案の審議といった大きなニュースが目白押しの水曜日(14日)、ひっそりと今年7月~9月期のGDP速報値が発表されました。


     翌日の紙面では、大きなニュースに紙幅を割かれたためかあまり大きく報じられていませんが、個人的にはこれは非常に重大なニュースであろうと思っています。というか、放送でも言いましたが、各項目でマイナスが並び、惨憺たる数字と感じたのです。では、各紙はどう報じたかというと...。

    <内閣府が14日発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%減だった。年率換算では1.2%減。1~3月期以来、2四半期ぶりのマイナスとなった。全国で相次いだ自然災害の影響で個人消費が伸びなかった。輸出も大幅なマイナスとなった。>

    <内閣府が14日発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.3%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1.2%減となり、2四半期ぶりにマイナス成長に転じた。西日本豪雨や北海道地震などの災害が響いて個人消費が振るわず、訪日外国人観光客の落ち込みも重なって輸出が減少。企業の設備投資も停滞した。>

     各紙、揃って災害の影響で落ち込んだという表現を使っています。おそらく、そういうレクチャーを受けてそのまま記事化していると思うのですが、数字をしっかりと見るとちょっと疑問を感じます。
     たしかに7月から9月は台風や豪雨災害、さらに北海道胆振東部地震が重なり、経済にもマイナスの影響があったことは否めません。海外経済も、アメリカが中国に対して制裁関税を発動させた時期にも重なりますから、外需の下押しもあって厳しい数字が出たこともたしかにその通りです。とはいえ、それだけで説明できるのか?
     全体としては、四半期でマイナス0.3%成長(季節調整済み、実質)、年率換算でマイナス1.2%成長でしたが、各要素に分解して、それぞれが全体の数字に対してどれだけ影響を及ぼしたのかを示す「寄与度」も同じ概要の中には記載があります。それを見ると、全体でマイナス0.3%のうち、ざっと民間需要がマイナス0.2%、公的需要がマイナス0.1%、輸出入が差し引きでマイナス0.1%となっています。記事では個人消費の不振と輸出の減少ばかりを書いていますが、官公需もしっかりと(?)足を引っ張っているのにあまり言及がありません。
     そして、この公的需要をさらに分解すると、政府最終消費支出がプラスなのに対し、インフラなどへの財政出動を表す公的固定資本形成がマイナスです。この公的固定資本形成のマイナスは深刻で、ここ1年以上プラスになった試しがありません。2017年10月~12月期から四半期ごとに前期比の数字を見ていくと、マイナス2.2→マイナス0.8→マイナス0.5→マイナス0.3、そして今期のマイナス1.9。(いずれも季節調整済みの実質成長率前期比)
     何と一度もプラス圏に顔を出すことなく、常にGDP統計の足を引っ張り続けているのです。弱い弱いと言われ、今回のマイナス成長の主犯のように各紙から言われている個人消費だって、プラスとマイナスを行ったり来たりしているにも関わらず、公共投資は常にマイナス。何という緊縮財政でしょうか。

     加えて深刻なのが、物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターの値が、ここ1年ゼロより下に沈み込んでいる点です。一般に、物価の動きというと消費者物価指数(CPI)の値が注目されます。日銀の物価目標もこのCPIの値が生鮮食品を除く総合で2%となっていますが、直近の値では総合で1.2%、生鮮食品を除く総合が1.0%、生鮮食品とエネルギー価格を除いた総合が0.4%でした。
     一方、GDPデフレーターの動きは四半期ごととはいえ、より厳しくなっています。同じく2017年10月~12月期から四半期ごとの数字を列挙すると、0.3→0.0→マイナス0.2→マイナス0.2、そして今期が0.0。(いずれも季節調整済みの前期比)
     この数字だけで判断することはできませんが、デフレ脱却どころか良く言ってもデフレへ逆戻り寸前まで来ているのではないでしょうか?たしかに、流通関係者を取材すると、
    「最近、ここ1年ほどは客単価が下がり続けている。まだ量を売ることで数字を作っているが、決して楽観視できない」
    と、このところの変化を話してくれました。客単価が下がっているということは、取扱商品全体として値下げ圧力が強く働いているということ。GDPデフレーターの動きと符合しますね。

     そして、この地合いで来年の10月には消費税増税ですか?このままでは、失われた20年が失われた30年になってしまいます。今期のGDP不振の原因を災害に求めることが、全体のかじ取りを誤る気がしてなりません。杞憂に終わればいいのですが...。
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
(2012年1月9日~2018年3月29日)

「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」
(2012年4月7日~2017年9月30日)

・「東日本大震災から7年・・・本気の備えはできていますか」
(2018年3月11日)

・「ザ・ボイススペシャル 福島県の農業は今」
(2018年1月2日)

・「ザ・ボイススペシャル 密着・不発弾処理隊 今なお眠る2200トンとの戦い」
(2014年12月30日)

・「ザ・ボイススペシャル 辺野古の声」
(2013年12月30日)

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