• 2016年12月05日

    五輪バレー横浜アリーナ案の実現性

     このところイタリアの改憲に関する国民投票やオーストリアの大統領再選挙、韓国の大統領弾劾案などなど、海外からのニュースだらけになってしまっています。そんな中でテレビ各社が久々に国内ニュースで大々的に扱ったのが、2020年東京オリンピック・パラリンピックの会場問題。余りにお金がかかり過ぎるとして小池都知事が会場の見直しを提案し、すったもんだの末、東京都・組織委員会・政府・IOC(国際オリンピック委員会)の4者協議が開かれ、テレビ各社もその模様を生中継して大きく報じました。

    『五輪会場 ボート・カヌーは「海の森」 バレーボール先送り』(11月29日 NHK)https://goo.gl/1XRnAw
    <東京オリンピック・パラリンピックの経費削減を目指す東京都、組織委員会、政府、IOC=国際オリンピック委員会の4者協議は、都が見直しを提案していた3つの競技会場について、ボート・カヌーの会場は「海の森水上競技場」を整備し、水泳会場は東京・江東区の「オリンピックアクアティクスセンター」を新設し、座席数を1万5000席に減らすことを決めました。一方、バレーボール会場については結論を先送りしました。>
    <バレーボールの会場は、東京・江東区に新設する「有明アリーナ」と、既存の「横浜アリーナ」が検討されてきましたが、小池知事が「あとしばらくお時間を頂戴したい。クリスマスまでに結論を出したい」と述べ、結論を先送りすることになりました。>

     そもそもは事前に作業部会がまとめたそれぞれの競技会場の評価の報告のみマスコミ公開という予定で、その後の議論は非公開とし、結論を公開するという予定だったものが、小池知事の強い主張によりすべて公開となりました。すべて公開というプレッシャーもあったのか、予定されていた2時間半から大きく短縮し、10分遅れて始まったのに1時間ほど早く終わりました。その後、このバレー会場問題で横浜アリーナ案について、地元自治体の横浜市が難色を示しているという報道がされています。

    『五輪バレー横浜案、厳しい情勢 「海の森」は仮設に』(12月1日 朝日新聞)https://goo.gl/o2p6aE
    <2020年東京五輪・パラリンピックのバレーボール会場の見直しで、横浜市が既存の「横浜アリーナ」の活用案について、競技団体の意向を重視することなどを記した文書を、東京都などに出していたことが30日、関係者への取材でわかった。>
    <都や大会組織委員会などに提出した。東京大会の成功に向けて「最大限協力する」としたうえで、「(横浜アリーナ周辺の)民有地を活用する際、所有者への交渉などは都や組織委で対応いただきたい」「国内外の競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の意向の一致が重要」などの配慮を求めている。>

     この文書の信ぴょう性については、一部に疑問だとする向きもあります。発出が市長でなく、宛先も都知事でないので怪文書の類であると言った報道もありますが、まだ正式に競技会場として要請されたわけでもない段階でお互いのトップの名前をもって文書を出せるのか?逆にこの段階でトップの名前で正式な文書を出す方が段取りとして疑問という見方もできるわけですね。

     さて、この横浜市からの文書で重要なのが「(横浜アリーナ周辺の)民有地を活用する際、所有者への交渉などは都や組織委で対応いただきたい」という一節。仮に横浜アリーナに決まったとしても、周辺の環境整備に責任は持てませんよと予防線を張っているわけです。というのも、会場そのものがオリンピック競技開催の条件を満たすとしても、それだけでオリンピックができるわけではありません。当たり前ですが、選手の送迎、世界中からやってくる観客をどう迎えるか、導線の確保などをしなくては円滑に競技を開催できません。
     そのあたりの環境整備について、組織委員会の関係者に話を聞くと、
    「現実的な問題としては、横浜アリーナは不可能」
    と断言しました。
     横浜アリーナの周辺はオフィス街で、かつ周りに練習したりアップしたりするような施設がありません。かつてサッカーワールドカップの決勝戦を開催した日産スタジアム(当時は横浜国際競技場)が近くにありますから実績があるじゃないか!と言われるかもしれませんが、日産スタジアムの場合は鶴見川の河川敷に広大な公園(新横浜公園)があり、その中に練習場などを設置することが可能でした。地図を見れば一目瞭然ですが、横浜アリーナ周辺にそうした施設はなく、ワールドカップの時と同じ新横浜公園や日産スタジアムの付属施設などにアップ場を設置した場合、アップ後にどう移動するのかという問題が発生します。その期間道路を封鎖し、一般車の乗り入れを禁止すればいいという意見もありますが、これについては、
    「アリーナの前を通る環状2号線は物流の大動脈。ここを含めて封鎖となれば、営業補償が一体いくらになるのか見当もつかない」
    とバッサリ。結局、客観的な条件を挙げると横浜アリーナ案は難しいことは自明なのですが、問題はこれがすでに政治問題化しているというところ。
    「小池知事のメンツを保つために政治的に強行することも考えられるけれど、そうなると現場へのしわ寄せは大変なものになる。そもそも、クリスマスまでに会場周辺の環境整備なんてメドを付けることすら無理な話だよ」
    小池都知事からのクリスマスプレゼントの中身に、現場は戦々恐々としているようです...。
  • 2016年12月01日

    流行語トップテンに感じる違和感

     今日夕方、年末の風物詩とも言われる「2016ユーキャン新語・流行語大賞」が発表されました。ノミネート30語の中から年間大賞として、プロ野球広島東洋カープの鈴木誠也選手が発した「神ってる」が選ばれ、対象は逃したものの世の中に流行した言葉ということでトップテンも同時に発表、授賞式が都内のホテルで行われました。そのトップテンの中に「保育園落ちた 日本死ね」という言葉が選ばれ、民進党衆議院議員の山尾志桜里さんが表彰されました。

    『山尾議員「保育園落ちた―」受賞に「待機児童問題を政治のど真ん中に移動できた」』(12月1日 スポーツ報知)https://goo.gl/xQzSko
    <表彰式には、この匿名ブログについて2月19日の衆院予算委員会で取り上げた民進党の山尾志桜里議員(42)が青のジャケットスーツで登場。「私が賞を受け取っていいのかとも思うんですけど、声を上げた名もない一人のお母さんの言葉と、それを後押ししてくれた2万7862人の署名を下さった方たちに代わって、この賞を受けたいと思います」と話した。>

     普通は「神ってる」のようにその言葉を発した人、考え出した人が選ばれるんですが、この言葉に関しては世の中に広く紹介したという意味で山尾議員が選ばれたそうです。それもなんだか持って回ったような感じがして、だったらトップテンにしなくてもいいんじゃない?という向きもありますが、ま、それは置いておいて。この言葉そのものが非常に激しく、荒っぽい表現なので、言葉が一人歩きしていますが、そもそもどうしてこの言葉が国会で取り上げられたのか?一度おさらいしておきましょう。

     これが紹介されたのは、今年2月29日の衆議院予算委員会での質疑。山尾議員の安倍総理への質問の一環で登場しました。

    『第190回国会 予算委員会 第17号(平成28年2月29日(月曜日)』(衆議院HP)https://goo.gl/UmFv0v
    <○山尾委員 (前略)今、うれしい悲鳴、待機児童についてうれしい悲鳴と言っていないと総理はおっしゃいました。私、ここにフリップを用意しています。これを読んだ、これを今見ている国民の皆さんが、総理はうれしい悲鳴と言ったのかどうか、判断は国民の皆さんに委ねたいと思います。

     一方、私、今総理に紹介した......(発言する者あり)ちょっと静かにしていただけますか。総理に紹介をしたこの当事者の悲鳴を、やはりちゃんと国民の皆さんにも知ってもらいたい、そしてこの予算委員の皆さんにも見てもらいたい、こう思って、フリップと資料を準備しましたよ。でも、与党の皆さんが、これを委員の皆さんに配ってもいけない、国民の皆さんにフリップで見せてもいけない、そういうことですので、私は、本当に安倍政権というのは、都合の悪い声は徹底して却下する、都合の悪い声は徹底して無視する、本当にそういう安倍政権の体質の象徴となる対応だと思いました。

     でも、私がこの場で発言をすることまで与党の皆さんは禁止されないと思いますので、この場で御紹介をさせていただきます。国民の皆さん、フリップに出せませんけれども、聞いてください。

     保育園落ちた、日本死ね。何なんだよ、日本。一億総活躍じゃねえのかよ。きのう見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ、私、活躍できねえじゃねえか。子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに、日本は何が不満なんだ。子供産んだはいいけど、希望どおりに保育園に預けるのほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねえよ。まじいいかげんにしろ、日本。

     確かに言葉は荒っぽいです。でも、本音なんですよ。本質なんですよ。だから、こんなに荒っぽい言葉でも、共感する、支持する、そういう声が物すごい勢いで広がって、テレビのメディアも複数全文を取り上げ、複数の雑誌も取り上げて、これは今社会が抱えている問題を浮き彫りにしている。それを、与党の公述人もそうやっておっしゃったんですよ。>

    ちなみに山尾議員が問題にした講演での発言については、安倍総理はこの委員会での答弁でこう述べています。

    <○安倍内閣総理大臣
    (前略)
    それは恐らく、読売国際経済懇話会、平成二十七年の十一月六日の私のスピーチだろうと思います。ここで私が述べたのは、しかし、ことし、待機児童は前年よりふえてしまった、安倍政権発足以来、女性の就業者が九十万人以上ふえたから無理もないことであります、その意味で、うれしい悲鳴ではあるのですが、待機児童ゼロは必ずなし遂げてまいります。

     私が言ったのは、その意味でということは、就業者が九十万人以上ふえたというところに置いているわけでございまして、普通の読解力があればそれはわかるのではないのかなと思うわけでございます。>

     待機児童問題は、そもそも保育園の不足という問題から発生します。そして、各自治体は認可保育園の数を増やしてこの問題に対応するわけですが、その過程で保育園の数を増やし枠を増やすことで、今度は子どもを保育園に入れて働こうという就業希望者が増え、その結果増やした枠以上に応募者が殺到し、さらに問題が深刻化するということが言われています。これは極端な暴論ですが、保育園の枠を増やしたところで世の中が不景気のままであれば就業希望者が増えず、待機児童問題は解決に向かいます。(もちろん、その裏で不景気なために就職の希望すらしなくなった失業者が増えて、社会不安が増大すると言うもっと大きな問題が起こるのは言うまでもありませんが)待機児童問題の解決への施策と並行して、アベノミクスによる景気回復が重なったので、特に都市部で待機児童問題が深刻化した面もあるわけですね。
     これはもちろん、公的機関がさらに社会保障への支出を増やすことで施設をもっと多く作れば解決へ向かっていきます。世間の注目が集まることで予算が付くという側面もありますから、このセンセーショナルな言葉を紹介することで解決に向け加速させた一面もあるでしょう。山尾議員自身、受賞のスピーチでこう述べています。

    <「奇跡のような流れの中、安倍総理に質問したら、たくさんの人たちが私たちも名前を名乗るよと署名が集まって。そこから待機児童問題が政治問題の隅っこからど真ん中に移動できた。これからは解決する段階と思う」>

     ただ、この言葉が問題の焦点をぼかした部分もあると私は思うんですね。というのも、都市部での保育園不足は公的セクターが解決するべき問題であるという部分にフォーカスし過ぎてしまった感があるのです。もちろん、実際に予算を付けて政策として保育園を整備していくのは自治体の仕事です。しかし、自治体だけがどんなに頑張っても、解決しない問題があります。最近問題になっている保育園反対運動です。

    『吉祥寺の認可保育所、開設断念 住民反対で事業者が撤退』(9月29日 朝日新聞)https://goo.gl/ikc4W3
    『住民が保育所猛反対 芦屋で開園を断念』(8月23日 神戸新聞)https://goo.gl/hTuv6S

    「保育園 反対」というキーワードでニュース検索をかけるともう出るわ出るわ。この問題、どの記事でも、住民のインタビューを読んでも、「市の説明がない」「市の仕切りが悪い」「市がきちんと進めなかった」と自治体の不作為が問題の根本であるというようなことが書かれています。反対派の住民も、保育園を求める親たちもおそらく自治体が悪いと思っているのでしょう。

     しかし、本当に利害がぶつかっているのは「反対派の住民対自治体」、「保育園を求める親対自治体」なのでしょうか?事業主体は自治体であっても、あるいは自治体が委託した業者であっても、本当にぶつかっているのは「静かに暮らしたい住民」対「子育てをしながら働きたい住民」の利害対立なのではないでしょうか?

     保育園建設に反対している「静かに暮らしたい住民」も、かつては子育てをした経験があるかもしれません。その当時は共稼ぎをせずとも十分に生活できるだけの収入があったり、今ほど生活費が高くないので、または親戚縁者の助けがあって保育園が必ずしも必要なかったのかもしれませんが、今逆の立場に置かれたらどうか?あるいは今保育園を作ってほしい、子育てをしながら働きたい住民も、子育てが一段落するであろう20年後にも同じ問いをされたらどう答えるのか?

     これは住民と住民、市民と市民の利害対立であって、間に挟まれる自治体は媒介者でしかないのではないか?そう考えるときに、「保育園落ちた 日本死ね」と公に責任を求めるのが政治家として正しい立場なのでしょうか。住民同士が膝詰談判して、直接意見をぶつけ合うなどして「認知の壁」を取り払わない限り、お互いに自己主張だけして何の解決にもならないのではないでしょうか。

     「保育園落ちた 日本死ね」という言葉は、問題の一面をクリアカットに見せる効果はあったのでしょう。一面に光を当てすぎると、それ以外の面はすべて影になって見えなくなってしまいます。その影にこそ光を当てることが、政治家の役目ではないかと思うのです。受賞にはしゃいで「これからは解決する段階と思う」なんて他人事のコメントをしている場合ではないのではないでしょうか?
  • 2016年11月21日

    ミュージックソン・アシスタントを仰せつかって

     このブログでのご報告が遅れましたが、私、今年の第42回ラジオチャリティミュージックソンのアシスタントを仰せつかることになりました。番組では何度もお知らせしていますので、『ザ・ボイス』をお聞きの方はご存じかもしれませんが、今年のパーソナリティは女優の斉藤由貴さん。ニッポン放送では、月曜~木曜夜10時から放送中、『オールナイトニッポン MUSIC10』の木曜パーソナリティとしてもお馴染みです。
     私自身は、ミュージックソンのアシスタントを担当するのは2度目。1度目は2009年、メインパーソナリティは俳優の高橋克実さんでした。なぜ私?というのは私自身も感じているところですが、『ザ・ボイス』を担当しているということもあって、ここ数年音の出る信号機やホームドアなどを取材しレポートしてきた集大成と思って頑張ろうと思います。24時間全てを聞けとは申しませんので、一部分であってもお聞きいただき、目の不自由な方の日常に思いを馳せていただければ幸いです。12月24日の正午から翌25日の正午まで、どうぞよろしくお願いいたします。

     その上で、現時点での考えを幾つか備忘録的に書き留めておこうと思います。
     今年は、8月15日に地下鉄銀座線、青山一丁目駅で目の不自由な方が盲導犬の誘導にも関わらずホームから線路へ転落し、進入してきた電車にはねられるという非常に痛ましい事故が起こりました。前述の通り、ここ数年ホームドアや音の出る信号機、天井ブロックなど、目の不自由な方を守るべく整備されたインフラを取材して報告してきた身としては、まさに痛恨の極み。どうしてこのような事故が起こってしまったのか?しかもそれが周りに人も沢山いたであろう都会のど真ん中で起こってしまったのか。暫く呆然としていた私にも、様々な問題意識が沸き上がってきました。

     そもそも、目の不自由な方に対する日本のインフラというのもは、驚くことに世界最先端をいっているそうです。これは、音の出る信号機や点状ブロックを研究され、その分野の第一人者でいらっしゃる、岡山県立大学の田内特認教授にインタビューしたときにもお話しいただきました。また、目の不自由な方の立場からも、たとえば日盲連(日本盲人会連合)の鈴木孝幸副会長(当時)や、ホームドア整備に関して目の不自由な方と健常者、そして鉄道事業者を繋ごうと活動しているNPO法人『鉄道ホーム改善推進協会』の今井会長にも同じようにお話をいただきました。
     要するに、この問題に関して専門で取り組んでいる方々が立場の違いを越えて異口同音に仰っているのが「日本はインフラなどのハード面は非常に進んでいる」ということ。では、何が足りないかといえば、ソフト面での対応。すなわち、我々健常者が、あるいは社会全体として目の不自由な方をどう包摂して行くかという部分です。本来であれば、社会的な包摂、多様性を重んじる、どちらかと言えばリベラルな論調のメディアこそハード面よりもソフト面の充実を言わなければいけないんですが、その最右翼(というか、最左翼?)の東京新聞ですらこの記事が一面トップです。

    『ホームドア設置前倒し 東京メトロ 銀座線など最大1年』(11月4日 東京新聞)https://goo.gl/x2UtSt
    <駅での視覚障害者の転落やベビーカーの引きずり事故が相次いだことを受け、東京メトロは四日、銀座線、東西線、半蔵門線でホームドア設置を当初計画より最大一年前倒しすると発表した。八月に盲導犬を連れた男性がホームから転落して死亡した銀座線青山一丁目駅をはじめ、障害者の利用が多い駅を優先する。>

     ホームドアがなかったから事故が起こったということが前提にあって、ホームドアがその唯一の解決策であるというような書きぶりに私は驚きました。夏休みのど真ん中であったとはいえ、青山一丁目の事故があった時に周りにまったく誰もいなかったわけではないでしょう。あんなにホームの端を歩いていたら危ないな。そういった想像を抱いた人もいたかもしれません。でも、誰一人、それを行動に移せなかった...。ことの本質はそこにこそあるのではないでしょうか?ちなみに、東京新聞は目の不自由な方の声のかけ方について、こんな優れた記事も書いています。

    『視覚障害者の事故防止 声のかけ方に「こつ」』(10月6日 東京新聞)https://goo.gl/GjooUg

     先日、ある鉄道会社の幹部に取材したところ、
    「会社としても安全第一がモットーだし、ホームドアの整備を急ぐというのは全社で共通していると思う。ただ、一方で大多数のお客さんは定時運行も非常に重視している。それに、一つの駅にホームドアを設置するだけでも億単位のカネがかかる。営利企業としては非常に大きな出費」
    と、苦しい胸のうちを明かしてくれました。
     言外には、我々事業者がハード面を強化するのも大事だが、一方でメディアや公的機関が率先して、ソフト面の啓発を担ってくれないと厳しい。という思いをにじませて語っていました。鉄道事業各社は「声かけ・サポート運動」を今週末から始めます。

    『「声かけ・サポート」運動強化キャンペーンを11月25日(金)から実施します。』(東京都交通局HP)https://goo.gl/brwEHk

     私も微力ながら、募金と平行してそうしたソフト面も訴えていきたいと思っています。第42回ラジオチャリティミュージックソン、どうぞよろしくお願いいたします!

  • 2016年11月14日

    GDP3期連続プラスだが...

     今年7月~9月のGDP速報値が今日発表されました。今日の夕刊では各紙大きく扱っていて、どちらかと言えば好意的な評価が多いようです。

    『GDP実質2.2%増 7~9月年率、輸出・住宅伸びる』(11月14日 日本経済新聞)https://goo.gl/h3SEHw
    <内閣府が14日発表した2016年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.54%増、年率換算で2.2%増となった。プラスは3四半期連続。アジア向けを中心に輸出が伸び、国内でも住宅投資が堅調だった。一方、内需の2本柱である個人消費と設備投資はゼロ近傍で停滞した。>

    『7-9月GDP 年率+2.2% 3期連続プラス』(11月14日 NHK)https://goo.gl/W5TPrg
    <ことし7月から9月までのGDP=国内総生産は、個人消費の伸び悩みが続く中、輸出の増加に支えられて、前の3か月と比べた伸び率はプラス0.5%、年率に換算してプラス2.2%となり、3期連続でプラスとなりました。>

     各社、3期連続プラスを強調し、その要因として輸出が伸びたことをしきりに報じています。3か月での伸びは季節調整済みの実質で前の期と比べて0.5%のプラス。この伸びが一年間持続すると仮定した年率換算では、2.2%のプラス成長としています。日経が見出しに取った2.2%プラスというのはそういう数字であって、3か月で2.2%伸びたわけではありません。
     それにしても、この見出し2つを見ても実感とだいぶ離れていることに何となく居心地が悪くなります。プラスだプラスだと言われますが、本当にそうなのか?賃金もさほど伸びないし、ん~、なんだかなぁというモヤモヤが募っていませんか?発表されたGDPの数字を見ると、その訳が何となく分かります。

    『2016(平成28)年7~9月期四半期別GDP速報 (1次速報値)』(11月14日 内閣府HP)https://goo.gl/LUEz8g

     まず、7月~9月期の季節調整済みGDP成長率を名目と実質で比べると、名目0.2%、実質0.5%。GDPの計算はまず名目値を出して、そこから物価の動向を織り込んで実質値を算出します。たとえば、名目4%成長で、物価上昇が2%だとすれば実質成長率は2%となるわけです。
     今回は、名目が0.2%で、実質が0.5%。ということは、物価上昇がマイナス0.3%ということ。先のことは分からないので7月~9月に限ったことかもしれませんが、ついにデフレに逆戻りしてしまった可能性が高いわけです。
     本来ならば、これは大問題。デフレ脱却は安倍政権の一丁目一番地のはずですから、事ここに至れば大規模なてこ入れをしなくてはいけません。内閣府側は冷夏や天候不順があったうえ、円高基調、原油安があったので物価が押し下がった旨の説明をしていて、一部の記事ではそのことに少し触れているものもありましたが、記事の後ろの方でちょこっと。個人消費や設備投資の足踏みなどに紙幅を割いています。
     確かに、個人消費や設備投資は季節調整済みの実質で見ても寄与率0.0がずらっと並んでします。明るいのは民間住宅(寄与率0.1)ですが、これはマイナス金利に踏み込んだ日銀の金融緩和の効果でしょう。
     また、公的需要の部分では政府最終消費支出はプラスだったんですが、問題は公的固定資本形成が前期比0.7%のマイナス。これは、政権が景気下支えのため予算の前倒し執行を続けてきましたが、少し息切れしてきたことが原因でしょう。
     さらに、輸出が全体を引っ張った旨メディアは報じていますが、これもどうなのか?実質値では確かに輸出が伸びていますが、実際の取引の数字である名目値では輸出もマイナス。さらに、国内需要の冷え込みで輸入が4期連続でマイナスですから、『輸出-輸入』で表される純輸出ではプラスに作用します。輸出が増えたというよりも、輸入が減ったのでプラスになっているわけで、決して好感できる数字ではありません。
     数字だけ見れば「緩やかな回復基調が続いている」(石原経済再生担当大臣)わけですが、内実は思いの外グラグラしているのではないでしょうか?

     今回、前倒し執行の反作用で政府公的資本形成がマイナスに転じました。今後、第2次補正予算の早期執行しなくては、予算ショートで景気は息切れしてしまいます。さらに第3次補正予算の編成も視野に入れなくては、10月~12月期、1月~3月期の半年が心許なくなります。本来はまさに景気にとって正念場のはずですが、メディアがそうした報道をせず、表面を撫でるような見出しばかり。非常に心配です。杞憂であれば、それに越したことはないんですが...。
  • 2016年11月07日

    服喪のタイ・バンコク訪問記

     先週ほぼ一週間、休暇でタイ・バンコクに行ってきました。タイは先月13日にプミポン国王陛下が崩御され、国全体が喪に服しているさなか。国民こぞって黒い服を着ていて、一部では黒い服が店頭から消えるような事態になっていると日本国内でも報道されています。在タイ日本大使館も、タイに訪問する日本人に対し服装の注意喚起をしていました。

    『タイ在住の皆様及びタイを訪問される皆様へ』(11月2日 在タイ日本大使館HP)https://goo.gl/MZG1PM
    <(1) タイを訪問する者は、公共の場では、地味で敬意のある服装を着用することが推奨されます(但し、特に旅行者にとってこれは義務ではありません)。タイ人は、黒又は白の服装を着用します。
    (2) 訪問者は、不適切な、又は礼を失する行動を差し控えてください。>

    ということで、私も慌てて家じゅうから黒い服をかき集め、パッキングをしました。日本国内の一部報道で、黒い服を着ていない人がバッシングを受ける事態になっている旨言われていましたが、行ってみての感想はそんなことはなさそうだというもの。もちろん、一部で行われているかもしれませんし、ネット上ではそうした議論が白熱しているようですが、見た限りはそこまで厳格なものではありませんでした。電車に乗っていると黒いTシャツを着ている人は多いんですが、そのシャツにデカデカとドクロが描かれ、その上に"Dead or Alive"と書かれていても、特に誰も何も言わない...。私は内心、「国王陛下が崩御しているのに、Deadはないだろう...」と思っていたんですが。

    DSC_3436.JPG
    バンコク市内の至るところにこうした追悼設備がある(市中心部のセントラルワールド)

     先月13日に崩御され、その後宮中での一連の葬送の儀式を行いました。ご遺体は王室の菩提寺たるワット・プラケオに安置されています。そして、私がタイに着いた先月28日、一般のタイ国民による弔問が始まりました。
     このワット・プラケオという名前、一度でもバンコクに行かれた方ならご存知だと思います。チャオプラヤ川近くの観光名所、王宮の中にある寺院で、別名エメラルド寺院とも言われています。
     28日から一般弔問が開始されると発表されるや、タイ全土から弔問客がバンコクへ殺到。王宮前の広場には人があふれ、徹夜組が何百人という単位で出たと現地メディアは伝えています。想定では、一日1万人を見込んでいた人出が見込み甘く、初日の28日には一日2万人を超える人が来訪。このため、朝8時の開門を朝4時まで前倒しし、終了も夕方の予定を後ろに送り、夜9時まで延長。それでもギリギリさばき切れるか切れないかという人出でした。

     現地地上波テレビは娯楽番組等を一切休止。プミポン国王陛下の生前のご活躍の様子を放送するとともに、28日以降はこの王宮周辺に特設スタジオを設営して生中継。混雑の様子、高齢者や障がいを持った人への特別案内等の細かな情報を流して、混乱の収拾を図っていました。

     ところで、この王宮周辺というのは少し交通の便が悪いところ。エクスプレスボートというチャオプラヤ川の水上バスで行くか、バス・タクシーなどの交通機関を使うことになるんですが、国王崩御の後は周辺1キロ以上を交通封鎖。一部のバスなどを除き、王宮周辺は進入禁止になりました。多くの国民が自家用車で乗り入れることによる混乱、大渋滞を避けるのが狙いでしたが、そのため何キロも前から徒歩で王宮へ向かわざるを得なくなりました。そこで、バイクを持っている一般市民が無料で王宮周辺まで乗せていくバイクタクシーのボランティアも組織されました。普段は許可された人しかバイクタクシーは出来ませんが、こうした時は行政も柔軟で、写真のようなプラカードを掲げていればOK。規制線を管理している警察官も、この手のバイクタクシーはスルーしていました。後ろに乗る人はヘルメットもしていないのはこの際ご愛嬌ってことで。

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     ということで、10月一杯は観光客は王宮に入れませんでしたが、11月に入って観光客にも開放されました。私は11月3日に訪れましたが、折り悪く、この月末をターゲットに自動車爆弾テロの情報があり、王宮周辺はピリピリした雰囲気に包まれていました。

    『テロ計画発覚で拠点捜索 タイ・バンコク』(10月12日 日本テレビ)https://goo.gl/GaXsyP
    <タイ警察は11日、イスラム系の武装グループが爆弾テロを計画しているという情報をもとに、潜伏先とみられるバンコクのアパートなど9か所を捜索した。タイ警察によると武装グループは、今月25日から30日の間にバンコクやその周辺で車に爆弾を仕掛ける方法でテロを計画していて、警察は捜索先にいた数人を拘束してテロ計画との関連を調べている。>

     王宮の1キロほど手前にチェックポイントが設けられ、ここで空港と同じように手荷物検査、ボディチェック。私は子供の食事用に食べ物を切るための小さなハサミを持っていたんですが、これを探し出し「これはダメ。この先は持って行けない」と。子ども用であって、何もこれでテロを行うわけではないと夫婦して力説するも応じてもらえず...。やはり、かなり厳しいチェックがされていました。
     しかし、これも考えてみれば当たり前の対応。人心が不安に思っている国王陛下崩御のタイミングでテロが起これば、さらに社会不安が増大し、テロリストの思うつぼとなります。タイのように観光収入がGDPの1割を占めるほどの観光立国であれば、服喪期間中で観光客の足が鈍るタイミングでテロとなればさらに打撃となり、これもテロリストの目論見通り。警戒を厳しくするのが内政的にも経済的にも理にかなった行為なのですね。

     翻って我が国ではどうか?一つ災害が起こるとそれに集中するあまり、他への警戒が手薄になっていはしないか?たとえば、熊本地震の時に自衛隊を集中的に投入するまでは良かったのですが、もともと人員が足りていない自衛隊。そのしわ寄せで残留部隊に無理は生じていなかったのか?その時何もなかったのは僥倖としか言いようがないのではないか?微笑みの国の厳しい一面を見た時、平和を守る厳しさを見た思いがしました。

     ちなみに、私は「崩御」と書いていますが、これは海外であっても君主など特別な地位にあられた方が亡くなった場合の尊称なので使っています。先ほど引いた在タイ日本大使館の記事にも「崩御」とあります。日本のメディアはだいたい「死去」と書いていますが、どうなんでしょうか?現地でタイの人々の敬愛ぶりを目の当たりにすると、やはり「崩御」なのではないかと思ったのですが...。一応、間違いだと指摘される前に釈明しておきますね。
プロフィール

飯田浩司

出演番組:
ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

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