2015年3月

  • 2015年03月24日

    日本はAIIBに参加するのか?

     中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への我が国の参加を巡って、風向きが少しずつ変わってきています。先週金曜の閣議後の記者会見で、麻生財務大臣が条件付きながら参加に向けた協議に入る可能性にも言及しました

    『麻生財務相、日本の参加排除せず=中国主導のインフラ銀』(3月20日 時事通信)http://goo.gl/vJakt2
    < 麻生太郎財務相は20日の記者会見で、中国の主導で設立準備が進むアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、日本の求める条件が確保されることを前提に参加に向けた協議に入る可能性に言及した。英国やドイツなど有力国の参加表明が相次ぐ中、日本としても参加に含みを持たせたものだ。ただ外交戦略も絡み、参加の是非の判断は難しそうだ。>

     これに対して閣内では、菅官房長官や岸田外務大臣が懸念を示し、総理も慎重姿勢です。
    『財務相、中国インフラ銀 「条件整えば参加協議も」』(3月20日 日本経済新聞)http://goo.gl/G0YbtN
    <一方、菅義偉官房長官は同日の記者会見で「参加については慎重な立場だ」と述べた。
    (中略)
    岸田文雄外相も同日の記者会見で「現状においては慎重な対応を考えている」と述べた。そのうえで「ガバナンスの確立をはじめ、我々としての考え方を(中国に)引き続き伝えていきたい」との考えも示した。>

    『中国主導の投資銀、首相「慎重な検討必要」 融資審査・組織運営に懸念』(3月21日 産経新聞)http://goo.gl/2ktxQY
    <首相は参院予算委員会で、AIIBについて、「IMF(国際通貨基金)や世界銀行とは性格が異なる」と指摘した上で、「中国が国際社会のルールや法の支配を尊重する形で発展をとげる」よう求め、疑問点が解消されないままの参加には消極的な考えを示した。>

     財務大臣の会見を見ると突然の方針転換のようにもみえますが、ある財界関係者に聞くと、
    「1か月前、すでに外堀が埋められていて、これは既定路線だ。既存のアジア開発銀行(ADB)とは別物として加入すべきだ」
    という見方がありました。
     1か月前といえば、すでにニュージーランドが参加表明をしていて、イギリスも参加するかもしれないと言われていた時期。先進国でも参加を表明する国が出てきた時点で、今回の方針転換は既定路線であったようです。

     しかし、そうなると気になるのがアメリカの動向。なんだかんだ言っても日本はアメリカの意向を忖度します。90年代後半、アジア通貨危機が起こったあと日本政府は、アジア版IMFともいえるAMF(アジア通貨基金)の創設を検討したことがありましたが、アメリカの強硬な反対により取り下げています。では、今回は?政界関係者からはこんな声が聞こえてきました。
    「そもそも今回は、英・仏・独・伊のAIIB参加を止められなかった時点で、アメリカが下手を打ったも同然。だから日本が中国を抑える方向で参加すると言った時に止められるわけがない」

     すると、こんな報道がアメリカから流れてきました。
    『米、アジア投資銀との協調模索―世銀との連携を打診』(3月23日 ウォールストリートジャーナル)http://goo.gl/Sby1NK
    <シーツ米財務次官(国際問題担当)は「米国は新たな国際金融機関の誕生を歓迎する」とし、「世銀やアジア開発銀行(ADB)など既存の国際機関との協調融資プロジェクトが実現すれば、実績のある高い融資基準が維持されることになろう」と述べた。>

     アメリカはAIIBの中には入らないものの、外からガバナンス体制の整備や透明性の高い運営基準の取り入れに向けて働きかける模様です。一方、中に入る可能性も示唆した我が国としては、どういった条件なら呑めるのか?それについても、すでに財務省からは去年末に具体的な内容が示されています。

    『関税・外国為替等審議会 第22回外国為替等分科会議事録』(平成26年12月24日 財務省)http://goo.gl/6gbwge

    財務省の浅川国際局長はAIIBへの参加の条件について、
    ①ADBとのすみわけをどうするか?
    ②常任の理事会を置かずに、一部の国の恣意的な融資を防ぐことはできるのか?
    ③環境に配慮したインフラ構築ができるのか?ちゃんと返せるような適切な融資額にできるのか?
    要約するとこのように説明した上で、こう発言しています。
    <署名国は、今後1年間ぐらいかけて設立協定を交渉する予定のようです。おそらく、この設立協定の中でガバナンス構造も含めいろいろなことがはっきりしてくると思いますが、今のところはまだ見えてこないものですから、我々としてはAIIBに参加するかどうかの判断はつかないということです。>

    参加しないとは言っていない。判断がつかないと言っているわけです。そして、財務省国際局長の立場で「我々は」参加するかどうか判断はつかないとしています。つまり、この問題は外務省マターではなく、財務省マターであるということ。ある霞が関関係者は、このAIIB参加について、
    「財務省国際局の所管となれば、間違いなく官邸の意向で動いている。となると、意外と急転直下、今月内に参加表明だってあり得る話だ」
    と話してくれました。

     戦後70年談話を中心に語られがちな日中関係ですが、今年年央からはこうした経済関連が先行するかもしれません。
  • 2015年03月16日

    山田線着工式取材報告

     先週に引き続き、先日行った東日本大震災被災地取材の報告です。先週の土曜日、JRなど鉄道各社のダイヤ改正が行われ、北陸新幹線、上野東京ラインといった新線開業もありましたが、被災地でも鉄道の復活が続いています。

    『JR石巻線、21日に全線再開-震災から4年ぶり』(3月6日 日刊工業新聞)http://goo.gl/o8r6bN
    <駅(宮城県女川町)が再建(写真)し、21日に約4年ぶりに全線(小牛田―女川)で運転が再開される。震災から4年を迎えた女川町の新たな一歩となり、街の復興に拍車をかけそうだ。>

    『被災地の現状:宮城県 創造的復興へ経済基盤整備』(3月7日 毎日新聞)http://goo.gl/prUr4S
    <◇鉄道の復旧8割
    道路は全区間復旧したが、鉄道の復旧率は81.3%。>

     8割は復旧したということですが、一路線だけ全く手つかずで残っていた路線がありました。それが、JR山田線の宮古~釜石間。沿線に山田町、大槌町といった津波で甚大な被害を受けた地域を抱え、鉄道自体も路盤の流出、橋桁ごとすべてさらわれたような箇所もあり、鉄道での復旧は絶望視されていた路線です。実際、運営するJR東日本は鉄路での復旧をあきらめ、バスによる復旧を地元自治体に提案していました。しかし、地元は鉄道での復旧にこだわり、県や国も入っての話し合いが続けられてきました。その結果、JR主導で鉄道復旧工事をし、その後第三セクターの三陸鉄道への経営移管するということで話がつきました。そして、先日3月7日、宮古駅で着工式が行われ、私もその模様を取材してきました。

    山田線着工式.JPG
    着工式には、達増岩手県知事、JR東日本富田社長など関係者が出席した

    『<山田線>復旧工事に着手 16年秋順次開通』(3月8日 河北新報)http://goo.gl/Z3IV08
    <東日本大震災で被災し、第三セクター三陸鉄道(宮古市)への移管が決まったJR山田線(宮古-釜石間、55.4キロ)で、JR東日本は7日、復旧工事に着手した。
    (中略)
    山田線は津波で181カ所が被災した。地元側はことし2月、JRが移管協力金30億円を支払うなどの条件で三陸鉄道への移管に合意した。復旧費210億円のうち140億円はJRが負担。復興まちづくりに関わる70億円は国の復興交付金を充てる。>

     式典では、JR東日本の富田社長や国土交通副大臣、岩手県知事、宮古市長といった各分野のトップが挨拶をしましたが、その中でちょっと気になったのが、三陸鉄道の望月社長の挨拶。取締役事業本部長の坂下氏が望月社長のメッセージを代読したんですが、その中にこんな一節がありました。

    「山田線は、路盤の弱さ、構造物の老朽化などその維持管理に大きな課題があると認識しております。JR東日本様におかれましては、本日から始まる復旧工事において、こうした課題の解決に最大限のご配慮いただきますとともに...」

     この着工式という機会を使って、三鉄の望月社長はJR東日本に対してしっかり工事をしてくださいと釘を刺した格好です。というのも、今回の工事の主体はJR東日本。三陸鉄道としては、工事が終わって経営が移管されるまでは意見はある程度言えても実際の工事をするわけではありません。さらに、リアス式海岸を走る山田線は、海に面した被災区間と、山の中を走る被災していない区間があります。被災していない区間については既存の鉄道施設が丸々残っていますので、極論すればメンテナンスをするだけで車両を走らせることはできるのです。しかしながら、悲しいかなそれまでの山田線は赤字のローカル線。三鉄の部分と比べると、最高時速で10キロ違うなど、路盤の弱さなどに課題があります。これを三鉄のレベルに合わせてほしいというのは以前から指摘されてきたものでした。

    三鉄車両.JPG
    三陸鉄道の新型車両

    『レール9割以上を三鉄規格に 山田線移管へ現地調査』(2014年7月29日 岩手日報)http://goo.gl/KOvfVK
    <JR側は被災していない46キロ区間を新しいレールに交換し、全線の9割以上を三鉄の規格と一致させる方針を示した。>

     前々から指摘されていたことだけに、関係者にとっては当たり前のこと。これをあえて着工式の挨拶に盛り込んできたところにこの問題の根深さを感じます。被災地では人手不足や資材不足でコストが高騰しています。コストを絞り込みたいJR東日本と、将来の運営移管を考えれば質の高い設備を求める三陸鉄道。祝いの式典を取材しながら、駆け引きは続いていくなぁと思いました。

     そして、もう一つ、被災地の鉄道復旧の難しさを感じる出来事がありました。岩手県から宮城北部の三陸の海沿いを走る鉄道を北から並べると、三陸鉄道北リアス線(久慈~宮古)、JR山田線(宮古~釜石)、三陸鉄道南リアス線(釜石~盛)、JR大船渡線(盛~気仙沼)となります。そのうち、もっとも復旧が遅れたのが前述の山田線ですが、では真っ先に仮復旧を遂げたのは?というと、JR大船渡線です。ザ・ボイスの2年前の被災地取材では、このJR大船渡線のBRT開業を取材しました。線路が敷かれていたところにアスファルトを敷き、バス専用道として定時運行を目指す、バス・ラピット・トランジットの略、BRT。将来的には鉄路での復旧を目指すということで仮復旧の形だったんですが、そのまま本復旧のメドが立たず今に至っています。

    大船渡線BRT.JPG
    大船渡線BRT(盛駅)

    『JR大船渡線 鉄路早期復旧へスクラム 気仙両市議会が要望』(1月24日 東海新報)http://goo.gl/K8oc1R
    <東日本大震災で被災し、BRT(バス高速輸送システム)による仮復旧での運行が続くJR大船渡線の鉄路復旧早期決定を要望。昨年2月にJR側が自治体からの補助を受けての高台移設策を掲げてから目立った進展がみられぬ中、両市議会とも復興まちづくりの重要課題であると強調した上で理解を求めた。>

     JRとしては高台を通るルートを提案し、既存ルートの復旧よりもコストがかかるのでその差額を国や自治体に負担してほしいと要望。一方、苦しい台所事情もあって地元は既存ルートでの復旧を推していて現在調整が続いているとのことです。そこへ、第三セクターへの経営移管という形の痛み分けで、山田線は鉄路復旧に着工する運びとなったわけで、最後まで粘ったもの勝ちか?というやるせなさが大船渡線沿線にはあります。山田線の着工式典後のぶら下がり取材でも、この大船渡線鉄道復旧についての質問が出ました。

     まずは、JRの富田社長。

    「大船渡線についても、従来から地元と復旧の在り方について議論を続けているが、鉄道の復旧に際しては津波対策等の安全性の確保、街づくりとの整合性、鉄道と道路の立体交差など詰めるべきことがたくさんある。さらに、費用負担をどうするのか?仮に鉄道で復旧したとして、その後の利用者がどれほど見込まれるのか?利用者に対して鉄道というモーダルが最適かどうか、地元の皆さんとさらに話し合う必要がある。」

     今話し合っているこの環境は、JR東日本にとっては悪くはない。BRTの方がコストが安く済みますから、下手に鉄道復旧の結論が出るよりもこのままの方がいいわけです。それが証拠に、鉄道の路盤をバス専用道に作り替える工事がどんどん進んでいます。

     一方、岩手県の達増知事。山田線の三鉄移管をモデルケースに、鉄道復旧と第三セクターへの経営移管をセットにして大船渡線も復旧できないか?という問いに対し、

    「"じぇじぇじぇ"という感じですが、山田線の宮古・釜石間というのは、三鉄南北リアス線との連携した運行ということで、これはこれとしてユニークなケースだと思っています」

     3セク移管となれば費用負担が避けられない県としては、山田線は例外としておきたいというのが本音のようです。双方腹の探り合いの中で、結局このまま定着してしまうのか?この議論に、利用者の声が入っていないのが非常に気になります。
  • 2015年03月11日

    大熊町取材報告

     今日で東日本大震災から4年。各メディアが特集を組んでいますが、我々ザ・ボイスも先週末被災地取材に行ってきました。その模様は、今週月曜から3日間、4時半ごろのザ・フォーカスのコーナーでお送りしています。
    (ポッドキャストなどで聴けます!→http://www.1242.com/program/voice/
     今週と来週は、ザ・フォーカスのコーナーで言い残したことも含めて、このブログでも報告したいと思います。今週は、10(火)、11(水)に放送した、福島県双葉郡大熊町から。

     言わずと知れた福島第一原子力発電所の立地自治体の一つ、大熊町。第一原発のほぼ南半分が大熊町にかかっています。(北半分は双葉町)震災、その後の原発事故により全町避難を余儀なくされ、現在も町民の皆さんは避難生活を続けていて、宿泊は許されていません。というのは当然、放射線量が高いからで、その高さに応じて帰還困難区域・居住制限区域・避難指示解除準備区域の3つのゾーンに分かれています。

    『大熊町管内図』(大熊町HP)http://goo.gl/6UHrCO

     このうち帰還困難地域には、町が発行する通行証がなければ立ち入ることはできません。帰還困難地域に入るルートは限定されていて、入り口のゲートには必ず警備員がいて身元のチェックをします。事前に申請した人間以外が車に乗っていないか?申請した車に間違いはないか?一人一人の身分証明書をチェックし、通行証とナンバープレートを照合していて、少し時間がかかりました。以前、旧警戒区域が避難指示解除準備区域に再編されたタイミングで浪江町の取材に行きましたが、その時と比べて厳しくチェックしている印象でしたね。
     また、基本的には防護服を着て立ち入ることになります。今回は我々も町から許可を頂いて、街の中を取材してきました。

    防護服.JPG

     今回の取材は東京から常磐道を通って行ったわけですが、最寄りの常磐富岡ICが近づいてくると、高速の車窓からも黒い袋が目に飛び込んできます。現在行われている除染作業。その作業で取り除かれた土砂や草などの『除染土』が中に入っています。東北・関東8県でこの『除染土』の総量は577万立方メートル。(環境省発表)東京ドーム5杯分に上り、そのうちの95%が福島県に集中しています。現在は、福島県内の7万5000か所以上に仮置きされている状況です。ただ、仮置きといっても、休耕中の水田に並べられていたり、使われなくなった工場の駐車場に積まれていたり。最終処分場は決まっていませんし、中間貯蔵施設もまだ出来ていないので、とりあえず置いておくしかないというのが現状です。

     それを打開する意味もあって、大熊町、双葉町は中間貯蔵施設の町内での建設を受け入れました。もちろん、30年以内に県外に汚染土を運びだし、最終処分することや、十分な補償というものも受け入れの条件に挙げられているのは言うまでもありません。大熊町の渡辺利綱町長も「苦渋の決断だが、やむを得ない」と語っています。

    福島第一原発遠望.JPG

     中間貯蔵施設の予定地の高台からは、福島第一原発が遠望できました。福島第一原発と中間貯蔵施設。大熊町を全町避難に追いやり、苦渋の決断を迫ったこの2つの施設ですが、皮肉にも町の復興ビジョンにはこの2施設がカギとなっています。追って後ほど、ご紹介しましょう。

     さて、帰還困難区域に入ると、時計が4年前で止まったよう。生活している人がいないわけで、人工的な音が全く聞こえません。沿岸の津波の被害を受けたあたりはまだまだ爪痕が残っているんですが、内陸部、JR常磐線の大野駅周辺などは地震に耐えた新しい建物など見た目には全く傷がありません。町役場、図書館、県立病院...。お話を伺った町民の方は、
    「除染さえ終われば、こうした施設は無傷なんだから使えるはずなんだ...」
    と話します。
     そもそも原発事故が起こる前は原発マネーを原資に子育て支援にも積極的で、福島県の中でも珍しく若年人口が増えつつあった大熊町。町が長年整備してきたインフラは原発事故で台無しになってしまったわけではなく、使える可能性のあるものも少なくないようです。

     一方で、福島第一原発の廃炉は向こう30年、40年という長期に渡ります。廃炉作業に携わる人は日を追って増えて、現状一日7000人弱が働いています。町の経済活性化という観点で見れば、この7000人という数字は非常にインパクトが大きい。今はこの人たちは南相馬だとか広野、いわきといった浜通りの周辺から原発に通ってきているわけですが、除染が済んで大熊に住むようになれば相当な経済効果をもたらします。

     また、世界最先端の廃炉の現場では、原子力に関する様々な知見が新たに生まれてきます。大熊が除染されればそうした研究機関の立地も期待できるのです。さらに、今年の春には、福島第一原発の作業員のための給食センターも稼働します。

    給食センター.JPG

     原発廃炉と中間貯蔵施設を抱える大熊町。原発と併走しながら街づくりをするしかないと腹をくくって前を向こうとしています。
    「原発をむしろ前向きに捉えるしかない」
    という考え方は、部外者からはなかなか言えないことです。利用できるものは最大限利用できるだけ利用して、とにかく第一歩を踏み出そうという話には、力強い意志がありました。

     もちろん、それが町民の総意ではありません。話を伺った町民の方も、
    「何代にも渡って住んできた人と、最近移住してきた人では帰ろうという意志に濃淡があるのは確か。平時ならそうした一つ一つの意見を集約して最大公約数を探ろうとするけれど、こうした非常時はまず行政がビジョンを出して、町民を引っ張っていかなくちゃいけないと思うんだ。今は、町としては一つの答案を出したという段階」
    と話しました。
     この復興計画の前提となっているのが、除染です。最終的には全町を除染するのに越したことはないですが、まずは計画にある町の一部でいいから除染してほしいというのが、お話を伺った町民の方の願いです。そうしてまずは廃炉関係の作業員に大熊への定住を促し、人が集まってくればそれを目当てに商売する人たちが集まるだろう。この流れの中で町が活性化してくれば、もともといた住民たちも戻ってくることを選択肢に挙げてくれるようになるだろうと話してくれました。住民の皆さんは力強い意志を持って具体的な町の未来を描いている。そう感じました。
  • 2015年03月03日

    スカイマーク破綻で悔やまれる点

     航空ファンにとって、今年の年明けは衝撃的なニュースに目を覚まされました。
     世間を大きく賑わした、スカイマークの経営破たんです。格安航空会社LCCとの低価格競争に敗れた、無謀な設備投資を行ったなど様々なことを言われていますが、まずは、その経緯です。

    『スカイマーク 民事再生法申請まとめ』(2月20日 読売新聞)http://goo.gl/5mRpFC
    <国内航空3位のスカイマークは1月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表した。資金繰りが行き詰まったことから、同日夜の臨時取締役会で自力再建の断念を決めた。当面は航空機の運航を継続する方針。>

    <スカイマークは2月5日、投資ファンド「インテグラル」(東京都千代田区、代表=佐山展生氏ら)と再生支援基本契約を結び、将来の出資を前提としたつなぎ融資などで最大90億円の資金支援を受けると正式に発表した。>

     そして、先月の終わりにかけて再建を支援する航空会社が次々と名乗りを上げました。

    『スカイマーク支援、スポンサー候補出そろう』(2月24日 日本経済新聞)http://goo.gl/Lr1lC8
    <国内航空3位、スカイマークの再建を支援する航空会社の候補が出そろった。本命視されてきたANAホールディングスのほかマレーシアの格安航空会社(LCC)エアアジア、米大手のアメリカン航空、デルタ航空が名乗りをあげた。>

     この破たん劇に関しては、上記読売新聞の記事の中にもあるように、『A380』という旅客機の名前がキーワードのように語られています。

    <スカイマークは2014年7月、欧州旅客機大手エアバスから大型機「A380」6機を購入する契約の解除に伴って、7億ドル(約830億円)の違約金の支払いを求められ、経営不安に火をつけた。>

     このA380とは、世界最大級の旅客機。世界初のオール2階建て飛行機という触れ込みで、2007年10月にシンガポール航空で就航した際には大きな話題となりました。仮にすべてエコノミークラスにすれば800席を超える座席を配置することができますが、その巨大さゆえに1機当たりの値段も膨大なもの。結果、その代金を用立てることができず、違約金を抱え込むと債務超過になるということで今回の経営破たんに至ったというのが大方の見立てです。

     しかし、この「無謀」と言われたA380購入計画。本当に無謀だったのか?
     実は、購入を発表した際には各メディアとも比較的好意的に受け止めていたのです。

    『スカイマーク、国際線で"脱皮" 全座席が上級クラス、料金は半値以下』(産経Biz 2013年4月11日)http://goo.gl/eTsPi
    <中堅航空会社のスカイマークが仕掛ける国際線への進出計画が具体化してきた。大手の牙城である長距離の主要路線で超大型機を飛ばし、全席を上級クラスに限定するという大胆な試みに向け、操縦士の訓練など準備を着々と進めつつある。>

     好意的に受け止めるということは、当時のスカイマークの説明には一定の説得力があったということ。そのビジネスモデルは、航空業界の常識を変える可能性を秘めるものでした。

    <日本と欧米主要都市を結ぶ路線は、全日本空輸や日本航空の金城湯池で、真っ向勝負しても勝ち目は薄い。そこで考え出したのが、大量の客を運べる超巨大機のA380を導入して1席当たりのコストを下げ、合わせて全席をエコノミーより座席間隔が広いプレミアムエコノミーとビジネスに限ることだった。>

     現在の航空会社の収益構造を見てみると、エコノミークラスは様々な割引運賃など価格破壊が進んだので利幅はかなり薄くなっており、一方でファーストクラスは設定路線がさほど多くないのでこちらもそれほど収益に貢献していません。主に、ビジネスクラスで収益を稼ぎ出しているのが今の実態です。そこに目を付けたのが、当時のスカイマーク・西久保社長。およそ6割の搭乗率で利益を出せると算盤をはじきました。

     考えてみると、スカイマークは創立当初、JAL、ANAの二強寡占体制に価格で勝負し風穴を開けたことで存在感を示しました。当時、JAL、ANAの2社は競合する路線を狙い撃ちにするように値引きをすることで対抗。結果として、一般の消費者にとっては新幹線に並ぶ選択肢になるくらい価格が下がってきて、空の旅が非常に身近になりました。

     そうした、空の旅のイメージを大きく変えるかもしれない大変革が、今度は国際線の、それも憧れのビジネスクラスで実現するのか?『第3の創業』とも呼ばれたこのA380プロジェクトは、当初それだけの期待を集めたものでもありました。
     現在、そんな報道はなかったかの如く、経営陣の判断ミスを指摘する記事があふれています。たしかに、今回の経営破たんで利用者のみならず、スカイマークで働く人々の生活にもネガティブな影響を与えています。それゆえ、経営陣は批判を甘んじて受けなくてはいけませんし、実際受けています。

     ただ、それだけでいいのか?持ち上げるときはどんどん持ち上げるが、叩くとなればそんなことを忘れたように叩くという、メディアの本質を余すところなく映し出す今回の騒動。航空ファンとしてもったいないと思うのはのは、A380という航空機の可能性の芽を摘んでしまったことです。

     実は、このA380、売れていません。

    『超大型旅客機A380の販売不振、製造中止も選択肢か』(CNN 2014年12月14日)http://goo.gl/B8svwu
    <航空機製造大手の欧州エアバス・インダストリーが、総2階建ての超大型旅客機A380の機体更新もしくは製造中止かの選択を迫られる重大な局面に直面している。(中略)
    財務担当責任者は製造中止も選択肢の1つだろうと認めている。>

     大量の人を一気に主要空港に運んで、そこからローカル線に乗り換えて目的地まで運ぶという「ハブ&スポーク」というモデルよりも、そこそこの大きさの飛行機をたくさん揃えて中程度の都市まで直行便を飛ばすというモデルの方が効率的というのが今のトレンドになっています。そんなときに、利幅の薄いエコノミーが大量にある巨大なA380を飛ばしても利益が上がらない。むしろ、燃費が悪くて赤字になる可能性もあるということで、世界中の航空会社がこのA380を敬遠しているのです。

     そんな折に、航空会社にとってうま味のあるオールビジネスクラスのA380を使うというスカイマークのモデルが軌道に乗れば、この旅客機の新たな可能性が開けたかもしれないのです。消費者にとっても憧れのビジネスクラスが格安で使えるとなれば、これは嬉しい。そして、エアバス社にとっては新たな売り込み先ができるということで、近江商人の三方良しを地でいく話になったかもしれません。それだけに、そうした我慢が出来ずに目先の違約金を請求したエアバス社の姿勢は、残念でなりません。

     ビジネスクラスはやっぱり手の届かない、憧れの存在のままのようです...。
プロフィール

飯田浩司

出演番組:
ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

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