• 2017年11月06日

    インバウンド・プラスワン

     ペット連れの旅行というのも、日本でも徐々に身近なものになってきています。子育てが終わった夫婦がペットを飼い、家族同然のペットとともに旅行にも行きたいというニーズが高まったようです。ペットフード協会の2016年の推計では、犬の飼育頭数が987万8千頭、猫が984万7千頭。合計で1972万5千頭に上ります。一方で、総務省統計局が推計した15歳未満の人口、いわゆる子どもの数は2017年4月1日現在で1571万人。子どもの数よりも犬と猫の合計の方が多いんですね。


     昨今注目されるシニア消費と相まって、この国内のペット関連需要を何とかつかもうと各社がアイディアをひねっています。旅行に関して言えば、今までペットの同伴が難しかった交通機関でペット連れOKの試みが始まっているのです。ペットと一緒にフェリーに乗れるのが、商船三井グループのさんふらわぁ。従来のフェリーでも、専用ゲージにあずかる形で一緒に乗ることができたのですが、家族と離れ離れとなるとやはりストレスがかかるもの。さんふらわぁの一部航路では、基本個室利用で、個室まではゲージに入れて運び、室内は自由にさせられるというプランを作っています。さらに、一部新造船では船内にドッグランまであるそうです。

     また、航空会社も今まではスーツケースと同じくチェックイン時預かりとなっていましたが、機内まで同伴できるチャーターフライトを年に何度か行っています。

    <日本航空(JAL)は27日、機内で犬と一緒に旅行ができる「JALチャーター便で行くワンちゃんとの旅 ワンワンJET鹿児島」を行った。ペットはこれまで機内ではなく貨物室で預かっていたが、同乗したいという乗客からの声があるため、同社初のペット同伴フライトとなった。国内では、全日空が同様のフライトを昨年5月に実施している。>

     こうして、各社がシニア消費を狙ってしのぎを削っているわけですが、先行きに全く不安がないかというと、そうでもありません。日本総研が今年1月にこんなレポートを出しています。

    <シニア世代、とりわけ年齢層60歳代(以下、60代)の個人消費が伸び悩み。いわゆる団塊世代(1947~49年生まれ)が2007年以降順次60歳を迎えるにあたり、余暇を楽しむなどして消費をけん引するとの期待が台頭。しかし、実際の消費支出額は小幅な増加にとどまるなど、盛り上がりを欠く状況>
    <団塊世代を含む現在の60代で、余暇関連支出を中心に消費が伸び悩む理由として、金銭的なゆとりがないことが指摘可能。>

     退職金の減額、子育て後の資産形成期である50代も早期の役職定年制などで所得が伸び悩み、さらに年金もさほど伸びないとなると、従来のように60代完全引退のシニア世代に消費を期待するのは難しいかもしれません。が、私はさほど悲観していません。ペットとともに旅行できる環境が整うことは、外国人観光客を呼び込むに当たって非常に大きな財産になるのではないかと思うんですね。先日、ペット同伴でありながらフルサービスのホスピタリティを受けられるホテル、『レジーナリゾート旧軽井沢』を取材した折、そんなことを感じました。

    DSC_4587.JPG

     ペット同伴の宿泊施設を検索すると確かに様々出てくるのですが、ペンションタイプなどが多く、一般のリゾートホテルのようなフルサービスはまだあまりありません。このレジーナリゾートを運営する東京建物リゾートは、蓼科や富士河口湖、箱根、伊豆などすでに5つのリゾートを運営。今回取材した旧軽井沢は、今月11日に正式オープンします。木材をふんだんに使った施設は全部で26室。開放的な高い天井に、大きな窓。テラスから外を見れば森が広がり、この時期は紅葉が見ごろを迎えていました。

    DSC_4563.JPG

     犬と同伴が可能な施設でも、部屋の中だけだったり、部屋の中でもケージに入れないといけなかったりしますが、ここは基本的にどこでも犬と一緒に行けます。そのため、施設のそこここに犬のリードをつないでおけるフックが。これもよく見ると犬の顔を型どっていて愛犬家の心をくすぐるようです。

     旅の楽しみといえば食事。これも犬と一緒に取ることができます。ここは衛生面が気になるところですが、基本的にゲストはみな犬好き。トラブルになることはほとんどないようです。
    リードをつないでおくか、小型犬なら専用のカートに入れて一緒に食卓を囲むこともできます。もちろん、犬用のメニューもシェフが腕を振るっています。

    DSC_4578.JPG

     驚いたのは、バーも犬連れOKという点。メニューには、犬用のカクテル(!)まであり、バーテンダーが一杯ずつ心を込めて作るそうです。ここまで来ると「人間じゃないんだから、犬にそこまでやるか?」という向きもいらっしゃるでしょうが、ここまでサービスするのがまさに「お・も・て・な・し」。特にカネに糸目をつけない富裕層には受けるのかもしれません。スタッフの方は他のレジーナリゾートから移ってきた方が多かったのですが、話を伺うと、
    「もちろん今は日本人のワンちゃん連れの方が大半ですが、徐々に外国人の方も多くなってきています」
    と言っていました。

     軽井沢は近年、海外の大富豪が別荘の建設を計画したりして、海外富裕層からの注目も集まっている土地。特に欧米は日本以上にペットとともにバカンスを過ごすことが身近です。実際、「travel with dog」と検索してみると、出るわ出るわ。飛行機の乗り方から宿泊施設の選び方、旅行前の準備などなど、様々なノウハウ紹介サイトが存在します。訪日外国人数が恒常的に年間2千万人を超えてくる中、この先はどう特色を出していくのかが問われます。今後「インバウンド・プラスワン」が注目されていくかもしれません。
  • 2017年10月30日

    質問時間の配分

     先週末から、国会での質問時間の与野党配分についてがニュースになっています。

    『安倍首相、質疑時間の配分見直し指示=自民「魔の3回生」が拡大要望』(10月27日 時事通信)https://goo.gl/zVeacP
    <自民党の石崎徹衆院議員ら当選3回有志が27日、国会内で森山裕国対委員長と会い、慣例でおおむね「与党2割、野党8割」としてきた質疑時間の配分を見直し、与党の持ち時間を拡大するよう要望した。これを受け、安倍晋三首相(党総裁)は萩生田光一幹事長代行に対し、配分見直しに取り組むよう指示した。>

     「魔の3回生」という見出しに悪意すら感じますが、与党の質問時間を伸ばそうという今回の提案に対してメディアは総じて批判的。
    質問時間を削られる野党にとっては言わずもがな。記者から質問されるたびに激烈に反応しています。

    『野党の質問時間削減に枝野氏反発「とんでもない暴論」』(10月30日 朝日新聞)https://goo.gl/CwJmBB
    <政府・自民党が野党の国会での質問時間を減らすことを検討している問題で、立憲民主党の枝野幸男代表は30日午前、党本部での会合で「とんでもない暴論とも言える主張。一刻も早く取り下げ、建設的な議論ができる状況を作って欲しい。一切、我々として妥協する余地がない」と述べ、検討の中止を要求した。>

     枝野代表曰く、与党は政府から法案の国会提出前に詳しい説明や場合によっては法案を書き換えたりして主張を潜り込ませているのだから国会での質問は野党が多めでちょうどいいとのこと。それにしても、野党8に対し与党2だったというところに驚きました。これに対し、官房長官は「議席数での配分が基本」と反論しています。

    『官房長官 衆院予算委の質問時間 "議席数で配分が基本"』(10月27日 NHK)https://goo.gl/khDguC
    <菅官房長官は午後の記者会見で、衆議院予算委員会での質問時間について、与野党への配分は国会で決めることだとしながらも、議席数に応じた配分が基本だという認識を示しました。>

     そもそも、この与野党の質問時間については慣例で決められてきました。もともと麻生政権までは「与党4割、野党6割」だったものが、旧民主党政権の時に現行の「与党2割、野党8割」となりました。当時野党だった自民党側が主張して与野党8:2にしたのに、ご都合主義も甚だしいという批判が上がっています。6:4を8:2に変えたタイミングもあって、自民党がごり押しをしたかのように今報道されていますが、当時を知る政界関係者は「魚心あれば水心だった」と振り返ります。

    「当時、民主党は党内の路線対立がすでにあって、与党質問の時間が多いと党内不一致的な質問をしかねなかった。ガソリン代の値下げ、高速道路の無料化など、政権奪取の為にした約束を財源問題で断念せざるを得なかったのはまだまだ記憶に残っているでしょう。そうした現実的な政権の判断は、一方で党内論議はガス抜き程度で党の決定はなく政府側によって決定されていた。党=政府なのだから政府の決定は党の決定という建前があったからだが、当時の大勢の民主党国会議員たちは不満を募らせていて、手を焼いていたのだ」

     また、野党側もこの慣例で獲得した多くの質問時間を持て余しているようにも感じます。政界関係者に取材をすると、TVの生中継が入る予算委員会ならば我も我もと手を挙げる質問者の枠ですが、中継も入らない、主要大臣の出席もないような委員会では野党同士で質問時間を押し付けあうというシーンも見られるそうです。
     たしかに、政策的には重要でもメディアの注目を浴びない委員会というものは残念ながら存在します。例えば安保関連の委員会の傍聴に行った際、記者席にいるのは私一人ということもしばしばありました。この委員会では、国土防衛に関して与野党で実際的な議論が行われていて、非常に見ごたえがありました。しかし、現実はそうしたことばかりではないようです。

     そもそも国会議員は選挙で国民の主権の束を背負って選ばれてきた存在。その選挙区の民意をそれぞれしょっているわけで、そこに与野党の違いはありません。したがって、与党だから質問時間が制約され、野党だから多くの質問時間を獲得するというのは、根本的には国民主権に反する行為です。今回の質問時間の割り振り変更について、「モリ・カケ問題について丁寧に説明すると選挙中に言っていたのに、選挙が終わったら手のひらを返した!」との批判がにぎやかですが、ではなぜ与党がこれだけ大勝したのか?なぜ、モリ・カケを追及し続けた野党が伸びなかったのか?そこに、いい加減スキャンダル(とされるモノ)で停滞し続ける国会にウンザリしているという民意が存在したとは言えないのでしょうか?
  • 2017年10月23日

    大切なのは...

     第48回衆議院選挙が終わりました。台風21号列島接近の影響で即日開票できなくなった選挙区や投票時間を繰り上げて締め切った選挙区などもありましたが、今日午後までにすべての選挙区で開票作業が開始され、大勢が判明しました。与党で改憲発議可能な定数の3分の2である310議席に達し、自民党は単独で過半数はおろか、安定的な国会運営が可能な絶対安定多数に到達しています。一方野党では当初破竹の勢いと言われた希望の党が失速。代わって、立憲民主党が判官びいきがあったとも言われる躍進で野党第一党にまで達しました。

    『自公の議席310、与党大勝 立民躍進54、野党第1党に』(10月23日 共同通信)https://goo.gl/9q6tMv
    <第48回衆院選は23日午後、各党の獲得全議席が確定した。自民、公明両党は計310議席となり、定数の3分の2(310)を確保した。自民党は281議席に達し、国会運営を主導できる絶対安定多数(261)を単独で上回る大勝。立憲民主党は54議席で公示前の16議席から3倍以上となり、野党第1党に躍進した。希望の党は50議席と公示前から7減。共産党は12議席、日本維新の会は11議席と低調だった。>

     選挙の結果を受けて、様々な論評記事が出ています。もともと政権に批判的だった左派系の朝日・毎日・東京は政治部長の署名論文や社説で「国民の声に耳を」とか「多様な意見に目を向けよ」という一方、読売・産経という右派といわれる新聞も「おごることなく」と、政権に対して謙虚さを求めています。私自身、選挙の開票速報番組を担当していて、幹部インタビューでそうした低姿勢をアピールする雰囲気を濃厚に感じましたし、翌日の安倍自民党総裁の会見に出席した際にもにこりともせずにメディアに対応する総裁の姿勢を見るだに、スキを見せない姿勢を感じました。

     さて、この自民の大勝、そして立憲民主党の躍進。よくある分析記事には、自民党について他に入れる党もないという消極的な支持が多く集まり、立憲民主党には反自民の受け皿になったのだという記述が目立ちます。むしろこれが自明の前提のようにして論を進める向きも多いのですが、私はどうもそれに違和感を感じるんですね。
     選挙戦を取材し、実際に党首演説などを聞きに行った感じでは、相反する主張の2党にある共通点を感じたのです。それは、両党とも例外的に「経済」について多く語っているという点。実はその傾向は、中盤戦の党首演説にすでに如実に表れていました。

    『各党首演説分析 序盤で「優劣」 舌戦に変化 安倍晋三首相は経済・北に重点 希望の小池百合子代表は首相批判強める』(10月15日 産経新聞)https://goo.gl/qBnw8Y

     この記事の図表を見ていただきたいのですが、自民党の安倍総裁は第一声で3分の1を割いていた経済についての演説を中盤ではほぼ半分にまで広げています。同じように、立憲民主の枝野代表は第一声、中盤戦ともにおよそ4割を経済政策に割いているのです。
     私も平日の昼、雨の中神奈川での枝野代表の演説を見に行きましたが、消費税凍結、格差是正、福祉に財政支出といった具体的な経済政策を熱く語っていました。演説を見守る群衆も、動員されたであろう年配の方もいましたが、むしろ私には若い女性が多い印象を受けました。そして、その若い世代の方々が経済政策の部分では非常に聞き入っている印象で、時折大きくうなずく姿が見られました。
     自民党に対しては物価や実質賃金が上がっていないじゃないかという目標未達に対しての批判、立憲民主に対しては財源をどうするのか?バラマキになるんじゃないか?などなどそれぞれに対して批判はありますが、時間を割いて丁寧に経済政策を説明しているというのは共通しています。

     それに対し、立憲民主を除く野党各党、特に希望の小池代表、共産の志位委員長は「その他」が圧倒的に多く、おそらくここに政権批判、モリ・カケだとか安倍一強打破といった内容が含まれるものと思われます。その傾向は、第一声よりも中盤戦に向けて拡大しています。そして、選挙戦終盤に向けてはさらにその度合いを強め、かなり語気も強めて政権批判を繰り広げていたように感じました。
     もちろん、党首の演説だけで大勢が決したわけではありませんから、あくまで一つのバロメーターに過ぎませんが、党首の演説は選挙戦のさなかでも報道されることが多いだけに選挙結果と全く関連がないとは言えません。結局、自分たちの懐をどれだけ具体的に暖めてくれるのか?その実績や具体案を提示した党派に票が行ったのではないでしょうか?
     今から25年余り前、アメリカ大統領選でブッシュシニアに挑戦したビル・クリントン氏の名言を思い出しました。

    『"It's the economy, stupid"』(マネースクウェア・ジャパン)https://goo.gl/e9bWzR
  • 2017年10月16日

    リベラルとは?保守とは?

     いよいよ選挙戦本番に突入した今回の衆議院議員選挙。公示前の新党結成などを経て3極の戦いなどと言われますが、その紆余曲折の中でクローズアップされた言葉があります。
     それが、「リベラル」。
     民進党の衆議院側と希望の党との合流で、「リベラル系排除」の方針が伝わり、実際にふるいにかけられるに当たって、リベラルって何だ?とばかりに各紙が解説記事を書きました。

    『「リベラル」って何? 衆院選を前に飛び交う背景とは』(10月8日 朝日新聞)https://goo.gl/2NLgt4

    『政党 「保守」「リベラル」って何?』(10月5日 毎日新聞)https://goo.gl/kSx6Sy

    『リベラルとは?「旧社会党系が源流」』(10月2日 日本経済新聞)https://goo.gl/dNPXwk

    『日本だけ特殊、「リベラル」の意味-本来の語義から外れ「憲法9条信奉」「空想的平和主義」か』(10月13日 産経新聞)https://goo.gl/Jvx6qo
    <衆院選の直前から「リベラル」(liberal)という言葉に接する機会が増えた。民進党が分裂し、保守を掲げる「希望の党」への合流組と、民進リベラル派を集めた「立憲民主党」などに分かれたのがきっかけだ。専門家は「個人の自由を尊重する思想的な立場」という本来の意味から外れて、日本ではある特定の「平和主義者」や「左派」を指すと指摘する。>

     各記事に共通するのは、本来の意味である「個人の自由を尊重する」という立場から少し外れ、戦後の基本的人権や平和主義に価値を置き、自主憲法制定を目指す自民党に反対という立場をとっているという点。戦後の東西冷戦下での保守対革新の対決を引きずり、とはいえ当時のように社会主義を目指すとは今更言えないので、ある意味革新陣営の主張から社会主義だけ抜いたような人権・平和の理念を掲げていると言えます。
     海外のリベラルのように「個人の自由を尊重する」ので、外国人であっても日本の政治にかかわることも自由だろうということで外国人参政権に賛成であったり、あまねくすべての人に自由に生きる権利があるだろうということでどちらかというと福祉政策を重点に置いています。
     一方、海外のリベラルと最も違うところが、経済政策。福祉政策をやるにもお金が要りますが、それをなぜか日本のリベラル勢力といわれる人たちは主に増税で賄おうとします。それが所得税増税や法人税増税ならばああリベラルだとわかるわけですが、なぜか消費税増税にこだわります。金融緩和には懐疑的で、国債でこれらの福祉財政を賄うことは極端に嫌がります。また、構造改革などの規制緩和を志向しています。経済に関しては新聞を読んでも右も左も増税・財政規律重視ばかりなのでかえってわかりづらいのですが、いわゆるリベラル・左派といわれる朝日新聞や毎日新聞が消費税増税すべき、金融緩和はもう止めるべき、そんなことより構造改革!と主張していることからも分かります。

     ということで、政治的には改憲反対、経済面では金融緩和に反対で増税志向と、この部分はまるで保守。福祉政策を重視するところだけが、海外におけるリベラルっぽい部分です。自分はリベラルだと思っていても、この経済政策の部分がどうも引っかかるよなぁという方もいらっしゃるのではないでしょうか?私も、経済的にはリベラルだと思っているんですが、現実に日本のリベラル派とは全く主張が違うので戸惑ってしまいます。自分の思考が世界の物差しで見るとどうなのか?それがわかる「政党座標テスト」をやってみました。

    『政党座標テスト』https://goo.gl/uiHBHL

     これは「政府は、裕福層から貧困層に財産を再分配すべきである」など36問の質問に、1.同意するから5.同意しないまで5段階で自分の気持ちを選んで答えていくと、自分の政治的な志向がわかるというもの。36問を答え切ると、横軸が左派・右派で縦軸が共同体主義か自由主義かでプロットしてくれるのです。
     私はといえば、25.0%左派、8.3%自由主義者という結果が出ました。過去の大統領や著名学者と比較すると、ビル・クリントン氏と最も近いようです...。
     ん~、率直に言って、驚きました。右派の左派寄りに出るだろうと思っていたのが、逆に左派の右派寄りに出ましたからね。ただ、4分円の解説は納得のいくものでした。
    <この象限に当てはまる人は、必要な人々に社会的利益を与えるため、市場に課税をする一方で、個人の自由を支持しようとしています。>
     まさに日本と世界のリベラル経済政策の捻じれが出たんでしょう。このブログで何度も書いてきていますが、金融緩和には賛成ですし、富裕層から貧困層への再分配政策もアリだと思っていますので、その分左派に振れたんでしょうかね。

     さて、直前で政党の枠組みが変化したりで目まぐるしかった今回の選挙。ご自身の選挙区でも政党や候補者が変わったりで、今までとは違いいろいろなことを思いめぐらしている方もいるかもしれません。一票を投じる前に一度テストを受けておくと、考えが整理されるかも知れませんよ。
  • 2017年10月11日

    与野党の経済政策とCDS

     第48回衆議院議員選挙が公示され、12日間にわたる選挙戦に突入しました。経済論戦に関しては、消費税の増税分の使い道を変更すると公約した与党に対し、野党はいずれも消費税増税の凍結、あるいは廃止を主張しています。こうした与野党の経済政策の主張に対し、従来から財政健全化のためには消費税を引き上げるしかないと主張してきた新聞の経済面はこぞって批判しています。政治的なイデオロギーには右左がありますが、こと経済政策に関しては左右の別なく増税を主張するタカ派です。

    『【経済Q&A】消費増税 安倍政権、使途変更へ 財政再建に遅れ』(10月4日 東京新聞)https://goo.gl/Z8tLnK
    <新党の「希望の党」と「立憲民主党」のほか、共産党と社民党も景気への悪影響から、増税に凍結か反対の考えです。ただ、財政再建が進まないことでは与党と同じです。
     国の一七年度予算で社会保障費は約三十二兆円あります。今後、第二次世界大戦直後に生まれた「団塊の世代」の高齢化が進み、医療・介護費の急増が見込まれています。それなのに、将来世代の負担を軽減するための道筋は、どの党も明確に示していません。>

    『衆院選 財政再建遅れ金融緩和、長期化も』(9月29日 産経新聞)https://goo.gl/9rAkwC
    <実質的に選挙戦が始まった衆院選に向け、与野党からは2017年10月の消費税増税の使途変更や凍結を求める声が相次いでおり、財政再建の遅れが不可避になっている。日銀の大規模金融緩和で低金利が続いているが、政府が赤字国債を増発する事態になれば国債の信認が揺らぎ、金利の上昇圧力が強まるだけに、日銀は難しいかじ取りを迫られそうだ。>

     左の東京新聞から右の産経新聞まで、増税増税増税。増税した分を借金返済に回す緊縮財政をやらないと、財政再建が進まず国債の信認が揺らぐ!国債金利の上昇圧力が高まる!という言い回しまで、右から左までコピペかというぐらいに同じ。こんな現状を見てみると、経済欄に関しては読み比べる必要などないのではないかと思ってしまいます。
     与野党ともに財政健全化に後ろ向きであると、手当たり次第に批判を繰り広げる新聞各紙経済面。彼らがその主張の根拠の一つに挙げているのが、国債のクレジットデフォルトスワップです。

    『CDS』(9月29日 時事通信)https://goo.gl/uF9Xcr
    <CDS(クレジット・デフォルト・スワップ) 国や企業が破綻などにより債務不履行に陥るリスクを取引する金融商品。事前に保証料を支払えば、保有する国債や社債が焦げ付いても、損失の補填(ほてん)を受けることができる保険の役割を持つ。保証料は対象先の信用度に応じて変動し、信用が低下すると保証料は上がる。次期総選挙で消費税増税や増収分の使途見直しが焦点となる中、財政悪化への懸念から日本国債の保証料が上昇している。>

     わざわざ用語解説の中にも財政悪化の懸念から保証料が上昇していると入れ込んでくるあたり、増税へのあくなき情熱を感じます。たしかに、9月に入ってから日本国債のクレジットデフォルトスワップは上昇しているようです。

    『市場、選挙後の財政悪化を警戒 国債の信用力が低下』(9月28日 日本経済新聞)https://goo.gl/vgEpJx
    <金融市場で日本の財政悪化への警戒感が高まっている。日本国債の信用力を映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率がここ数日で急上昇し、約1年2カ月ぶりの高水準をつけた。長期金利もおよそ2カ月ぶりの水準まで上がった。衆院選を前に、安倍晋三首相をはじめ、どの政党が勝っても財政再建の道は険しいという見方が広がる。>

     CDSが上昇しているということは、市場が日本国債の焦げ付きリスクが高まっていると感じている証拠。たしかにその通りです。が、それが与野党の公約が発表されたタイミングだったとしても、果たして本当にそれが理由でCDSが上昇しているかどうかは検証が必要です。

     日経の記事に添えられているグラフをよく見てみましょう。すると、7月までは20ベーシスポイント台半ばで推移していたCDSが、8月に入ったあたりからぐっと上昇しています。
     あれ?8月?その頃は解散の「か」の字も意識されていなかったころ。当然、政権の消費増税分の使い道変更も発表されていなければ、従来から消費税廃止や凍結を主張していた共産党や日本維新の会などを除き、野党がそろって消費税増税見送りを主張していたりはしませんでした。むしろ、前原さんは消費税を15%まで上げて、それを財源に社会保障を充実させるとして民進党の代表選を戦っていたはずです。「選挙後の財政悪化を懸念」というのは、ちょっと無理があるのではないでしょうか...?

     もう一つ、与野党の選挙公約発表というのは専ら国内的な出来事です。ということは、9月に日本国債のCDSが日本以外の国債のCDSとは違う値動きをしているはず。そこで、お隣の韓国国債のCDSを調べてみますと、これまた不都合な真実が明らかになりました。

    『北朝鮮問題が引き続き市場の重石に』(9月26日 マネースクウェア・ジャパン)https://goo.gl/JMUR5i
    <地理的に最も北朝鮮リスクが懸念されるのは韓国と考えられます。その韓国国債に対する保険料の意味合いを持つCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は9月22日時点で72.14と、北朝鮮が核実験を行った後の9月6日72.25と同水準です。>

     記事の中に韓国国債に対するCDSの推移を示すグラフが貼ってありますが、やはり8月からググッと上昇しています。そして、その理由として記事の中には「北朝鮮リスク」と明確に書いてあります。あらま。

     どうして同じタイミングで、地政学的に見ても同じようなリスクを抱えている日本と韓国の国債CDS上昇の理由がこれほど違うのでしょうか?韓国国債と日本国債にそんなに特性の相違があるのでしょうか?もちろん、韓国国民、日本国民にとっては思い入れがあるのかもしれませんが、取引の大半を占める国際的な機関投資家にとっては運用先の一つにすぎず、その投資行動は一貫しているはずです。であれば、この情勢下、国内の選挙というミクロの事象ではなく、よりマクロな視点に立って北朝鮮リスクを睨んでCDSが上昇していると結論付けるほうが理にかなっているのではないかと私は思います。

     新聞各紙が社論として増税推進を掲げるのは言論の自由だと思いますし、それが政治的イデオロギーとかかわりなく各紙が一緒なのもきっと偶然の符合か知識な豊富な経済記者の皆さんが財政を憂うと同じような結論になるのでしょう。そこまでは、まだわかります。しかしながら、どうして揃いも揃って債務不履行リスク(CDS)上昇の原因を読み誤っているのでしょうか?それで、有権者には冷静な判断が求められるとか主張できるのでしょうか?判断はこっちでするから、まずは正確な情報が欲しい。まっとうな有権者はそう思っているのではないでしょうか?
プロフィール

飯田浩司

出演番組:
ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

最新の記事
アーカイブ

トップページ