• 2017年02月13日

    PKOタテマエの議論を止めよ

     先週から今週にかけて、日米首脳会談や北朝鮮のミサイル発射など、海外からの大きなニュースが立て続けに入ってきました。その裏で行われている国会の審議はちょっと隅に追いやられている感じですが、こちらも地味に揉めています。金田法相のいわゆる"共謀罪"を巡るチグハグな答弁、文部科学省の天下り問題に並んで問題視されているのが、南スーダンPKO日誌問題。先週半ばに「ない」とされていた日誌が実はあったとなり、防衛省から公表されました。

    『激しい銃撃戦・戦闘... 南スーダン陸自文書、緊迫の記述』(2月8日 朝日新聞)https://goo.gl/quh7s9
    <昨年7月の南スーダンでの戦闘状況について、防衛省が7日に公表した文書からは、激しい衝突が陸上自衛隊の派遣部隊のすぐそばで繰り広げられていた様子が浮かぶ。紛争当事者間の停戦合意などの「PKO参加5原則」が保たれているのか、議論が再燃する可能性もある。>

    『南スーダン陸自日報 「ジュバで戦闘」を明記 PKO停止を危惧』(2月8日 東京新聞)https://goo.gl/emd9b2
    <昨年七月の衝突では、稲田朋美防衛相が同年秋の臨時国会で「国際的な武力紛争の一環として行われる人の殺傷や物の破壊である法的意味の戦闘行為は発生していない」と強調。防衛省の武田博史報道官は七日の記者会見で、日報の「戦闘」について「一般的な意味で用いた。政府として法的な意味の戦闘が行われたとは認識していない」と説明した。>

     野党は、当初「廃棄した」とされていた日報の存在が後になって発覚したということで公文書管理の在り方を問題視して批判していますが、それ以上に日報の中に「戦闘」という表記があったことを問題視し、国会で執拗に質問して攻め立てています。

    『野党、3閣僚に照準=「問題隠蔽」と徹底追及』(2月9日 時事通信)https://goo.gl/ebjCpR
    <日報に現地で「戦闘」があったと表記されているのに、稲田氏は「法的な意味での戦闘行為ではない」と強調している点。野党側は現地情勢がPKO参加5原則から逸脱している可能性もあるとみて、明確な説明を求めていく。>

    また、国会の外でも抗議のデモが行われました。

    『稲田朋美防衛相の南スーダン隠ぺい開き直り答弁に国会前で抗議デモ! 憲法を蹂躙する稲田は即刻辞任しろ!』(2月11日 リテラ)https://goo.gl/ahTNq9
    <寒空の下、国会前に響き渡るコール。──昨日10日、国会前では、南スーダンへの自衛隊PKO派遣の撤退を求める抗議行動がおこなわれた。主催者発表によると、その数は500人。新聞社やテレビ局の取材陣も数多く詰めかけた。
     もちろん、今回の抗議の発端となったのは、南スーダンの自衛隊による日報において、昨年7月の大規模な交戦を「戦闘」と明記していたにもかかわらず、稲田朋美防衛相は頑として「衝突」と言い換えてきただけでなく、「戦闘」としなかったのは「憲法9条上の問題になるから」と平然と言いのけたことだ。>

     この記事にある通り、この問題は突き詰めれば憲法9条につながっていく問題です。なぜ「戦闘」ではなく「衝突」なのか?それは、「戦闘」となると、「戦力の不保持」、「交戦権の否定」を掲げる憲法9条と矛盾するからですね。ただ、現場はいちいち細かな文言まで気にしていられません。現場が「戦闘」と表現するような激しい衝突がもしあったとすれば尚更です。

     そもそも、かつてのPKOと違い、90年代半ばからのPKOは何のリスクもないようなところには派遣されません。ある程度のリスクがあるからこそ、PKOが組織されるわけですね。それについては、国連の公式説明にもなされています。

    『平和維持活動の歴史 ~ 黎明期から冷戦後の興隆期、そして現在』(国際連合広報センターHP)https://goo.gl/DWNojF
    <1990年代半ば:再評価の時
    初期のミッションが全般的に成功を収めたことで、国連PKOに対する期待は、その遂行能力を超えて高まりました。特に1990年代半ばには、安全保障理事会が十分に強力なマンデートの認可も、十分な資源の提供も行えないような状況が生じ、問題が表面化しました。
    (中略)
    平和維持要員は、戦闘当事者が和平合意を守らなかったり、十分な資源も政治的支援も受けられなかったりする状況に直面するようになり、注目の的となっていたこれら3件のPKOに対する批判は高まりました。民間人の死傷者が増大し、戦闘が継続する中で、国連PKOの評判も悪化しました。>

     PKO活動による死者数も、去年12月までの累計で3400人あまりに及んでいますが、特に90年代半ばの旧ユーゴ、ルワンダ、ソマリアでのPKOなどがあり、年間100人を超える死者を出しているのです。そうした変化したPKOと、我が国としてどう関わっていくのか?国会の内外での議論で決定的に欠けているのはこの視点です。大臣のクビを取ろうとするのも野党としては重要なのかもしれませんが、そもそものPKOの是非について議論するのも重要なのではないでしょうか?稲田大臣や安倍総理の答弁ぶりを批判して「憲法を踏みにじるな!」という主張があちらこちらで見られますが、その方々にぜひ参照してほしいのが、憲法前文です。

    『日本国憲法』(e-Gov)https://goo.gl/AHQTl

    前文にもいろいろな批判が存在しますが、参照してほしいのはその部分ではなく、こちら。
    <われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。>

     憲法前文で誇り高く謳われているこの一節。まさにこの精神に最も適っているのがPKOの活動なのではないでしょうか?もちろん、だからといって闇雲に参加するべきだというわけではありません。この前文の精神に適うという我が国にとってのメリットの部分と、派遣国の情勢によるリスクを天秤にかけてその都度判断するというのが、問題に対する誠実な態度でしょう。その時に重要となるのが、現場から上がってくる情報。これが議論のベースになるわけですから、正確な情報が上がってくることが不可欠ですが、今国会の内外で行われている「戦闘」という文言にまつわる議論は、今後正確な情報が上がってくるのを妨げるような気がしてなりません。
     政府・与党側も憲法問題やPKOの是非に関する具体的な議論に入って派遣が滞るのを危惧して「戦闘」ではなく「衝突」だと言い募り、野党側も文言が政府の説明と食い違うという一点だけで大臣の首を取ろうとしている。PKO派遣の是非まで話を進めると、そもそも南スーダンへの派遣を決めたのは民主党政権時代ですから、自分たちへのブーメランのように批判の矢が飛んでくるのもマズイと思っているのかもしれません。

     しかし、これでは現場は国会で問題にならないような情報しか上げないようになってしまうでしょう。不幸にも殉職した隊員がいた場合にも、「事故死」と報告されてしまうかもしれません。すでに日本のPKO5原則が厳格に守られるような事案は多くないことは、国際協力の当事者の間では常識となっています。現実とかい離した議論を続けているうちに、矛盾がどんどんと積み重なっています。与党も野党も、タテマエの議論をいい加減止めて、本質をついた議論を期待したいものです。
  • 2017年02月07日

    この道は、いつか来た道...

     プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が来日しました。メディアのインタビューに答えたり、講演をしたりと様々な日程をこなしました。私も、先週水曜に都内で行われた講演を取材したんですが、その後の報じられ方を見て、以前フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が来日したときのデジャヴを見ているようでした。

     奇しくも2年前の同じ1月末から2月初めに来日していたピケティ氏。当時、雑誌・テレビに引っ張りだこになったわけですが、日本記者クラブで行われた会見で消費増税について否定的な発言をしてから空気が一変。ご本人の離日とタイミングを合わせるように潮が引くように取り上げられなくなりました。日本記者クラブでの会見と、それを各メディアがどう取り上げたのかは当時、私もこのブログで書いてますので良く覚えています。

    『ピケティ報道とお上への忖度』https://goo.gl/g3OZFl

     では、今回のシムズ教授に対する報道はどうだったのか?私が取材できた先週水曜の講演というのが、日本経済研究センターと一橋大学が開催したセミナーです。まずは、主催者が出している講演録から。

    『国は「将来の増税なし」と宣言し、インフレ誘導を―物価水準の財政理論でシムズ氏らが講演』(2月2日 日本経済研究センター)https://goo.gl/2Gnw7g

     前半はシムズ教授の講演、その後パネル討論という流れでおよそ2時間にわたって行われました。全体を通じてのテーマは「物価は何で決まるのか」。シムズ教授が提唱するFTPL(物価水準の財政理論)の説明と、その考え方を足元の日本経済にどう適用できるのかが中心となりました。
     まず、FTPLについては、<FTPLは財政と物価の関係を示す経済理論の1つ。財政赤字を穴埋めするために増税するのでなく、政府が恒久減税などでインフレ期待を引き起こし足元の消費を拡大させる>となっています。通常は政府が国債を発行して歳出を拡大すれば、その分の負債は将来的に増税をしたり成長に伴う税収増で賄います。ところが、FTPLでは政府が増税による財政健全化を放棄します。すると、国債を発行すればするほど信用が損なわれ価格が下落(=国債利率が上昇)。結果、適度な国債発行を維持すれば適度なインフレ状態を作り出すことが出来る。逆に、国債発行を絞ってしまうと(=財政出動を絞ってしまうと)逆に国債利率が下落しデフレを加速してしまう。従って、特に日本のようにすでにデフレに染まりきり、インフレ予想が容易に信じられない世の中では国債発行による財政出動がデフレ脱却のキーになるという主張です。

     その主張に沿うと、財政健全化を墨守する姿勢そのものがデフレへの圧力ということになります。財政健全化のために消費増税が必要だ!というのも、デフレ脱却の足を引っ張っているということ。実際、シムズ教授は<「政府はインフレが債務の重荷を減らすことを明示する。消費増税の延期もありうる選択だ。そのような方策を実施することで、資産保有者や個人にとって国債の魅力度が低下し、財の消費をするようになる」>と講演で語っています。

     さて、それを各紙はどう報じたのか?意外なことに紙面では朝日新聞がシムズ教授の主張を正確に報じていました。

    『物価2%上昇へ「増税延期宣言を」 財政政策重視、シムズ教授』(2月2日 朝日新聞)https://goo.gl/K78x70
    <財政支出を増やすことで物価を上げるという理論で注目されている米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授が1日、東京都内で講演した。シムズ氏は日本政府と日本銀行が目指す「年2%」の物価上昇目標の達成に向け、「消費増税は先延ばしすると宣言するべきだ」と提言した。>

     また、紙面ではさほど触れなかったものの、Web上では最も正確に書いたのが産経新聞です。

    『「日本の消費税増税は正しくない選択だった」 ノーベル経済学賞学者が指摘』(2月2日 SankeiBiz)https://goo.gl/Limj5y
    <さらに「(2014年4月の消費税増税は)正しくない選択だった」と強調。「増税時期は物価水準とリンクさせるのが効果的だ」として「増税先延ばしを宣言する必要がある」と説いた。>

     見出しにもあるんですが、パネル討論で司会から「消費増税は正しくなかったか?」と聞かれ、シムズ教授は「Yes! I think」と明快に答えていました。続けて、「それがあったからアベノミクスは上手くいかなかった」とも言い切っています。現在物価が伸び悩んでいるわけですが、この原因をそもそも金融緩和が効かなかったのだとするアベノミクス批判に対し、明快に否定してみせたわけですね。

     一方、シムズ教授の発言を引きつつ、それとは真逆の主張をにじませたのが毎日新聞です。

    『脱デフレ クリストファー・シムズ米プリンストン大教授、増税凍結で 専門家、財政拡大の正当化を懸念』(2月2日 毎日新聞)https://goo.gl/RK5qC1

     見出しからしてシムズ教授の理論に懐疑的なことがありあり。「財政拡大の正当化を懸念」って、そもそも財政拡大は悪いことという前提があり、だから「正当化」という開き直りを「懸念」しているようです。もちろん、リードも悪意全開です。

    <増税や財政再建目標を凍結することがデフレ脱却につながるとの主張で、一橋大などの招きで来日し、日銀などで講演会を行った。背景には日銀の大規模金融緩和が手詰まりに陥っていることがある。専門家からは、大規模な財政出動や財政健全化目標の棚上げを正当化する口実になりかねないと危惧する声も出ている。>

     どうでしょう?「大規模な財政出動や財政健全化目標の棚上げ」は絶対に許せないというのがにじみ出ていますね。シムズ氏の理論はそれらを「正当化」する「口実」なんだそうです。「口実」って、「言いのがれの言葉や材料。言い訳。」という言葉ですから、ノーベル経済学者の理論を言い訳として使うな!と毎日は暗に批判しているわけですよね。全く、どれだけ緊縮・増税したいのか...。

     それでも、まだシムズ理論を紹介しているだけ毎日はマシです。このセミナーを後援し、パネル討論の司会まで出している日本経済新聞はもっとひどい。ここまで縷々書いてきたとおり、このセミナーはそのほとんどを日本経済の今後について議論をしていました。それは、先ほども挙げた日本経済研究センターの講演録でも明らかです。ところが、これが日経にかかるとそんなことはすっ飛ばして、私には枝葉の議論に見えたアメリカ・トランプ大統領の経済政策についてがメインであるかのような記事になりました。

    『トランプ氏の財政策は「人気取り、財源欠く」 シムズ米大教授』(2月2日 日本経済新聞)https://goo.gl/gxmQkb
    <「法人減税やインフラ投資といった人気取りの政策を掲げるが、財源に具体性を欠く」。来日中のクリストファー・シムズ米プリンストン大教授は1日、トランプ米大統領が掲げる財政拡大策に警鐘を鳴らした。
     日本経済研究センターと一橋大が都内で開いたシンポジウムのパネル討論で発言した。「インフレ圧力の抑制が難しくなる懸念がある」とも指摘した。>

     パネル討論では、司会の経済部長がしきりに消費増税によって社会保障財政を改善し、それにより将来不安を払しょくし期待に働きかける。そしてデフレから脱却できるのではないか?と聞いていました。「期待に働きかける」という一点ではFTPLと同じですが、その政策経路は全く逆。むしろ、消費増税による緊縮姿勢が見えれば、将来にわたってのインフレ期待がしぼんでしまうというのがシムズ氏の主張のはず。その意味では、シムズ氏が消費増税に賛成するはずがないのですが、それをしきりに聞き、意に沿う答えが得られなかったので紙面ではシムズ氏の主張を丸ごと削ってしまったのか...。そう勘繰ってしまいたくなる日経の紙面作り。自社のホールを使い、自社の関連団体が主催し、自社も後援に入っているセミナーについての記事がここまで曲げられているとは正直驚きでした。残念ながら、2年前とメディア環境は変わっていないようです。したがって、当欄の締めも2年前と同じです。

     自説に沿わなければ、扱いは極力小さく、あるいはゼロで。これも「報道の自由」の範疇なんでしょうか?
  • 2017年02月01日

    世論調査の落とし穴

     毎週末、何かしらのメディアが世論調査を行っているので、週明けの新聞・テレビの見出しには世論調査の結果が項目として上がってきます。毎回聞かれる内閣支持率と支持政党についてなど、だいたい各社同じようなことを聞いているので、数字の違いこそあれ、時期が近ければ必然的に同じような結果になるんですが、陛下のご譲位についての設問では違いました。全く正反対の結果が見出しになっていて、おや?と思ったんですね。まずは見出しだけをご覧ください。

    『退位めぐる特例法案「賛成」は63% 朝日新聞世論調査』(1月17日 朝日新聞)https://goo.gl/8mzNwA

    『退位「特例法案」に賛成69%...読売世論調査』(1月29日 読売新聞)https://goo.gl/94T1Bc

    『天皇退位、特例法に「賛成」64% 本社世論調査』(1月29日 日本経済新聞)https://goo.gl/ZNcLhK

    『米国第一に「懸念」83% 退位「典範改正支持」63% 共同世論調査』(1月30日)https://goo.gl/qkojWL

    『譲位「恒久制度化」60・8% 9・5ポイント減少も依然最多 「一代限り」は上昇』(1月31日 産経新聞)https://goo.gl/2Y2db9

     どれも「賛成」と答えた人の比率を載せているのでパッと見は判別しづらいんですが、上に挙げた3紙、朝日・読売・日経は一代限りの特例法への賛成が6割以上。一方、下に挙げた共同・産経の2紙はご譲位の制度の恒久化、あるいはそれに不可欠な皇室典範の改正にまで踏み込むべきだという回答が6割以上に上ったというのです。これが、片一方は議論が始まった当初の回答、もう一方が現在というなら自然ですが、いずれも今月に入ってから実施された世論調査。朝日以外はいずれも先週末、1月28日、29日に実施されたものなのです。
     なぜ、こうした違いが出てきたのか?その理由は聞き方にありました。質問と回答を日経以外の各紙は載せていたので、それを見てみましょう。

    『世論調査―質問と回答〈1月14、15日実施〉』(1月17日 朝日新聞)https://goo.gl/XbtvSN
    <◆天皇の退位についてうかがいます。今の天皇陛下だけが退位できるようにするのがよいと思いますか。今後のすべての天皇も退位できるようにするのがよいと思いますか。天皇は退位すべきではないと思いますか。
    ・今の天皇陛下だけが退位できるようにする25
    ・今後のすべての天皇も退位できるようにする62
    ・天皇は退位すべきではない6

    ◆政府は今度の国会で、今の天皇陛下に限って退位できるようにする特別な法案を提出し、成立をめざす方針です。この方針に賛成ですか。反対ですか。
    賛成63 反対27

    ◇(「賛成」と答えた63%の人に)その法案が成立した場合も、今後すべての天皇の退位のあり方についての議論を、さらに続ける方がよいと思いますか。その必要はないと思いますか。
     続ける方がよい75〈47〉 その必要はない20〈12〉>

    『「2017年1月 電話全国世論調査」』(1月30日 読売新聞)https://goo.gl/Xanbsf
    < 天皇陛下の「退位」などについてお聞きします。
    Q あなたは、天皇陛下の退位について、どう対応するのがよいと思いますか。次の3つの中から、1つ選んで下さい。
    答 1.今の天皇陛下だけに認める特例法をつくる  33 
      2.今後のすべての天皇に認める制度改正を行う 59 
      3.退位を認める必要はない           4    
      4.答えない  4 

    Q 政府は、今の天皇陛下に限って退位できるようにする特例法案を、今の国会に提出する方針です。この法案に、賛成ですか、反対ですか。
      答 1.賛成 69    2.反対 23    3.答えない  7 

    Q 政府は、特例法が制定された場合も、将来のすべての天皇の退位を認める制度改正について、検討を続けるべきだと思いますか、その必要はないと思いますか。
      答 1.続けるべきだ 75    2.その必要はない 17    3.答えない  8>

    共同通信の世論調査については質問と回答を探し切れなかったので引き写します。
    <問5 天皇陛下の退位について政府は、特別法で今の陛下一代に限って退位できるようにする方針です。一方、将来の天皇も退位できるように皇室典範を改正するべきだとの意見もあります。あなたはどう思いますか。
     一代限定の特別法で対応すべきだ 26.9
     皇室典範改正ですべての天皇に適用するべきだ 63.3
     退位できるようにする必要はない 4.6
     分からない・無回答 5.2>

    『政治に関するFNN世論調査』(1月31日 FNN)https://goo.gl/ydVsPq
    <Q6. 現在の皇室制度では規定がない天皇の退位について、政府の有識者会議が論点を整理して公表しました。退位について、将来の天皇も含む恒久的な案よりも、今の陛下1代に限る案の方が望ましいとの考えをにじませています。あなたは、退位についてどう考えますか。次の中から1つ選び、お知らせください。
    ・今の天皇陛下1代に限り、退位できるようにすべきだ 31.4
    ・今後のすべての天皇を対象に退位できるよう、恒久的な制度に変えるべきだ 60.8
    ・天皇は退位すべきではない 6.4
    ・わからない・言えない 1.4>

     質問と回答を見てわかる通り、特例法賛成多数と打った朝日・読売は、まずご譲位というシステム一般についての質問をした後に特例法のことを聞いています。一方、共同・産経はご譲位についてどう考えるかを直接問うているんですね。朝日・読売もご譲位一般について聞いた最初の質問ではすべての天皇の譲位に賛成という人が多数を占めています。この質問の段取りで、2番目に聞いた特例法についての賛成意見を見出しにまで持ってくるのはちょっと強引な印象を受けますね。

     ただ、こうした、一見すると正反対の結果が出たことは過去にもありました。最も顕著だったのは、安保法制審議のまっただ中。その時は、政治的にいわゆる保守と見られている産経や読売の世論調査では賛成が多く出、いわゆるリベラルと見られている朝日や毎日、共同通信の調査では反対が多く出ていて、それぞれが反対が多い!いや、賛成優勢!と見出しにしていました。
     今回面白いのは、政治的なスタンスでは異なる朝日と読売が同じように「特例法に賛成多数」という見出しを掲げ、やはりスタンスの異なる産経と共同通信が「恒久化に賛成多数」という見出しを掲げている点です。
     推測するに、朝日や読売はちょっと強引な解釈であっても政権の意向に沿った形での報じ方を重視した可能性があります。一方で、普段はぶつかる産経と共同が同じ見出しというのは、産経が右派の一部にあるご譲位そのものにも懐疑的な意見を反映し、また、今回のご譲位という問題提起を契機に憲法改正議論を喚起するためには特例法といった中途半端なやり方ではダメだという意見を反映しているのではないでしょうか?また、共同については、野党の主張である、特例法ではなく皇室典範の改正ですっきりした形を取るべきだという意見を反映したものなのでしょう。

     普通は新聞を何紙も読む人はいませんし、いたとしても世論調査の質問と回答なんていう細かい記事まで目を通す人はそういませんから、どちらか一方の意見が世の中の大勢だと思ってしまう人がいても不思議ではありません。聞き方ひとつで回答が変わる世論調査。見出しをつけて印象を引っ張っていく危うさを感じずにはいられません。

     ただ、一つ救いだったのは特例法多数を打った朝日・読売両紙がその直後の質問で、特例法賛成であってもご譲位の議論は続けていくべきかという質問をしていて、両紙とも7割を超える人が賛成と回答している点です。まずは特例法で今上陛下のご譲位を行い、しかる後にのちの天皇一般のご譲位についても制度化していく。ひところ言われた「二段階論」が国民の一致する議論の進め方だと思うのですが、いかがでしょうか?
  • 2017年01月23日

    トランプ批判で飛んでくるブーメラン

     ついに、第45代アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任しました。就任演説での語りぶりがあまりに選挙戦と同様の内向きさだったので、日本のメディアも総スカン。大統領になれば少しは変わると期待されていただけに、批判に次ぐ批判という感じでした。ま、勝手に期待して、勝手に裏切られているわけなんですが...。

    『トランプ大統領就任演説 日本語訳全文』(1月21日 NHK)https://goo.gl/EjoqG8

     私はこれを見ていて、アメリカは普通の国に戻ろうとしているんだなと率直に思いました。考えてみれば、アメリカが超大国で、"世界の警察官"でいたからこそ、大統領就任演説でも哲学的で格調高く世界の未来について語っていたわけです。普通の国の指導者であれば、自分の国についてに多くを割くのが当然。実際、我が国の事実上の最高指導者、内閣総理大臣の就任演説たる所信表明演説や施政方針演説では基本的に内政についてが多くを占めていますよね。

     さて、トランプ大統領は既存の常識、今まで築いた基盤をほとんどすべて壊していくことを志向しています。何しろ今までは超大国として、国際政治・経済・外交、様々な分野で影響力を行使し、既存の価値観を形成してきたアメリカですから、トランプ大統領がそれらをひっくり返せば様々な分野で批判が噴出します。

    『トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説』(1月22日 読売新聞)https://goo.gl/Ok6ZE9

    『社説 米政権と世界経済 繁栄の基盤を壊すのか』(1月23日 毎日新聞)https://goo.gl/kSt3aj

     日米安保条約に対する認識不足から、日本へさらなる負担を求めようとする対日外交での発言などのように、今まで政治経験もない、行政経験もない、いわば素人なのでイメージからの間違った思い込みも多くあります。当然、それらを批判する記事が出されるわけですが、そうした記事の中にはイデオロギーからの批判もある一方で、間違った思い込みを正すきちんとした認識を書いているものもあるわけです。たとえば、貿易収支に対する認識。

     先ほどの読売の社説の中には、
    <保護主義は、米国の投資環境の悪化と生産性低下、物価高を招く。雇用増や所得向上につながらず、格差が拡大しかねない。「誰かが得をすれば、誰かが損をする」というゼロサムの発想は不毛だ。>
    と、トランプ氏を批判しています。
     また、翌日の毎日の社説では、
    <自由貿易を通じて共に繁栄しようという従来の発想と、他国=悪、自国=善ととらえ、「(他国からの)保護が、(我々の)偉大な繁栄と強さにつながる」(トランプ氏就任演説)という考え方は全く逆だ。>
    と、やはりトランプ氏の保護主義的な考え方を批判しています。

     トランプ氏の保護主義的な発想の根っこには、アメリカが貿易赤字を貯めこみ過ぎて国富が流出しているという意識があります。就任演説の中で<アメリカが金を払って外国を豊かにしてやってきた>という言い回しがそれを象徴していますね。
     一方、先ほど挙げた両紙とも、その「貿易赤字=悪、貿易黒字=善」というトランプ氏の考え方を間違っていると批判しているわけです。代表的なメディアということでこの2つの社説を紹介しましたが、他のメディアもトランプ氏の通商政策については同じような批判ばかり。これ、良く覚えておきましょう。

     というのも、トランプ氏の通商政策批判と同じように、日本の通商政策についても「貿易赤字=悪、貿易黒字=善」という重商主義的な考え方は間違いだと主張しているかといえば、全く別。日本の貿易収支が赤字になった途端、こんな記事が出る始末です。

    『貿易収支に赤字圧力 5月、輸出の落ち込み鮮明 円安効果はがれ4カ月ぶり』(2016年6月20日 日本経済新聞)https://goo.gl/UaCHFL
    <財務省が20日発表した5月の貿易収支は4カ月ぶりの赤字だった。2月以降、黒字が3カ月続いていたが、円安や原油安が一服して「メッキ」が剥げ落ち、日本の製造業が輸出で稼ぐ力の「地金」が現れた。新興国など海外の需要も強まる展望は見えず、貿易赤字が基調として定着するとの見方も浮上してきた。>

     ご紹介したのは記事のリード部分。のっけから明らかに「貿易赤字=悪」という前提で書かれているのが良く分かります。貿易赤字が悪いと思うのであればそれはそれで考え方ですから、新聞としてそれをお書きになるのは自由です。ただし、トランプ氏の言う貿易赤字を解消しようとする言説は批判するのに、日本が貿易赤字を計上した時は一刻も早く解消しろとばかりに批判するのはあまりにご都合主義が過ぎるのではないでしょうか。このダブルスタンダードは首をかしげざるを得ません。
     その上、政治的なスタンスでは保守とリベラルで正反対の読売新聞と毎日新聞が、経済では同じようなダブルスタンダード。どちらもまさに、「お前が言う?」といったもので、この矛盾を浮き彫りにしただけでもトランプ大統領就任は意味があったと思います。

     ちなみに、日本の12月と2016年の貿易収支は今週水曜、25日に発表となります。はたして、各紙がどういった書き方をしてくるのでしょうか...?
  • 2017年01月18日

    インターバル規制に落とし穴?

     去年の後半に電通の女性社員の過労自殺などで注目が集まった長時間労働の弊害。今年は『働き方改革元年』という旗印で、いわゆる日本型労働慣行と呼ばれるものを改革しようという機運が盛り上がっています。残業を減らすにはどうしたらよいのか?昔から浮かんでは消え、浮かんでは消えるこの問題。フィスを強制的に消灯させてみたり、上司が残業していないか見回ってみたり、はたまた早朝出勤を奨励して、その分社員を早く帰してみたり...。

    『PC強制終了・ノー残業デー...長時間労働なくす実践例』(2016年12月25日 朝日新聞)https://goo.gl/RPFFIU
    <多くの会社がとりくんでいるのが、「経営層から長時間労働是正へのメッセージを発信」(53社)、「各人の労働時間を集計し役員会に報告。長時間労働の部署へ是正措置を求める」「新任管理職に対し労働時間管理を含む研修を実施」「有給休暇取得の進捗(しんちょく)などを管理する仕組み」(いずれも50社)、「全社毎週水曜日」など一律の「ノー残業デー」(49社)。>

     そんな中でここ1年ほどで注目されだしたキーワードに『インターバル規制』というものがあります。インターバル規制とは、前日の終業から翌日の始業までの間の時間をきちんと確保しましょう、そのために最低限空けるべき時間を決めて規制しましょうというもの。これを使えば、前日に深夜に及ぶ残業をした場合、翌日の出社時間を遅らせて休息をとることができます。現状の一般的な就業規則では、前日どんなに残業しても翌日はきちんと定時に出社しないと遅刻扱いになって評価が下がったり、半休扱いになったりしてしまいます。それを避けるために、休息を取らずに無理やり出社するのを続けていては肉体的にも精神的にも問題だというのは議論の余地はないでしょう。
     ただ、企業経営者側からすると、一律にインターバル規制で縛られてしまうと、繁忙期に柔軟に対応できなくなる、業務に支障が出ると難色を示す場合が多いようです。実際、この『インターバル規制』を導入している企業は厚生労働省によれば全体のわずか2%。社員はあくまで使い勝手が良くないといけないという企業経営者側の心理が露骨に表れています。

    『インターバル規制に企業及び腰 業務後に休息時間保障、継続に支障も』(1月9日 産経新聞)https://goo.gl/YUAvNz
    <電通の過労自殺問題で企業の長時間労働対策への関心が高まる中、翌日の出勤までに休息取得を義務付ける「勤務間インターバル規制」に注目が集まっている。厚生労働省によると、導入企業はわずか2%。普及を後押ししようと助成金制度も創設されたが、経営者側には「業務に支障が出る」との抵抗感が根強い。>

     しかしながら、過労自殺の事例で休息がほとんどないようなスケジュールで動いていたことなどが明らかになると、徐々にではありますがインターバル規制を導入する企業が増えてきています。

    『インターバル制 導入機運 ユニ・チャームや三井住友信託 退社→出社に一定時間確保』(1月12日 日本経済新聞)https://goo.gl/VRThpv
    <従業員が退社してから翌日の出社まで一定時間を空ける制度を導入する企業が増えている。KDDIなどに次ぎ、三井住友信託銀行が昨年12月から導入したほか、ユニ・チャームやいなげやも今年から採用する。制度が義務化されている欧州に比べ、日本での取り組みは遅れている。長時間労働の是正が経営の重要課題になるなか、政府も同制度の普及を後押しする考えで、今後追随する企業が増えそうだ。>

     ただ、ここにも落とし穴があるように私は思うのです。
     まだまだ事例が少ないということで、国内で先行している企業の仕組みや海外、特に欧米企業がすでに導入している仕組みが一つのモデルのようになりつつあります。『インターバル規制』でニュース検索をするとだいたい登場してくるKDDIの最低8時間やJTBグループの9時間~11時間といったところが一つの相場観を形成しているようです。EUが最低11時間の休息を義務付けているというのもあり、今後の議論も9時間~11時間が一つの目安になっていくでしょう。

     しかし、11時間の休息というのは日本の企業社会の中で果たして十分な休息に値するのか?9時定時の勤務体系で11時間休息と考えると、退社は夜10時までは範囲内ということになります。ここから自宅までの移動距離、移動時間が欧米と日本ではまるで違います。地方都市であれば、大部分の人が30分以内で自宅まで帰ることができるかもしれませんが、大都市圏ではそうはいきません。仮に1時間だとしても、往復で2時間。帰ってから食事をして、少し家事をして、自分の時間を取って...となると、睡眠に当てられる時間はどんどん削られていきます。追われるように朝起きて、満員電車に揺られながら出社では、インターバル規制の目的の『十分な休息』とは程遠い生活です。ところが、傍から見れば、インターバル規制を遵守しているホワイト企業ということになるわけですね。

     インターバル規制を設けることで、かえって「ここまでだったら働かせてOK」という目安になってしまっては本末転倒です。せめて、移動時間もある程度考慮しての拡大インターバル規制にできないものでしょうか?そうなると、個々人でインターバル時間に差が出来てしまい、管理が煩雑になってしまうから導入企業が減ってしまう。そんな批判が聞こえてきそうですが...。
プロフィール

飯田浩司

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ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

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