2018年03月14日

福島県の漁業は今

 先日の日曜で、東日本大震災の発災から7年となりました。警察庁によれば、9日現在で死者1万5895人、行方不明者2539人。いまだに7万3千人あまりの方々が避難生活を送っています。東京・国立劇場では政府主催の追悼式が開かれ、地震発生時刻の午後2時46分に黙とうを捧げました。その後、安倍総理からの式辞、そして秋篠宮殿下のお言葉と続きました。殿下のお言葉には、今なお不自由な生活を続けている被災者に対するご心痛が具体的に記されていました。

<しかし、その一方では、今なお多くの被災者が、被災地で、また、避難先で、依然として不自由な生活を続けている厳しい現実があります。とりわけ、帰宅可能な地域が広がる中、いまだに自らの家に帰還する見通しが立っていない人々も多いこと、基準に照らして放射線量の問題がない場合であっても、農林水産業などに影響が残っていることを思うと、心が痛みます。さらに、避難生活が長期化する中で、高齢者を始めとする被災者の心身の健康のことは、深く心に掛かります。>

 去年のお言葉と比較すると、福島県での風評被害にも踏み込んで言及されているのがわかります。
 まさに、福島県の復興を語る上で欠かせないのが、震災直後に染み付いてしまった放射能汚染のイメージ。2018年1月2日、今年第1回目のザ・ボイスは福島の農業について特番をお送りしましたが、そのイメージの払拭に現場の皆さんが苦労されているのをひしひしと感じました。そして今回、その第2弾として、福島県の漁業について取材し、今日の4時台に特集しました。農業の時もそうでしたが、モニタリング調査の結果などはすべてウェブ上に公開されています。まずはぜひ、そこを見ていただければと思います。福島県や各団体、市町村が行っている放射線検査の結果を公表しているホームページです。


 さて、放送では今回も様々な反響、質問をいただきました。大きなニュースも多かったこともあって、限られた放送時間の中でお寄せいただいた質問に答えきれない部分がありました。ここではそんな質問に対して、取材してわかった範囲でお答えしたいと思います。

 まずは、魚の特性について。東京大学大学院農学生命科学研究科の八木信行教授へのインタビューで、海水魚はカリウムを体内に溜めにくく、むしろカリウムを排出する性質がある。セシウムとカリウムは魚の体内では同じように扱われるので、海水魚はセシウムも排出する。一方で、淡水魚はカリウムを溜めやすいので、セシウムについても溜めやすい性質があるとおっしゃっていました。
 この発言について、淡水魚についての放射性物質の検査結果が気になるという質問をお寄せいただきました。これについては、水産庁のホームページに海産種、淡水種で分けた調査結果の内訳があるのでご覧ください。

※この資料の14ページに海産種と淡水種に分けて調査結果の内訳がグラフ化されています。

 淡水魚についてはまだごく一部ではありますが、基準値(100Bq/kg)超えが存在していることがわかります。

 次に、食物連鎖による体内濃縮や幅広い魚種への影響を心配する声もありました。これについては、海水魚は前述の通りまずセシウムを排出する性質がありますから、食べられる側の魚のセシウム含有量がそもそも低いということがあり、さらに食べる側の魚もセシウムを排出する性質がありますから、捕食によって摂取してしまったセシウムも体内に留まらずに排出されます。従って海水魚に関しては食物連鎖を通じての体内濃縮、広範囲の影響はないと考えられています。
 また、事故発生直後に汚染された魚から子や孫へ影響が出るのではという心配も指摘されましたが、水産試験場でのモニタリングで親から子への放射性物質の受け渡しなど影響がないことも確認されています。

 我々は科学が風評に負けてはならないという思いで今回取材に当たってきました。こうして客観的な事実を提示することで、お聞きの皆さんの判断の参考になればと思っています。
決めるのは、消費者一人一人です。どういった決断をされるにせよ、イメージに流されるのではなく、正しい情報を理解した上で決断していただきたい。これが、番組に込めた願いです。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
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