2019年09月11日

足元の景気と今後...

 4~6月のGDP改定値が出ました。案の定、速報値に比べると悪い数字が並びました。


<内閣府が9日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.3%増だった。速報値(前期比0.4%増、年率1.8%増)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
 QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.3%増、年率1.3%増となっており、速報値から下振れすると見込まれていた>

 報道でも触れられている通り、財務相の法人企業統計を基に算出された企業の設備投資が想定よりも悪く、その分GDP全体の数字が悪くなったようです。企業としては先行きの不透明感が漂うなかで大きな投資は手控えるでしょう。企業心理はどうかというと、同じ日に出された景気ウォッチャー調査では非常に厳しい見方をしていることがわかります。


 足元の景気についての認識はまだしも、先行き2、3ヶ月に関してはいいところなしというぐらいに各分野で先行きに懐疑的な見方です。主な意見の部分でその理由をざっと見るだけでも、アメリカと中国の貿易摩擦、イギリスのEU離脱、アメリカ経済の頭打ち感、国内消費の落ち込みなどなど、理由をあげればキリがないというぐらいに先行きの不透明さの理由は枚挙暇がありません。にも拘らず、この国は来月1日に消費税の増税に打って出るわけです。いかに非合理的な判断であるかがよくわかります。

 とはいえ、残念ながら増税が行われるのであれば、次善三善の策として増税のショックを食い止める方策を考えなくてはなりません。そして、それは事前に用意された軽減税率やポイント還元で吸収できるような代物ではないと私は考えます。
 というのも、消費税の痛税感は所得の低い層によりかかってきます。
 軽減税率はたしかに食品などの生活必需品が支出の多くを占める低所得層に向けた仕組みなのでしょう。であるならば、どうして所得に制限がかかっていないのか?同じように低所得層への還元を目的とするならば、旧民主党の主張していた給付つき税額控除の方がよほど理にかなっていました。
 私はそもそも消費税の増税をこの時期に行うことも反対ですし、社会保障の財源を消費税に求めることにも懐疑的ですが、「社会保障の安定のために増税をするんです」と言っていた以上は、軽減税率を高所得層にまで広範囲に適用することで税の広範囲な取りはぐれを生むことは論理的に矛盾しているのではないでしょうか?このことを夕方のザ・ボイスでも、今のOK! Cozy up!でも主張してきましたが、私の非力さゆえ一顧だにされませんでした。

 もう一方のポイント還元はその制度の分かりにくさに加え、キャッシュレス決済の普及度合いが地域や世代によって片寄っている点を考えても不公平感は否めません。また、先日関東地方を直撃した台風15号でわかる通り、停電してしまえばこの手のキャッシュレス決済は一切用をなしません。電力がなくても硬貨、紙幣はやり取りできますが、電力がなければ読み取り機材もスマホもカードもただの物体でしかないわけです。
 その上、このポイント還元は延長がなければたったの9ヶ月間しか実施しません。増税の痛みは減税しない限りかかり続けるのに、その痛みの緩和剤は期間限定。そのうち痛みに慣れるだろうということかもしれませんが、痛みに慣れるために庶民は財布の紐をきつく締めることで対応することになるでしょう。

 一部ですが政策当局者の中にもこうした危機感を持ち、具体的な政策を提言する方がいらっしゃいます。たとえば、この方。


日銀の片岡剛士審議委員です。7月の金融政策決定会合で公表文の末尾に「特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」という一文が入ったことを引きながら、先行きのリスクが増せば<先制的に政策対応することが重要です。>と訴えました。要するに、先手を打って金融緩和する必要性を強調したわけです。このあたりを見ると、金融政策決定会合で政策の変更までは出来ずとも、何かあったときに機動的に動けるように先手を打った根回しをしていたのだなぁと思います。今後に向けて予防線を張るだけでも、緊縮側へ向かおうとする委員もいる中で大変な苦労がしのばれます。

 片岡さんは今や日銀の人ですから、金融政策に特化して講演を行いましたが、私個人は財政出動と金融緩和、アベノミクスの一本目の矢と二本目の矢のポリシーミックスこそが有効であることと思っています。それも、景気が坂を転がり落ちる前に"機動的"に行うことが肝要です。

 折しも、九州豪雨に台風15号、去年は大阪で地震や台風の被害がありました。全国的にインフラの疲弊が目立ってきてはいないでしょうか?
 もちろん、豪雨や台風の被害が顕在化したのは自然がより狂暴に、より険しくなってきているからなのは間違いないと思います。自然が我々日本人に牙を剥いて来ていることが明白な昨今、我々はより備えなければその生存すら覚束無くなります。
 拙ブログでも何度も指摘していますし、放送でも訴えていますが、安倍政権は決して放漫財政の政権ではありません。むしろ、決算を見ると政府予算は第2次政権の最初を除いて徐々に減らされ続けていて、緊縮財政派の政権と言ってもいいのです。その点、世間のイメージや大新聞の経済欄の見立ては現実と正反対であるといえます。
 今までは世界経済が成長し、それに引っ張られるように日本経済も不十分ながら成長していたので緊縮財政でも何とか乗り切ってこられたのかもしれません。しかし、もうそうした外需頼みの夢物語は終わりました。現実を見据え、必要な投資を躊躇なく行うべきです。そのための内閣改造であることを願います。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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