2012年10月

  • 2012年10月30日

    所信表明に見る、衆院解散の時期

     昨日、第181臨時国会がスタートしました。総理の所信表明演説の原稿を見て、「あ、これは年内解散はないな」と思わずつぶやいてしまいました。それは、いわゆる一票の格差問題にふれたこの一文を見たときです。

    「最高裁判所から違憲状態との警告がなされている衆参両院における1票の格差の是正と、定数削減を含む選挙制度改革は、もはや一刻の猶予も許されません。必ず、この国会中に結論を見いだしてまいります。」

     今国会中に必ず結論を出す。それを、結論を出さなければ解散はない。その期限は、今国会末の11月30日まで。
     そう読むと、年内解散はスケジュール的に非常に厳しいのです。

     

     仮に、自民党の石破幹事長の言うように、12月16日の都知事選とのダブル選挙になるとして、スケジュールを考えていきましょう。一票の格差を解消するために区割りを変更したあと、慣例では1か月ほどの周知期間をとります。すると、11月の中旬、15日前後には区割りまですべて確定していなければならないのです。
     ちなみに、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が新たな区割りを確定させるには、正規の手続きを踏むと3か月~半年かかるそうです。ということで、本来であれば現時点ですでにゲームオーバー。無理やり解散すれば、「違憲状態」覚悟での衆院選となります。先日、参院選での一票の格差も「違憲状態」の判決が出ました。ここまで司法を無視していいものか?という議論が当然出てきます。

     百歩譲って、「今国会で改正公職選挙法を成立させて、努力の跡を見せてから解散。」となると、「解散から40日以内の投開票、公示から12日以内に投開票」というルールぎりぎりなのは、今国会会期末の11月30日。そこで、昨日の所信表明演説です。
    「今国会中に必ず結論を出す。」
     前回通常国会で、9か月かけて結論が出なかったものを、1か月で出せるのか?
     開会前に藤村官房長官は記者会見で、
    「臨時国会は2回まで延長できますから」
    と述べていますので、そもそも官邸サイドは先送りする気満々のようです。

     

     となれば、残された年内解散の道は、衆院での内閣不信任案の可決です。昨日、熊田篤嗣・水野智彦両衆議院議員が民主党離党届を提出しました。これが受理されれば、国民新党との与党統一会派はあと6議席で過半数割れとなります。いわば、過半数割れマジックが2つ減って「6」となったわけです。これを受けて、新聞紙上でも、私自身も、「野田政権は風前の灯」「不信任可決間近」と思うわけですが、冷静に考えるとそうでもないらしい。

     これは、番組でジャーナリストの長谷川幸洋さんに言われてハタと思ったんですが、このままマジックが減っていってマジック「1」まで来ると、次に離党する人は自動的に解散の引き金を引くことになります。すると、空気がガラッと変わります。

     今まで離党してきた人は、どちらかといえば選挙が厳しい、次の衆院選を民主党で戦ったら落選が見えているような人。
    共通するメンタリティは、「できれば早期解散してほしくない!」。そして、万が一早期解散になった時のために、少しでも当選の可能性の高い第3極にすがるわけです。ところが、その第3極もちょっと怪しくなってきた。とてつもなく強い風が吹いていれば離党に踏み切ることもできますが、現状では、どの世論調査を見てみても、政党支持率2~3%。これでは飛び出すのは厳しいわけです。一時期鳩山さんのグループが、有力離党予備軍と言われていましたが、最近の情勢分析では鳩山さん自身が選挙区で相当厳しい。これでは身動きが取れません。

     では、どんな人なら離党できるのかと言えば、それは「どんな逆風選挙でも勝てる人」。地盤がしっかりしていて、知名度もある人。ん~、そんな人は、そもそも離党しないですよね。

     というわけで、皆さんいろいろなことを言いますが、結局は野田さんの目論見通り、解散は先送り。年明け解散が本命のようです。

  • 2012年10月22日

    税金の使われ方

     昨日21日に京浜急行線がダイヤ改正を行いました。京急蒲田駅付近の連続立体交差事業が完成したのを機に行った今回の改正。この事業の完成により、「開かずの踏切」と言われた国道15号をまたぐ踏切や、環状8号をまたぐ踏切が完全に高架化されたため、渋滞の解消や事故防止につながると期待されています。

     

     さて、この改正の一番の目玉は、長年の課題であったエアポート快特の蒲田停車。これには、2010年の連続立体交差一部完成以来の京急と大田区の駆け引きがあったのです。

     2010年5月16日、連続立体交差の一部、上り線の高架化が完成したのでダイヤ改正が行われました。これにより、都心と羽田空港を結ぶ全列車が停車していた京急蒲田駅を「エアポート快特」が通過するようになりました。実に、平日は上下39本、休日は74本の列車が通過するようになったわけです。
     この改正に対し、大田区・区議会・区民の3者が一致団結して通過反対を京急に訴えました。京急が5月7日、当初の予定通り京急蒲田を通過するダイヤを公表しすると、その日のうちに、区長、区議会議長、区民協議会代表が連名で抗議声明を発表。要旨は次の通り。「区はまちづくりの施策として高架化に取り組んできた。駅周辺の整備も進めてきた。核となる京急蒲田駅が『エアポート快特』の通過駅となることは容認できない」。


     この事業は、京急が10%を負担、公的機関が90%を負担し、90%のうち、国が半分を、残りを都と区で7:3の割合で負担しています。すなわち、大田区は、総工費1650億円のうち、200億円以上を負担しているわけです。それだけ拠出したのに、主要列車が通過では、本来の目的と違うと猛抗議。2年がかりで方針を変更させたのが、今回のダイヤ改正。エアポート快特の京急蒲田停車に結実したのです。

     

     この一連の流れ、税の使い道、使われ方がおかしいと正したわけで、これは当たり前のことなんですが、この当たり前のことができていないのが今回の復興特別予算。復興のための税金のはずが、沖縄での国道整備や、福島は福島でも大阪の福島の税務署の耐震補強事業に使われたり、シーシェパードの対策費用に使われたり、もう枚挙暇がない。

     その上さらに疑問なのが、これに対する政府・民主党の対応です。衆議院の決算行政監視委員会を流会させたのも疑問でしたが、参議院の決算委員会、行政監視委員会での答弁も疑問だらけでした。野党は、予算の使われ方を問題にしようとするんですが、政府・与党の答弁は、私には議論のすり替えに見えました。

     たとえば18日(木)の参院決算委員会、民主党・蓮舫議員の答弁。

    「もともと内閣が出していた復興基本法案は対象を被災地に限定していた。自民・公明から、被災地に限定せずに全国で使えるようにするべきだという議論があり、修正協議を経て対象は日本全国になった。このことは押さえておきたいと思います。」

     翌19日(金)参院行政監視委員会、枝野経産大臣の答弁。

    「昨年のこの時点では、御党(自民党)も含めて、これ(企業立地補助金)は復興特会でやるしかないですねと、合意されて進めてきた話。あの時反対された共産党などがけしからんというのはよくわかるが、一緒に進めてきて、そういったお話をされるのはあまりにアンフェアである」

     

     要するに、法案成立の時に賛成していたんだから、今更文句言うなよ!ということです。しかし、予算執行の責任は政府にあります。成立した法律に従って税金を使うわけですが、これが本当に趣旨に沿って使っているのか?それを監視するのが、国民を代表する国会議員の責務であるはずです。結果としてひどい流用となってしまった以上、その法案に賛成をした自民党に責任がないとは言えませんが、それについては別で議論していただいて、この横流し予算をどうにか本筋に戻していこうというのが国会での議論なのではないでしょうか?政府・民主党も、いつまでも議論のすり替えをしていないで今年度の復興特会の予算組み換え、執行停止までの議論をするべきです。そう考えると、閉会中審査ではなく臨時国会を早急に開くべきなんですが...。

     

     ともかく、税金の使い方がおかしければ是正していく。地方自治体の大田区でできたことを、なぜ国政ではできないのか?我々は厳しい目線で見続けなくてはなりません。

  • 2012年10月15日

    日本の強さ

    IMG_3633.JPG

     海上自衛隊の観艦式に行ってきました。尖閣や竹島、北方領土と、離島の守りというものが注目される中、防人たちの日頃の鍛錬を目にするまたとない機会。いやぁ、立派でした。

     

     3年に一度行われる晴れ舞台。横浜、横須賀、木更津などから乗艦し、
    観閲場所の相模湾に集合して観艦式が始まります。私は横須賀からイージス艦「あたご」に乗艦したんですが、びっくりしました。航行中でありながら、艦橋や機関室まで入れてくれるんですねぇ~。艦橋というのは、船の中枢。飛行機でいうところのコックピットですね。

     

     で、横須賀から相模湾まで、東京湾を10隻以上が隊列を組んで航行していくわけです。前を走る船との間隔を一定に保ちながら、一直線に近く隊列を保ちながら航行していく...。緊張感を持ちながら、こともなげに艦を誘導していく艦橋で、その息遣いや言葉遣いを見聞きしていると、なんて訓練されているんだ。頼もしいんだと安心しました。

     

     そして始まった観艦式。降りしきる雨の中、観閲から訓練展示と予定通りに進んでいきます。訓練展示では、祝砲発射から対潜爆弾投下など、火器を使った展示もありました。3隻の護衛艦が一斉に方向を変える戦術運動など、一糸乱れぬ素晴らしい操艦技術に唸りました。そんなわけで、大満足で横須賀に帰ってきたわけですが、
    最後の最後に感嘆の出来事が待っていました。

     

     暮れなずむ夕暮れに港に入り、下船すると、ちょうど国旗を降ろす時間帯。10秒前にアナウンスが入り、ラッパの吹奏とともに国旗を降ろすんですが、ラッパが始まると、家路を急ぐ自衛官たちもみな立ち止まり、くるっと回れ右して直立不動で日章旗に最敬礼!誰一人、動いたり、無視する自衛官はいませんでした。まるで時が止まったように、黒い制服たちが直立不動していたのです。

     

     ここまで練度が、意識が高ければ大丈夫だ。防人たちのモラルの高さに、この日一番の感嘆を覚えました。

     

     さて、今日から「ザ・ボイス」では、

    『今こそ問う!日本の強さ』

    という特集をお送りしています。まさしくこのモラルの高さのような日本の強さを毎日紹介します。世界に誇るべき日本の強さを、一緒に考えましょう!

  • 2012年10月11日

    IMF世銀総会

     IMF世銀総会が行われています。
    実はここ10年、20年では最大規模の国際会議ですが、イマイチ盛り上がっていないような気もします。取材をしに東京国際フォーラムを歩いていたら、警察官に「ここ通れません」と言われた女性2人が、「何これ~、今日なんのイベントなの~?」ですって。ん~、ま、そうですよね。ただ、話し合われていること、発表されていることは、我々の生活に直に関わってくるものも多いのです。

     

     たとえば、消費税増税。もう法案は成立したので、このまま2014年に8%、そして15年に10%に上がるもんだと思われています。ため息がでますねぇ~。それに対して、IMFは非常に重要なことを発表しています。9日(月)に行われた「世界経済見通し」でブランシャール調査局長は、

    「財政再建はマラソンであってスプリント競技ではない。早すぎず、遅すぎず、辛抱強くやった方が最後に勝つ」

    という表現で、性急な財政再建は景気の腰を折ってしまって、結果として最悪になると言っています。

     

     あれ?そうなると、日本国債は破たんが近いから早く増税しなくちゃ!世界中がそう言っている!という主張は揺らいできますよね。

     

     ただ、2014年に景気が回復しているなら、増税は可能となります。しかしながら、それについては中央銀行自らが否定しています。5日の金融政策決定会合後の会見で、
    「物価(の見通し)も下方修正する」

    と述べ、デフレ脱却時期が想定よりも遅れるとの認識を明らかにしました。もともと白川総裁は、事実上のインフレ目標に掲げた消費者物価上昇率1%を

    「2014年度以降、遠からず達する」

    と明言していたんですが、その達成は困難との見方を示しました。

    要するに、2014年までに景気回復は難しいわ...。とあきらめたも同然なわけです。そうなると、IMFも言うように、性急に財政再建はしない方がいいですわな。無理に増税するのは風邪ひいてるのに、筋トレしようとしているようなもので、筋トレそのものの効果は認めるにしても、まずは体力を回復させて風邪を治してからでしょう。

     

     IMFはいいこと言ってるなぁ~と、会見に出ていて思ったんですが、「世界経済が減速」という見出しばかりだったので、今日はちょっと真面目に書いてしまいました。

  • 2012年10月03日

    鉄正月

     どうも、飯田です。
    前回はなんだか政治の硬い話だったんで、今回はシュミ全開、鉄道の話です。

     

     先日、10月1日に、復原なった東京駅丸の内駅舎のグランドオープンがありました。100年前と同じ丸いドームの優美な姿に、鉄道ファンのみならずとも魅せられた一日でありました。


     さて、10月1日といえば、かつて鉄道ファンには特別な日でした。サンロクトオ(S36.10)、ヨンサントオ(S43.10)など、国鉄の全国一斉白紙ダイヤ改正は、10月1日をもって行うことが通例だったんです。全国を背骨のごとく貫く国鉄の幹線がダイヤ改正すればそれに接続する私鉄各線も合わせてダイヤを改正するわけで、この日は鉄道ファンにとっては、いわば「鉄正月」というような特別な日だったわけなんですね。

     

     どうして10月1日だったのかといえば、これはかつて国鉄がお役所だったからに他なりません。今年も環境税導入など、年度の下半期が始まる10月1日には大きな変更事があります。日本の鉄道をひっくり返すようなダイヤ改正ですから、実施するのは4月1日(年度初め)か、10月1日しかありません。しかしながら、4月1日は年度初めの人事異動期。忙しい時期にさらに忙しくなるダイヤ改正をするバカはいません。必然的に10月1日が「鉄正月」となるわけです。

     

     しかしながら、国鉄がJRに変わってから、10月1日=鉄正月という不文律が変わりました。役所のカレンダーではキリが良くても、私企業にとってはちっともキリがよくありません。秋の行楽シーズンの始まりにいきなりダイヤが変わっては、お客さんが混乱するのは目に見えています。その上、分社化してJRとなったので、全国一斉にダイヤ改正する必要性もなくなりました。では柔軟に、一年365日の中で一番キリがいいのはいつなのか...?

     

     いつだと思います?

     

     正解は...、3月の中旬。ダイヤを改正すれば、多かれ少なかれお客さんに影響が及びます。それゆえ、お客さんが少ない時期を選べばいいわけです。そこで、商売の世界での格言。2・8(ニッパチ)といって、2月と8月はお客さんが少なくなるといわれています。ま、8月は夏休みの行楽シーズンなのでやるわけにいきません。
    じゃあ2月!となりがちなんですが、2月には鉄道に特別な需要が発生するんですね。2月に主に行われる、人生が決まるといっても過言ではない一大イベントといえば...。

     

     そう、受験。

     

     この1本の電車を逃したら、受験できずに人生が変わってしまう!そんな時期にダイヤ改正をできるほど、鉄道は非情ではありません。そこで、3月の中旬まで待ちましょうということになったのです。

     役所と民間、ダイヤ改正一つとっても考え方が随分違うんですねぇ。どちらが利用者に有益かは言うまでもありません。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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