2019年11月

  • 2019年11月05日

    首里城火災 徹底した原因究明と責任追及を

     毎朝6時から8時までの生放送を担当していますが、この時間帯にニュースが刻一刻と動くことはあまり多くありません。動いても、海外でテロや災害などが起こった場合に限られていて、日本国内でニュースが動くのは非常にまれです。
     その、稀な出来事が、不幸な形で起こってしまいました。沖縄県那覇市で起こった首里城正殿などの炎上です。
     番組の準備をしている最中から速報がひっきりなしに入ってきて、生放送が始まっても消し止めることができず、正殿、南殿、北殿といった主要な建物の全焼の速報が入るものの、鎮火の一報はついぞ放送中に入ることはありませんでした。

    <31日午前2時40分ごろ、那覇市の世界遺産、首里城跡に復元された首里城から煙が上がっていると119番があった。消防や沖縄県警によると、首里城正面の中央部分にある正殿から出火し、激しく炎上。北殿、南殿などに延焼し、建物と門の計7棟を焼いて約11時間後に鎮火した。けが人はいなかった。>

     火災直後はどうしてこんな大規模な火災が発生してしまったのか?原因を究明する報道が流れました。この一週間、首里城周辺では首里城祭というイベントが開かれていて、この週末の3連休に向けて様々なイベントが予定されていました。火元とみられた正殿の前の広場である"御庭"では、当日未明まで設営作業が行われていたようです。


     その他、警備員からの証言などでどうやら正殿屋内から出火したのではないかということがその日のうちに報道され、翌1日には現場検証が行われるのでそこで大方の出火原因が特定されるのではないかという流れになっていきました。しかし、その1日、沖縄県知事の玉城デニー氏が突如上京し、国に対して再建の請願を行ったあたりから報道のペースが鈍り始めます。

    <沖縄県の玉城知事は1日、内閣府で衛藤沖縄・北方担当大臣と面会し、首里城の早期再建に向けて協力を要請したのに対し、衛藤大臣は「全力で頑張りたい」と応じました。>

     その後、菅官房長官とも会談し、全力で取り組むという言質を引き出しています。この日は、首里城を含む国営沖縄記念公園の指定管理者である美ら島財団が会見を行いましたが、責任については曖昧な答えに終始しました。

    <首里城の火災を受け、沖縄美ら島財団の花城良廣理事長は1日の記者会見で、スプリンクラーの必要性を問われ「設置義務があったかどうかは、私どもは関係しない」と述べた。その上で「県、国を含めて検討するところ」と述べ、財団を含めた三者で話し合うべき課題との認識を示した。火災を巡っては1日時点で出火原因が特定されておらず、責任の所在が定まっていない。>

     指定管理者にも関わらず、責任回避の態度というのはメディアから大バッシングがあってもおかしくないのですが、不思議なことにそういった議論には至っていません。今年2月に国から県に管理が移管された際もスプリンクラーの増設が必要という議論がなされなかったし、5月と7月の設備点検でも不備は報告されなかったから責任は問われないという態度。財団が財団なら県も県で、記事中で県幹部の発言を引いていますが、

    <出火原因が法的な不備や設備の点検不足などに該当しない不可抗力だった場合、責任の所在は「誰にもないのではないか」との認識を示した。>

    とのこと。これも本来ならば大事件で、これだけの大火事があったのに責任が誰にもないなんてことをどうして世論が許すというのでしょうか?それをそのまま批判もなく書くというのも違和感を禁じえません。それどころか、「なぜ火事が起きたのか?」ではなく「なぜ火事が燃え広がったのか?」に論点をすり替えて、こんな記事を掲載する始末です。

    <那覇市首里当蔵町の首里城の正殿や北殿、南殿など計7棟が焼失した火災で、正殿の外に設置されていた「放水銃」と呼ばれる消火設備5基のうち1基を、2013年12月までに国が撤去していたことが1日、分かった。沖縄総合事務局の担当者は本紙の取材に「火災発生時にも放水銃4基で対応できると判断し、代わりの防水設備を設置しなかった」と回答した。今回の火災は、スプリンクラーなどの消火設備の不足が大規模な延焼につながったと専門家らは指摘しており、安全管理の見通しの甘さが改めて浮き彫りになった。>

     まるで国の管理が甘かったから全体を焼失してしまったかのような書きぶりですが、そもそも今回の火災では火の勢いが強すぎて現場に近づけず、残った4つの放水銃を使うことは一切できませんでした。もし4基をフルに使ってそれでも消し止められずに全焼したのならともかく、使えなかったのですからこの見出しと本文はミスリードどころか半分以上詭弁の類でしょう。メディアが責任追及ではなく論理のすり替えを行うのは一体どうしたことなのでしょうか?
     同じ沖縄での事件でも、米軍機墜落といった米軍の不祥事の場合、地元メディアは事故原因の解明や責任者の処分を容赦なく追及しているはずです。このままではご都合主義との批判は免れないのではないでしょうか。

     もちろん、首里城が焼失したことは同じ日本人の一人として痛恨事ですし、再建に国を挙げて協力するのは当たり前のことです。仮に伊勢神宮が焼け落ちたり、姫路城が焼け落ちた場合でも同じことを主張するでしょう。琉球の豊かな文化も、日本の文化の一部分であります。中華圏の文化が入っているからと批判をする向きもありますが、それを言い出したら長崎の街並みやくんちだって中華圏の文化とのミックスですし、中華圏の影響を受けた文化財など枚挙にいとまがありません。沖縄県政の批判から転じて首里城再建を批判する向きもありますが、それは切り分けて考えるべきであると私は思います。

     ただ、再建には税金を入れる以上、原因究明だけはしっかりとしていただかなければ、再建の正当性が疑われます。その主体として県や県知事の対応には正直疑問が残るのです。今のところ、火元に関しては分電盤のショートが疑われています。

    <正殿などが全焼した首里城火災で実況見分を進める那覇署対策本部は3日、火元とみられる正殿北側1階部分の焼け跡から分電盤とみられる焦げた電気設備を回収した。対策本部は火災発見当時の施錠状況や防犯カメラの解析から現時点で、外部侵入による事件性は低いとみており、電気系統の不具合も視野に捜査を進める。4日以降、回収した電気設備がショートを起こした可能性を含め火災との関連を詳しく調べる方針。>

     普段使っている分電盤から出火したものなのか、それとも、上に挙げた首里城祭のイベント設営向けに設置した分電盤だったのか?直前深夜に渡るイベント設営がどう影響しているのか?そのあたりの検証が待たれます。それに、そもそもこの"御庭"は深夜に渡る設営が基本的に認められない場所なのにどうして深夜1時にまで設営が行われていたのかも検証しなくてはいけません。というのも、国営沖縄記念公園における行為の禁止等に関する取扱要領の細則には「深夜に及ぶ設営は原則認めない。」と明記されているのです。


     例外的に深夜に及ぶ設営を認めたのは一体どの主体なのか?普通に考えれば指定管理者たる美ら島財団のはずですが、この疑問に答える記事を探し出すことはできませんでした。分電盤からの出火にも様々な要因が考えられますから短絡的にイベント設営との関連を断定することはできませんが、うやむやにせずに検証して欲しいと思います。
     繰り返しますが、でなければ再建の正当性すら揺らぎかねません。
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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「飯田浩司そこまで言うか!」

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