2017年8月

  • 2017年08月28日

    増税反対は社会保障タダ乗りだって!?

     予定通りだと2019年の10月に消費税が8%から10%に値上げされます。前2回の増税延期の判断の時期を考えると、今回も増税の可否を判断するのはおよそ1年前の2018年10月。従って、今、2017年の8月9月というのは、増税可否の判断の1年前。増税の可否の判断には、足元の経済状況に加えて世論の雰囲気も重要になります。特に、過去2度増税のタイミングを袖にされている増税派にとっては、増税容認の世論を徐々に作っていくためには、ここら辺から本腰を入れていかなくてはいけません。

     ということで、財政規律の面や社会保障の持続性の面、はたまた借金はいけませんという倫理的な面からも「増税すべきすべきすべき!!!」という記事が増えておりますが、今朝の日経新聞には驚きました。3面の「エコノフォーカス」というコーナーで、増税見送りは高齢者を忖度しすぎた結果で、むしろ増税を回避して社会保障を充実してほしいという「ただ乗り」の若者を許してきたという、にわかには信じがたい記事が登場したのです。

    『忖度しすぎ?シルバー民主主義 負担増受け入れる素地』(8月28日 日本経済新聞)https://goo.gl/TqKVpd
    <年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。>

     この記事はウェブ上では有料会員のみが閲覧可能なもので、リード文のみでは中身はわかりませんのでざっと要約しますと、
    「投票率の高い高齢者に配慮して、社会保障は充実する一方増税を見送ってきたわけだが、実は高齢者は社会保障が充実するのならば増税を受け入れる用意がある。問題は、若い世代が増税せずに社会保障を充実させるという『ただ乗り』が最も支持を得ていることにある。若者の理解が課題だ」
    というところでしょうか。実はこの記事は、記事の中にも登場する慶応大学の鶴光太郎教授らの研究をベースにしていています。

    『財政「タダ乗り」政策に問題』(経済産業研究所HP)https://goo.gl/qOXUVI

     鶴教授が経済産業研究所のプロジェクトの一環として、社会保障の給付負担に対する選択を決定する要因について行ったの独自調査がこの論文の下半分に載っています。増税のありなしと社会保障の拡大縮小で4つの組み合わせを作り、それぞれ「増税○社会保障拡大=大きな政府」、「増税○社会保障縮小=持続性重視」、「増税×社会保障縮小=小さな政府」、「増税○社会保障拡大=ただ乗り(フリーライダー)」と分類しています。その上で、個人の属性や意識がどんな影響を与えるのかを調べると、

    <教育水準や時間当たり所得水準が低い人ほど、増税せずに社会保障の拡大を求める「フリーライダー派」になりやすい。
     また、個人の意識に着目すると(1)政府や他人への信頼が低い(2)年金の不正受給、無賃乗車、脱税、収賄、ごみのポイ捨て、盗難品購入などの行為を間違いとする公共心が低い(図参照)(3)政府への依存が強く、市場経済に懐疑的、といった特徴を持つ人ほど「フリーライダー派」になりやすいことが分かった。>

     これはそっくりそのまま日経の記事にも書かれているわけですが、日経記事は上記の要約にも書いた通り、世代間での違いも加味しているので非常にタチが悪くなっています。
     すなわち、高齢者は"日本の財政状況"(=このままいけば借金が増えて破たんする!)を良く分かっているので実は増税に賛成だが、若者は不勉強で良く分かっていないから、増税もせずに社会保障を拡大できるという"お花畑"のような考えができるのだ。それが証拠に、教育水準が低かったり、所得水準が低い人ほどタダ乗り派だし、公共心の低い人ほどタダ乗り派だ。まったく、最近の若い者は!!!
     日経の主な読者層を考えれば、持てる高齢者。この記事の若者バッシングでさぞや溜飲を下げたことでしょう。

     しかしながら、溜飲が下がったところで問題は解決しません。結局、この記事の結論は分かっていない若者を説得しようというところに落ち着きます。実際、"物わかりの良い"若者の中には、増税の変形の「こども保険」などと言って覚えの目出度い人たちもいるわけで、こうした説得もある程度は成功しているのでしょう。
     ただ、大多数の若い世代はすでにある様々な負担や、デフレ時代を引きずった低賃金労働に今なおあえいでいます。ようやく経済が上向いてきたのに、ここでまた消費増税で好機をつぶそうとする流れに乗るはずがありません。
     その上、上記の調査も日経記事も、経済成長によって財政再建を目指すことに過度に懐疑的です。日経記事では、わざわざ脇に囲みの解説記事風にこんな記事を配していました。

    『財政再建、成長頼み限界 増税・歳出減が不可避』(8月28日 日本経済新聞)https://goo.gl/3z8NXt
    <日本で財政悪化に対する危機感が高まりにくいのは、日銀の金融政策によって長期金利が低く抑えられているためだ。安倍政権は消費増税を2回先送りし、経済成長による債務残高の国内総生産(GDP)比の改善を優先する。しかし痛みを避けた財政再建など、夢物語だ。>

     夢物語だと批判していますが、その夢物語の中身は、名目2%程度の経済成長です。これを記事では、2000年以降の日本の成長率の平均は0.2%なのだから、その10倍の成長など無理だとしています。しかし、2000年以降はデフレまっただ中。その上、2009年のリーマンショックもその中に入っています。数々の経済失政の結果が0.2%なのであって、これを打破しようというのがアベノミクスの特に第1の矢と第2の矢だったのではなかったでしょうか?
     日本以外の先進国は1%台後半から2%台とほぼ達成できている水準。日本でも、アベノミクス初期の2013年度は実質2.6%成長していました。翌2014年度はマイナス0.5%ですが、これは消費税増税が効いていることが明らかです。何のことはない、一度達成したことのある水準なのですから、これのどこが夢物語なのでしょうか...?

     上記、経済産業研究所の論文はこう締めくくられています。
    <ポピュリスムが世界を席巻する今だからこそ「フリーランチ(タダ飯)などない」という大原則の再確認と、様々な秩序や制度の維持のためのちょっとした「やせ我慢」が我々に求められている。>

     増税に賛成しないのは公共心が低く、教育水準が低く、給与水準が低い若者。物の分かった知識人の嗜みとして増税には賛成しなければならない。
    そんな空気に流されてはいけません。「やせ我慢」どころか、生まれてこの方、大変な我慢をすでに20年以上してきたはずです。
  • 2017年08月26日

    民進党代表選の経済政策議論

     蓮舫代表の辞任に伴う民進党の代表選が告示され、前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が立候補を届け出ました。野党共闘の是非と並んでこの代表選の争点と言われているのが経済政策。アベノミクスの対案としてどういったものを掲げるのかに注目が集まりますが、双方ともに分配面を強調。成長政策については多くを語りません。

    『民進党代表選 財源は...前原氏「増税」枝野氏「赤字国債」』(8月24日 毎日新聞)https://goo.gl/5fY3Xd
    <民進党代表選(9月1日投開票)で、前原誠司元外相(55)と枝野幸男前幹事長(53)がアベノミクスへの対抗策として掲げるのが、社会保障や福祉の充実による低所得層の底上げだ。共に個人消費を喚起して景気回復を狙う政策だ。ただ、年金安定化などに向け2019年10月に予定通り消費税率を10%に引き上げるべきだとする前原氏に対し、枝野氏は赤字国債発行による介護職員や保育士らの賃金底上げを主張。手法や財源に違いが出ている。>

     個人消費は日本のGDPの6割を占めると言われていますから、ここが伸びれば大きな経済成長が期待できます。それだけに一見するとまともなように見えますが、問題はそのカネをどこから持ってくるのか、およびどう使うつもりなのか?これが、それぞれに一長一短なんですね。
     上に挙げた毎日新聞が図にして示していますが、前原さんは消費増税を元にして、基礎年金の維持や給付付き税額控除を提示しています。一方の枝野さんは赤字国債を財源に、介護職員や保育士の賃金引き上げを目指しています。
     まずは財源についてですが、消費税の増税がどれだけ個人消費を冷え込ませるのかというのは、2014年4月に5%から8%に上げた後の後遺症がどれだけあったかを考えると背筋が凍るほどです。先日4月~6月のGDP速報値が発表されましたが、3年経ってようやく、個人消費が若干上向いてきました。それを、もう忘れてしまったのか?

     その上、所得税や法人税は累進課税性があるので、基本的には稼ぎが多くなるにしたがって納税額も増え、不景気になると稼ぎが悪くなるので納税額も抑えられます。一方の消費税は、消費に対して課税されます。食費が典型例ですが、不景気になったからと言って食費を完全にゼロには出来ません。他の費用を切り詰めることが出来ない余裕のない低所得層の方が相対的に負担率が高まるという逆進性が以前から指摘されています。
     今は日銀の金融緩和が効いていて長期金利が0%近傍に固定されています。その上、財政政策が言う程出ていませんから市場では国債が足らない状況です。枝野さんの言うように、赤字国債を財源として再分配政策を行う絶好機なのではないでしょうか。

     ただし、使い道の波及効果を考えると、これは前原さんの方がより効果がありそうです。給付付き税額控除は低所得層に広く効いていく政策です。所得税や住民税といった税金を値引きし、そもそも収入が少なく払っていなかったり、払っていても少額だった場合には、ゼロを超えた部分に関しては給付するという政策。低所得層は消費性向が高いので、給付したり控除しても預金に回るのではなく、その多くを消費します。すると、個人消費が動き出し、経済が押し上げられるという政策です。
     枝野さんの言う介護職員や保育士の賃金引上げはもちろん喫緊の課題ですが、これだけでは経済波及効果は小さい。枝野さんは1兆円規模と言っていますが、およそ520兆の日本のGDPと比較するとわずかおよそ0.2%弱に過ぎず、ごく小粒の経済対策と言わざるを得ません。

     私も火曜日に日本記者クラブで行われた討論会を見に行きましたが、どうもあまり成長についての話をしていない。その後の報道などを見ていても、あまり成長について言及する場面はありません。前原さんも枝野さんも、脱成長・格差是正の方向を向いているように感じます。したがって、金融緩和にも否定的でした。

    『前原・枝野氏「物価目標1%に」 民進代表選、アベノミクスに対案』(8月25日 日本経済新聞)https://goo.gl/6Tej5x
    <民進党代表選に立候補した前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が日銀の2%の物価目標の見直しを提案している。両氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の対案として社会保障を充実させ経済を底上げする考え方を提示。金融政策でも、アベノミクスの柱である金融緩和を批判し対立軸を打ち出す狙いがある。>

     前原氏は 「物価目標2%を中長期の目標に変えて、当面は1%を目指すことが現実的ではないか」と言及し、枝野氏も「まず1%を目指すのは一つの選択肢だ」と呼応しました。枝野氏は「インフレ目標を掲げても消費が変わらないのは証明された」とも主張していて、長期的には物価目標の撤回も視野に入れています。
     しかしながら、先日発表された4月~6月のGDP速報値では消費は伸びてきています。それだけでなく、雇用に関する指標、完全失業率や有効求人倍率はバブル期以来の非常に良好に推移しています。雇用に関しては、金融政策が有効に作用するということが知られています。アメリカの中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)では、物価上昇率と並んで失業率が政策目標とされているほどです。
     金融緩和を否定するということは、その果実も否定するということ。これは、"人を大事に"と主張する態度と果たして整合性はあるのでしょうか?一体どういったロジックなのか、残念ながら私の検索能力では見つけ出すことができませんでした。

     それに、「物価目標2%達成が出来なかったからアベノミクス失敗だ」といいますが、物価上昇率2%も最終的な目標ではなく、この水準まで行けば安定的に経済成長し、雇用も引き締まって売り手市場になり、結果として国民の生活が楽になるから、これを一つの目標としているに過ぎません。むしろ、経済成長して、雇用も改善して、賃金が少しずつ上がりだしたのに物価が上昇しないのであれば、これは理想的な経済状況とも言えるのではないでしょうか?もちろん、まだ経済成長がまだまだ半ばの状況だからこそ物価が上昇に至ってないわけですが、そうであれば「まだまだ足らない!もっと吹かせ!」と言うことがあれど、「目標を達成していないから全部やめ!」という結論が説得力を持ちうるのでしょうか?
     私にはそうは思えません。相変わらず、日本のリベラルはかなりユニークな経済観を元にしているようです。
  • 2017年08月14日

    先の大戦での海の男たち

     明日8月15日で、大東亜(太平洋)戦争が集結して72年となります。戦没者を追悼し、平和を祈念するこの日、日本武道館では政府主催の全国戦没者追悼式が行われます。正午には先の大戦へ思いをいたし、亡くなられた方に対し1分間の黙とうがあります。

     個人的な話ですが、母方の祖母が去年亡くなり、その遺品を整理している中で祖父が出征した際の戦記が出てきました。理系の学徒として兵に取られた祖父は、内地で教官として数学などを教えた後、戦況厳しいビルマ(現:ミャンマー)へと送られました。本当に、よくぞ戻ってきてくれたものだと思います。彼が戻らなければ、私はこの世にいなかったわけです。
     一方、父方の祖父は戦争についてあまり語りませんでしたが、赤紙一枚の工兵として満州に行っていたようです。その時に銃弾を浴びて負傷し変形した爪を見せてくれたことを覚えています。

     両祖父共に外地へと向かったのですが、任地まで運んだのが輸送船でした。輸送船を操っていたのは、軍属として徴用された船会社の社員やその後統合された船舶運営会の船員たち。海軍軍人ではありませんでした。
     彼らは戦線の拡大とともに輸送範囲を広げ、さらに戦況の悪化に伴って悲惨な運命をたどります。余り知られていませんが、その死亡率が陸軍20%、海軍16%に比べて何と43%。徴用された船員の実に半数近くが海に散って行ったのです。
     大戦初期には兵員や物資輸送で各地に向かい、各地から戦略物資を満載して日本本土へと向かった輸送船。当然、アメリカをはじめ連合国側はこのシーレーン攻撃に集中します。大東亜(太平洋)戦争では、開戦からわずか数時間で最初の撃沈船が生まれ、戦死者が発生しました。
     大戦中期以降は戦死による熟練船員の減少を補うために、各海員学校などで速成された14歳、15歳の少年船員も数多く徴用されました。十分な護衛も得られずに、易々と敵艦の餌食になり、14歳から19歳の少年船員1万9千人余を含む6万609人もの船員が犠牲となり、1万5518隻の船舶が撃沈されました。戦前、世界第3位の海運大国だった我が国は、その商用船舶の9割以上を消失、文字通り壊滅したのでした。
     これら、知られざる戦没船と殉職船員については、成山堂書店から『海なお深く―徴用された船員の悲劇―』という本が出ています。

    『海なお深く―徴用された船員の悲劇―』(成山堂書店)https://goo.gl/ZihPeq

     さて、戦前・戦中・戦後を通して船員を送り出し続けてきたのが海員学校。今は独立行政法人海技教育機構(JMETS)に統合され、机上、実技双方で未来の海運界を担う人材を育てています。私も何度も練習船や海技学校を取材していますが、彼ら実習生にとって一大関門となるのが遠洋航海。5隻の練習船がほとんど休みなく船員を育てているわけですが、そのうちの1隻、銀河丸が今月5日、横浜港新港5号岸壁からシンガポールへ向け出港しました。
     実習生164名を乗せて予定通り出港した銀河丸。出港早々台風5号の洗礼を浴びたということですが、それも実習のうち。実は彼らには、遠洋航海での所定の実習に加えて、今回特別な任務が与えられています。それが、先の大戦で犠牲となった戦没先輩船員への哀悼の意を表するとともに不戦の誓いを新たにする「船上慰霊式」。シンガポールまでの航海中に3か所の海域(いずれも南シナ海)で行うそうです。

    『練習船「銀河丸」が遠洋航海に出航しました』(JMETSホームページ)https://goo.gl/h7dvSx

     この「船上慰霊式」は(公財)日本殉職船員顕彰会と共同で行うもので、ご遺族から顕彰会に送られた手紙を預かり、献酒・献花とともに海上に手向けます。3度行う慰霊式は、第1回が11日(金)フィリピン西方海域、第2回が13日(日)ベトナム東方~南方海域、そして第3回が14日(月)マレーシア南東方海域でそれぞれ行われました。
     寄せられた手紙は合計51通。年配のご遺族の方からは「小さいうちに父を亡くしたのでこれまで父に手紙を書いたことが一度もなかったが、今回、初めて父に手紙を書く機会が得られて良かった。」といったの言葉も寄せられたそうです。殉職した船員の子どもの世代でも70代~80代なので、父へ宛てての手紙が多かったようですが、中には未亡人の方から顕彰会へ感謝の電話も寄せられたそうです。

    <この度はお世話になります。船長さんに伝えてほしいことがあります。
    「私は98 歳になりましたが、主人が戦死してからのこの70 年余りの間、ずっと南方の海に手紙
    を送りたいと思っていました。今回、その思いが叶い大変嬉しく思います。よろしくお願いい
    たします。」
    手紙には、
    「あなたに大変お世話になったこと感謝しています。あなたが一度目の遭難で無事に帰ってきて、
    再び海に出るときは、大変心配でした。それは、一度目の時に沢山の方が亡くなったのを知っ
    ていましたから。私はいま丈夫に暮らしています。いずれ、そちらでお会いできる日を楽しみ
    にしています。」と書いてありますとのことでした。>

     実習生たちが慰霊式を行う海は、南シナ海。今は平和な海ですが、年を追う毎にきな臭さが増す海域でもあります。今も昔も、日本にとって海運は生命線。しかしそれは、日本のみならず、中国も韓国も、アジア各国ともに変わりません。勇ましいことを言い、岩礁を埋め立てる前に、70年余り前にどんなことがあったのか?海の男たちがどういった運命をたどったのか?冷静に見つめられる日にしたいものです。

     銀河丸は17日にシンガポールに到着。22日にシンガポールを発ち、9月4日(月)に大阪港に到着する予定です。一路平安なる航海を祈ります。
  • 2017年08月07日

    ヒアリ対策に何をすべき?

     6月の半ばに兵庫県尼崎市で国内で初めて確認され、その後日本各地で発見報告が相次いでいるヒアリ。強い毒を持ち、最強のアリとも報道されていて、そのおどろおどろしい画像とともに大騒ぎになっています。刺されると強く激しい痛みや腫れを感じ、重度の場合数分から数十分後にアナフィラキシー症状を発症。呼吸困難や血圧の低下、意識障害などの症状が出て、海外では死亡例も報告されているようです。
     今のところ、海外からのコンテナなど荷物に紛れて入ってきているケースがほとんどで、国内で定着したかどうかは今後の推移を見守るという状況。従って、上陸はしてもそこから広がることを食い止めようと関係機関が躍起になっています。
     今日は横浜市が対策会議を開きました。

    『横浜港のヒアリで連絡会議 水際対策で連携を確認』(8月7日 NHK)https://goo.gl/rGwZFC
    <強い毒を持つ南米原産のヒアリが横浜港をはじめ、全国の港などで相次いで見つかっていることを受け、横浜市は7日、関係機関との連絡会議を立ち上げ、ヒアリの定着を防ぐための水際での対策に連携して取り組むことを確認しました。>

     行政だけに任せず、自分で動き出す人も多くいるようです。何しろ、「この小さなアリが人を死に至らしめることがある!」という部分が大きく報道され、これは駆除しなくてはならん!そうだ!殺虫剤だ!ということで、殺虫剤を製造・販売する会社や害虫駆除を専門とする会社の株価が上がっています。

    『ヒアリ駆除へ殺虫剤好調、出荷2倍増 フマキラー株価も上昇』(7月25日 産経新聞)https://goo.gl/1eu3Sw
    <南米原産の強毒アリ「ヒアリ」が日本各地の港湾などで確認され、定着が危惧される中、殺虫剤の出荷が伸びている。アース製薬やフマキラーは、今月に入り関連商品の出荷が2倍程度に増加。フマキラーの株価は上場来高値を更新するなど、投資家も熱い視線を注いでいる。>

     たしかに、近所のホームセンターに買い物に出かけても、入り口付近の目立つところに殺虫剤コーナーが大々的に展開されています。また、食品スーパーの入り口、野菜売り場の脇の目立つところにも殺虫剤。普段であれば考えられないような売り場展開がされているというのも、それだけ皆さん危機感をもってこのヒアリを見ているということですね。

     しかしながら、こうした殺虫剤のバカ売れに対して専門家に取材すると懸念を抱いている方が多くいました。というのも、こうした殺虫剤はヒアリをピンポイントで駆除するわけではなく、固有のクロアリなども一緒に駆除してしまいます。
     今のところ、ヒアリは基本的に居心地の良いコンテナの中に巣を作っていると考えられています。これがコンテナを出て国内で拡散するには、兵隊アリがいくらいてもダメで、ヒアリの女王アリが飛んでいって羽を落として卵を産み、新たにコロニーを組織していかなくてはいけません。ここがポイントで、女王アリが新たな拠点を見つけ、穴を掘って巣を作ろうとした時点で日本の固有種が女王アリを殺してしまえば拡散しません。羽を落とした直後の女王アリは守ってくれる兵隊アリがいないから丸裸も同然です。ということは、非常に弱く、固有種のクロアリでも十分に殺すことができます。
     クロアリは非常に縄張り意識が強く、自分の縄張りに異物が入ってきた場合には容赦なく殺します。ですから、今のようなヒアリの侵入初期には固有種であるクロアリを殺さずに大事にすることが非常に重要になります。ヒアリの女王アリは一つの巣の中に100匹~1000匹単位でいるということで、固有種に比べると多く、守る側としては固有のクロアリが一匹でも多く必要ということになるわけですね。

     ヒアリを警戒することは重要ですが、殺虫剤の乱用は全くの逆効果になる可能性があります。ヒアリを見つけたら、まずは行政へ連絡して対応してもらうこと。クロアリを見つけたら殺さずに応援してあげることが必要なようです。

    参考:環境省ヒアリ特設ページ
  • 2017年08月02日

    8月1日の発言についてお詫びと訂正

    今週火曜日放送の5時冒頭で紹介した、フィナンシャルタイムズと日経新聞の記事について、私が事実誤認して発言した部分があったので訂正します。
    まず番組で紹介したのは、IMFの筆頭副専務理事、デヴィッド・リプトン氏がFTのインタビューに答えたこちらの記事。

    『Abenomics a 'success',declares IMF』(6月19日 FINANCIAL TIMES)https://goo.gl/yZsBPt

    IMFの年次総会後にインタビューに答え、日本に対して「現時点での通貨・財政政策の立場に満足している(原文:We're comfortable with the present stance of monetary and fiscal policy)」と話しています。
    また、物価上昇率がこの4年ほとんど上昇せず、これを理由にアベノミクスが失敗であると日本国内で議論されていることを念頭に、政策の失敗という考えを否定し、「私はアベノミクスを成功したものとして考えなければならないと思う」(原文:Mr Lipton rejected any suggestion the policy had failed. "I think we should be considering Abenomics as something that has been successful,")と話しました。
    そのあと、財政政策の急激な引き締めを戒め、代わりにIMFとしては消費税を0.5%~1%刻みで定期的に上昇させる仕組みなども提案。
    昨今日本国内でも話題に上がる金融緩和の手じまい、いわゆる出口戦略についても否定しました。(原文:Mr Lipton also rejected any suggestion that the Bank of Japan should start plotting an exit from its monetary easing.)
    また、賃金上昇については、去年の年次審査報告書で、政府を含めてすべての雇用者に対し年間3%賃金を上げるべきだと提案していましたが、リプトン氏はそうした議論が「進んだ」と述べています。

    続けて、日経新聞のIMF年次審査報告書についての記事を紹介しました。

    『「アベノミクスは目標未達」 IMF年次審査報告書』(8月1日 日本経済新聞)https://goo.gl/5Mc8dH
    <国際通貨基金(IMF)は7月31日公表した日本経済の年次審査報告書で「アベノミクスは前進したが、目標には未達だ」と指摘し、日銀の金融緩和継続と政府の賃金引き上げ政策を求めた。財政政策は「中期的には健全化が必要」としつつも、短期的な財政刺激策が経済成長と物価の押し上げにつながるとの見方を示した。>

    この二つの記事に関する宮崎哲弥さんとの会話の中で、
    私は日経新聞の記事が上記FTのインタビュー記事を翻訳したものだと勘違いし、
    「日経新聞がFTの記事を誤訳した」という主旨の発言をしています。

    しかし、日経新聞の記事はFTのインタビュー記事を翻訳したものではなく、
    IMF年次審査報告書をベースに、別の内容を扱った記事です。
    従って、FTの記事にある"Success"を日経新聞が<未達>と誤訳して記事にしたわけではありません。
    お詫びして訂正いたします。
プロフィール

飯田浩司

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ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

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