2017年08月07日

ヒアリ対策に何をすべき?

 6月の半ばに兵庫県尼崎市で国内で初めて確認され、その後日本各地で発見報告が相次いでいるヒアリ。強い毒を持ち、最強のアリとも報道されていて、そのおどろおどろしい画像とともに大騒ぎになっています。刺されると強く激しい痛みや腫れを感じ、重度の場合数分から数十分後にアナフィラキシー症状を発症。呼吸困難や血圧の低下、意識障害などの症状が出て、海外では死亡例も報告されているようです。
 今のところ、海外からのコンテナなど荷物に紛れて入ってきているケースがほとんどで、国内で定着したかどうかは今後の推移を見守るという状況。従って、上陸はしてもそこから広がることを食い止めようと関係機関が躍起になっています。
 今日は横浜市が対策会議を開きました。

『横浜港のヒアリで連絡会議 水際対策で連携を確認』(8月7日 NHK)https://goo.gl/rGwZFC
<強い毒を持つ南米原産のヒアリが横浜港をはじめ、全国の港などで相次いで見つかっていることを受け、横浜市は7日、関係機関との連絡会議を立ち上げ、ヒアリの定着を防ぐための水際での対策に連携して取り組むことを確認しました。>

 行政だけに任せず、自分で動き出す人も多くいるようです。何しろ、「この小さなアリが人を死に至らしめることがある!」という部分が大きく報道され、これは駆除しなくてはならん!そうだ!殺虫剤だ!ということで、殺虫剤を製造・販売する会社や害虫駆除を専門とする会社の株価が上がっています。

『ヒアリ駆除へ殺虫剤好調、出荷2倍増 フマキラー株価も上昇』(7月25日 産経新聞)https://goo.gl/1eu3Sw
<南米原産の強毒アリ「ヒアリ」が日本各地の港湾などで確認され、定着が危惧される中、殺虫剤の出荷が伸びている。アース製薬やフマキラーは、今月に入り関連商品の出荷が2倍程度に増加。フマキラーの株価は上場来高値を更新するなど、投資家も熱い視線を注いでいる。>

 たしかに、近所のホームセンターに買い物に出かけても、入り口付近の目立つところに殺虫剤コーナーが大々的に展開されています。また、食品スーパーの入り口、野菜売り場の脇の目立つところにも殺虫剤。普段であれば考えられないような売り場展開がされているというのも、それだけ皆さん危機感をもってこのヒアリを見ているということですね。

 しかしながら、こうした殺虫剤のバカ売れに対して専門家に取材すると懸念を抱いている方が多くいました。というのも、こうした殺虫剤はヒアリをピンポイントで駆除するわけではなく、固有のクロアリなども一緒に駆除してしまいます。
 今のところ、ヒアリは基本的に居心地の良いコンテナの中に巣を作っていると考えられています。これがコンテナを出て国内で拡散するには、兵隊アリがいくらいてもダメで、ヒアリの女王アリが飛んでいって羽を落として卵を産み、新たにコロニーを組織していかなくてはいけません。ここがポイントで、女王アリが新たな拠点を見つけ、穴を掘って巣を作ろうとした時点で日本の固有種が女王アリを殺してしまえば拡散しません。羽を落とした直後の女王アリは守ってくれる兵隊アリがいないから丸裸も同然です。ということは、非常に弱く、固有種のクロアリでも十分に殺すことができます。
 クロアリは非常に縄張り意識が強く、自分の縄張りに異物が入ってきた場合には容赦なく殺します。ですから、今のようなヒアリの侵入初期には固有種であるクロアリを殺さずに大事にすることが非常に重要になります。ヒアリの女王アリは一つの巣の中に100匹~1000匹単位でいるということで、固有種に比べると多く、守る側としては固有のクロアリが一匹でも多く必要ということになるわけですね。

 ヒアリを警戒することは重要ですが、殺虫剤の乱用は全くの逆効果になる可能性があります。ヒアリを見つけたら、まずは行政へ連絡して対応してもらうこと。クロアリを見つけたら殺さずに応援してあげることが必要なようです。

参考:環境省ヒアリ特設ページ
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プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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