2017年08月26日

民進党代表選の経済政策議論

 蓮舫代表の辞任に伴う民進党の代表選が告示され、前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が立候補を届け出ました。野党共闘の是非と並んでこの代表選の争点と言われているのが経済政策。アベノミクスの対案としてどういったものを掲げるのかに注目が集まりますが、双方ともに分配面を強調。成長政策については多くを語りません。

『民進党代表選 財源は...前原氏「増税」枝野氏「赤字国債」』(8月24日 毎日新聞)https://goo.gl/5fY3Xd
<民進党代表選(9月1日投開票)で、前原誠司元外相(55)と枝野幸男前幹事長(53)がアベノミクスへの対抗策として掲げるのが、社会保障や福祉の充実による低所得層の底上げだ。共に個人消費を喚起して景気回復を狙う政策だ。ただ、年金安定化などに向け2019年10月に予定通り消費税率を10%に引き上げるべきだとする前原氏に対し、枝野氏は赤字国債発行による介護職員や保育士らの賃金底上げを主張。手法や財源に違いが出ている。>

 個人消費は日本のGDPの6割を占めると言われていますから、ここが伸びれば大きな経済成長が期待できます。それだけに一見するとまともなように見えますが、問題はそのカネをどこから持ってくるのか、およびどう使うつもりなのか?これが、それぞれに一長一短なんですね。
 上に挙げた毎日新聞が図にして示していますが、前原さんは消費増税を元にして、基礎年金の維持や給付付き税額控除を提示しています。一方の枝野さんは赤字国債を財源に、介護職員や保育士の賃金引き上げを目指しています。
 まずは財源についてですが、消費税の増税がどれだけ個人消費を冷え込ませるのかというのは、2014年4月に5%から8%に上げた後の後遺症がどれだけあったかを考えると背筋が凍るほどです。先日4月~6月のGDP速報値が発表されましたが、3年経ってようやく、個人消費が若干上向いてきました。それを、もう忘れてしまったのか?

 その上、所得税や法人税は累進課税性があるので、基本的には稼ぎが多くなるにしたがって納税額も増え、不景気になると稼ぎが悪くなるので納税額も抑えられます。一方の消費税は、消費に対して課税されます。食費が典型例ですが、不景気になったからと言って食費を完全にゼロには出来ません。他の費用を切り詰めることが出来ない余裕のない低所得層の方が相対的に負担率が高まるという逆進性が以前から指摘されています。
 今は日銀の金融緩和が効いていて長期金利が0%近傍に固定されています。その上、財政政策が言う程出ていませんから市場では国債が足らない状況です。枝野さんの言うように、赤字国債を財源として再分配政策を行う絶好機なのではないでしょうか。

 ただし、使い道の波及効果を考えると、これは前原さんの方がより効果がありそうです。給付付き税額控除は低所得層に広く効いていく政策です。所得税や住民税といった税金を値引きし、そもそも収入が少なく払っていなかったり、払っていても少額だった場合には、ゼロを超えた部分に関しては給付するという政策。低所得層は消費性向が高いので、給付したり控除しても預金に回るのではなく、その多くを消費します。すると、個人消費が動き出し、経済が押し上げられるという政策です。
 枝野さんの言う介護職員や保育士の賃金引上げはもちろん喫緊の課題ですが、これだけでは経済波及効果は小さい。枝野さんは1兆円規模と言っていますが、およそ520兆の日本のGDPと比較するとわずかおよそ0.2%弱に過ぎず、ごく小粒の経済対策と言わざるを得ません。

 私も火曜日に日本記者クラブで行われた討論会を見に行きましたが、どうもあまり成長についての話をしていない。その後の報道などを見ていても、あまり成長について言及する場面はありません。前原さんも枝野さんも、脱成長・格差是正の方向を向いているように感じます。したがって、金融緩和にも否定的でした。

『前原・枝野氏「物価目標1%に」 民進代表選、アベノミクスに対案』(8月25日 日本経済新聞)https://goo.gl/6Tej5x
<民進党代表選に立候補した前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が日銀の2%の物価目標の見直しを提案している。両氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の対案として社会保障を充実させ経済を底上げする考え方を提示。金融政策でも、アベノミクスの柱である金融緩和を批判し対立軸を打ち出す狙いがある。>

 前原氏は 「物価目標2%を中長期の目標に変えて、当面は1%を目指すことが現実的ではないか」と言及し、枝野氏も「まず1%を目指すのは一つの選択肢だ」と呼応しました。枝野氏は「インフレ目標を掲げても消費が変わらないのは証明された」とも主張していて、長期的には物価目標の撤回も視野に入れています。
 しかしながら、先日発表された4月~6月のGDP速報値では消費は伸びてきています。それだけでなく、雇用に関する指標、完全失業率や有効求人倍率はバブル期以来の非常に良好に推移しています。雇用に関しては、金融政策が有効に作用するということが知られています。アメリカの中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)では、物価上昇率と並んで失業率が政策目標とされているほどです。
 金融緩和を否定するということは、その果実も否定するということ。これは、"人を大事に"と主張する態度と果たして整合性はあるのでしょうか?一体どういったロジックなのか、残念ながら私の検索能力では見つけ出すことができませんでした。

 それに、「物価目標2%達成が出来なかったからアベノミクス失敗だ」といいますが、物価上昇率2%も最終的な目標ではなく、この水準まで行けば安定的に経済成長し、雇用も引き締まって売り手市場になり、結果として国民の生活が楽になるから、これを一つの目標としているに過ぎません。むしろ、経済成長して、雇用も改善して、賃金が少しずつ上がりだしたのに物価が上昇しないのであれば、これは理想的な経済状況とも言えるのではないでしょうか?もちろん、まだ経済成長がまだまだ半ばの状況だからこそ物価が上昇に至ってないわけですが、そうであれば「まだまだ足らない!もっと吹かせ!」と言うことがあれど、「目標を達成していないから全部やめ!」という結論が説得力を持ちうるのでしょうか?
 私にはそうは思えません。相変わらず、日本のリベラルはかなりユニークな経済観を元にしているようです。
プロフィール

飯田浩司

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