2012年12月

  • 2012年12月26日

    ミュージックソンのレポートで感じたこと

     今年もラジオチャリティミュージックソンにご協力いただきありがとうございました。募金は、来年の1月31日まで受け付けております。
    詳しくは、
    http://www.1242.com/musicthon2012/
    をご覧ください。

     

     さて、今回のミュージックソンで新鮮だったのは、アナウンサーのレポートコーナー。今までは中継などを担当していたアナウンサーたちが、1つないし2つのテーマを取材して、スタジオの大竹さんに報告するという形でした。正直、今まで知っている気でいたものが勘違いであったり、知っている情報が古かったりして、目からウロコのようなことが沢山ありました。
     私は音の出る信号機の歴史をレポートしたんですが、この国のハードの部分は世界で一番進んでいるということにまずはびっくり。音の出る信号機そのものの普及率や、異種鳴き交わしという音の出し方などは世界のお手本になるほどなんだそうです。そう聞いて誇り高くも思いましたが、一方、日常で目の不自由な方に出会ったときに介添えする意識や、目の不自由な方々に教える歩行訓練士の数などソフト面ではまだまだと聞くと、どの分野も同じようなものだなぁと思いました。

     

     また、レポートでは時間の都合で割愛したんですが、技術革新がかえって不便になる事例もありました。
     たとえば、携帯電話。近年のスマートフォンの伸びが著しいんですが、スマホで使われているタッチパネル式、あの指でシャッシャッとやるのが、目の不自由な方には問題なのです。今までのボタン式であれば手触りで電話を掛けることも可能ですが、スマホのディスプレイは完全に平板。何の取っ掛かりもなく、これではただの板でしかありません。
     もちろん、スマホを使った支援ソフトなどもありますが、
    http://greenz.jp/2010/05/21/looktel/
    まずこのアプリを起動させることが困難と考えると、決して十分なものではありません。ん~、多少言葉がきついかもしれませんが、健常者が机上で考えたアイディアである気がします。

     

     また、同じくタッチパネル式に移行が進む自動券売機。これに関しては、券売機の脇に点字の料金表を置き、券売機下部にテンキー(数字ボタン)があって、そこに料金を打ち込めば切符を買うことができるそうです。
    http://www.jreast.co.jp/equipment/equipment_2/index.html
    (例:JR東日本のサイト どこの私鉄もだいたい同じようなシステムです)
    救済策を作っているだけスマホよりマシかもしれませんが、ならば今までのボタン式のほうがシンプルだったような気が...。タッチパネル式とボタン式をを併存させることがなぜできなかったんでしょうか?

     

     これらの根底にあるのは、『マイノリティ軽視』があるような気がしてなりません。
     多少話が飛びますが、去年9月、小宮山厚労大臣(当時)がタバコ税増税に言及したことがありました。タバコひと箱700円も視野にという話だったんですが、その当時の新聞各紙は大々的な世論調査を行って、たばこ増税賛成反対を問いました。この問題、たばこを吸わない人にとってはあまり関心のない問題。ここ10年20年、喫煙者の割合は年々減少していて、平成24年の調査では、男性32.7%、女性10.4%。吸わない人は消極的でも増税に賛成しますから、当然たばこ増税賛成が圧倒的多数という結果がでました。
     しかしながら、国民の大多数が賛成しているからと言っておいそれと増税していいとは限りません。だって、これって少数意見を圧殺しているも同然なんですから。

     結局、民主党政権が終わってタバコ増税も話題に上らなくなりましたが、
    同じようにスマホにしても券売機にしても、大多数の健常者の利便性を追求するあまり、少数には後からちょっと救済策を講じればいいという考えが透けて見えます。製品を作るに当たっての世界観が狭くなっている気がして、やはり様々な分野でソフト面での立ち遅れを感じます。
     民主主義の要諦は、決断こそ多数決だが、そこに至るまでに少数意見をいかに大切にできるかです。今の日本に一番欠けているものである気がしています。

  • 2012年12月20日

    大勝自民党が抱える火種

     今回の衆院選は自民党の大勝利というよりは、民主党が壊滅的に敗北した選挙と言われています。というのも、まずは比例代表の当選数は前回の衆院選とほぼ変わらず。小選挙区の得票もさほど伸びませんでした。しかしながら、これだけの議席数の差が出たのは、僅差でも最も多く票を取った人が当選するという小選挙区マジックに加え、こけた民主党と、その受け皿になることができなかった第3極が互いに潰し合い、自民党が漁夫の利を得たわけです。

     

     民主党は、2009年の衆院選で掲げたマニフェストに書いていなかった消費増税を強行したということで、「ウソつき」の謗りを受けて敗北した面があります。この不人気を受けて、自民党は今回の衆院選政権公約で、「できることしか書かない」と高らかに宣言しました。しかしながら、議論が分かれるものについては玉虫色の文言に終始しました。これが、今後の火種になる可能性があります。

     

     たとえば、原発。今回の衆院選の政権公約によると、
    「原発の再稼働に関しては、『安全第一』の原則のもと、独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先します。原発の再稼働の可否については、順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指します。安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。」
    「中長期的エネルギー政策については(中略)、遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立します。」
    「脱原発」を掲げた各政党に比べると、やや再稼働容認寄りの書き方ですが、原子力規制委員会が再稼働に慎重姿勢であることを考えると、これも脱原発の一つとも読めます。
     まさに、玉虫色なのです。
     今回の選挙で脱原発を鮮明に打ち出した政党といえば、日本未来の党がありましたが、小沢色に難色を示した方や、あまりに急造すぎるその成り立ち、あるいは脱原発の道筋があまりに理想論すぎることなどで支持が集まりませんでした。民主党には入れたくないが、さりとて脱原発を掲げる各政党もイマイチしっくりこないという方が、この政権公約にすがって投票したという話もあります。今回の選挙で自民党を支持した人々をよく見てみると、原発推進も脱原発も内包しているわけですね。そうなると、将来原発を再稼働するにせよ、脱原発を目指すにせよ、支持層の半分は必ず反発するわけです。まさしく、これは火種。

     

     あるいは、TPPも同じです。これに関しては、
    「聖域なき関税撤廃がある限り、TPP参加には反対」
    文言を読めば、あぁ自民党はTPP反対なのだなと読めるんですが、一方で外交交渉は各国の国益同士がぶつかるものですから、必ず例外条項を設けます。つまり、「聖域なき関税撤廃」なんてものはあり得ないのです。これも、実は何も言っていないに等しい、どちらとも取れる玉虫色の文言なんですね。ということは、これも原発と同じ。参加するにせよ、参加しないにせよ、支持層の半分は必ず反発します。

     

     政権公約、マニフェストに書いてない消費増税をやろうとした民主党は大敗しました。一方、玉虫色の公約をした、言い換えれば何も言っていないに等しい自民党を有権者はどう判断するんでしょうか?あるいは、これらについては先送りを重ねて参院選を乗り切るんでしょうか?火種はまだ小さな火ですが、燎原の炎にもなりかねない危うさを秘めています。

  • 2012年12月14日

    有事対応とは?

     選挙戦終盤を迎えて、野田総理の自民党安倍総裁批判が激しさを増しています。曰く、

    「私は北のミサイル有事でしっかりと対応したが、平時でも政権を投げ出した人が再び総理になろうとしている。」

     北朝鮮のミサイル発射に対して、官邸はきちんとした対応だったと自画自賛ですが、果たして本当にそうだったでしょうか?本来問題とされるようなことが、選挙報道に埋もれてなされていない気がしているので、ここに書き置いておこうと思います。

     

     12月12日(水)午前9時49分、北朝鮮のトンチャンリから弾道ミサイルが発射されました。総理官邸は直ちに、緊急情報ネットワーク「エムネット」などを通じて各自治体に連絡。自衛隊は万一に備えて迎撃態勢に入りました。藤村官房長官は直ちに記者会見を開き、ミサイルの発射を発表。この一連の動きをもって、今回の情報伝達は上手くいったという総括でありました。

     

     しかし今回の発射は、前日から当日にかけて各方面から「ミサイルは取り外された」という情報が入り、(結果これは北朝鮮の陽動作戦だったのですが...)それが当日の新聞の紙面を飾った直後の出来事でした。
     問題は、これを日本政府が事前にキャッチしていたのかということ。アメリカはキャッチしていたようで、それを官邸サイドには伝えていたのかどうなのか?その後の報道や取材によると、どうやら「打ちそうだ」ということを伝えていたようです。という前提で、当日の総理の動きをみると、
    『【午前】6時51分、官邸。8時、樽床総務相、玄葉外相、羽田国交相、小平国家公安委員長、長島防衛副大臣、藤村官房長官。40分、全員出る。10時4分、内閣危機管理センター。岡田副総理、藤村長官、米村内閣危機管理監同席。51分、安全保障会議。11時24分、終了。』
    少なくとも、8時からの関係閣僚会議で発射可能性について情報が共有されていたことが考えられます。そして、9時49分の発射までは、1時間以上の時間があった。なぜ、そこで注意情報なりを出すことができなかったのか?仮にこれが日本本土を狙うミサイルだった場合、「打ちました」という情報があって3分~5分で到達してしまいます。つまり、有事対応という意味では、打った後にどれだけスムーズに対応したところで、国民の命を守ることはできないということです。むしろ、打つ前にどれだけ兆候を把握し、事前に対応できるかどうかがカギを握ります。そう考えると、官邸の対応はいかがでしょうか?「しっかりした対応」であったでしょうか?

     

     その上、総理の午後のスケジュールを見てみると、
    『【午後】1時30分、報道各社のインタビュー。46分、JR東京駅。2時、のぞみ231号で同駅発。3時40分、JR名古屋駅。45分、こだま657号で同駅発。4時9分、JR米原駅。5時1分、滋賀県草津市の民主党衆院選候補者の選挙事務所。32分、JR草津駅前。街頭演説。6時22分、JR石山駅前。街頭演説。7時27分、京都市右京区の市立葛野小学校で演説会。54分、報道各社のインタビュー。8時13分、JR京都駅。33分、のぞみ58号で同駅発。10時53分、JR東京駅。11時11分、公邸。』
    ミサイルが発射された後、直後対応をした後は選挙遊説に出かけているのです。あれだけ発射を反対し、国際的な包囲網で圧力をかけていたわけですから、それを振り切って発射した北朝鮮に対し、アメリカ、韓国、中国などと首脳外交を繰り広げるべきではないのか?外務省など事務方に任せれば済む話なのでしょうか?疑問は尽きません。

     

     外交よりも選挙を選んだ総理。それが妥当な選択肢だったのか、今週日曜に結果が出ます。

  • 2012年12月11日

    政治家の選び方

     世論調査での獲得議席数予想をみるまでもなく、政権与党・民主党の不振は明らかです。先日、ある選挙区を取材して、陣営の苦しい胸の内を聞いてきました。この候補は民主党政権で閣僚も経験し、知名度もある方ですが、自民党の候補を懸命に追いかける立場に置かれています。朝の街頭演説の様子を一時間ほどじっと見ていたんですが、彼はただの一度も「民主党」という言葉を発しませんでした。ただただ、自分の名前を繰り返し、個別の政策を少し話し、握手をし、ビラを配る。支援者も、揃いの赤いジャンパーを着ていますが、しかしながらその背中には何も書いてありません。3年半前なら、そこに誇らしげに「民主党」というマークが踊っていたでしょうに。

     

     演説が一段落したとき、思い切って聞いてみました。
    「民主党って、一言もいいませんね?」
    すると彼は、
    「いや、私は自分のやってきたこと、政策をアピールするだけですから」
    と、毅然と言いました。よくよく見ると、彼の選挙カーの看板も、「民主党」とは一つも書かれていませんでした。苦しい選挙です。

     

     さて、看板と言えば、今回の選挙、政党の看板をいとも簡単に架け替える候補が続出するかもしれません。今日、みんなの党の江田幹事長がこんな発言をしていました。
    『みんなの党の江田憲司幹事長は11日夜、都内で街頭演説し、日本維新の会との関係に関し「(旧太陽の党の議員と)離婚すればいい。そうしたらみんなの党と再婚できるかもしれない」と述べ、旧太陽との決別を条件に衆院選後の合流協議に意欲を示した。江田氏は「維新は太陽と一緒になって政策がぶれた」と指摘し、「(維新の政策を)元に戻させる。投開票日(16日)に橋下(徹代表代行)さんと話したい」と語った。』
     最近、政界関係者の方々と話すとみんな言うのが、「選挙が終わった後に、さらなる合従連衡がある」ということ。選挙直前に無理やりくっついた政党が、軒並みバラバラになる可能性があるということです。
     一つには、このまま自公政権になったとしても参院で少数与党となるので、このねじれ国会を見越しての合従連衡。
     もう一つは、公示日を前に続出した合併政党が、年末を締め切りとしてくっついたり離れたりを続けるということです。というのも、政党助成金は、1月1日時点での議員の所属人数によって金額が決まります。ですから、そこを目がけて気の合う、政策の合う者同士で再編する引力が働くわけです。でなければ、選挙の真っただ中に、政党の幹事長からライバル政党へ合流のオファーなどありはしません。敵に塩を送るような行為をわざわざするわけですから。

     

     こんなことを選挙期間中にすること自体が政党政治への冒涜だと私は思いますが、現に起きてしまっているので、我々有権者としてはどう対処すればいいか?今週それを考えて、『その一票を無駄にするな!ダブル選挙!メディアに流されない投票術』という特集をお送りしています。コメンテーターの方々の話を聞いていて思ったのは、やっぱり人物本位で投票する以外にはないということ。シンプルですが、本人に会いに行って話をききましょう。それが無理なら、ネットなどで過去の言動を探しましょう。こちらも勉強しないまま文句だけ言うことから卒業する必要があるのかもしれません。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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