2012年12月14日

有事対応とは?

 選挙戦終盤を迎えて、野田総理の自民党安倍総裁批判が激しさを増しています。曰く、

「私は北のミサイル有事でしっかりと対応したが、平時でも政権を投げ出した人が再び総理になろうとしている。」

 北朝鮮のミサイル発射に対して、官邸はきちんとした対応だったと自画自賛ですが、果たして本当にそうだったでしょうか?本来問題とされるようなことが、選挙報道に埋もれてなされていない気がしているので、ここに書き置いておこうと思います。

 

 12月12日(水)午前9時49分、北朝鮮のトンチャンリから弾道ミサイルが発射されました。総理官邸は直ちに、緊急情報ネットワーク「エムネット」などを通じて各自治体に連絡。自衛隊は万一に備えて迎撃態勢に入りました。藤村官房長官は直ちに記者会見を開き、ミサイルの発射を発表。この一連の動きをもって、今回の情報伝達は上手くいったという総括でありました。

 

 しかし今回の発射は、前日から当日にかけて各方面から「ミサイルは取り外された」という情報が入り、(結果これは北朝鮮の陽動作戦だったのですが...)それが当日の新聞の紙面を飾った直後の出来事でした。
 問題は、これを日本政府が事前にキャッチしていたのかということ。アメリカはキャッチしていたようで、それを官邸サイドには伝えていたのかどうなのか?その後の報道や取材によると、どうやら「打ちそうだ」ということを伝えていたようです。という前提で、当日の総理の動きをみると、
『【午前】6時51分、官邸。8時、樽床総務相、玄葉外相、羽田国交相、小平国家公安委員長、長島防衛副大臣、藤村官房長官。40分、全員出る。10時4分、内閣危機管理センター。岡田副総理、藤村長官、米村内閣危機管理監同席。51分、安全保障会議。11時24分、終了。』
少なくとも、8時からの関係閣僚会議で発射可能性について情報が共有されていたことが考えられます。そして、9時49分の発射までは、1時間以上の時間があった。なぜ、そこで注意情報なりを出すことができなかったのか?仮にこれが日本本土を狙うミサイルだった場合、「打ちました」という情報があって3分~5分で到達してしまいます。つまり、有事対応という意味では、打った後にどれだけスムーズに対応したところで、国民の命を守ることはできないということです。むしろ、打つ前にどれだけ兆候を把握し、事前に対応できるかどうかがカギを握ります。そう考えると、官邸の対応はいかがでしょうか?「しっかりした対応」であったでしょうか?

 

 その上、総理の午後のスケジュールを見てみると、
『【午後】1時30分、報道各社のインタビュー。46分、JR東京駅。2時、のぞみ231号で同駅発。3時40分、JR名古屋駅。45分、こだま657号で同駅発。4時9分、JR米原駅。5時1分、滋賀県草津市の民主党衆院選候補者の選挙事務所。32分、JR草津駅前。街頭演説。6時22分、JR石山駅前。街頭演説。7時27分、京都市右京区の市立葛野小学校で演説会。54分、報道各社のインタビュー。8時13分、JR京都駅。33分、のぞみ58号で同駅発。10時53分、JR東京駅。11時11分、公邸。』
ミサイルが発射された後、直後対応をした後は選挙遊説に出かけているのです。あれだけ発射を反対し、国際的な包囲網で圧力をかけていたわけですから、それを振り切って発射した北朝鮮に対し、アメリカ、韓国、中国などと首脳外交を繰り広げるべきではないのか?外務省など事務方に任せれば済む話なのでしょうか?疑問は尽きません。

 

 外交よりも選挙を選んだ総理。それが妥当な選択肢だったのか、今週日曜に結果が出ます。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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