2018年12月

  • 2018年12月31日

    そして課題は年を越す

     年末にかけて、韓国海軍の艦艇による火器管制レーダー照射が問題になりました。番組でも何度も取り上げ、国際的なマナーの面で非常に大きな問題であると報じてきました。一部には、こうしたことは各国が行っているし、公開された動画では砲は向いていなかったから問題ないのだという指摘もありましたが、一方で火器管制レーダーの照射は慎みましょうねという海上衝突回避規範(CUES)に反していることが明らかです。

    <日米中など21カ国の海軍高官が参加する西太平洋海軍シンポジウムが22日、中国山東省青島で開幕し、海上で他国の艦船と予期せず遭遇した場合の行動規範を定めた「海上衝突回避規範(CUES)」で合意した。無線で行動目的を伝え合うほか、敵艦を攻撃する際に照射する火器管制レーダーを相手艦船に一方的に照射しないことなどを決めた。海上での偶発的な衝突を防ぐのが目的。>

     このCUESの策定段階から韓国も入っているわけですから、いかに冷戦期からやっていたレーダー照射とはいえ、時代が変わり事情が変わったと見る方が論理的でしょう。確かに"規範"であって罰則規定等はありませんから、これに反したとしても影響がないのかもしれませんが、マナー違反であることは確か。さらに、海自関係者に聞くと、こうしたマナー違反は実は日常茶飯事だったということで、現場としては我慢に我慢を、忍耐に忍耐を重ねたうえで今回の行動は目に余るということで表沙汰にしたということなのでしょう。
     マナーに反する行動を何度も行えば、相手にされなくなるのは社会人をしていれば当然のこと。国際社会だって人間と人間の関係には変わりありませんから、こんなことを続けてれば韓国政府の信用が失われかねません。日本政府が騒ぎすぎだという指摘も一部にはありますけれども、それはあまりに一方的な視座に立った指摘なのではないでしょうか。

     さて、自衛隊関連のニュースと言うとこのレーダー照射事案ばかりが注目されていますが、並行して自衛隊が災害出動している重大な案件があります。それが、岐阜県を中心に流行している豚コレラです。

    <岐阜県は25日、岐阜県関市の養豚場の豚から、豚(とん)コレラウイルスの陽性反応を確認したと発表した。9月に岐阜市の養豚場で国内では26年ぶりに確認されて以来、飼育施設の豚やイノシシでの感染確認は6例目。民間の養豚場では2例目となる。殺処分の対象はこれまでの10倍以上の7547頭で、県は自衛隊に派遣を要請した。>

     クリスマスもなく陸自の部隊が派遣されていたのですが、関係者に聞くと派遣された隊員さんたちは辛かったようです。隊員さんたちは慣れないブタを相手に殺処分のため追い込んでいくわけですが、何とも言えない眼でこちらを見るんだそうですね。これ以上豚コレラを蔓延させないためには致し方無い処置なのですが、現場で割り切るためには感情を押し殺す必要がありますよね。任務とはいえ、やはりやり切れない部分があったようです。

     そして、このニュースは地元紙や大手紙の地方欄を除くとさほど大きく報じられていません。人間への感染がなく、感染した豚の肉を食べても健康への影響がないということなので大きく報じられないのかもしれませんが、個人的には大きなニュースだと感じています。というのも、人間に影響がないとはいえ海外から疫病が入ってきてさらに行政側の不手際で蔓延した可能性が報じられていますから、リスクコントロールの面からは失敗したともいえるからです。

    <岐阜県美濃加茂市の県畜産研究所で3例目の豚コレラ感染が確認された。岐阜市畜産センター公園に続き、民間の模範となるべき県の施設での不手際に、農家からは「あってはならないこと」と批判の声が上がり、専門家も「防疫体制は徹底されていたのか」と疑問を投げ掛ける。
     「行政は甘く考えていたのではないか」。県内の養豚農家の男性は憤る。2例目となった畜産公園では、豚舎ごとに専用の衣服などを複数用意、使用すべきだったのに徹底していなかったことが判明。>

     さらに、この豚コレラ問題の最大の問題点は、どうやって日本に入ってきたのかがいまだ解明されていない点です。今回の豚コレラ蔓延は、豚コレラが流行している国から来た観光客がウイルスに汚染された豚肉を持ち込んだことが疑われていて、ここから野生のイノシシに感染し、イノシシから養豚場の豚にも感染したとされています。海外からの訪日客は増える一方な上、さらに来年はラグビーワールドカップにG20、再来年は東京オリンピック・パラリンピックとさらに訪日客が増える見込みです。今回の豚コレラ問題は、感染症予防、リスク管理という面で学ぶべきことが多いと思います。この件、畜産の問題ということで農林水産省が対応していますが、感染症ということであれば国立感染症研究所なども他人事ではなくノウハウを共有する必要があるのではないでしょうか?感染経路の特定、感染地域の封じ込めなどのケーススタディとなるでしょう。この問題も年を越してしまいますが、2019年早期に経路を特定し、収束して欲しいものです。

     結びに、今年一年もOK!Cozy Up!ともどもご愛顧いただきありがとうございました。朝の番組が4月に始まり、必死に走ってきたら年末まで来たというのが正直なところです。来年もおそらく必死に走り続けることになると思いますが、どうぞご愛顧いただければ幸いです。ついでに、一つ告知をさせてください。4月にはイベントもあります。


     4月13日(土)、有楽町のよみうりホール、お昼と夕方の二回公演、チケットは全席指定4400円です。年明けにぴあ先行発売があります。まだまだチケット結構ありますから、よろしくお願いいたします。
     改めて、今年一年本当にありがとうございました。皆さまどうぞ良いお年をお迎えください!
  • 2018年12月21日

    防衛大綱・中期防をどう報じたか

     来年度以降の防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画が閣議決定されました。各紙、ヘリ搭載型護衛艦「いずも」に垂直離着陸可能な戦闘機F-35Bを載せるという計画を受けて、「空母!空母!空母!」と大騒ぎしています。

    <歴代内閣が否定してきた空母の保有に向け、安倍政権が一線を越えようとしている。専守防衛からの逸脱は明らかで、認めるわけにはいかない。
     政府は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、垂直着艦ができる米国製の戦闘機F35Bの運用を検討してきた。年末に改定する防衛計画の大綱に、それを可能とする表現を盛り込む方針だ。>


     朝日の社説は書き出しからして、どんなものであれ戦闘機が飛び立つ船ならすべて"専守防衛"に反するというような言いぶりです。ちょっと冷静さを欠いているのではないでしょうか。一方で毎日は冷静に、<政府の憲法解釈で「攻撃型空母」の保有は専守防衛に反するとされてきた。一方、中国が空母の運用を始めたのだから、東シナ海や太平洋の離島を防衛するうえで空母があった方がよいという考え方も否定はできない。脅威の態様によって専守防衛の形が変わる部分もあるだろう。>と、外形的に戦闘機の離発着があるかどうかではなく、脅威の態様によって変わるという論評に留めています。その上で、<だが、普段は対潜水艦哨戒ヘリを搭載し、戦闘機は必要な場合だけの運用だから攻撃型空母ではないという政府の説明はごまかしに等しい。>と批判をしています。たしかに、我が国の抑止力の向上に資するのであれば、堂々とその必要性を認め、場合によってはもっとちゃんとした空母や強襲揚陸艦を保有する必要があるかもしれません。
     海上自衛隊の関係者に取材をしていると、以前からこの「いずも」のような広大な甲板を持つヘリ搭載型護衛艦の塗料を耐熱性の高いものに塗り替えれば、垂直離着陸機の運用は可能になると指摘されていました。ですが、このいずもをもってしても搭載可能なF-35Bの数は飛行甲板に5機、1フロアしたのエプロン部分に5機+αぐらいのもので、せいぜい十数機でいったいどんな攻撃作戦を立てられるというのか?その上、このいずもは航空運用機能に特化するため、非常に簡素な兵装になっており、またミサイル護衛艦などに比べると速力も劣り、基本的に他の護衛艦に防護してもらわない限り作戦海域での行動ができません。
     単体で攻撃作戦が出来ないうえに、搭載できる航空機の数にも限りがある。速力が遅く、「鈍ガメ」(海自関係者)のようなこの船一つで、どうして専守防衛が崩れるというのでしょうか?これ一つで日本周辺の戦略環境が変わるようなゲームチェンジャーならば、建造の段階からもっと大々的な批判が周辺各国から上がってもおかしくありません。が、そんなことはなく、大綱の閣議決定の段階でお約束の批判が中韓などから上がるのみ。この周辺各国の対応がすべてを物語っているではありませんか。

    むしろ私は、この「いずも空母化」もある意味の弾除けのようなものなのかもしれないと思っています。むしろ、大綱や中期防の中にはもっと議論すべきイシューがいろいろあるのではないか?そう思って、火曜日に閣議決定された防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を読んでみました。



     従来の陸・海・空の作戦領域のみならず、宇宙、サイバー、電磁波などの領域においても柔軟かつ戦略的に活動できる「多次元統合防衛力」の構築を打ち出しました。今までもこうした新しい領域をカバーするような活動も行ってきていますが、陸・海・空の3自衛隊の仕事の領域がますます大きく拡大するということです。
     具体的には、空自に宇宙領域専門部隊1個隊を新編し、(中期防・別紙3ページ)陸自陸上総隊隷下にサイバー部隊および電磁波作戦部隊を新編します。(同4ページ)一連の新領域への動員が明記される一方で、編成定数については計画期間末(平成35年度末)の段階で陸自がおおむね15万1千人(常勤)、即応予備自衛官8千人程度、海自、空自は平成30年度末の水準を目途とするとしています。(中期防・別紙6ページ)海自・空自は現状維持、陸自は数字で出しているから増やすのかな?と思いがちですが、現状がどうかというと、


     この「2 自衛官の定員及び現員」の項を見ますと、陸自の定員でおよそ15万1千人、即応予備自衛官が8千人です。今後5年で定年などの入れ替わりはありますが、何のことはない、陸自も現状維持に過ぎないわけで、「任務は大きく増えるものの、定員は増やさないのでやり繰りをするように」と大綱、中期防で宣言してしまったようなものなのです。その上、定員が現状維持でも現員、つまり今この瞬間に自衛官として現役で活動しているのは陸・海・空・統幕すべて合わせても定員の9割に過ぎません。常に1割の欠員を抱えている状況で、さらに言えば現場で手足となって働く「士」の充足率は7割に満たない状況です。この状況下で現状維持、あとは現場で解決せよとは!私は、現場へのしわ寄せを懸念します。

     そしてもう一つ、いずも一隻の運用方法の変更で専守防衛が崩れるという向きがなぜか見落としているのが、敵基地攻撃能力。これは自民党の部会で明記を提唱されていましたが、結果としてこの文言は落とされました。が、よくよく中期防を読み込むと表現を変え、項目を変えて書き込まれています。中期防・別紙10ページ~11ページには、

    <(イ)スタンド・オフ防衛能力
    我が国への侵攻を試みる艦艇や上陸部隊等に対して、自衛隊員の安全を確保しつつ、侵攻を効果的に阻止するため、相手方の脅威圏の外から対処可能なスタンド・オフ・ミサイル(JSM、JASSM及びLRASM)の整備を進めるほか、島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾、新たな島嶼(しょ)防衛用対艦誘導弾及び極超音速誘導弾の研究開発を推進するとともに、軍事技術の進展等に適切に対応できるよう、関連する技術の総合的な研究開発を含め、迅速かつ柔軟に強化する。>

    という記述があり、同12ページには、
    <日米間の基本的な役割を踏まえ、日米同盟全体の抑止力の強化のため、ミサイル発射手段等に対する我が国の対応能力の在り方についても引き続き検討の上、必要な措置を講ずる。>
    とされています。

     この島嶼防衛用高速滑空弾は、ざっくりと一般的な言い方に転換すれば「地対地巡航ミサイル」ということになります。用途で分ければ防衛用でも、使い方を変えれば十分に敵基地攻撃にも使えるわけですね。また、12ページにあるように、「ミサイル発射手段等に対する我が国の対応能力」というのは、取りも直さず敵基地攻撃能力を指しますね。飛んでくるミサイルだけに対処するのであれば、ミサイルに対する~で事足りるところ、あえて「発射手段等」としているわけですから。
     そして、これが単なる構想だけではないことが、同4ページには、
    <島嶼部等 に対する侵攻に対処し得るよう、島嶼防衛用高速滑空弾部隊の新編に向け、 必要な措置を講ずる。 >
    と明記されています。装備品だけでなく、それを扱う人員についても手当てが明記されているわけです。専守防衛が崩れると批判したいのであれば、ここをこそ批判すべきでしょう。

     と、ここまで書いてきて念のため申し添えますが、私は敵基地攻撃能力を保有することが我が国の安全を担保するのであれば(その蓋然性が高いとも思っていますが)持つべきであろうと思います。その上で、朝日新聞が言うように「抑止力を持つことそのものが戦争を引き起こす」という主張なのであれば、この敵基地攻撃能力の言い換えを批判する方がよほど筋が通っているというものなのではないでしょうか。
     ただし、ここで議論を始めると、「座して死を待つつもりか!」と批判される恐れなしとは言えません。ただ、この議論の中から、日本独自の抑止力で守るのか、それに代わる軍事でない手段があるのかないのか、そして日米安保をどう活用するのかといった具体的な議論が生まれてくると思うのです。そこで仮に朝日の従来の主張に綻びが見えたとしても、それが国民全体の議論に資するのであれば、言論機関として役割を全うしたことにならないでしょうか?これこそがメディアの矜持の一つなのではないでしょうか。
     ところが、そうした論争そのものを恐れたのか、見て見ぬふりをして"いずも空母化"ばかりを批判するのは「木を見て森を見ず」の典型でないかと思います。この国をどう守ったらいいか、抑止力とは何なのかを議論するいい機会だったのに、"いずも空母化"で時間を空費してしまったのは残念でなりません。
  • 2018年12月14日

    社長インタビューを終えて

     今週のOK!Cozy Up!は、『激動の平成にスクープアップ!』と題して、経済界の個性溢れる社長たちのインタビューをお送りしました。月曜と火曜がジャパネットたかた創業者の高田明さん。水曜と木曜が崎陽軒社長の野並直文さん。そして金曜日が築地銀だこを展開するホットランドの社長、佐瀬守男さんです。いずれも非常に興味深いお話を聞くことができました。この様子は、radikoタイムフリー、ポッドキャスト、YouTubeで配信しています。詳しくは番組ホームページをご覧ください。


     高田さんや佐瀬さんには叩き上げの経営者の凄みを感じましたね。お二人とも物腰も柔らかで話し方も丁寧なのですが、言葉の力強さ、そしてふとした間に「お前次なに聞いてくるんだ?ちゃんとした質問しろよ?」と言うかのようなオーラを出すんですね。ただ私が気圧されていただけなのかもしれませんが・・・。
     また、野並さんは崎陽軒の三代目。こちらは先代、先々代が守ってきた看板を受け継ぎ、守っていくという別の形のプレッシャーが重く肩にのしかかっていました。ある意味、家業なのですから仕事への理解と情熱は誰よりもある。それをどうやって社内に浸透させるのか?特に食品という、直接お客様の口に入るものを扱っている以上、品質だけでなくその理念もしっかりと従業員に浸透させなくてはモラルハザードが起きてしまいます。そこで作り出した経営理念は、以外にも否定形から入るというものでした。


     ナショナルブランドとして全国展開するのではなく、あえてローカルブランドに徹する。広げるのは簡単でも、我慢してそこに居続けるというのがどれ程大変なことか。安易に一時の利益拡大に走らずに地に足のついた経営をするというのは、オーナー企業の強みの1つであるのかもしれません。

     この経営理念の浸透は、経営トップにとって共通の課題。高田さんともインタビュー中にそんな話題になりましたが、横にいたジャパネットの社員さんに「言えるか?」と抜き打ちテストをいきなり始めてしまいました。高田さんは、
    「どんな立派な理念があっても、従業員に浸透しなかったら意味がない。こういったものはすぐに形骸化してしまう。書くだけではダメ」
    と、朝礼の時やこうした抜き打ちテストなど、折に触れて社員が経営理念に触れる仕組みを作ることに腐心したそうです。このことは、今社長をされているJリーグのVファーレン長崎でも続けているといいます。あなたは、自分の会社の経営理念、言えますか?私は・・・、全くダメですね(笑)

     さて、今回の社長インタビューは消費者にもっとも近い分野の企業トップが揃いました。その中でも食品はまさに生活に密着するもの。ということで、消費増税の影響をどう見るかも聞いてみたんですね。
     すると、実は正反対の反応が返ってきました。築地銀だこの佐瀬社長は「参った」。一方、崎陽軒の野並社長は「今回はさほど影響ない」。なぜこの違いが出たのか、そこには軽減税率の扱いが絡んでいました。崎陽軒はそのビジネスモデルからして、持ち帰りオンリーの業態です。ですから、無条件で軽減税率適用となり、値段を変える必要はありません。一方、銀だこの方はイートインなのかテイクアウトなのか、どちらの需要も大きいだけにどう判断していいものか非常に迷うところ。この辺の判断の複雑さは軽減税率の議論が始まった頃からこのブログや番組で議論していますが、現場の苦労はことほど左様に尋常なものではありません。そして、小売り大手各社はこんな、ある種乱暴な対応を検討しているようです。

    <2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。>

     外食の10%税率の時の税込み価格に内食の方も合わせるということだそうです。これならきちんと消費税を転嫁できるので企業は損をせずに済みますが、消費者からすると消費税アップで苦しい上に、持ち帰りで少しでも負担を軽くしようという努力も許されなくなるということになります。いくら現場のオペレーションが煩雑になるとはいえ、そもそもこんなことが可能なのは大手だけでしょう。
     私はもともと、消費税増税そのものがこのタイミングではおかしいと思っていますし、その負担軽減策としての軽減税率は本来救済すべき人々以外の富裕層にまで恩恵が及ぶ時点で愚策であると思っています。が、この大手小売りの軽減税率対策は、現場従業員の負担軽減を差し引いても、軽減税率をも上回る天下の大愚策といっても過言ではないと考えます。
    というのも、これ、消費増税で経済が冷え込み、軽減税率で財務省もちょっと税収を損するのですが、その損をした分が消費者に帰るならまだしも、企業が自分達の利益にしてしまおうということですからね。
     「一将功成りて万骨枯る」ではありませんが、企業のみが利益を維持拡大させ、その分経済全体が冷え込む上に大して財政再建に資することもない。
     まぁ、私企業の判断ですから、我々にはそれを止めるすべを持ち合わせていませんが、企業も社会の一員である以上、その責任というか、自分達が良ければいいの部分最適ではなく、マクロ的な全体最適から判断をすることは出来ないのでしょうか?今回インタビューした3人の社長は揃って、企業は社会の一員であることを強調していました。

     最後に、松下幸之助の考えた「企業の社会的責任」という3つのポイントを紹介して本稿を閉じたいと思います。

    <1.企業の本来の事業を通じて、社会生活の向上、人びとの幸せに貢献していくこと。
    2.その事業活動から適正な利益を生み出し、それをいろいろなかたちで国家社会に還元していくこと。
    3.そうした企業の活動の過程が、社会と調和したものでなくてはならないこと。>
  • 2018年12月06日

    国際航空宇宙展を取材して

     先週の水曜日、東京ビッグサイトで行われた国際航空宇宙展に行ってきました。それはお前の趣味であって取材ではないだろうという声も聞こえてきそうですが、しかし行ってみるといろいろ勉強になりました。


     国内外の航空・宇宙産業各社が出展し、3日間で延べ2万7千人あまりを動員した今回の展示会。航空機からロケット、果ては無人機や衛星に至るまで様々な先端技術を各社が披露していました。素人の私がざっと見て何がわかるんだという話ではあるのですが、印象としては無人化、自動化とアプリ化の流れなのかなというところ。残念ながら日本は戦後GHQが航空技術の研究を禁止されていたのが尾を引いたこともあり、日本企業は一部を除き完成機を製造していません。それゆえ、今回の展示会でも個々の部品をPRするものが多く、なかなか全体のコンセプトを展示するのは難しかったようです。一方でボーイングやエアバスといたった欧米各社は自分たちの機材の紹介にとどまらず、それがどう世界を変えるのか、生活を変えるのかという全体のコンセプトの提案を行っていて、ん~、ここにも戦後レジームが残っているのか...と少し暗い気持ちになりました。

     そして、この全体コンセプトの中心にいたのが無人機です。たとえば、アメリカの無人機メーカー、ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ社(GA-ASI)は無人機とそれを操縦する一連のシステムをパッケージにした遠隔操縦航空機(RPA)システムを紹介していました。
     その名も、ガーディアン。
     これは民間用途向け、民間空域を飛び、レーダー、カメラなどの装着が可能。アメリカの税関・国境警備局で現在運用されているそうで、360度海洋レーダーとカメラの組み合わせで不審船の特定などの船舶運航管理、捜索・救助、海図作成、水産資源管理、災害監視などリアルタイムの状況認識が必要な場面で威力を発揮しています。驚くべきはその航続時間で、何と48時間。人間が乗らないとそんなに長い時間飛んでいられるのかぁと驚きますが、これであれば現在は有人機が飛んでいる尖閣周辺の警戒監視もずいぶん楽になります。那覇の海上自衛隊のP3-C部隊を取材したことがありますが、その精強さに驚くとの同時に、人繰りの面でかなり現場に負担がかかっているのも目の当たりにしました。

    ガーディアン.jpg
    長崎県壱岐で実証実験を行ったガーディアン

     いろいろお話を伺うと、このガーディアンにはポッドと呼ばれる組み込みキットを乗せ換えることができ、そのポッドのバリエーションの中にはソナーもあるそうです。今はソナーで収集した潜水艦や艦船のスクリュー音を上空を飛ぶP3-Cにいるソナー員たちで聞いているわけですが、この音をリアルタイムで地上で聞くことが可能。さらに音声がデータとしてくるわけですから、音声の波形をAIで照合してどの船なのか、その船が今までどういった航跡を辿っているのか、この船とコンタクトをしたかもしれない船はどんな船なのかといった副次的なデータまでズラっと並べて検索することが可能なのだそうです。今、東シナ海から日本海では北朝鮮船舶と他国船舶の間での積み荷のやり取り、いわゆる"瀬取り"が問題になっています。だいたい、船舶の所属国がカムフラージュされているので捜査が非常にやりづらいといわれていますが、こうした複雑なカムフラージュをあっという間に丸裸に出来るかもしれません。

     さらに、48時間飛び続けられるということで、たとえば災害時に問題になる無線の周波数の問題も解決できるそうです。警察・消防・自衛隊、さらに自治体で各々違う周波数の無線を使っていて互換性がないので、緊急時に情報のやり取りがやりづらいというのは前から指摘されてきました。共通の周波数を設定して情報のやり取りを一元化するなどの対策も現場では取られてきましたが、このガーディアンに専用ポッドを取り付けることで、緊急の空中無線中継器としてそれぞれの無線機をいつも通りに使いながら、それを上空で各々の周波数に変換して瞬時に再配信。リアルタイムでの情報共有を可能にすることができるそうです。

    ガーディアンコクピット2.JPG
    無人機ガーディアンのコクピット。有人機と同じようなインターフェイスになっている。

     こうして、ポッドを付けたり降ろしたりすることで一機で様々な用途に対応可能というのが、私の感じたアプリ化の具体的な事例です。このGA-ASI社のアジア太平洋担当国際戦略開発リージョナル・ディレクターのケネス・ラビング氏も説明の中で、
    「このガーディアンはトラックである」
    と表現していました。トラック、つまり積み替え可能なプラットフォームであり、使い方はメーカーで定義することなく様々なポッドを開発して自由にカスタマイズしてほしいということです。

     そして、そのポッドの中には兵器に類するものもあり、有事の際にはミサイルや機関砲といった武器のポッドを装着して出撃することが"理論上は"可能であるとの説明も受けました。アメリカでは米軍の知見も織り込みながら開発をしているので、そうした互換性があるのもうなづけるところです。

     こうした、ある意味の"軍民共用"のプラットフォームは何もGA-ASIに限ったものではありません。例えばヨーロッパの航空機メーカーエアバスのヘリコプターについても説明を受けたのですが、最新鋭のヘリコプターは30分ほどの換装時間で空対地ミサイルや機関砲などを乗せ換えることが可能とのことです。やはり平時は警戒監視等に使い、有事の際には換装して対応する。各国で予算も限られる中、そうした有事平時共用の発想というのは今後のトレンドになっていくのでしょう。

    エアバスヘリ.JPG

     さて、こうした今後のトレンドの中にあって、日本だけは独特の"壁"にぶち当たります。戦後一貫して問題となってきた、憲法9条に代表される"戦力"の定義と兵器と民生品を分けようとする姿勢です。縷々説明してきたように、かつての民生品と軍用品の仕様が全く異なっていた時代には考えられなかったような共用が今は可能となっています。その時、その装備は軍用品となって規制を受けるのか?災害対応の民生品なのか?平時は災害対応として使う無人機も、換装すれば敵基地攻撃能力を持つ可能性があるから配備はできません!というような、世界の潮流から2周も3周も遅れた議論をまた繰り返すのでしょうか?敵基地攻撃能力を疑われるから共用の研究はできません!ということになるのでしょうか?いい加減、法律に現場が合わせるのではなく、現場を把握したうえで法律を変える方向に議論を持っていかなくては、取り返しがつかないほど乗り遅れてしまいかねません。

     今回の国際航空宇宙展には中国企業は見かけませんでした。が、この分野、最もカネをかけて研究しているのは中国です。その国と、我が国は対峙しているということを忘れてはいけないと思います。
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
「飯田浩司そこまで言うか!ONLINE」

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