2014年11月

  • 2014年11月24日

    解散の大義ってなんだ?

     衆議院の解散後はじめての週末を経て、各社の世論調査が紙面を飾っています。右も左も、いわゆる『解散の大義』についての部分を見出しにとっています。

    『解散、7割が「適切でない」 内閣支持率48・9%に下落』(産経新聞 11月24日)http://goo.gl/TcUsgK
    <首相が衆院の解散を決断したことについては「適切だと思わない」が72・2%に達し、「適切だと思う」の22・8%を大幅に上回った。首相が解散の理由に関し、消費税の10%への引き上げ先送りを挙げ、「重い決断をする以上に速やかに国民に信を問うべき」としたことについては、「納得できない」が71・7%を占めた。>

     今回の解散は、前々から「ここで解散だ!」という観測記事が出続けました。そしてその解散について、「今回の解散は大義がない。納得できない。不当な解散だ」という論調で紙面が埋め尽くされた上での世論調査という流れなわけです。ここ2週間の紙面構成の成果がこうして数字として表れたまでで、大きく報じるようなものではありません。

     さらに極め付けが今日の朝日新聞の2面で、
    『選挙「大いに関心」21% 過去3回を大きく下回る 朝日新聞社連続調査』(11月24日 朝日新聞)http://goo.gl/Wqn9Vz
    <朝日新聞社の衆院選連続世論調査(電話)で、衆院選への関心を聞くと、「関心がある」は「大いに」21%と「ある程度」44%を合わせて計65%だった。「大いに関心がある」は過去3回の衆院選前の調査と比較してもかなり低い水準だ。>

     「大いに関心がある」人が21%と低いので、きっと投票率がかなり低迷するだろうという記事。「大義がない」し、国民の「関心がない」選挙だから、これは不当な選挙であると主張しているわけです。

     しかし、国民が主権を行使する選挙について、公示もされる前から余計なお世話だというものです。「争点もない選挙」、「不当な解散」と言い募って有権者の意識を冷やし、選挙となって投票率が低迷すればしたで批判する。何と言うマッチポンプでしょうか。それより、「これも争点」「あれも争点」と論点を提示して、議論を巻き起こすのがメディアの役目ではないでしょうか?むしろ、政権に対して批判的なメディアの方が、議論が足りていない課題をよくよくご存知だと思うのですが。たとえば、今年の7月にはこんな指摘も。

    『政府、集団的自衛権行使へ閣議決定 憲法解釈を変更』(7月2日 朝日新聞)http://goo.gl/f28D1T
    <いずれの選挙でも、集団的自衛権は公約の中心にはなかった。参院選ではむしろ憲法改正を説き何より経済政策への支持で今日の政権安定を得た。
     そうして獲得した権力をまるで白紙委任されたように使い妥協しない。歴代内閣が禁じたことを「できるようにした」のに「憲法解釈の基本は変えていない」と言う。その矛盾に、首相は向き合おうともしない。>

     まず指摘したいのは閣議決定がされても実際に関連法が改正されない限り動き出しません。その安保関連法の改正は来年の通常国会で行われる予定です。ということは、今がまさに議論をするタイミングなのです。というか、その議論をする国会議員を選ぶ選挙なんですから、むしろ批判する方々こそこの機会をフルに使って国民的議論を盛り上げるべきでしょう。

     それを、このまま「大義なき選挙」と批判し、投票率を下げてしまっては、それこそ「白紙委任」ということになってしまいます。この選挙に大義があったのか、総理の解散の判断が正当だったのか不当だったのかは後世の歴史が審判を下すものですから、そろそろ前向きに論点を提示すればいいのではないかと思うのですが...。
  • 2014年11月20日

    疑問だらけの与野党公約

     総理が解散を発表してから2日。今日の新聞一面は『軽減税率』の話一色になっています。2017年4月に消費税を10%に増税するにあたり、食料品や生活必需品の税率を引き下げるという『軽減税率』。公明党が消費税増税の3党合意の時から導入を主張していて、これに配慮して今回の選挙の統一公約に盛り込む方針だということです。

    『衆院選:軽減税率 自公が公約に 消費増税時に導入目指す』(11月20日 毎日新聞)http://goo.gl/0rHAPD
    <2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に、生活必需品の税率を低く抑える軽減税率の導入を目指すと明記した合意文書をまとめた。20日の与党税制協議会で正式に確認し、衆院選で両党が作成する共通公約に盛り込む。>

     実施の時期についてはまだ曲折があるかもしれませんが、ついに軽減税率は共通公約にも盛り込まれることになり、実施そのものは確実となりました。しかし、これは筋の悪い話。特に、新聞各紙が大好きな『財政再建』という話とセットで見ると、まったく逆行する話のはずなのです。消費増税に関しては、「財政再建のためには避けられない」ということで東京新聞を除く各紙経済面は一致していましたが、ではなぜ軽減税率を適用するのか?青臭い書生論のようですが、増税で増収を見込むはずが割り引いてしまっては当初の目的を達成できません。ちなみに、財務省が詳細に試算しています。

    『軽減税率適用減収額を試算...財務省』(5月8日 読売新聞)http://goo.gl/ogfA3Z
    <「生鮮食品のみ」に軽減税率を適用すると、軽減税率を採用しなかった場合に比べ、消費税率1%あたり税収が年1800億円減るなどとしている。(中略)軽減税率を「すべての飲食料品」に適用すると、消費税率1%あたりの減収額は6600億円、公明党が主張する「酒類・外食を除く飲食料品」に適用すると4900億円の消費税収が減るとしている。>

    『軽減税率与党が論点整理 食料品対象に8案発表』(公明新聞 6月8日)http://goo.gl/C6OyZY
    <対象品目では、生活必需品の税負担を軽くし、痛税感を和らげる観点から、まずは飲食料品を想定し、対象の線引きと税収への影響をまとめた。公明党が提案してきた「酒、外食を除く飲食料品」を対象にした場合の減収額(消費税率1%あたり)は4900億円。全ての飲食料品を対象にした場合の減収額は6600億円まで増えるが、コメ、みそ、しょうゆの3品目や、精米に限定した場合は、200億円になると試算した。>

     注意しなければいけないのは、いずれの金額も1%軽減すると減収になる金額。仮に公明党が主張する「酒類・外食を除く飲食料品」に「5%の軽減」を適用するとなると、それだけでおよそ2兆5千億円の減収となります。毎年2兆円以上の減収は、『財政再建』を目指す新聞各社にとっては金額が大きすぎるのではないでしょうか?しかし、そうした批判は聞こえてきません。一体どうしたことなのか?公明新聞は先ほどの記事に続いてこんな一文を載せています。

    <公明党は、新聞・出版物に関しても、社会政策的な観点から軽減税率の対象に加えるよう求めていく。>

     一方、野党各党も公約づくりを急いでいます。

    『自公、軽減税率を政権公約に 増税と同時めざす』(11月20日 日本経済新聞)http://goo.gl/7Tza3L
    <野党各党は、議員自らの「身を切る改革」や税金の無駄遣い排除など行政改革を公約に盛り込む。12年11月に野党・自民党総裁だった安倍首相自身が約束した国会議員定数の削減を実現していない点などを批判し、与党との違いを強調する考えだ。>

     消費増税の条件の一つが「身を切る改革」であるというのが主な野党の主張ですが、これはこれでまったく経済合理性を考えていない議論です。消費税率を1%引き上げると、国民から国に2.5兆円が移転すると言われています。今年4月に5%から8%へ3%増税したときに、ざっと7.5兆円が国に吸い上げられた計算になります。一方で、議員を1人減らすと、いくら浮くのか?

    『どこにも書いていない、国会議員の本当の収入』(BLOGOS 4月30日)http://goo.gl/H22m7S
    <(前略)こうした経費を含めると、仮に政党交付金が年間1000万円だとして、年間4400万円ほどのお金が議員本人の口座や政党支部の口座に分けられて振り込まれます。>

     これは、歳費(ボーナス含む)だけでなく文書通信交通費や政党交付金の議員への割当額なども勘案した数字。より実態に近いものだと考えられます。しかし、それであっても一人あたり4400万円。消費税1%で2.5兆円であることを考えると、焼け石に水にもならない数字です。そりゃ、やらないよりはやった方がいいことに違いはありませんが、これをもって「身を切る改革」と胸を張るのはどうなんでしょう?

     与党も野党もどうも一貫性に欠けるチグハグな主張が目立ちます。こうした整合性のなさを一つ一つ正していくのが新聞をはじめとしたメディアの役割だとも思うんですが...。そうして情報を整理した先に、この選挙の『争点』が浮かび上がってくるはずなんですが...。公示まであと10日あまり。メディアの真価が問われています。
  • 2014年11月11日

    解散の真の狙いは?

     10月半ばに吹き始めた解散風がどんどん強くなってきました。今日の夕刊一面は5紙中3紙が一面トップ「解散」で打ちました。

    『首相、解散を検討 増税判断巡り、年内も選択肢 公明代表、選挙準備を指示』(朝日新聞)http://goo.gl/qOFv91

    『公明、衆院選準備を指示...年内解散を想定』(読売新聞)http://goo.gl/PrUWSH

    『「月内解散」強まる 首相、増税の是非見極め判断へ』(日本経済新聞)http://goo.gl/FmVcKZ

     同じ解散を扱った一面の見出しですが、もっとも真に迫った見出しはどこだったのか?政界関係者に聞くと、公明を前面に出した読売新聞を挙げました。
    「いくら自民党サイドが解散をするとしても、公明党の選挙協力がなければ大半の議員が当選できない。これは沖縄の県知事選を見れば明らか。その公明が衆院選の準備を始めたとしたら、逆説的に年内解散が不可避であることの証拠になる。その意味で、同じ解散観測の記事でも読売の見出しが最も説得力のある見出しということになるわけだ」
     公明党の組織が動き出した以上、年内解散はかなり現実味を帯びてきたようです。
     さて、そうなると受けて立つ野党各党の体制はどうか。民主党執行部は相当に強気な姿勢を保っています。

    『海江田万里代表記者会見2014年11月10日(月)』(民主党HP)http://goo.gl/wReyi0
    <ここ数日、政府・与党の幹部から解散についていろいろな発言があります。私たちの基本的な態度は「安倍総理、解散をおやりになるのならどうぞやってください。私たちは正面から受けて立ちます」ということであります。>

     今日の衆院本会議前の代議士会でも「解散をおやりになるならどうぞやってください」と繰り返し、臨戦モードにいるようです。民主党の国対経験者の中には、現有56議席の民主党の勢力について、
    「3ケタとまでは行かないが、今選挙をやったら85ぐらいは取れるんじゃないか」
    という算盤をはじいているようです。その根拠となるのが、前回選挙で大きく議席を減らした大阪府。都市部に強いと言われる民主党が前回選挙で最も大敗したのが、当時の維新ブームにのって1年生議員が大量当選した大阪府の各選挙区でした。何しろ、大阪では当時安倍総裁が就任直後でブームの絶頂だった自民党の各議員でも苦戦した選挙区。ところがあれから2年がたって大阪都構想もとん挫しつつあり、分裂までしてしまった維新に往時の勢いはありません。そこでひょっとしたら、民主は少し議席を伸ばすかもしれませんが、与党の優位は動きません。

     それどころか、維新の党は全く体制が整っていないようです。今日の小沢鋭仁維新の党国会議員団幹事長の会見ではそれが浮き彫りになりました。

    <(記者)野党各党との候補者調整は?
    (小沢)すでにいろいろな形で調整してきたが、改めてシステマティックに行うというのを決めていかなくてはいけない。その機会を一両日中に作らなければいけない。
    (記者)一両日中に機会を作りたいというのは、一両日中に民主党との調整を行うということなのか?
    (小沢)いや、党内で方針を正式に固めるための機会を作りたいということ。幹部間の調整の場を作りたい。>

     候補者調整はおろか、党内手続きもこれからということであると、新聞辞令通りなら12月2日の告示までに間に合うかどうか...。かなり厳しい戦いであることは否めません。その上、民主党との共闘には詰めなければならない重大な政策の違いがあります。ある野党幹部は、
    「この選挙の争点は消費税なんだろうけど、これは民主党と他の野党で立場が正反対だからね。民主は『消費増税の延期はアベノミクスの失敗の証拠だ!』って選挙戦を戦うんだろうけど、それを言い出されると消費増税凍結法案を出した他の野党各党は組めない。野党共闘は民主党次第なんだけど、望み薄かな。苦戦は間違いないよ」

     こうした野党各党の台所事情を見透かしたかのような今回の解散風。消費増税の可否が争点となるのでしょうが、真の狙いは割れ続ける野党にとどめを刺すことにあるのかもしれません。
  • 2014年11月03日

    増税推進派の不都合な真実

     消費再増税についての議論が徐々に盛り上がってきました。祝日の今日の朝日新聞は普段2つのテーマを掲載する社説を消費再増税でぶち抜いて長々と書いています。もちろん、消費再増税賛成で。書いてあることは従来の主張通り。

     足元の景気が良くないことは認めるものの、社会保障費が国の財政を圧迫している。政府がやるべきは、<歳出全体の徹底的な見直しなど、政策を尽くすことこそが役回りのはずだ。>として、出を切り詰め、それでも足りない分は再増税すべきという論を展開しています。そして、最終的には<再増税を見送っては、財政再建への姿勢が疑われかねない。>として、<政治が国民への責任を果たす。国民も負担増を受け入れる。そして、将来へのつけ回しを減らしていく。消費増税はその一歩である。>と、再増税断行すべしという立場を鮮明にしています。

     さて、この<再増税を見送っては、財政再建への姿勢が疑われかねない。>という部分。増税を推進する方々がその大きな理由として必ず挙げてきますが、そんな皆さんが意図的なのかスルーしているニュースがあります。

    それが、
    『官房長官、財政健全化目標の達成こだわらず』(10月31日 日本経済新聞)http://goo.gl/JTeXg6
    <菅義偉官房長官は31日の記者会見で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字幅を2015年度までに10年度比で半減させる政府目標について「何が何でもやらなきゃまずいことではない、ということではないか」と述べた。

     安倍晋三首相が30日の衆院予算委員会で「国際公約とは違うわけで、経済だから何が何でも絶対にという約束は果たせない。目標達成に向けてしっかり努力する必要があることに尽きる」と発言した意味について聞かれて答えた。>

     政治面にほんのベタ記事扱いで書かれていたものですが、私は新聞をめくっていてドキッとしました。
     これ、重要な記事ですよ。
     まず、この『財政健全化目標』というのは、記事に書かれている通り、2010年度と比べてプライマリーバランスを2015年度までに半減、2020年度までに黒字化するという目標。財政赤字を問題視する方々(=消費増税を推進する方々)からは、これが達成されないと、今日の朝日の社説が心配するように、<国債や「円」への信用が傷つき、国債相場の急落に伴う「悪い金利上昇」や、不景気の中での「悪い物価上昇」が>起こるとされています。「ああ大変だ!増税してでも財政健全化!」という、増税推進の方々にとっては特に重要な目標なのです。

     そんな大切な大切な目標について、総理も(30日の衆院予算委)官房長官も(31日会見)達成にこだわらないと発言したのです。本当に国債の信認が疑われているのであれば、政府のトップがそうした発言をしたら国債の値段が暴落(利率は上昇)するはずなんですが、そんなことは一切起こりませんでした。

    『国債金利情報』(財務省)http://goo.gl/33h2r

     10月30日の時点で10年債が利回り0.475%。10月の初めで0.5%を上回っていたものが、むしろ利率が下がっています(価格は上昇)。

     これをどう説明するのでしょうか?市場は、財政健全化が消費増税延期で少し遠回りすることを容認しているのではないでしょうか?増税推進の日経がベタ記事にしているというのも、ちょっと後ろめたさがあったからなのでしょうか。

     ちなみに、事の発端となった総理の予算委員会での発言は、30日ということで日銀の追加緩和が発表となる以前の出来事です。国債の利率が下がったのは追加緩和が理由だというのは、否定されるべきと私は考えます。
プロフィール

飯田浩司

出演番組:
ザ・ボイス そこまで言うか
月~木 16:00~
辛坊治郎ズーム そこまで言うか
土 13:00~

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