• 2023年02月01日

    デジタル法隆寺宝物館

    東京国立博物館の法隆寺宝物館に新しくオープンした
    デジタル法隆寺宝物館!

    デジタル法隆寺宝物館??

    私が大好きな漫画『パリピ孔明』の「パリピ」と「孔明」のように、
    「法隆寺」と「デジタル」は、とても遠いもののように思いますが、
    百聞は一見に如かず!

    デジタル法隆寺宝物館は、
    デジタルならではの発見に満ちていました。


    法隆寺は、聖徳太子ゆかりの名刹。
    現存する世界最古の木造建築物で、世界遺産にもなっています。

    明治11(1878)年、法隆寺に伝来する宝物300件あまりが皇室に献納され、
    昭和39(1964)年、東京国立博物館の法隆寺宝物館が開館、
    展示・収蔵が行われています。

    現在の建物は、平成11(1999)年に建て替えられた、モダンなデザイン。


    1月31日に開室したデジタル法隆寺宝物館は、
    法隆寺宝物館の一室です。

    DSC_2566.jpg 国宝「聖徳太子絵伝」のレプリカが飾られ、
    大型8Kモニターで、細部を拡大しながら解説付きで観ることもできます。

    DSC_2568.JPG

    DSC_2567.JPG 「聖徳太子絵伝」は、聖徳太子の足跡を絵にして残したもの。

    厩の前で生まれてから、予言したり、空を飛んだり、
    驚異の記憶力を発揮したり、馬で富士山へ跳んだりと、
    伝説に彩られた生涯がまとめられています。

    DSC_2579~2.JPG

    不可思議な現象だけでなく、
    十七条の憲法や、遣隋使派遣などもしっかり描かれています。

    DSC_2580.JPG 遣隋使・小野妹子が持ち帰った手紙を燃やすシーン。

    DSC_2585.JPG レプリカの絵伝を見ると、確かに炎が!

    大型8Kモニターで細部を知り、
    実物大の精巧なレプリカで全体と共に鑑賞する――

    行ったり来たりすることで、じっくり作品を観ることができ、
    新たな発見ができます!



    そんなデジタル法隆寺宝物館ですが、
    法隆寺宝物館では、デジタルだけでなく、
    古から伝わる宝物もたくさん観られます。


    まず、国宝や重要文化財の多さにも驚きましたし、

    DSC_2588.JPG 細かい装飾や色を、今でも楽しめることにも驚かされました。

    DSC_2606.JPG 国宝 灌頂幡

    DSC_2596.JPG


    デジタルを活用することで、昔から伝わるものが観やすくなり、
    古代から残る物の価値を強く感じさせてくれます。

    法隆寺宝物館、そしてデジタル法隆寺宝物館、
    ぜひ、併せてじっくりご覧ください。



    デジタル法隆寺宝物館


    1月31日(火)から、上野の東京国立博物館に開室。

    会場 東京国立博物館 法隆寺宝物館 中2階
    会期 2023年1月31日(火)開室

    以降は通年展示/半年ごとに展示替

  • 2023年01月26日

    「佐伯祐三-自画像としての風景」

    東京駅の中にある東京ステーションギャラリーで開催中の
    「佐伯祐三-自画像としての風景」を観て来ました。

    佐伯祐三は、1898(明治31)年に、大阪に生まれた洋画家。

    DSC_2513.JPG 30歳という若さで、パリで亡くなった画家を見出したのは、
    大阪の実業家で美術コレクターの山本發次郎だったそうです。

    山本は、佐伯の絵を集めたのですが、
    戦災でそのうち2/3が消失してしまいます。

    残されたコレクションが1983年に遺族から大阪市へ寄贈され、
    現在は、2022年2月にオープンした中之島美術館が収蔵しています。

    山本が集めた作品をベースにした、
    中之島美術館の佐伯祐三コレクションは、
    日本最大級の質と量を誇るそうです。


    東京ステーションギャラリーの冨田章館長は、冗談めかして
    中之島美術館ができるまで、佐伯祐三の回顧展を、
    どの美術館も遠慮していた、と仰っていました。

    山本發次郎のコレクションは、
    美術界で大切に思われているんですね。


    そうした経緯もあって、15年ぶりの大回顧展となる今回、
    東京ステーションギャラリーで観られるのは、
    中之島美術館のコレクションを中心とした、佐伯の画業です。

    展覧会のタイトルにもなっている自画像から始まり、
    自らを映すように、風景を様々なタッチで描いていきます。


    私が気に入ったのは、東京・下落合を描いた作品たち。

    DSC_2514.JPG 大阪生まれの佐伯は、大学時代に下落合に住んでいたそうで、
    戦前の東京の、坂の多い町が活写されています。

    近くに住んでいた頃、よく散歩していたところなので、
    親近感が湧き、懐かしい気持ちになりました。


    そして、2度の留学生活を送ったパリで描かれた絵画も、見応えがありました。

    同じモチーフを何度も描いていて、
    時期ごとに、関心やタッチが変わる様がよく分かります。

    DSC_2523.JPG

    DSC_2530.JPG

    DSC_2533.JPG
    体調を崩した佐伯が最後に描いたのは、人物と扉。


    DSC_2535.JPG

    DSC_2536.JPG
    展示を通して佐伯の画業を追体験してきたので、
    「描き切った」と伝えたとされる作品は、胸に迫るものがありました。


    短い佐伯の画業が一堂に会した「佐伯祐三-自画像としての風景」は、
    東京ステーションギャラリーで、4月2日までです。


    ちなみに、音声ガイドは、
    「うどうのらじお」でもお馴染みの、有働由美子さんが担当されています!

  • 2023年01月23日

    YUMING MUSEUM🎶

    六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューで開催中の「YUMING MUSEUM」!
    ユーミンさんのデビュー50周年を記念した展覧会です。

    DSC_2126~2.JPG 展示室に入って目に飛び込んでくるのは、
    グランドピアノと散らばる歌詞などに、東京の景色!

    突き抜けるような空の色と、
    ユーミンの創作の跡も残る手書きの歌詞に囲まれていると、
    ずっとこの空間にいたくなってしまいます。

    DSC_2124~2.JPG 後ろ髪を引かれながら先に進むと、
    1970年代中頃から自宅で作曲に使われていたグランドピアノが現れます。

    DSC_2130.jpg 「はじまりの部屋」と題されたこのコーナーには、
    学生時代のユーミンが描いた絵、読んでいた本、
    そして、ユーミンが家を抜け出す時に身代わりにしていたウィッグまで。

    DSC_2132.jpg 「絶対おこさないで下さい。」と大きく書かれた書置きもあいまって、
    若き日のユーミンの姿が目に浮かんでくるようです。

    ちなみに、ユーミンの愛読書の中には、翻訳文学に交じって、吉川英治の宮本武蔵も!
    私は三国志を探してみましたが、YUMING MUSEUMには来ていませんでした。


    1972年に、18歳だった荒井由実さんは、シングル「返事はいらない」でデビュー。
    「YUMING MUSEUM」には、50年間のユーミンの仕事がギュッと詰まっています。

    ユーミンが載っている雑誌、手書きのメモ、衣装の数々...。

    DSC_2141.jpg 並んでいると壮観で、量にも圧倒されるのですが、
    一つ一つを見ていくと、
    それぞれにかけられた熱や繊細な仕事ぶりなどが伝わってきます。

    DSC_2146.JPG
    DSC_2160.JPG
    DSC_2165~2.JPG 「YUMING MUSEUM」のさらなる魅力は、
    荒井由実時代から今に至るユーミンの歴史を"もの"で見られるばかりでなく、
    ユーミンご自身が語る音声ガイドが楽しめること。

    自分のことを、楽しそうに語るユーミンさんと一緒に、展覧会をめぐっている気分も味わえます。
    そして、10代のユーミンの貴重な歌声も聴くことができるんです。


    長年のファンはもちろん、
    親御さんの影響やサブスクなどで、新たにユーミンに出会った方にもオススメの展覧会。
    ご本人も「多岐にわたる膨大な仕事量」だと語るユーミンの世界を、全身で浴びてくださいね。


    六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティービューで、2月26日までです。

  • 2023年01月18日

    浮世絵と中国

    昨年末に開催を知ってから心待ちにしていた展覧会を観て来ました!

    原宿にある太田記念美術館で1月29日まで開催中の「浮世絵と中国」です。

    外観.jpg 太田記念美術館は、浮世絵専門の美術館。
    五代太田清蔵という方が蒐集した約12,000点という膨大な浮世絵を所蔵しています。


    2023年初めの企画展は、「浮世絵と中国」!(待ってました!!)


    chinaukiyoe-glyer1.jpg 江戸文化の象徴のような浮世絵は、
    画題として、そして、最新技法も、中国文化から取り入れていたんだそうです。


    ①鳥居清胤.jpg 展覧会の始まりは、鳥居清胤「遊女と鍾馗相合傘」。

    五月人形にもなる鍾馗様と、遊女の取り合わせ。
    外国の文化も取り込んで、自在に遊んでいた江戸の人々の象徴のような作品です。


    鳥居清胤「遊女と鍾馗相合傘」に続く展示の2枚目が、
    鳥山石燕の「関羽図」です。

    ②鳥山石燕.jpg 左の人物、三国時代の武将・関羽の後ろに控えるのは、関羽の部下の周倉。
    小説『三国志演義』に登場する、実在しない人物です。

    それでも、関羽を祀る世界中の関帝廟で、周倉が近侍しているように、
    関羽を造形する上で、欠かせないのが周倉の存在。

    この「関羽図」の周倉の、関羽の周囲を警戒・威圧するような表情が堪りません。


    そのほか、『水滸伝』や『西遊記』、唐詩、王昭君、虞美人などなど、
    様々な物語、歴史上の人物やエピソードが、浮世絵に仕立てられています。

    ⑤歌川国貞.jpg 歌川国貞「漢楚軍談 楚項羽妻慮氏」


    たくさんの展示作品の中でも、
    私が好きな「三国志」関連から、二つご紹介しますね。

    まずは、見立て。

    以前、「江戸の見立て文化と政治性――アイヌ、三国志、プロパガンダ」というテーマで、
    近現代史研究家の辻田真佐憲さん、
    江戸東京博物館学芸員の春木晶子さんとお話しさせていただいたことがあります。
    (レポート記事はこちらです。)

    江戸文化と見立ては、切っても切れない深い関係。
    「中国と浮世絵」においても、一章を使って、10を超える作品が展示されています。

    『三国志演義』で、劉備が孔明を三度訪問し、出仕を頼む「三顧の礼」。

    「三顧の礼」そのものも、浮世絵の画題になっていますが、
    三顧の礼をモチーフに、劉備たちを女性に見立てた浮世絵が3点もありました!

    ⑬蹄斎北馬.jpg 蹄斎北馬「やつし草盧三顧」

    ⑭勝川春扇.jpg 勝川春扇「やつし玄徳雪中訪孔明」

    そのほか、三国志関連だと、「竹林の七賢」のメンバーが女性になったものも。

    ⑪歌川豊広.jpg 見立ての自由さ、江戸の人々の想像力を改めて目の当たりにしました。



    もう一つ、ご紹介したいのが、月岡芳年の「月百姿」。
    明治時代に描かれた、月をモチーフにした100枚の浮世絵です。

    100枚のうち、11枚が中国に題を採ったものだそうです。

    私は、「月百姿 南屏山昇月 曹操」を楽しみにしていたのですが、

    ⑩月岡芳年.jpg 幻想的な嫦娥、躍動感ある兎と孫悟空、
    静謐な印象を受ける、月の木を切った呉剛など、
    ほかの作品も魅力的で、うっとり。

    ⑨月岡芳年.jpg

    ⑦月岡芳年.jpg

    ⑧月岡芳年.jpg 帰ってからすぐに「月百姿」の画集を取り寄せ、少しづつ眺めています。


    春木晶子さんの『江戸パンク!』にも出てきた、
    歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達」など、
    力強い作品もたくさん見られます。

    ⑥歌川国芳.jpg
    普段、あまり目にする機会がない、中国を題にとった浮世絵が一堂に会する「浮世絵と中国」は、
    原宿の太田記念美術館で、1月29日(日)までです。

    http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

    江戸文化の中の「三国志」に興味が出てきたら、
    遊女になった張飛のお話なども紹介している、拙著『愛と欲望の三国志』も、ぜひご笑覧ください!

  • 2023年01月16日

    かわいい青銅器

    今年初めて観に行った太田記念美術館「浮世絵と中国」に続き、
    中国関連の企画展を観て来ました。

    しかし、時代も雰囲気もかなり違いますよ!


    PSX_20230116_201704.jpg 六本木にある泉屋博古館東京で行われている
    「住友コレクション中国青銅器名品選 不変/普遍の造形」。

    展示室に入ってまず、「3000年ほど前の殷周時代からの青銅器が、
    日本にこんなにあるなんて!」とびっくりしました!

    PSX_20230116_202051.jpg 私が好きな中国の古典小説の中で、
    殷・周、二つの国の戦いを基にしたファンタジー小説が『封神演義』。

    太公望が出てくることでもお馴染みの小説で、太古の神々も交えた世界観ですが、
    その題材になった時代の青銅器を、今、東京で、間近でじっくり眺めることができるんです!

    PSX_20230116_202159.jpg
    泉屋博古館が持つ住友コレクションの中国青銅器は、世界屈指のもの。

    普段は京都で展示や研究が行われているそうなので、
    東京で観られるこの機会をお見逃しなく!


    私も、青銅器について前知識はほとんどなく、一度にたくさん見るのは初めてでしたが、
    バラエティに富んだ姿かたちで、見ていて飽きず、とても楽しかったです。

    DSC_2410~2.JPG 犠首方尊(ぎしゅほうそん)

    特に、器の全面はもちろん、取っ手や脚など、色々なところにあしらわれた動物たち!


    PSX_20230116_202800.jpg
    恐ろしいもの、可愛らしいものなど、様々です。

    PSX_20230116_202919.jpg 四不象のような、『封神演義』に出てくる霊獣たちも、
    同じような発想から生まれたのかな、と感じました。

    2023-01-13-10-16-05-179~2.jpg 鴟鴞尊(しきょうそん)

    そもそも、青銅器は、まだまだ分かっていないことが多いそうなのですが、
    予備知識がなくても、遥かな時を超えてきた青銅器そのものと対峙するだけで、
    その世界に引き込まれました。


    ちなみに、今回の企画展「不変/普遍の造形」は、中国青銅器の入門編。
    丁寧かつ具体的な解説で、中国青銅器の魅力を伝えてくれます。

    DSC_2400.jpg
    さらに、詳しく知りたい方には、「不変/普遍の造形」の公式ガイドブックでもある、
    『太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門』という本がぴったりです!

    青銅器とは何か、どんなものがあるのか、といった基本から、
    青銅器の作り方や、青銅器が見られる日本国内のミュージアムマップまで、
    青銅器について気軽に学べる本です。


    このガイドブックを執筆した、学芸員の山本堯さんに伺って驚いたのは、
    青銅器は、儀式に使うものでありながら、機能性も兼ね備えたものであるということ。

    儀式の中で、実際にお酒や食事を入れたり、スープを煮たりと、
    実際に使われていたそうで、蓋もぴしっと閉まるものも多いそうです。

    PSX_20230116_205410.jpg この、様々な動物と人が一体になった「虎卣(こゆう)」も、
    山羊の取っ手を掴むと蓋が開くそうで、
    中には、お酒の香りをつけるための香草の煮汁を入れていたと考えられています。



    「三国志」が大好きな私としては、三国時代の鏡が見られたのも嬉しかったです。

    PSX_20230116_203634.jpg

    私は、こうした太古の文物が、歴史上の物語と同じ時代から時を経て残っていることに感動します。

    漫画『キングダム』にも出てくる、秦の始皇帝が統一した重さの標準器など、
    昔の人々の営みが感じられる展示もありますので、ぜひご覧ください。

    PSX_20230116_203838.jpg 知れば知るほど面白い、青銅器の世界。
    六本木にある泉屋博古館東京で、2月26日(日)まで開催しています。

    https://sen-oku.or.jp/tokyo/


    さらに、泉屋博古館東京は港区にあるのですが、
    同じく港区にある根津美術館・松岡美術館でも、青銅器が見られるそうで、
    〝港区の青銅器密度″が高くなっているとのこと!

    3館を回るデジタルスタンプラリーも行われています。
    https://sen-oku.or.jp/digitalstamp2023/



    さて、明日17日(火)21時からは、「三國志覇道公式生放送 ハドウへの道!」
    https://www.gamecity.ne.jp/sangokushi_hadou/

    新春らしい準備も進んでいますので、ぜひご覧ください。

プロフィール

箱崎みどり

東京都生まれ。2011年ニッポン放送入社。 東京大学大学院修士課程修了(修士論文のテーマは「日中戦争期における「三国志」ブーム」) 趣味は、読書、プロ野球観戦、お笑いを見ること。特技は遠泳。


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