• 2023年01月09日

    本から飛び出せ! のりものたち

    あけましておめでとうございます。
    皆様にとって明るい年になりますように。
    2023年も、どうぞよろしくお願いいたします!


    さて、松の内も過ぎましたが、週末のお出かけにおすすめの展覧会をご紹介します。

    JR駒込駅からほど近い六義園、そのお向かいにある「東洋文庫」を御存知でしょうか?

    東洋文庫は、日本最大級の本の博物館。
    三菱財閥の岩崎久彌が1924年に設立した東洋学の研究図書館です。

    東洋学の分野で日本最古・最大の研究図書館で、
    世界5大東洋学研究図書館の一つでもあるそうです。


    圧巻なのが、モリソン文庫!

    IMG_4291.JPG 足元から天井まで、何段もの本棚がずらっと並んでいます。
    この本は、オーストラリア人ジャーナリストのG.E.モリソンが収集したもので、
    その数、およそ2万4千冊!!

    このコレクションの全てを、東洋文庫を作った岩崎久彌が、
    今の価格にしておよそ70億円で買い取りました。

    私は、このモリソン文庫の空間が大好きで、
    2016年の「ニッポン放送アナウンサーカレンダー」で、写真を撮っていただいたこともあるんです。

    IMG_4495.JPG
    そんな東洋文庫で、今行われている企画展示が
    「祝・鉄道開業150周年 本から飛び出せ! のりものたち」です。

    DSC_2248.JPG 本の中に登場する、古今東西ののりものたち。
    鉄道や船ばかりでなく、人類の友である馬、
    筋斗雲など物語に出てくる想像上ののりものまで出てきます。

    DSC_2231.JPG 展示ひとつひとつに丁寧な解説がついているのですが、よく読んでいくと......、

    DSC_2223.JPG ジョン万次郎の次に汽車に乗った日本人だとされる彦蔵が書いた『漂流記』には、
    「冷静に感想書いてるけど、本当ははしゃいだんじゃない(´▽`)?」とツッコミと顔文字まで!

    「メトロポリタン地下鉄の建設」を伝える『イラストレーテド・ロンドンニュース』には、
    「地下を走る「不満そうな人類の蒸し風呂」」、
    『西遊記』に出てくるのりもの、筋斗雲については
    「宙返り1回につき地球約11万周できる雲」など、
    キャプションをきっかけに興味や想像が広がっていきます。

    DSC_2225.JPG
    私のお気に入りは、「その走り方は...うさちゃん?」というキャプションがついた
    『準回両部平定得勝図』(乾隆帝勅版、18世紀後半)。

    清の乾隆帝が作らせた西方遠征を描いた銅版画なのですが、
    当時は、全速力の馬の走り方は速すぎて分かっていなかったため、
    想像で前足と後ろ足を揃える走り方で描かれているとのこと。

    DSC_2242~2.JPG 確かに、本当にうさちゃんの走り方......!
    今年にぴったりですね。


    ちなみに、今回は、私が好きな『三国志演義』からの展示はありませんでしたが、
    同時に行われている展示
    「FIFAワールドカップ(カタール大会)開催! 歴史の視点で楽しむサッカー」には、
    同じく中国古典小説『水滸伝』から蹴鞠の箇所が展示されていました。
    キャプションは「君、蹴鞠うまいから採用ね!」です。

    「のりもの」「サッカー」などと身近なテーマをユーモア溢れる解説を頼りに辿っていくと、
    本に残された昔の事柄にも親近感が湧いてきます。

    温故知新という言葉がぴったり、思わぬ発見がたくさんある東洋文庫に、ぜひお出かけください。

    「祝・鉄道開業150周年 本から飛び出せ! のりものたち」は、
    東洋文庫で、今週末1月15日までです。
    http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/norimono-detail.pdf



  • 2022年12月08日

    箱崎みどりのおさんぽアート始まります

    「ニッポン放送NEWS ONLINE」で、新しい企画が始まりました!
    https://news.1242.com/article/401995

    20221128_hakozaki_RS_IMG_0166.jpg 第一弾は、上野の森美術館で開催中の「兵馬俑と古代中国」のレポートです。
    (このブログに載せたものに、少し手を加えています)
    ぜひご笑覧ください。

    これから、「箱崎みどりのおさんぽアート」と題して、
    展覧会や美術展のレポートをしていく予定ですので、
    見かけたら、ぜひ読んでみてくださいね。
    よろしくお願いします🖼

  • 2022年11月29日

    丈も時代も変えたミニの女王

    「丈も時代も変えたミニの女王」というキャッチコピーで開催中の 「マリー・クワント展」。
    Bunkamura ザ・ミュージアムで、来年1月29日まで行われています。

    DSC_2008.jpg 先日亡くなったエリザベス女王と同い年で、今もご存命の
    イギリスのデザイナー、マリー・クワントの、日本初の回顧展です。

    マリー・クワントの出身地のイギリスでは約40万人が訪れた展覧会が、
    日本にもやってきました。


    展示は、ほとんどがマリー・クワントがデザインした洋服たち!

    老舗百貨店、ハロッズの前に、自らのブティックの2号店を出店したり、
    注目を集めるべくディスプレイにザリガニを配置したりといった、
    マリーの発想と行動力に驚きました。


    展示を見ていく中で、今、当たり前になっているファッションの多くを、
    マリー・クワントが始めていたことを知ることができました。

    ミニスカート、パンツスタイル、タイツなどなど!

    マリー・クワントがいたからこそ、女性の装いが変わっていったのですね。

    DSC_2010~2.jpg ベストとショートパンツのアンサンブルを着るツイッギー
    1966年10月23日




    新しいことを始めると、反発もあるものですが、
    海外にも進出して成功を収めたマリー・クワントは、
    1966年、エリザベス女王から、英国王室第四等勲章を授与されます。

    その時、マリー・クワントが着て行ったドレスとベレー帽も展示されていました。

    マリー・クワント自身がデザインしたもので、
    優しいイエローのジャージー素材でできた、ミニ丈のドレスで、
    袖に丸い持ち手のファスナーがついた、可愛らしいものです。

    ベレー帽と合わせた装いは、
    ショートカットのマリー・クワントによく似合っていて、
    勲章授与式のニュースが、良い宣伝にもなったそうです。

    謁見というと、イブニングドレスのような、ドレッシーなものを想起しますが、
    マリー・クワントは、自分が作り上げたものを信じ、周りを動かしていった、
    そのひとつの証のように感じました。


    自分が着やすい服、着たい服を着て良いと、教えてくれるマリー・クワント。

    経営者としても、新しい道を切り開いた女性としても、
    格好良いマリーの人生を追体験できる展覧会です。

    Bunkamura ザ・ミュージアムで、来年1月29日まで。
    ぜひお出かけください。


  • 2022年11月28日

    つながる琳派スピリット 神坂雪佳

    パナソニック汐留美術館で、12月18日まで開催されている
    「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」に行ってきました!

    DSC_2020.jpg 可愛らしい犬のチラシに惹かれて、神坂雪佳のことを知らずに観に行ったのですが、
    "近代の琳派"と称される神坂雪佳は、
    幕末に生まれ、明治から昭和に活躍した京都の図案家・画家だそうです。

    2001年には、雪佳の作品が、日本人作家で初めて、
    エルメスの機関紙「エルメスの世界」の表紙を飾るなど、
    今なお国を超えて人々の心を捉えるデザイン・作品を多く残しています。


    まず展示室に入ると、雪佳の写真が迎えてくれるのですが、
    この展覧会は江戸時代のはじめからスタートします。

    雪佳の作品の前に、「あこがれの琳派」と題し、
    琳派の流れを各絵師の作品で丁寧に辿ります。

    本阿弥光悦、俵屋宗達の作品から、
    尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一まで。

    中でも、私が気になったのは、
    雪佳も「枝豆露草図屏風」という作品を持っていた中村芳中。

    パキっとした色鮮やかな橙のくちばしを持つ小鳥が目を引く「白梅小禽図屏風」や、
    鹿がぽかんとしているように見える「月に萩鹿図」など、
    柔らかいのに、一度見たら忘れられない作風が印象的でした。

    また、渡辺始興の「白象図屏風」は、
    1729年に実際に京都に来た象を観て描かれた可能性があるとのこと!
    リアルなひづめに注目です。


    琳派の流れを概観した後は、いよいよ雪佳の作品です!

    まず、「美しい図案集 ―図案家・雪佳の著作」と題して、
    雪佳の手による図案集が展示されているのですが、
    どれもゆっくりめくってみたい魅力にあふれています。

    特に、蝶のデザインを集めた『蝶千種』は、再版する度によく売れるんだそうです。

    また、『染色図案 海路』は、波のデザインなどが載っているのですが、
    これは、1901年7月から視察などのために渡欧したときの、船上で考えられたものだとか。

    観たものを独自のデザインに落とし込む雪佳のセンスに惚れ惚れします。


    DSC_2022.jpg
    続いては、「生活を彩る ―雪佳デザインの広がり」。
    雪佳がデザインした工芸品が並び、図案と対照できるものもたくさんあります。

    私が角度を変えてずっと眺めていたのが、
    「菊花透し彫鉢」(神坂雪佳図案/河村蜻山作)です。

    菊の花弁の輪郭を残した透かし彫りがあしらわれた鉢で、
    大胆かつ美しく、目が離せなくなりました。

    庵の中で頬杖をついた脱力系の人物がこちらを見つめる
    「雪庵菓子皿」(神坂雪佳図案/河村蜻山作)、
    小さな小さな白鷺が愛らしい「住之江蒔絵色紙箱」(神坂雪佳図案/木村秀雄作)、
    文机と硯箱のセットでひとつの世界を作り出す「若松鶴図文机/硯箱」など、
    ユーモラスだったり、愛らしかったり、美しかったりと、色々なタイプの作品があり、
    雪佳の才能の豊かな広がりを垣間見ることができました。


    展覧会の最後を飾るのは、「琳派を描く ―雪佳の絵画作品」

    琳派では、「燕子花図」と言えば、尾形光琳のものが有名ですが、
    雪佳の「杜若図屏風」には、白いカキツバタが入っています。

    昭和天皇即位の大礼の際に制作されたという「白鳳図」は、神々しく、
    琳派の伝統を踏まえ、独自の表現を極めた雪佳の画業をじっくり味わうことができます。


    DSC_2024.jpg 撮影できるものが限られていて、
    ご紹介した作品のうち、多くの写真は載せられなかったので、
    ぜひ、実際にご覧になってみてください。


    「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」は、
    パナソニック汐留美術館で、12月18日まで開催されています。

    休館日は水曜日で、土日は日時指定予約制です。


    ちなみに、今回の展示の後、パナソニック汐留美術館は、改修工事のために休館。
    リニューアルオープンするのは、来年4月8日だそうです。

  • 2022年11月23日

    「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」

    上野の森美術館で、11月22日から開催されている
    「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」を観てきました!

    DSC_1962.jpg 「兵馬俑」と聞くと、秦の始皇帝の兵馬俑を思い浮かべる方が多いと思います。

    秦の始皇帝は、兵馬俑を、等身大に近い大きさで写実的に作らせ、
    8000体を自らと共に埋葬したと言われています。

    兵馬俑が1974年に発見されてから、発掘されたのは1600体。
    まだまだ多くの兵馬俑が眠っているのですね。

    DSC_1978.jpg

    監修の学習院大学名誉教授・鶴間和幸先生のお話を伺って驚いたのは、
    1体1体の個性が光る兵馬俑8000体が、
    2、3か月という短い間に、一気に作られただろうということ。

    たくさんの人が従事して、分業して作業を行うことで、
    万里の長城もそうですが、壮大な事業を成し遂げていたんだそうです。

    DSC_1987.jpg 戦服将軍俑 統一秦

    今回の展覧会では、始皇帝の兵馬俑の中から、
    11体しか確認されていないという将軍俑のうち一体が、初めて日本にやってきます!
    (鶴間和幸先生お気に入りの顔つきだそうです。)

    さらに、秦の始皇帝の兵馬俑を中心に、
    その前後の時代の兵馬俑も一緒に展示されています。


    兵馬俑を並べてみると、大きさや特徴が、
    秦の前後と、始皇帝の兵馬俑では大きく異なることが、よく分かります。

    等身大だったのは、始皇帝の兵馬俑だけで、
    前後の時代の兵士俑は、両手で抱えられそうな大きさです。

    DSCyou.jpg 彩色騎馬俑 前漢

    さらに、違いが鮮明なのは、始皇帝の兵馬俑が持つ、写実性。
    中央アジアやギリシャの文化の影響を受けたと考えられています。

    展示室で間近に対峙すると、1体1体顔が違い、
    街を実際に行き交っていた様や、仕事ぶりや性格までもが伝わるような、
    驚異的なリアリティを感じます。

    DSC_1982.jpg 立射武士俑 統一秦



    DSC_1984.jpg 鎧甲軍吏俑 統一秦

    息遣いが感じられるような写実性が見られるのは、始皇帝の兵馬俑だけで、
    展示されている前後の時代の兵馬俑からは、
    顔立ちの違いや、肉体をリアルに再現したものがあるものの、
    一人一人の個性が見いだせるほどのディテールは読み取れません。


    その理由の一つとして、鶴間先生は、文化の違いを挙げています。

    広大な中国大陸。
    統一された時代には、支配者の出身地の文化が主流になるのですね。


    そんな中、私が気になったのは、動物たち。
    人物俑はリアリティを失っていくのですが、動物たちは生き生きと描写されています。

    秦に続く漢代、武帝が姉に贈ったという「鎏金青銅馬(りゅうきんせいどうば)」。
    始皇帝の兵馬俑の「戦車馬」に似ているように思いました。

    DSC_1968.jpg 鎏金青銅馬 漢



    DSC_1996.jpg

    DSC_1997.jpg 戦馬俑 統一秦

    DSC_1972.jpg 陶犬 漢

    犬たちも愛らしい姿です。


    想像上の動物だと思われる一角獣は、大きな目をしていますが、
    口元の犬歯を剝きだした造形は小さいながら迫力満点。

    DSC_1963.jpg

    DSC_1965.jpg 彩色一角双耳獣 漢

    動物たちを傭にする時には、人物像以上の愛情が感じられるように感じました。


    実際に間近で対峙することで、佇まいを味わうこともできますし、
    角度を変えて観ることもできます。

    「兵馬俑と古代中国」は、上野の森美術館で、来年2月5日まで開催されています。

    日時指定予約制ですので、予定を立ててお出かけください!

プロフィール

箱崎みどり

東京都生まれ。2011年ニッポン放送入社。 東京大学大学院修士課程修了(修士論文のテーマは「日中戦争期における「三国志」ブーム」) 趣味は、読書、プロ野球観戦、お笑いを見ること。特技は遠泳。


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