上野の森美術館で、11月22日から開催されている
「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」を観てきました!
「兵馬俑」と聞くと、秦の始皇帝の兵馬俑を思い浮かべる方が多いと思います。
秦の始皇帝は、兵馬俑を、等身大に近い大きさで写実的に作らせ、
8000体を自らと共に埋葬したと言われています。
兵馬俑が1974年に発見されてから、発掘されたのは1600体。
まだまだ多くの兵馬俑が眠っているのですね。
監修の学習院大学名誉教授・鶴間和幸先生のお話を伺って驚いたのは、
1体1体の個性が光る兵馬俑8000体が、
2、3か月という短い間に、一気に作られただろうということ。
たくさんの人が従事して、分業して作業を行うことで、
万里の長城もそうですが、壮大な事業を成し遂げていたんだそうです。
戦服将軍俑 統一秦
今回の展覧会では、始皇帝の兵馬俑の中から、
11体しか確認されていないという将軍俑のうち一体が、初めて日本にやってきます!
(鶴間和幸先生お気に入りの顔つきだそうです。)
さらに、秦の始皇帝の兵馬俑を中心に、
その前後の時代の兵馬俑も一緒に展示されています。
兵馬俑を並べてみると、大きさや特徴が、
秦の前後と、始皇帝の兵馬俑では大きく異なることが、よく分かります。
等身大だったのは、始皇帝の兵馬俑だけで、
前後の時代の兵士俑は、両手で抱えられそうな大きさです。
彩色騎馬俑 前漢
さらに、違いが鮮明なのは、始皇帝の兵馬俑が持つ、写実性。
中央アジアやギリシャの文化の影響を受けたと考えられています。
展示室で間近に対峙すると、1体1体顔が違い、
街を実際に行き交っていた様や、仕事ぶりや性格までもが伝わるような、
驚異的なリアリティを感じます。
立射武士俑 統一秦
鎧甲軍吏俑 統一秦
息遣いが感じられるような写実性が見られるのは、始皇帝の兵馬俑だけで、
展示されている前後の時代の兵馬俑からは、
顔立ちの違いや、肉体をリアルに再現したものがあるものの、
一人一人の個性が見いだせるほどのディテールは読み取れません。
その理由の一つとして、鶴間先生は、文化の違いを挙げています。
広大な中国大陸。
統一された時代には、支配者の出身地の文化が主流になるのですね。
そんな中、私が気になったのは、動物たち。
人物俑はリアリティを失っていくのですが、動物たちは生き生きと描写されています。
秦に続く漢代、武帝が姉に贈ったという「鎏金青銅馬(りゅうきんせいどうば)」。
始皇帝の兵馬俑の「戦車馬」に似ているように思いました。
鎏金青銅馬 漢
戦馬俑 統一秦
陶犬 漢
犬たちも愛らしい姿です。
想像上の動物だと思われる一角獣は、大きな目をしていますが、
口元の犬歯を剝きだした造形は小さいながら迫力満点。
彩色一角双耳獣 漢
動物たちを傭にする時には、人物像以上の愛情が感じられるように感じました。
実際に間近で対峙することで、佇まいを味わうこともできますし、
角度を変えて観ることもできます。
「兵馬俑と古代中国」は、上野の森美術館で、来年2月5日まで開催されています。
日時指定予約制ですので、予定を立ててお出かけください!