高田文夫のおもひでコロコロ

2023.08.18

第70回『夏は読書とクドカンと』

「お盆休み」が終ってもまだ「夏休み」「ズル休み」「日大大麻休み」と色んな休みがある。
こんな時こそスマホを置いて ひと時、紙の本でゆったりなんて時間を過ごして欲しい。それが正しい日本人のあり方である。
どんな本を読んでいいのか分からないなんて人に今回は7月から8月のあいだに出版され、この1ヶ月のあいだに出版社から送られ著者から贈られ、自分でも本屋で購入した本を並べておく。
1ヶ月のあいだに これだけの本が私の手元に来るので なかなか追いつかないが、ほとんどの本は半分位まで読んで大体わかった。
それはプロの勘である。
出版社一族から生まれた私は“門前の小僧習わぬビニ本を見る”である。
“雀百までお釣り忘れず”である。

1冊でも2冊でも気になる本があったら是非 自分の財布から買って欲しい。それが全国の書店を、出版社を、ニッポン放送を(ン?)助けることになるのです。
ハッキリ言って本とラジオがなくなると「日本の文化」は終わります。
多分 私もこの「オワコン」と共にマスコミ家業を終えることになるでしょう。

今の若い放送作家(クリエイター達)はTVラジオの枠にとどまらず、SNSだかネットだかユーチューブだか様々仕事の場が広がって とてもいい事だと思う。(私はやりたくないけどネ) 
表現の場が増えるというは実にいい。腕さえありゃ稼げるしネ。(腕のない奴ァどこへ行ってもダメだけどネ)

さぁそれでは今月の本。「本屋は最高」である。

「木挽町のあだ討ち」 永井紗耶子 (新潮社)


文句なしの直木賞。「山本周五郎賞」とったあたりから新潮社の人と「これ直木賞いくネ」と話していた。木挽町とは「ビバリー昼ズ」を聴いている人は よく知っているが銀座は歌舞伎座の裏あたり。昔は芝居町だった。この町で なぎら健壱、柄本明は生まれた。久々の傑作時代劇

時代劇とくればこの先生。「講談放浪記」 神田伯山 (講談社)


元々「講談」の速記本など出して もうかったから「講談社」なのである。

今再び私の中の江口寿史ブーム。「This is 江口寿史!!」 (新潮社)

2冊立てつづけに出た 「step 2 江口寿史最新画集」 (河出書房新社)

最高傑作、ヤクザ映画の頂点といえる「総長賭博」から古くは「沓掛(くつかけ)時次郎」から今の「アウトレイジ」「孤狼の血」まで、私も相当ヤクザ映画は詳しいが、この本の著者がものすごい。「仁義なきヤクザ映画史」 伊藤彰彦 (文藝春秋) これは手ごたえのある1冊。

ここからは俗に「タレント本」とも言われがちな本。中には力作もある。「こういう本が出ているよ」という事だけでもお知らせしたくて。

「水谷豊自伝」 水谷豊、松田美智子 (新潮社)

ン? 松田美智子って? そう、松田優作の妻だった人である。この人しか書けないエピソード満載。

「竜ちゃんのばかやろう」 上島光 (KADOKAWA)

竜ちゃんの奥さんの想い出話に ついホロリ。クルリンパ

「喋り屋いちろう」 古舘伊知郎 (集英社)


「猪木さんを送るすべは、実況しかない」とある。実況小説への試み。

「老いては好きにしたがえ!」 片岡鶴太郎 (幻冬舎)


自分のやりたい事だけに生きるというツルちゃん。チョーチュネ! マッチでーーーーす。話をきいて まとめた構成は沖縄の松野大介。そう、その昔、中山ヒデちゃんと「ABブラザーズ」を組んでいたABの「B」の方である。雑誌などに色々と書いている。私にいつも「モズク」を送ってくれる。

ここからはいわばマニアな研究本。

「掬(すく)われる声、語られる芸 小沢昭一と『ドキュメント日本の放浪芸』」 鈴木聖子 (春秋社)


久々の小沢本である。

「昭和歌謡ものがたり」 松井信幸 (アルソス新書)


「矢切の渡し」(昭和58年)、「恋におちて」(昭和60年)あたりで終わっているが、もう少しこっちにも(平成へ)むかってきて欲しい。

「東京文学散歩を歩く」 藤井淑禎 (ちくま新書)

「時代を創った怪物たち」 島地勝彦 (三笠書房文庫)

小説(エンタメ)を2冊ついでに紹介します。

「スマホを落としただけなのに 連続殺人鬼の誕生」 志駕晃 (宝島文庫)


志駕なんて言ってるが「我らがテッシー」。ニッポン放送の勅使川原昭である。小さな二刀流健在。皆な次から次、本を出すからえらい。

「洲崎パラダイス」 芝木好子 (ちくま文庫)


この本が今、文庫になるとは・・・・。終戦直後の赤線の切ない話である。川島雄三監督の名作の原作も含んだ短篇集。実は こういう本を読んでいるというのが私が大人だという証拠だ。

毎月これだけの量の本を読んでいくのだから、75歳でもまだ楽ではない。まッ、本を見てるのが好きなんだけどネ。

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松村56歳とかで仕方なくメシを喰う。チョコレートで描いたプレートに「松村さん祝五十六歳」とある。店主が描いたイラストは源頼朝の松村らしいat四ツ谷三丁目。
左写真は私・松村・看護人立川志らら。右はひき出しから出てきた古い写真。松村31歳(25年前)の時の勇姿。山本小鉄さんに入門を直訴。この頃、私はいつも「小鉄ちゃんチケット」で新日本プロレスを見ていた。うしろの鉢には「山藤章二より」とある。

宮藤官九郎の怒涛の大進撃が止まらない。ネットフリックスで「離婚しようよ」(脚本)。クドカンのクスグリ(ギャグ)ピシャリ、ピシャリと決まる。

俳優としてとうとう山田組(山田洋次監督)にまで参戦。大泉洋の友達という情けない程 奥深くリストラされる大役。「母さん」とは勿論 吉永小百合である。たしか123本目の映画出演だとか。山田監督が91歳である。凄い。野末陳平とタメ歳。9月1日公開。

そして企画・監督・脚本と八面六臂の大活躍はディズニープラスで配信が始まった「季節のない街」(全10話)。詳しくは8月21日発売の「週刊ポスト」に私 書いておきました。

私が18歳の時、山本周五郎の この本を読んで早くも「人生にコンプライアンスなんか関係ない」とめざめ、その5年後、黒澤明監督が「どですかでん」として映画化。それから50年以上経ってクドカンがまた作品にしてくれた。みごとに人の心の機微まで描いてくれた。黒澤、山田を越えかねない勢いである。


8月14日、2年ぶりに「ビバリー昼ズ」のゲストとして出演。「高田センセーに誉められることだけが生きがいなんですから」と昇りつめていく監督は言った。たしか30年前、まったく同じことを北野武監督は私に言った。「高田サンに誉められることが生きがいなんだオイラ。コマネチ」

私の大切なもの「永六輔とラジオ」。佐野文二郎が作ってくれた絵ハガキである。永さんと喋ってる時は本当に楽しかった。同じ感覚がクドカンと喋ってる時にもある。どこかに書いてあった。

「高田 幻の師匠 永六輔」
「高田 幻の弟子 宮藤官九郎」

日本のエンタメの三代である。TV、ラジオ、映画。三人集まって「トークショー」をやってみたかったなあ・・・・・・・・としみじみ思う。
人は人との いい「間(ま)」があるから「人間」なのだ。

みつお じゃなくて ふみお。    

 

2023年8月18日

高田文夫

  • ビバリーHP導線
筆者
  • 高田 文夫
    高田 文夫
    高田 文夫

    高田 文夫

    1948年渋谷区生まれ、世田谷育ち。日本大学芸術学部放送学科在学中は落語研究会に所属。卒業と同時に放送作家の道を歩む。「ビートたけしのオールナイトニッポン」「オレたちひょうきん族」「気分はパラダイス」など数々のヒット番組を生む。その一方で昭和58年に立川談志の立川流に入門、立川藤志楼を名乗り、'88年に真打昇進をはたす。1989年からスタートした「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」は4半世紀以上経つも全くもって衰えを知らず。