• 2016年06月13日

    自殺者数減少の要因は?

    失業率自殺者数グラフ.jpg

     先週宮崎哲弥さんが提供されたこのグラフ。完全失業率(年平均)と「経済・社会生活」を原因とする自殺者数の推移がほぼリンクしているということが表れています。つまり、失業率が上がると、自殺者数が増加する。逆に、失業率を下げると自殺者数も減少するということがわかりますね。両変数の差分を計算した相関係数は0.74。やはりかなりの連動があることがわかります。

     グラフを見ると、1990年からの26年間で過去2度大きな山を迎えています。2003年と、2009年。03年はITバブル崩壊後の不景気、09年は言わずと知れたリーマンショック後の不景気です。
     そして、足元の数字はどうかというと、失業率、自殺者数ともに1998年以来の水準。では98年に何があったかというと、消費税の3%から5%への増税でした。ここから日本は長期のデフレに突入していったわけですが、グラフから読み取れるのは、「デフレは人を殺す」ということです。このグラフでは「経済・生活問題」を原因とする数字のみでグラフを作っているわけですが、自殺者数全体も98年以降3万人を超えていました。原因の分類は遺書などで類推する他なく、病気や精神的なプレッシャーが原因の自殺も突き詰めれば経済的問題に達するものも多いので、この数字はベースのものと考えていただければと思います。

     さて、ここ4年でようやく6000人を割った「経済・生活問題」を原因とする自殺者数。これに間違いなく作用しているのが、失業率の改善、なかんずくアベノミクスです。というのも、金融緩和、マネタリーベースの増加と失業率の間にはかなりの関連が指摘されているのです。

    『高橋洋一 ニュースの深層』(2013年12月23日 現代ビジネス)http://goo.gl/WqUwAW
    <日本では2年程度の効果ラグはある。アメリカ経済の場合、リーマンショック後のマネタリーベースと失業率の関係には1年程度のラグがある。つまり、FRBがマネタリーベースを増加させると、1年くらい経過すると低下しはじめる。>

     アメリカでは1年。日本では2年のタイムラグ。ということで、今3.2%の失業率は、2年前、2014年の金融緩和の効果となります。つまりは、自殺者数の減少はアベノミクスの効果といえるのではないでしょうか?
     しかしながら、野党は「アベノミクスは失敗」を合言葉に批判の嵐です。

    『【秋田】前原衆院議員「どんどん生活が苦しくなるのがアベノミクス」』(6月11日 BLOGOS)http://goo.gl/m4RGyR
    <この6年で物価は2割以上上がったが、名目賃金は2010年とほぼ横ばい。デフレが良くないからと言って、金融緩和でむりやり円安にして、輸入物価を上げて、株価を上げて、賃金や年金は上がらない、どんどん生活が苦しくなるのがアベノミクスではないか。>

     確かに今までアベノミクスと言えば金融緩和一辺倒で、そこで歪みが出てきたのも事実かもしれません。一方で、光の部分を語るデータはなかなか信用されません。今回のグラフが参考になれば幸いです。
  • 2016年06月08日

    完全失業率と「経済・生活問題」を原因とする自殺者数のグラフ

    今日宮崎哲弥さんが話した、完全失業率と「経済・生活問題」を原因とする自殺者数のグラフです。

    失業率自殺者数グラフ.jpg

    かなりシンクロしていることが分かりますね。1997年あたりを境に大きく上昇し、2003年付近と2009年付近に大きな山があるのがわかります。
    97年から我が国は本格的なデフレに突入。2000年代初頭はITバブル崩壊があり、2009年は言わずと知れたリーマンショックですね。
    来週、詳しく書こうと思います。
  • 2016年06月06日

    解散は忘れた頃にやってくる

     先週水曜についに通常国会が閉幕しました。注目された不信任決議案を受けての衆議院解散や麻生財務大臣の「増税しないのならば解散して信を問うのが筋だ」といった進言にも乗らず、消費税増税延期・ダブル選挙はせずで決着しました。メディアでは同日選回避を受けて、ではいったい総理はいつ解散するつもりなんだ?という観測記事が載りだしています。

    『とりあえず衆参同日選は封印したが...消費増税再延期で「伝家の宝刀」はフリーハンドに 次なる一手は...』(6月5日 産経新聞)http://goo.gl/plhSNq
    <安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げを平成31年10月まで2年半延期した。自身の自民党総裁任期(30年9月)を超えた先に増税時期を設定したことで、首相は任期いっぱい消費増税の判断に縛られずに、与党に有利な局面で衆院解散に打って出ることができる「フリーハンド」を得た。現在の衆院議員の任期は平成30年12月。"伝家の宝刀"を抜くタイミングはどこか-。>

    『総裁選も絡む「衆院解散」 浮かぶ3シナリオ』(6月6日 日本経済新聞)http://goo.gl/fHxcFp

     今年後半の臨時国会か、来年初めの通常国会冒頭か、あるいはさらに先になるのか...?どんどん先に話が行っていて、当然ですが同日選の目はもうなくなったとされていますが、実は"制度上は"まだ同日選もできることはできます。ここから先は、ある意味高校時代の政治・経済の勉強のおさらいだと思ってください。アタマの体操として、制度上いかにして解散するのか?

     まず問題となるのは、国会が閉まっても解散は出来るのか?というところ。政府見解によれば、できます。というのも、日本国憲法を制定するにあたって開かれた国会の委員会でこの問題が早くも議論されていて、制度上はできると担当の金森国務大臣が答弁しているのです。

    『憲法審査会関係会議録 委員会 昭和21年7月20日』(衆議院HP)http://goo.gl/QTrHdy
    <○金森国務大臣 (中略)此ノ際極ク安全ナ御答ヘヲ致シマスレバ、ヤハリ解散ト云フモノハ今マデ用心深ク政府ガヤツテ来タト同ジヤウニ、今後モ議会ノ開カレテ居ナイ内ニ、解散ヲスルト云フコトハナイデハナイカト思ツテ居リマス、併シ理論的ニ所見ヲ言ヘト云フコトヲ申サレマスレバ、勿論解散ハ出来ルモノト思ツテ居リマス>

     運用上、また国民の信を問うという事の性格上、閉会中の解散はないであろうが、純粋に理論上は可能であると答弁しています。ただし、過去の同日選も含め、衆議院の解散を閉会中に行った例はありません。あの1986年の「死んだふり解散」も、実は臨時国会は召集されていました。ただし、議場での万歳なしでの解散だったので、閉会中の解散に近い印象を関係者に残しました。

     この年は5月22日までの通常国会がつつがなく終わりました。そのまま予定されていた参院選への選挙戦に突入していったわけなんですが、5月27日の閣議で、6月2日からの臨時国会の召集を閣議決定。その日に解散しました。

     臨時会招集の権限が内閣にあることは日本国憲法53条前段に記述があります。
    <内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。>
     そして、先例では解散は本会議を招集しなくてもすることができます。本会議が開かれていない場合には、衆議院議長応接室に各会派の代表議員が参集し、解散詔書を議長が朗読して解散となり、各議員に対しては衆議院公報をもって通知することになっています。上記死んだふり解散は、この議長応接室での詔書朗読によって行われたものです。

     前例のない閉会中の解散であれば日程的な縛りはありません。しかし、死んだふり解散のように臨時国会を召集しての解散で衆参ダブル選挙となると、日程的な縛りが出てきます。それは、衆議院選挙ではなく、ダブルの相方、参議院選挙側の事情です。

    『公職選挙法』(e-Gov HP)http://goo.gl/CBdWd
    <第三十二条  参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
    2  前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。>

     解散のために臨時国会を召集するとなると、その閉会日(=解散日)の期日によってはあらかじめ想定されていた投票日がズレる可能性が出て来るんですね。
     さて、今回改選の参議院議員の任期を調べると、今年7月25日まで。その30日前というと、6月25日。6月1日の通常国会閉会日はギリギリ第2項に引っかからない絶妙な期日なんですが、もし臨時国会を召集して解散した場合、7月10日の投票日を動かさずに解散しようとするといつなのか?
     第2項の<閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う>から考えると、7月10日の30日前は6月11日。同24日前は6月17日。この6月11日~17日がピンポイントでダブル選が出来る最終日程となります。
     そのために臨時国会召集の閣議決定を、仮に火曜と金曜の定例閣議で行うとすると7日(火)、10(金)、14(火)...。
     今日行われた桝添東京都知事の会見、そして明日以降の東京都議会での都知事答弁などがどこまで作用するのか?これが政権の支持率を押し下げるようになれば、総理がさらなる「新しい判断」をするかもしれません。解散の火はあらかた消し止められた格好ですが、今だに熾火のようにくすぶる火種が一つだけ残っている状況です。
  • 2016年05月30日

    米オバマ大統領広島訪問取材報告

     現職のアメリカ大統領として歴史上初めて被爆地・広島を訪問したオバマ大統領。謝罪の言葉はありませんでしたが、世論はおおむね前向きに受け止めたようです。

    『内閣支持率55%に上昇 米大統領広島訪問98%評価 共同通信世論調査』(5月30日 産経新聞)http://goo.gl/l7Garn
    <共同通信社が28、29両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は55・3%で、4月の前回調査48・3%から7・0ポイント上昇した。不支持率は33・0%だった。オバマ米大統領の広島訪問について「よかった」との回答は98・0%に達した。オバマ氏が広島訪問で「謝罪するべきだった」は18・3%。「謝罪する必要はなかった」が74・7%を占めた。>

    『オバマ氏広島訪問「評価」92% 本社世論調査』(5月29日 日本経済新聞)http://goo.gl/1iNEpr
    <世論調査で27日にオバマ米大統領が被爆地、広島を訪れたことについて聞いたところ「評価する」が92%に上り「評価しない」は4%にとどまった。内閣不支持層でも88%が評価しており、米国の現職大統領として初の広島訪問は圧倒的な支持を集める結果となった。>

     私も前日木曜日の夜から広島に入り、当日は朝から平和記念公園周辺を取材しました。昼12時を境に規制線が張られ、公園への入場が禁止されるということで、午前中、慰霊碑前は地元の人や外国人のツアー、修学旅行生たち、それに多数の報道陣でごった返していました。
     地元の方々にお話を伺おうと声を掛けてみると、皆さん被曝2世、3世で、お年寄りの中には被曝された1世も多数いらっしゃいました。原爆投下というのは決してはるか昔ではない。71年という年月は長いとも言えますが、決してはるか昔ではない。
    当たり前のことなんですが、まずはこのことを実感しました。
     0歳の時に被爆したという男性にお話を伺ったんですが、
    「謝罪までは求めない。ここ広島に来ることで、何がしか感じるものがあるはずだから」
    と話してくれました。

     事前に東京でも様々な会見等がありましたが、そこでもオバマ広島訪問について批判的な向きは少なかったように感じます。日本原水爆被害者団体協議会事務局長の田中煕巳氏は日本記者クラブでの会見で、
    「今回のオバマ訪問は歓迎とまでは言わないが、来て資料館に行き、直接被爆者と会って直に感じてほしいとずっと訴えてきた」
    と話し、謝罪については、
    「原爆は何十万人という罪のない人々を一挙に殺した。被爆者の被害は持続している。少なくとも被爆者には謝罪をしてほしい。だが、それを強く求めることで、(オバマ氏の動きを縛り)核兵器廃絶の障害になるのであれば、ぐっとこらえて謝罪は口にしない」
    として、謝罪を求めない意向を示しています。

    『会見リポート 日本原水爆被害者団体協議会事務局長 田中煕巳氏』(日本記者クラブ)http://goo.gl/aCR6Mq

     このように考え方の右左はあまり関係なく、オバマ大統領の広島訪問を暖かく迎えようという雰囲気が市内にはあったように感じました。
     そして行われた金曜夕方の広島訪問。10分という短い滞在ではありましたが、原爆資料館を訪問し、慰霊碑に献花。そして、予想をはるかに上回る17分間にわたる演説を行いました。滞在時間や演説の文言については様々な評価がありますし、新聞などのメディアや個人のブログに至るまでいろいろなところで詳細に検討されていますから、ここでは触れません。ただ、行事の終了直後、オバマ大統領と安倍総理が平和記念公園を離れた直後に何が起こったのかを見れば、当日の広島の雰囲気が分かります。

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    オバマ大統領と安倍総理が手向けた花を写真に収めようと、規制が解除された直後から大行列ができ、それが夜遅くになっても途切れませんでした。反対が多数を占める中での訪問なら、こうはならなかったでしょう。

     翌朝早く、献花が片づけられた慰霊碑にもたくさんの方が集まり、祈りを捧げていました。アメリカ・カリフォルニアから旅行で訪れていたご婦人がつぶやきました。
    「今回のオバマ訪問とあの演説で、日本とアメリカが真の友人になれたと思う。私はそう、信じている」
    この絆は、両国の指導者が代わっても続くでしょうか?11月のアメリカ大統領選本選で、早速問われることになります。
  • 2016年05月23日

    今度は別の風が...

     先週末、どこからともなく強い解散風が吹きました。いよいよサミットを控え、国会も最終盤。様々な憶測が飛び交う中ですが、今度は意外なところから正反対の風が吹きました。

     一地方の首長選挙が東京・永田町の空気に微妙な波紋を投げかけています。それが、和歌山県・御坊市長選挙です。結果からご紹介しますと、現職で無所属の柏木征夫氏が7選を果たしました。しかし、この選挙の核心は勝った柏木氏ではありません。負けた方が問題で、各社それを見出しに取っています。

    『二階氏長男が敗れる 現職7選 和歌山・御坊市長選』(5月22日 朝日新聞)http://goo.gl/7RXW1n
    <和歌山県御坊市長選が22日投開票され、現職で無所属の柏木征夫(いくお)氏(75)が、自民党総務会長の二階俊博氏(77)の長男で元秘書の俊樹氏(51)=無所属、自・公推薦=を破り、現役市長では全国最多の7選を果たした。>

     二階総務会長の長男、俊樹氏が負けたというだけでなく、その負け方も衝撃を与えました。柏木氏9375票に対し、二階氏は5886票にとどまったのです。
     首長選挙は実績をアピールしやすい現職有利とも言われますが、一方で今まで6期24年という多選批判も一定の支持を得やすい中での選挙でした。二階氏は若さと変革をアピールしたんですが、それも及ばなかったわけですね。さらに、永田町を驚かせたのは、この選挙がただの首長選挙ではなく、二階陣営が国政選挙張りの応援体制を敷いたからです。

    <俊樹氏は父親の政界人脈も使った国政並みの組織戦で臨み、千人規模の集会を重ねた。告示前後から自民党の稲田朋美政調会長や森山裕農林水産相、小泉進次郎氏、漆原良夫・公明党中央幹事会長ら国会議員が次々と御坊入り。当初は静観していた父の二階氏も告示後は御坊市に詰めてマイクを握るなど精力的に長男を支援した。>

     市長選は告示からの選挙期間は1週間。たった1週間の間に現職の閣僚や自民・公明両党の幹部、さらに今人気No.1の小泉進次郎氏まで選挙区入り。これだけの顔が選挙区に入れば人もたくさん集まるわけですし、人が集まれば目立たないながらも候補者の顔と名前も覚えてもらえる。となれば勝つことが出来るだろうと考えるのが普通です。負けるにしても、これだけ大差で負けてしまうとは思わないわけですね。

     ある政界関係者はこう分析しています。
    「これだけカンフル剤を打てるだけ打ったのに惨敗というのは、与党への消極的支持が案外脆かったことを示している。選挙区が都道府県単位の参院選に対して、衆院選は市区町村単位に近い。当初の楽勝ムードから一転、非常に苦戦した北海道5区補選と併せて、衆院小選挙区では厳しいという結論になるよね」
    また、与党担当記者は、
    「もともとダブル選挙に消極的な官房長官と、積極的な総理や総務会長で綱引きが行われ続けてきたと言われている。このバランスに微妙に影響を及ぼす可能性がある」
    と指摘しました。
     ダブル選挙に踏み出した時に、衆議院でも議席を減らすようなことがあれば解散のメリットはありません。まして、改憲を目指す現政権はその発議を行うのに必要な議員総数の3分の2獲得を最終的な目標としています。議席を減らすことが分かっているのに解散はなかなか打ちづらいわけですね。

     さて、2つの風が正面からぶつかると、風は四方八方に散らばるそうです。果たして永田町の風はどこへ向かうのか?ダブルかシングル(参院選のみ)か、はたまた都知事選まで絡むのか?会期末まであと10日。読みづらくなってきました。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

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