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2023.08.05

福田弘彦さんに聞く!長野県伊那市立伊那小学校の取り組み

長野県伊那市立伊那小学校の前校長の福田弘彦さんが登場。

伊那小学校は通知表も時間割もチャイムもない探究的な総合教育を

60年以上も続けていて、全国的にも注目されている小学校。

伊那小学校の取り組みや生徒たちのようす、先生方の思い、

保護者や地域との関係などを伺う中で、

学校教育の在り方について伺いました。

伊那市立伊那小学校ホームページ

http://www.ina-ngn.ed.jp/~inasho/

 

伊那市立伊那小学校とは

伊那小学校は、自分たちのやりたいことを保証されている学校。

文科省から指示されたわけでなく、

現場の教師が子どもの願いや求めを大事にするためには

学校はどうあるべきか考える中で長い時間をかけて変わってきた。

チャイムについては、子どもたちが夢中に活動をしている中で

チャイムが鳴ったから終わりとしてしまうことが

子どもたちの願いや求めに応じた教育が実現できるかと考え、なくなった。

通知表がなくなったのは昭和31年。

直に保護者の方と面談の時間を設け、、

子どもの事実、姿を伝えることで子供の本当の育ちが見えてくる。

○や△や◎ではない歩みや息遣い、頑張ってきたことを伝えるべき

というところから通知表がなくなった。

「子どもは、自ら求め、自ら決め出し、自ら動き出す力を持っている存在である。」

というのが伊那小学校の「子ども観」。

「総合学習」とは、「総合」という学習スタイルがあるわけではない。

子どもたちが日常の中から持ち込んだものを、

学級でひとつのテーマに絞っていく。

それを進めていくことによって、子どもたちの内なる求めを

実現させることができるのではないかと、手探りやってきた。

子どもたちは動物の飼育、炭焼き、野菜作り、染物など、様々テーマを選び、

目をキラキラとさせて活動に取り組んでいる。

 

 

公立でもできる総合教育

公立の小学校なので学習指導要領に盛り込まれている学習内容は扱うが、

教科書の上で教えるのではなく、

暮らしの中から子供たちが本当に必要だと思ったことや

やってみたいというところからの学びを大事にしている。

総合学習のテーマを追求する中で、

思ったことを絵や音楽で表現したり、

文字にして伝えることで言語の学習をしていく。

求められる学習が1年の中で学習できることを前提に、

年間の活動計画を立てる。

高学年になったら無理をせず教科の内容をいれていく。

総合という学習で1年間の学習をすべて網羅できなくなってくると、

教科の内容をいれていく。

学級の活動と繋がって学習できれば、

同じことを学んだ時に、子供の将来の生きる力になる。

自分のやりたいことを追求できた喜び、

できなかったことができるようになった喜び、

知らなかったことを知る喜びを感じることが本物の教育ではないか。

総合教育の背景にあるのは「信州教育」

「児童の教育は児童のうちから構成されるべき。外からではない。内からである」

という信州教育源流を生み出した淀川茂重先生が取り組んだ教育を

受け継いでいるのが伊那小学校の教育。

 

 

自然環境や社会環境から学ぶ

教室に閉じ込めて教科書を開くという学習は

子どもたちが本来持っている自然環境や社会環境から学ぶ力を

ないがしろにしているのではないか考え、

天気が良い日は屋外に出て行き、子どもたちが出会う自然や社会を

学習の芽としてとりこむようにしている。

子どもは本来自ら学んで、感じ取って育つという力を持っている、

教師はそれをほんの少し手助けしたり、寄り添ったり、

逆に子どもたちから学ばせてもらう存在。

この教師感が伊那小学校に脈々と流れている。

職員間では子供が見せた姿が何を求めているのかなどを

日常的に議論されている。

地域の方はあたたかく支えてくれている。

子どもたちの活動が行き詰った時、

子どもたちは地域の大人たちに助けを求める。

いろいろな道に長けた方いて、伊那小学校の応援団になってくれている。

人と関わることで、その人の生きざまを通して学ばせていただいている。

そこで社会に接することができる。

 

 

保護者とのコミュニケーション

伊那小学校では、卒業生が保護者になって理解を示し、

子どもや学校や職員を支えてくれている。

保護者とのコミュニケーションという点では、

職員がまめに学級便りを出し、丁寧にこどもたちの育ちを伝えている。

教員も見えないことや、わからないことがたくさんある。

総合学習の活動をしていると保護者と接する機会も多い。

その中で子どもの情報を頂き、日々歩んでいる。

伊那小学校は、児童数が約600名。

少子化の中、年間30人くらい児童数が減りつつあるが、

令和4年では、移住する方、外部からくる子どもが30名ほどいて、

600名の児童数は変わらないでいる。

伊那小学校の良さをどこかで耳にして、学校を見に来て、

生徒たちの姿を見て、共感くださり、移住してきて

伊那小学校に通ってくださるということが起きている。

自分としては、学校はそこまでの思いに応えられるか、ドキドキだった。

教員は、生き物を育てたりしていると休みがとれなかったり、

子どもをどう支えるかなどで日々悩むが

一緒にやっていった先に子供たちの笑顔があると思い、

負担だと感じていないと思う。

一意専心でものごとにあたってくれている。

 

これからの福田先生

校長として3年間伊那小学校で生き生きとした

子供たちの育っていく姿をみせてもらい夢のようだった。

しかし、担任をしていないと、自分が望まなくても、

子どもたちとの距離は離れていく。

定年を迎え、もし叶うなら、一番自分のやりたいことを

やらせてもらいたいと、

今、別の小学校ではあるが、1年生の担任をしている。

同じ学校にいても現場にいないと、

わからないことや変わったことがたくさんあり、戸惑う日々。

伊那小学校で学ばせてもらったことは自分の中では大きい。

現在勤めている小学校には、

せせらぎ広場という教室の前に小さな川が流れている。

子どもたちはそこに小さな生き物を持ち込んでいる。

伊那小学校で蚕を育てる実践を目の当たりにしていて、

あんなことができたらいいなあと思っている、

伊那小学校の卒業生からは

「伊那小学校で経験できたことが生きる支えになっています。」

という声をきく。成人して自分のことを振り返った時に

心を揺り動かされ、子どもたちが精一杯取り組んだことを

語れる学校というのは凄いと思う。

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