今週、社会保障制度改革国民会議は最終報告書を決定し、安倍総理大臣に提出しました。
『社会保障国民会議 首相に最終報告書』(東京新聞) http://bit.ly/15ZJQvI
この報告書を提出する際、国民会議の清家篤会長は安倍総理に対し、
「改革の前提である消費税(率引き上げ)による財源を確保し、改革を速やかに実現してほしい」
と、消費増税の確約を迫りましたが、総理はこれには答えず、
「やるべき改革を法案として推し進めていかなければならない」
と述べるにとどめました。どうも、最近はやることなすこと、すべてが増税につながっていくような錯覚を覚えるんですが、この社会保障改革だって、増税に直結!というわけではありません。
この報告書の内容は、全文にこそ消費増税について言及していますが、本来の趣旨は、負担の在り方を「年齢別」から「能力別」に切り替えることと、給付が高齢者に偏っている現状を「全世代型」へ転換することです。
『高齢者に負担増 社会保障会議が最終報告書』(東京新聞) http://bit.ly/196E8dD
この理念は正しいと思います。払える人が払って制度を維持する。稼いだ分の一部を困っている人に回すというのは、福祉の理念そのものであるからです。
しかし、これは運用面でとんでもない落とし穴をはらんでいます。「能力別」への切り替えをうたっていますが、ではその「能力」を政府がどう把握するのか?となったときに、既存の仕組みで使えるものがないかまず考えますよね。すると、都合のいいことにサラリーマンの『源泉徴収』という制度があるんですね。まさしく稼ぎそのものを完全に把握しているわけですから、ここから取るのは容易。働いている企業によっては、若くしてかなりの額を稼ぐ人も出てきますから、おそらくこれでかなりの増収になるはずでしょう。しかし、制度全体を維持するのには足らない。ではこの時、足らないお金を足らすために何を考えるか?
普通の人なら、まだ調べ切れていない自営業者や年金生活者の「能力」を把握することに努めますよね。厚生労働省の労働力調査によれば、日本の15歳以上人口1億1090万人に対し、正社員が全体の30%。役員・非正規を合わせても、50%強となります。
『人口動態統計月報(平成25年3月分)』 http://bit.ly/15ZQt1d
つまり、「能力」を正確に把握できているのは全体の半分に過ぎないということになります。では、あと半分。自営業主やその家族などの稼ぐ力をどう把握するか?そのために、今年の5月に「マイナンバー法案」が成立しました。正式名称は「社会保障・税番号制度」。これを早急に活用すれば把握できると思うんですが、このスタートが遅い。何と、制度のスタートが2016年、情報提供ネットワークシステムの運用開始が2017年、実際に年収などを把握するようになるのは2018年という、なんとも気の長い話です。
『番号法案についての都道府県・指定都市担当課長説明会』資料1 http://bit.ly/13qgC3n
※参考 同説明会配布資料一覧 http://bit.ly/13qgG3c
結局、そんな遅くては制度が持たない!とばかりに、手っ取り早い消費増税へとなるわけですが、問題なのは社会保障制度の話はミクロ経済の話であって、国全体の経済を考えた時に実は枝葉の議論だということ。このことは、火曜日にボイスでご一緒している宮崎哲弥さんが常々指摘していますが、
長い目で見れば、日本が経済成長していけばある程度問題は解決していくものなのです。先日も、株式の運用益が10兆円以上出て年金財政がある程度潤ったというニュースがありました。
『運用益大幅増、厚生・国民年金の黒字額が最高に』(読売新聞) http://bit.ly/15ZRt5l
一方、消費増税は極めて波及効果(悪影響)が大きいマクロ経済的政策。全ての前提となる経済成長の足を引っ張る危険性をはらんでいます。新聞は消費増税延期について、「もう決まっていることをちゃぶ台返しするのか!」と批判しますが、ようやく景気が回復し始めたところでそれをひっくり返すような消費増税と、どちらが真のちゃぶ台返しなんでしょうか?
消費増税に関しては、秋に判断されるということなので、議論をするにはまだ早いんじゃないかとも思うんですが、現在、様々な経済指標が出てきていて、それをもとに消費増税を決めてしまおうという勢力も様々あるようです。
たとえば、4月~6月のGDP成長率。政府発表は8月12日の予定なんですが、民間シンクタンク予想を並べて消費増税が可能という相場観を作ろうとしたり...
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013080100691
11社が揃って消費増税問題ないっていうのもおかしな話で、それならばシンクタンクは数社あれば十分です。政策を提言するのが仕事なら、様々な角度から意見を出すのがシンクタンクのはずなんですが、それとも消費増税はそんなに理想的な政策なんでしょうか?増税が理想の政策だなんて、まるで民主党政権の二の舞ですね。
続いて、失業率。0.2ポイントマイナスの3.9%になり、リーマンショック前の水準となりました。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/
(総務省統計局)
もちろんいい数字であり、喜ぶべきものなんですが、気を付けなければならないのが、就職をあきらめた人はそもそも母数に入らないということ。たとえば、夫の給与が上がって妻がパート探しをしなくなったという例もあります。その給与については、同じタイミングで厚生労働省が毎月勤労統計調査を出しています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/25/2506p/2506p.html
現金給与総額は0.1%のプラスではあったんですが、内訳を見ると、上がっているのは所定外給与、いわゆるボーナス。月給にあたる所定内給与はマイナス0.2%で、基本給はまだ上がっていないことになります。これで増税となれば、生活は当然苦しくなりますよね。ボーナスをあてにして生活してはいけないって、新入社員研修でも習うことです。
そして、消費者物価指数。先週このブログで指摘した通り、コアコアCPIはマイナスでも、総合指数や生鮮食料品を除いたコア指数がプラスだったので、もうデフレから脱却したような書きぶりです。
『消費者物価指数、1年2か月ぶりプラスに』(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130726-OYT1T00249.htm?from=ylist
『6月の消費者物価指数、1年2か月ぶりプラス』(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0726/TKY201307260025.html
なんと、読売も朝日も見出しがほとんど一緒!この両社、部数争いで鎬を削っているんじゃなかったんでしたっけ?ちなみに、コアコアCPIも含めた数値は...
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
(総務省統計局)
経済部記者がご執心のコアCPIにしても、前年同月比でみると0.4ポイントのプラスですが、実は指数そのものは5月と一緒。これでデフレ脱却といえるのか?
さらに、コアコアCPIのグラフを見ると、上がり下がりがあっても震災前から一貫して右肩下がり。アベノミクスが始まったとされる今年1月以降で見ても、アベノミクスへの期待で株価が上がりだした去年11月以降で見ても、数値はほとんど変わっていません。この数字をどう読めば、デフレから脱却したと言えるのでしょうか?私にはわかりません。
歴史に学べば、この時期の消費増税はリスクが高いとはっきり出ています。前回消費税を3%から5%に上げたのは、1997年4月。今、目の前にあるデータと条件が同じ、増税前年の6月の各数値を並べると、
・CPIは、コアコアでプラス0.6%(2013年6月はマイナス0.2%)。(※1)
・GDPは、4月~6月の数値を年率換算した名目GDP季節調整済みでプラス4.3%(同3.4%予想)。(※2)
・完全失業率は、季節調整済みで3.4%(同3.9%)。(※3)
ご覧の通り、主要な数値は1997年の増税直前の方が良かったわけです。では、景気はその後どうなったのか?GDPはその増税の年、1997年の523兆1983億円をピークに、その後15年間一度もその額を超えられずにいます。当時も好景気だと判断して増税してみたものの、見事に景気を冷やしてしまってその後立ち直れていないわけです。これをアジア通貨危機のせいだという人もいますが、アジア通貨危機は全世界的に影響がありました。ところが、15年も立ち直れていないのはさすがに日本だけ。それでも、歴史を繰り返すのか?安倍総理の懸命なご判断を願うばかりです。
※1 http://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.htmの中の『全国(品目別価格指数)・月次 (1970年1月~最新月)』参照
※2 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2013/qe131_2/gdemenuja.htmlの中の、『年率換算の名目季節調整系列(前期比)』参照
※3 http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htmの中の完全失業率【年齢階級別】参照
参院選に勝利した安倍総理の会見をみると、
https://www.jimin.jp/activity/press/president/121801.html
まずは経済。安倍総理は冒頭発言の中で、
「外交力も安定した社会保障も、強い経済なくしては成り立ちません」
と話していました。経済といえば、もちろんアベノミクス。安倍総理は何度も言っていますが、この最終目標はデフレ脱却です。間近に迫る消費増税への景気判断も、このデフレ脱却への所与に過ぎません。
安倍総理は消費増税に関しては、
「今年4月から6月の経済指標などを踏まえ、経済情勢をしっかりと見極めながら秋に判断をしてまいります。デフレ脱却、経済成長と財政再建の両方の観点からしっかりと判断していく考えです。」
と述べ、選挙前の各演説など同様、各指標を見て適切に判断すると繰り返しています。
菅官房長官はさらに少し踏み込んで、
「4~6月のGDPの2次速報も見て判断する」としています。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MQBWZ76S972F01.html
しかし、麻生財務大臣はこの消費増税について
「予定通り上げたい」
と会見で話しています。
http://www.mof.go.jp/public_relations/conference/my20130720.htm
このブログでも過去に書きましたが、消費増税を含む税と社会保障一体改革法の附則18条には
「名目3%、実質2%」
との記述があるので4~6月のGDPの数値を注視するのはわかりますが、デフレ脱却を最終目標にするなら、物価を見なくてはなりません。そして、その指標、消費者物価指数(CPI)が明日発表されるのです。おそらく、目標の物価上昇率2%には到底届かず、コンマ何%という上昇に留まるでしょう。そうなると、まだまだ景気は回復しきっていないとなって消費増税が難しくなります。それゆえ、発表は前々から予定されているのにほとんど報道されていません。明日の発表後もさほど大きく取り上げられないかもしれません。
さらに、このCPIは時と場合によって3パターンの数字が出てくるので非常に注意が必要です。それがこの3つ。
・CPI
・コアCPI
・コアコアCPI
同じ消費者物価指数という名前で3つも種類があるなんてややこしくてたまりません。モノサシは一つに統一せよと思うんですが、現状はこの3つを正確に知っておく必要があります。
まずは、CPI。これは、全ての物の値段を加重平均して出した指数です。
しかし、この物価の中には価格の変動が激しいものがあります。たとえば、肉や魚、野菜といった生鮮食料品。いま水不足と酷暑から野菜が高くなっていますが、このように景気よりも天候に左右されるものが混ざっていると、正確な物価としての判断ができません。生鮮品が高いので指数が高くでても、それはデフレ脱却とはいえません。天候が順調になれば、それだけで物価上昇率が下がってしまうわけですからね。
そこで、CPIから生鮮品を除いたものが、コアCPIです。ただ、これだけでは不十分です。景気循環による物価の下降・上昇を判断するには、もうひとつ取り除かなければならない要素があるのです。それが、エネルギー価格。特に石油や天然ガスは、世界の投機筋がマネーを流し込んで値段が激しく変動します。それに影響を受けていては、国内の物価を正確に捉えることができません。
ということで、コアCPIからエネルギー価格を除いたものがコアコアCPIです。
まとめると、
・CPI(全ての物価)
・コアCPI(CPI-生鮮品)
・コアコアCPI(CPI-生鮮品-エネルギー価格)
となります。ちなみに、海外では、日本のコアコアCPIが「コアCPI」と呼ばれていて、2種類で判断しているのが主流です。日本だけ、オリジナル「コアCPI」という中途半端な代物を作り出しているのです。
そして、デフレを脱却できたかどうかを判断するには、コアコアCPIを使わなくてはなりません。日本版「コアCPI」と使うと、エネルギー価格の高騰で物価が上昇し、「見てください、数値が上昇している!デフレから脱却した!増税だ!」となる恐れがあります。明日発表となるCPI、消費者物価指数。各メディアがどう報じるのか、どのCPIを使って報じるのか?その姿勢が問われそうです。
安倍官邸のアグレッシブな人事が続いています。
事務次官人事では、厚労次官に村木厚子さんを起用しました。
『村木厚子厚労次官を正式発表 女性登用は2人目』(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/476265.html
厚労省の文書偽造事件で逮捕された後、検察による証拠の改ざんが発覚し無罪判決となった方。旧労働省出身なんですが、実は前任の次官も労働省出身。2代続けて労働省出身というのは、バランスを重んじる官僚の世界では異例の人事で、女性の活力を重視する安倍官邸としては目玉の人事の一つです。
さらに、外務次官人事。任期途中の河相次官を事実上更迭し、斎木外務審議官を次官に昇格させました。
『外務省、斎木次官を発表』(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2704Z_Y3A620C1EB2000/
斎木氏は安倍総理が小泉内閣の官房副長官を務めていたときから北朝鮮の拉致問題に取り組んできた間柄。前政権で次官に就任した河相外務次官は、民主党色の払拭という意味もあり、一年足らずでの退任となりました。
この、一連の官邸主導の人事。選挙中は政治休戦ともいわれる中、総理の得意な防衛の分野で着々と進められています。
まず、海上保安庁長官に初めて現場の制服組が起用されました。
『海上保安庁:長官に佐藤雄二氏昇格へ 現場出身で初』(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130718k0000e010164000c.html
現場の士気向上を狙い、総理主導で行われた人事のようです。
さらに、
『自衛隊運用、制服組に移管 来年度にも、文官部局は廃止』(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0718/TKY201307171014.html
自衛隊の運用、つまり作戦企画立案に関して、現場を知らない官僚(背広組)ではなく、現場の幹部自衛官(制服組)が仕切るようになるということです。これが『文民統制』に悖るという意見もありますが、選挙で選ばれた政治家が大臣としてグリップするということが本当の文民統制であって、選挙を経て民意の裏付けがあるわけではない、「文官」たる官僚がグリップするのは「文民」統制ではありません。第一次安倍政権当時からこの構想があったそうで、ようやく真っ当な人事が行われたということですが、官僚機構そのものをいじるというのはなかなか思い切った決断です。
さて、近づいてきた参院選で自民党が大勝すれば、この流れに拍車がかかり、官邸としてはさらに動きやすくなりそうですが、すでに巻き戻しの動きも起きています。
『規制改革会議、農業など作業部会を5つに再編』(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57423350X10C13A7PP8000/
先の通常国会の終了直前、発送電分離の一里塚になると言われた電気事業法改正案が廃案となってしまい、エネルギーや環境といった分野はこれから仕事が増えるはずなんですが、作業部会は休止...。発送電分離をされると厄介な電力会社や、そこから支持を受ける政治家、官僚が動いたのでは...?と勘繰りたくもなる決定。選挙の前後という目立たないタイミングというのも、何やら怪しいにおいがします。
先日番組でご一緒した、産業競争力会議の有識者委員、竹中平蔵さんは、
「参院選で自民党が大勝すれば、受かってくるのは業界団体に推された人や業界団体出身者が多数入ってくる。そうなれば、党内世論が改革を拒否するようになって、安倍さんはむしろ動きづらくなるんではないだろうか?」
と心配していました。
一時は維新の会やみんなの党といった野党とも改革の分野で手を組むことも考えていたという官邸サイド。橋下発言などで今となってはそれも望めず、政権の正念場はむしろ、選挙が終わった後に訪れるようです。
上げるべきか、上げざるべきか、それが問題だ...。シェイクスピアの悲劇の一節のような問題が、選挙後の安倍政権に降りかかります。言わずと知れた、消費税増税問題。今年10月に、来年4月から8%に上げるかどうかの判断を下さなくてはなりません。すでに増税が既定路線のように報じられていますが、この増税法案の附則18条というところに、
「(消費税率の引上げに当たっての措置)
第十八条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」
という条文があって、名目3%、実質2%のGDP成長を目指し、その時の景気の状況により、その時の政権が判断することになっているのです。つまり、「景気が悪けりゃ上げないよ」と法律に明記されているわけです。
http://hourei.hounavi.jp/seitei/hou/H24/H24HO068.php
ちなみに、首相官邸のホームページにも「社会保障・税一体改革ページ」というものがあって、
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/syakaihosyou.html
そこのリンクから、いわゆる消費増税法案の詳細ページへ飛ぶことが出来るんですが、
http://law.e-gov.go.jp/announce/H24HO068.html
このページは簡易版。何と、この附則18条が見事に削除されているのです。ん~、何というか、「何が何でも増税!」という意図を感じざるを得ないんですが...。
さて、新聞各紙もまた、増税の既成事実を作ろうと躍起です。というのも、増税の暁にはその論功行賞としての軽減税率適用を勝ちとりたいからです。紙面以外でも、さまざまなシンポジウムなどを開いて、多少強引に軽減税率を適用すべきと訴え続けています。
強引さが目立った事例として、ジャーナリスト・津田大介さんが参加した日本新聞協会のシンポジウムを挙げましょう。出席した津田さんが、自身のメールマガジン『津田大介のメディアの現場 vol.83』の中の「津田大介のデジタル日記」に記しています。
(引用はじめ)
■6/21(金)■
(中略)
●17時30分からは同じ場所で日本新聞協会のシンポジウム「ニュースや知識
をどう支えるか――ネット時代にメディアの公共性を考える」へ。司会は八塩
圭子さん。ゲストは元総務相で慶大教授の片山善博さん、明治大学の齋藤孝さ
ん、毎日新聞東京本社編集編成局長の小川一(@pinpinkiri)さん、俺。
●各パネリストは新聞の軽減税率適用の必要性を述べる人が多かったけど、
俺は「欧州では普通だし、商業性に巻き込まれず記事を出すことの公共性考え
たら軽減税率を採用するのには合理性がある。しかし、都合の良いときだけ公
共性とか言うのに、読売ジャイアンツを持ってたり、不動産を潤沢に経営して
いる新聞社がそれを言っても説得力がないし、ネットの人たちは納得しないの
では」という発言をした。要するに軽減税率適用には反対の論調であるわけだ
けど、その日のシンポジウムの速報記事では「軽減税率適用をシンポジウムで
議論。津田大介も参加」とまとめられる。え、これって俺も軽減税率適用賛成
派になるの? 的な。
(引用ここまで)
津田さん自身もメルマガ上で指摘している通り、紙面ではこう変化するのです。
『新聞への軽減税率「あってしかるべき」新聞協会がシンポジウム』(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130621/trd13062122180021-n1.htm
見出しだけ見ると、満場一致で軽減税率を適用すべきだと読めるが、中身はそうでもなかったことが参加者自身に指摘されてしまっています。見出しによる印象操作もここまで来たかと思います。
しかしながら一方で、ここまで新聞が血道を上げる消費増税、そして新聞への軽減税率の適用が却って新聞の経営を圧迫するのでは?という分析もあるのです。どういうことか?
新聞の売価には軽減税率が適用されるので、当然価格は据え置きになります。ところが、一般のモノやサービスの値段には消費増税が乗っかってくるので、値段が上昇します。たとえば、新聞をするための電気代、インク代、さらに刷り上がった新聞を運搬するガソリン代、高速代。これらを総合すると、いかに売価に軽減税率が適用されようとも、新聞を刷るためのコストは消費増税すると上昇するわけです。
さて、その時新聞各社は「消費増税でコストが上がりましたので...」と、値上げを言いだせるのか...?
さんざん、言論の自由を守るため、民主主義を守るために軽減税率適用を!と言ってきた新聞社が、この期におよんで値上げとなれば、「では何のための軽減税率だったのか!」となりませんか?この軽減税率の議論は、見れば見るほど滑稽で、新聞社が自分で自分の首を絞めているような気がしてならないのです。増税で景気が悪くなったら、結局元も子もないわけですからね。軽減税率の是非を議論する前に、本当に今増税するべきなのかを議論するべきだと思うのですが...。
まさか、「景気が悪くなったのは消費増税のせいじゃない!アベノミクスが失敗して物価が上昇したからだ!新聞はアベノミクスの犠牲になった!だから値上げします!!!」なんて力技を繰り出しませんよねぇ...?ちょっと寒気がしてきました。
1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。
■出演番組
≪現在≫
・「飯田浩司のOK!COZY UP!」
≪過去≫
・「ザ・ボイス そこまで言うか」
・「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」
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