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2021.01.04

第55回のテーマは「統一国家“日本”と天皇の存在」

番組アシスタントの新保友映です!

明けましておめでとうございます。2021年最初の国土学の講義になりますが、きょうのテーマは、「統一国家“日本”と天皇の存在」です。

新保 日本には、いくつかの国に分裂していたという歴史はあるのでしょうか?

「中国の歴史書『魏志倭人伝』には、日本が小国に分裂していたが、女王(卑弥呼)が現れると統一できた。女王が亡くなるとまた国が乱れて、今度は男の王がついたが紛争が起こり、ふたたび女王にしたら国が治った、というようなことが書かれています。このように、日本はかつて小さな国に分裂していたけれども、ヤマト王権が覇を確立した以降の時代からは、小国に分裂して戦い合ったという歴史がないのです。このことは、日本よりかなり狭い国土のイギリスの正式名称が「グレートブリテン・北アイルランド連合王国」であり、ウェールズも、スコットランドも、アイルランドも、イングランドからの独立志向が強く、サッチャーさんが活躍していた時代ですら、アイルランドの IRAが活発なテロ活動を続けていたという事実と比べると、とても奇妙な感じがします」(大石)

新保 日本はいつ頃から統一国家なのでしょうか?

「西暦700年頃から、日本は地域分裂の争いは起きていません。これに比べて、たとえば朝鮮半島は、1400年頃に李氏朝鮮という統一国家になりますが、それまでは新羅、高句麗、百済に別れて戦争も繰り返していました。日本は細長くて統治的に一つにまとめるには難しい国土の形をしているのに、何故1000年を超える昔から統一を保ってくることができたのか、それはやはり天皇の存在が大きいのではないかと思うんです。一時期、天皇親政の時代がありましたが、すぐに藤原氏が政治をする時代に変わっていきました。そのきっかけとなっているのが藤原鎌足(中臣鎌足)の息子・藤原不比等(ふひと。「比べようがない」という名を持つ謎の多い人物)ではないかと思うのです」(大石)

新保 なぜ、藤原氏が力を持つようになったのでしょうか?

「この藤原氏が天下を取る時代になっていくわけですが、これは天皇の外戚(母方の親戚)になったからです。このパターンは平清盛も同じで、征夷大将軍の制度ができるまでは、そういう時代がずっと続いてきました。

 不比等は、天皇は国家統一の象徴的存在であり、そのためには天皇は五穀豊穣や国家安全の祈りなどの祭祀に特化して、世俗の政治から超越した存在でなければならず、それこそが諸々の権威の根源となるものだと考えたのではないかと思うんです。そして、その天皇の権威の由来が「万世一系」という思想ではないかと。これは、私のかなり大胆な仮説なのですが…」(大石)

新保 天皇の存在によって、統一国家を保つことができたということですね。

「西暦700年頃、わが国が“日本”だということを意識し始めた、その遥か前から一系の天皇がおられたということです。これに対して、今のイギリスの王家は1700年頃のジョージ1世(ドイツのハノーヴァー家出身)から始まっているのであり、これとは大きく異なっているのです。この天皇の存在を、若い人はあまり意識しないかもしれませんが、天皇がおられることで、この国にとって、いかに安定的なものにしてきたかということを、ぜひ理解していただきたいのです。」(大石)

この後も、大石さんが歴史を振り返りながら、「統一国家“日本”と天皇の存在」について、分かりやすくお話ししています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

今回のテーマは「顔見知り仲間パワーと駅伝」の話をしたい。私たち日本人は、縄文時代から約500人単位の共同体の中で、顔見知り仲間の小集落生活民として暮らしてきた。その仲間の中で、異なる個性や能力を活かして生きてきた。このことは、スポーツにも当てはめることができ、日本人はどちらかというと、個人競技よりも仲間で行うスポーツの方が好き。例えば、女子バドミントンのペアが活躍したり、陸上のリレーの成績が良いといったことがあるが、これを応援するのも大好き。中でも一番象徴的だと思うのが「駅伝」。日本人は駅伝が特に大好き。海外には駅伝というスポーツはないが、これは彼らが個人の努力が評価されないのは嫌いだから。これに対して、「私が区間賞を取る走りをしたからチームはシード権がとれた、来年も出られるぞ」と喜ぶのがわれわれ日本人流の発想。仲間に貢献できたことが日本人の至福感のもと。企業経営においても、京セラの「アメーバ経営」という仲間に責任を持たせる経営手法が良い例で、日本人は、一人の責任になると「私は責任を果たせるだろうか」と悩んでしまうが、複数の責任だと助け合いが起こり、力を発揮し、立派な仕事ができる。これは駅伝と同じだ。最近、アメリカ流の業績主義を持ち込んで、これが世界のスタンダードだということを平気で言う人がいるがこれは間違い。日本の経営者は、人間とは何か、日本人とは何かについて、誰よりも深い知識と造詣を持たなければならない。顔見知りの皆の役に立ちたいと思っている私たち日本人。これを大事にしたい。

*駅長さん登場!*

広島県三原市の道の駅「みはら 神明の里(しんめいのさと) 」中田耕治 駅長

国道2号(三原バイパス)沿いにあり、瀬戸内海の絶景が一望できる素晴らしいロケーションです。 海の幸、山の幸などの名物はもちろん、観光・歴史・文化など、三原の魅力を発信する重要拠点として頑張っている道の駅です。

Q.道の駅の看板に「だるま」が描かれていますが、これは?

「三原は室町時代から続く『神明市(しんめいいち)』という祭りがありまして、通称『ダルマ市』と呼ばれるほど、ダルマを売る露店がたくさん出ます。三原のダルマの特徴は、頭にねじり鉢巻、先が見通せるように最初から目が入っています。それから願いが成るように、ダルマを振るとコロコロと鳴ります」

Q.そのほかに名物は?

「三原といえばタコで、刺身に天ぷら、それからタコの卵を甘辛く炊いた珍味はお酒のアテに大人気です。レストランでは、タコ天丼、タコカレー、そしてタコの足が8本なので、限定8食の『タコ天カレー』は、タコの足を丸ごと一本天ぷらにした人気のカレーです」

Q.瀬戸内海が一望できるそうですが、どんな風景ですか?

「小高い位置に道の駅がありまして、そこから眺める青い海と、たくさんの島々と、それを結ぶ橋と天気の良い日は四国の山々が見渡すことができます。瀬戸内海はおだやかで大きな災害はありませんが、三年前、広島の豪雨災害で一ヶ月ほど、三原市は断水し、水洗トイレはもちろん、レストランが一ヶ月ほど、閉店になったという苦い思い出があります」

Q.どのような対策をされましたか?

「国交省に力を入れていただき、非常発電機と貯水槽を設置しましたので、これから地域活性化はもちろんですが、防災拠点として、国や市と協力しながら、防災訓練や情報発信をしていきたいと思っています」

道の駅「みはら 神明の里」
所在地:広島県三原市糸崎四丁目21番1号
電話:0848-63-8585
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅みはら神明の里ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。