道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.12.28

第54回のテーマは「日本神話の広域性と日本人」

番組アシスタントの新保友映です!

2020年最後の国土学の講義になりますが、きょうは、大石さんが「日本神話」の興味深いお話をします。

新保 日本神話と国土学、どんなお話でしょうか?

「この国はデフレが25年間も続いて、給与は伸びず、経済も成長せず、失政が続いてきたと言ってもいいと思います。その結果、若い人を中心に日本人は自信を失っているのではないか。そこで日本神話のことをもっと知って、日本人としての自信を取り戻そう、という話をしたいと思います」(大石)

新保 日本神話を知ると自信が得られる?

「日本人の自信のなさは、自国の歴史や文化についての理解を欠いていることも大きいのではないでしょうか。私たちはこういう民族なんだ、ということを知っておけば、世界各国の人々と付き合う時、自分の自信の裏付けになると思います。日本神話を歴史として教えるというのではなく、我々はこういう神話を持っていたんだということを教えるべきです」(大石)

新保 日本神話というのは、オリジナリティ溢れる物語が面白いですよね。

「日本文明は、国際政治学者のサミュエル・ハンチントンが“独立した一つの文明(世界八大文明の一つ)”と言ったように、中国文明の亜種ではありません。北方では北ユーラシアの森林文明の影響を受けているし、南方では点在する島々を経由してインドネシアやフィリピンからの影響を受けています。もちろん、朝鮮半島や中国大陸からの影響も受けています。その証拠が日本神話の中にあるんです。『因幡の白兎』や『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』の話は、東南アジアや南アジアにも分布しています。『天岩戸(あまのいわと)』の話も日本独特の日蝕神話と思われがちですが、アジアに広く分布しています。ヨモツ国を訪ねたイザナギがイザナミの死から逃げ帰ってくる時、いろいろなものを投げ捨てながら逃走してきますよね。この“ものを投げ捨てながら逃げる”という型の説話も世界に広く分布しているのです。追跡者をはばむ障害物が必ず3つであるのも共通で、その多くは“石と櫛と水”らしいのですが、日本の“櫛と黒髪と桃”というのは、中国の華南方面と共通しているといわれています」(大石)

新保 それで、日本神話は広域性があるということなんですね。

「日本神話から分かるように、非常に広域的な人々の交流の中から、私たち日本人の文明は生まれているわけです。いわば、文明の〝るつぼ〟と言ってもいい。そして、日本人は受容力が非常に高く、これは誇りとしていい特長なのです。
 異種と異種とがふれあうところで、文化は生まれます。東洋と西洋が出会ったへレニズム文化は、最も世界的規模の異種交流による文化誕生の典型であり、爆発的変化をもたらしました。繰り返しになりますが、日本文明は世界的な広がりを持った中から生まれたのであり、若い人たちはこれを自信として欲しいのです」(大石)

日本神話は絵本や児童書で読みやすい本もありますから、年末年始、読み返してみたいと思いました。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

今回のテーマは「法隆寺と平城京」。「法隆寺」は日本で一番古い建物で、聖徳太子と関係が深いお寺だ。法隆寺には昔から7つの謎があるといわれてきたが、これらについて説得力ある説明仮説を提出したのが哲学者の故・梅原猛氏である。謎の1つは「法隆寺の中門には門の真ん中に柱がある」というもので、わが国には数え切れないくらいの数の寺院があるが、人が出入りするためにつくられた門の真ん中に柱があるような寺院はこの法隆寺以外には1つも存在しない。写真家や建築家の中には、これを景観から説く向きもあるが、梅原氏は、聖徳太子の怨霊を封じ込めるために門の真ん中に柱を立てたという仮説を立てた。夢殿にある救世観音の光背の謎と併せて、詳しくは、梅原氏の著書『隠された十字架』にふれてほしい。

もう一つのテーマは「平城京」。歴史書には中国の都・長安を模して造ったとあるが、長安が不可欠としていた堅固な城壁が平城京にはない。その理由が歴史書には書かれておらず、〝歴史の穴〟になっている。長安の城壁は何十キロもあるのに門が三つしかない。夜になるとその門を閉める。それほど外敵の襲来を恐れていたということだ。今でいうインフラを、中国人は必要としたが、日本人は必要としなかったことで、私たちのインフラ感がいまだに歪んでいる。「道路を造りすぎている」「ダムは無駄だ」という人がいるが、ダムがないことで、球磨川が氾濫し、人の命が守れなかった。道路を整備しないことで、わが国の企業は海外企業との競争力を失っている。このことに我々日本人はなかなか気づくことができない。「長安には城壁があるが、平城京には城壁がない」ということを学べていないことは、世界の中で我々だけが違うのだということを学習するきっかけを失わせている。これも、きわめて大きな〝歴史の穴〟なのである。

*駅長さん登場!*

埼玉県秩父市の道の駅「龍勢会館(りゅうせいかいかん)」小林文雄さん

埼玉県秩父市吉田で開かれる「龍勢まつり」は、450年の歴史があり、代々伝承された手作りロケットが、龍のように、勢いよく打ち上がる、勇壮なお祭りです。こちらの道の駅では、実物の「龍勢」の展示をはじめ、大型モニターで、製造工程や、お祭りの様子、発射の瞬間など、いつでもお祭りの感動に出会えます。

Q.「龍勢まつり」は、毎年、いつ行われているんですか?

「10月の第二日曜日に行われています。今年は新型コロナの影響で中止となりました。この祭りは、もともと戦国時代の狼煙だったと言われています。それを地元の農民が改良し、五穀豊穣にと打ち上げたと言われていますが、定かではありません」

Q.この龍勢は、上空を何メートル、飛ぶんですか?

「三百メートルほど上がって、落下傘を開いて、龍勢を吊るし、その後、煙や花火を発火させて、フワフワと舞い降りてきます。朝から夕方まで、30本が打ち上がり、〝しょいもの〟と呼ばれる、傘などが開き、その優雅さを競っています」

Q.道の駅がある、旧・吉田町は、どんな地域ですか?

「この地域は、面積の90%近くが山林で、その中に集落が点在しています。そんな自然の中で、仲良く人々が暮らしています。過疎化も進んでいますが、龍勢まつりに関わる人は、昔と比べて若い世代が増えています。みんな〝秩父が大好きな人〟ばかりですよ」

Q.これから、どんな道の駅を目指していこうとお考えですか?

「気軽に入館していただきたい雰囲気をつくっていきたいですね。龍勢の話、地域の話、秩父の方言、名物の干し芋や干し柿、郷土料理も食べられますので、お客さんと、いろんな話ができる道の駅にしていきたいですね」

道の駅「龍勢会館」
所在地:埼玉県秩父市吉田久長32
電話:0494-78-0555
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅 龍勢会館 ホームページ

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  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。