道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

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2021.02.22

第61回のテーマは「リアリズムを失ってしまう日本人」

番組アシスタントの新保友映です!

いよいよ2月24日に大石さんの新刊『「国土学」が解き明かす日本の再興 ― 紛争死史観と災害死史観の視点から』(海竜社)が発売されます。是非お手に取って読んでみてください。

新保 さて、きょうは「リアリズムを失ってしまう日本人」についてのお話です。以前、「リアリズムを失うと国を失う」というお話を伺いました。

「かつて、田中角栄元総理は「戦争を知らない政治家ばかりの時代になると大変なことになる」と述べたことがありますが、今、この国を動かしているのは戦争を知らない政治家ばかり。その結果、かつてそうだったように、また日本人はリアリズムを失って、教条主義、スローガン主義に陥ってしまっています。その典型が財政破綻論。自国通貨を発行している国が財政破綻することはないというのにです」(大石)

新保 以前の日本人はリアリズムを持っていたんですか?

「明治初期の日本人は、本当に素晴らしいリアリズムを持っていました。例えば、学校教育制度をすぐに整えました。軍の制度も入れ、徴税制度も大改革しました。そして鉄道や通信網も全国にあっという間に整備しました。明治5年に新橋〜横浜を結び、そのわずか17年後に東京と神戸を、その2年後に青森まで結んでいます。東海道新幹線は、前の東京オリンピックの時に開通しましたが、それから46年かけて東北新幹線が新青森まで結ばれたのとは大違いです。なぜ、これほど鉄道の整備が早かったのかというと、国土を一体化し、国土全体が活力ある国にしないと、西欧列国の植民地主義にやられてしまう、この恐怖心があったからです。

当時、日本人が仰ぎ見る存在であった清国(中国)は、アヘン戦争で英国に負けて、香港を割譲され、多額の賠償金を支払わされていました。この状況をみて(植民地化の恐怖心から)、日本政府は近代的な国家にしないといけないと考え、極めて合理的な判断と合理的な順序でこの国を整備していったのです。

しかし、その後、日清戦争に勝ち、日露戦争に勝利した1905年頃から、日本人は急速にリアリズムを失っていきました。「満州は生命線だ(満州を失うと日本を失う)」というリアリズムを欠いた観念主義に翻弄されてしまったのです」(大石)

新保 戦後、日本人は再びリアリズムを持つようになったわけですか?

「日本の為政者が再びリアリズムを取り戻すのは戦後になってから。昭和20年〜30年代あたりの我が国がとってきた政策は見事なものでした。こんな小さな国がGDPでも世界シェアの18%を占める経済大国になりましたし、間違いなく国民も豊かになりました。ところが、その後リアリズムを失ってしまい、今日では、日本の賃金水準はG7の中で最低です。18%あったGDPの世界シェアは5%に落ち込みました。国民の平均世帯収入も1995年の660万円から550万円程度に減少してしまいました」

新保 なぜ、日本人はリアリズムを失ってしまったのでしょうか?

「戦前の場合は日露戦争に勝利したこと、あるいは日本海海戦で勝ちすぎたこと。これが日本人に誤った自信を植えつけてしまったと思うのです。戦後の場合は高度経済成長が日本人に自信を持たせたのはいいのですが、1995年に当時の“自社さ政権”が『財政危機宣言』を出し、これをきっかけとして、わが国が財政再建至上主義という観念主義にとらわれてしまったからです。わが国が坂道を転げ始めたのはこの時からであり、その後、未だに転げ続けています。

スイスIMDの競争力ランキングを見ると、これまで世界第1位など上位にあった日本はランクダウンを続けてきて2019年には30位と、韓国(28位)に抜き去られてしまいました。更に2020年のランキングでは、日本は34位と1年間で4つもランクダウンしたのに対して、韓国は23位と1年間で5つもランクアップしたのです。ところが、日本のメディアや政治はこの出来事について何も騒いでいません。全く鈍感になってしまいました」(大石)

新保 日本人がリアリズムを取り戻すには?

「この国は民主主義の国ですから、国民がやっぱりこれじゃイカンと思って行動に出ていただかないと、これは変わりません」(大石)

確かに、大石さんがおっしゃるように、今の日本人は自信を失いかけていますね。日本はすでに先進国ではない、というリアリズムを知る時期に来ているのかも知れません。大石さんのお話を、ぜひ、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、お聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

今回のテーマは仏教用語の「四苦八苦」。世の中には基本的な苦しみが四つあり、さらに付随する苦しみが、もう四つあって、それで「四苦八苦」となっている。まず四苦は「生・老・病・死(しょう・ろう・びょう・し)」のことで、宗教家のひろさちやさんは『生まれてくること、老いていくこと、病気になること、死んでいくことは苦しみだが、そこから逃れようとすることが苦しみである』と言っている。生まれてきたことがすでに苦しみであり、生まれたことを嘆いても始まらず、生きていくしかないのだ。四苦八苦の残りの4つの苦は、「愛別離苦(あいべつりく)=愛する者と別離することの苦しみ」、「求不得苦(ぐふとくく)=求める物が得られないことの苦しみ」、「怨憎会苦(おんぞうえく)=怨み憎んでいる者に会うことの苦しみ」、そして「五蘊盛苦(ごうんじょうく)=人間の心の動きや頭の動きが活発であることの苦しみ」。怨憎会苦は、一言で言えば、嫌いな者に会わなければならない苦しみのことで、人間とはそういう者に囲まれている存在なのだから、パワハラ上司やいじめっ子がいることも受け入れるしかない。また、五蘊盛苦は、例えば、精力が抑えきれず、夜眠れなくなるとか、要するに心や頭の働きは強過ぎても苦しみが多く、中庸が良いということではないか。四苦八苦は、全ての人間が持っている苦しみで、これから逃れようともがけばもがくほど苦しくなる。逆に、これを知っていれば、これらの苦を上手にこなしていくしかないということがわかる。これらの苦は、人である以上、避けることができず、ありのまま受容するしかないのだ。

*駅長さん登場!*

新潟県長岡市の道の駅「ながおか花火館」武士俣一樹駅長

道の駅「ながおか花火館」は関越自動車道・長岡インターチェンジを降りて、アクセスがいい国道8号沿いに、去年9月18日にオープンしました。「長岡花火」を音と映像で楽しめる「ドームシアター」をはじめ、12店舗からなるフードコートやレストラン、長岡の特産品販売コーナーなど、長岡の魅力を発信する観光・交流拠点施設になっています。

Q.全国的に知られている「長岡花火」ですが、去年は新型コロナの影響で中止になりました。そちらのドームシアターでは、いつでも映像を見ることができるそうですね。

「この道の駅のコンセプトが〝一年を通じて長岡花火が楽しめる〟です。ドームシアターは、360度、リクライニングシートで、長岡花火のコンテストを、大迫力の画面で見ることができます」

Q.長岡といえば、2004年、中越地震が起きましたが、こちらの道の駅は、防災拠点になっているんですか?

「中越地震の時は、一斉に停電し、道路が沈んだり、割れたり、大変な状況でしたね。そのようなことから、何か災害が起きたとき、皆さんの避難場所として集まっていただく場所と、団体の方たちが炊き出しとかいろんな活動を行う上で、施設を活用していただくように構えています」

Q.これからどんな道の駅を目指していきたいですか?

「観光の発信拠点になるように、この施設の魅力を最大に発揮し、長岡の皆さんに認知してもらうこと、それから全国の皆さんから、長岡に来たら、まずは『ながおか花火館』というような施設にしていきたいですね」

道の駅 ながおか花火館
所在地:新潟県長岡市喜多町707
電話:0258-86-7766
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅 ながおか花火館 ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )

    大石久和(おおいし ひさかず )

    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。