道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.12.07

第52回のテーマは「日本の科学技術研究の危機」

番組アシスタントの新保友映です!

今回は、「日本の科学技術研究の危機」というテーマを、大石さんが熱くお話しします。

新保 その危機とは、どれほどの危機なのでしょうか?

「天然資源にほとんど恵まれず、高度な科学技術を磨いていくしか生きていく方法のない国なのに、その日本の科学技術研究が、財政再建至上主義の影響を受けて危機的な状況にあるんです。2017年、イギリスの科学誌『ネイチャー』は、日本の科学技術研究に対して警告を出しています。「日本の科学研究成果の水準が低下し、他の科学先進国の後れを取っている。この低下傾向を逆転できなければ、世界の科学界でのエリートの座を追われる。政治主導の新たな取組が必要」と警告しているんです。最近では、日本語版ニューズウィークが10月20日付で、『科学後進国ニッポン〜科学大国の落日〜』という特集を載せました。今年はノーベル賞の日本人受賞者は出ませんでしたが、今後、こういうことが定着するのではないかと言われています」(大石)

新保 なぜ、このようなことになってしまったのでしょうか?

「その背景には、科学技術研究費がないために、若手研究者が非常に厳しい立場に立たされていることが挙げられます。国がお金を出さないので、競争的資金(民間企業)を得るために、その手続きに研究者がものすごく時間を取られています。また、若手の研究者が有期雇用になっていて、例えば5年間に成果を出したら、また引き続き5年間雇用する、といったような環境に置かれています」(大石)

新保 5年で成果を出すのは大変でしょうね。

「基礎研究の分野では、まず不可能です。iPS細胞の山中伸弥先生のところですら、40歳以下の若手の研究者の8割が、5年以下の有期雇用で研究しています。これでは落ち着いた研究などできるはずがありません」

新保 研究にも支障が出てしまうのでは?

「日本の研究者の研究論文不正問題が世界的に話題になっています。つまりデータをごまかして、それで論文を書いているんです。日本は、一番そんなことが起こらない国だと思っていましたが、アメリカの科学誌『サイエンス』が日本の論文不正を詳細に報告して日本の研究現場の体質を批判しています。『ネイチャー』も日本の論文不正を監視する制度的なものが足りないのではないか、とまで言っています」(大石)

新保 データを重視する研究者が、どうして不正をしてしまうんですか?

「一定数の論文数を確保しておかないと、その地位を失うということがあります。政府は『科学技術基本計画』を作っていて、第5期の計画(2016年度~)が今年度で終了します。この計画で、世界が注目する被引用論文の数などを目標に掲げましたが、被引用論文数が上位10%の注目論文数シェアで、日本は96~98年の平均で世界第4位だったものが、直近では第9位に沈んでいる状況なんです。こんな研究環境ですから、トップ級の研究者が、高額の給料を出すアメリカや中国へ出て行ってしまいます。これはなんとかしなければならないと思います」(大石)

このあと、大石さんが、国がもっとお金を出して研究環境を確保していかないと、日本は完全に〝周回遅れ〟の科学後進国になってしまうと忠告しています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

「文明と土木」という話をしたい。「文明」を英語で言うと「civilization(シビライゼイション)」。文明とは、人間が技術などを使って社会制度などを整備する、そして豊かになっていくこと、そういった全体が「文明」と言っていい。文明の発祥の地、ティグリス・ユーフラテス川下流のシュメールに都市国家があった。その遺跡を見ると、都市の周りを城壁で取り囲んでいる。その外に灌漑農業が行える畑を作っている。そこを王様が支配し、神殿が造られ、その後、文字が発明され、文明が生まれた。まさに「都市(人が集まるところ)は文明のゆりかご」であり、「農業は文明のゆりかご」であった。農業の灌漑設備も城壁も「土木」で造られた。「土木」という技術を人類が手に入れて、文明が生まれたのだ。それが証拠に、文明とは英語ではcivilizationだが、そのもとはcivil(市民の)という形容詞であり、これに工学の英語表記engineeringをつけるとcivil engineering、つまり土木工学(市民工学)となる。神戸大学では土木工学を「市民工学」と言っている。文明は「市民工学」から生まれたと、そういう目で土木や工学を見ていただきたい。

*駅長さん登場!*

秋田県湯沢市の道の駅おがち「小町の郷」佐藤光一駅長

福島市と秋田市を結ぶ、国道13号沿いにあり、秋田県の〝南玄関口〟に位置しています。所在地の湯沢市雄勝町(おがちまち)は、平安の歌人で、世界三大美女の一人、「小野小町」の生誕伝説でも知られていて、道の駅の建物も、小野小町の旅姿「市女笠(いちめがさ)」をモチーフにデザインされています。

Q.小野小町の生誕の地だとか?

「ここは小野小町が生まれたという伝承が多い地域で、毎年6月の第2日曜日、隣接する小町の郷公園で『小町まつり』。そして6月いっぱい、小野小町が愛した芍薬(しゃくやく)が満開の『芍薬まつり』が開催されます」

Q.レストランの人気メニューは?

「地元で採れた高級食材の『ぜんまい卵丼』は、地元のお母さんたちと道の駅が一緒に作り上げた新しいメニューです。お土産は『稲庭うどん』『いぶりがっこ』、そして、旧雄勝町は菅総理の出身地で、総理になった9月16日から〝菅総理おめでとうコーナー〟を設けて、Tシャツ、かりんとう、おせんべい、どら焼き、おまんじゅう、マスクなど、約20種類のお土産を扱っています」

Q.国道13号沿いに並行して、東北中央道が建設中ですが、整備状況は?

「道の駅の目の前に建設中で、5年後には山形に延びる予定です。うちの道の駅は山形との県境にありまして、雪崩のため、国道がストップしたこともあり、防災や流通のためにも高速道路の完成が待たれます。今後は、道の駅としては基本機能を充実させてながら、やりすぎでもなく足りなくもない好感の持てるサービス提供をモットーにして取り組んでいきたいと思っています」

道の駅おがち「小町の郷」
所在地:秋田県湯沢市小野字橋本90
電話:0183-52-5500
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅おがち「小町の郷」ホームページ

最新番組ブログ
パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )

    大石久和(おおいし ひさかず )

    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。