道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.11.30

第51回のテーマは「荒廃するアメリカに学ぶ」

番組アシスタントの新保友映です!

今回は、「荒廃するアメリカに学ぶ」というテーマで、大石さんが熱くお話しします。

新保 アメリカの荒廃とは、いつ頃のお話でしょうか?

「1980年代に入ったアメリカでは、ニューヨークの幹線道路が穴ボコだらけになったり、高速道路(インターステートハイウェイ)の橋が落ちる事件が相次ぎ、「廃墟の中のアメリカ(America in Ruins)」と呼ばれるほどの大きな社会問題となりました」(大石)

新保 なぜ、そんなアメリカになったのですか?

「道路橋などの構造物は、供用後50年が経つと従前以上に丁寧な点検が必要になります。80年代のアメリカはニューディール政策による新規投資の時代(1930年代)から50年が経過してインフラの更新時代を迎えていましたが、ベトナム戦争遂行のための軍費拡大の影響を受けて、インフラの老朽化に対処する維持修繕費の予算が十分に確保できていなかったのです」(大石)

新保 アメリカのインフラが回復するのはいつ頃ですか?

「アメリカのガソリン税は道路特定財源で、1ガロン(約4リットル)に4セント(約4円=現在の為替レート)の税金をかけていました。しかし、道路インフラの増大に伴うだけの予算を確保することが出来なくなっていたのです。これは、政府がなかなか大衆課税であるガソリン税を引き上げることができなかったからですが、1983年だったか、レーガン大統領の決断で、ガソリン税を2倍以上に上げました。そこからアメリカのインフラが回復していくようになります」(大石)

新保 では日本はどうなのでしょうか?

「日本も高度経済成長期にたくさんの橋をかけたり、トンネルを掘ったりしているんです。それがぼちぼち50年という〝年齢〟に達しようとしています。日本には72万の橋梁があって、その70%が市町村の管理で、10年後には、これらの橋の52%が50歳を迎えます。これをどのように次の世代に引き継ぐのか、大きな課題になっています」(大石)

新保 メンテナンスをしないと日常使うものなので怖いですね!

「十分管理できず、通行止めにしている橋も増えてきています。橋を通行止めにすると、必ずGDPが下がります。こういうことでは、日本は経済成長をしません」(大石)

新保 荒廃から抜け出したアメリカを、日本は学んでいるのでしょうか?

「十分に学べていないと私は思います。アメリカの道路インフラはメンテナンス費用を増やすことができなくて荒廃しましたが、日本はメンテナンス費用を減らしてきているんです。橋もトンネルも歳をとっているのに十分なケアをしていません。中央道の笹子トンネルで天井板が落ちて多くの方が亡くなるという悲しい事件が起きてしまいました。私は〝フェイルセーフ(もし失敗があっても安全)〟という考え方を導入すべきだと言いたい。もし天井板のボルトが外れても落下しないフェイルセーフ装置をつけるべきだと思っています」(大石)

このあと、大石さんが、インフラの老朽化に対応するために、予算はもちろん、技術者の育成など、日本がやるべきことは多いと熱くお話をしています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

今回は「グローバルとブルーシート」と題して話したい。「グローバル」とは一言でいうとアメリカの大企業が国境を越えて、さらに活躍しやすくするために生み出された言葉だ。GAFA(ガーファ=Google、Apple、Facebook、Amazonの略称)というグローバル企業が生まれているが、彼らは国境が邪魔で、彼らの活動を支える論理がグローバリズムだ。そもそも、自分を溶かし込んでしまえば国際化できるなどと言うことは幻想に過ぎない。日本人であることを越えて国際人になることはできないし、国際人になるためには、日本人であることを意識することが必要。従って、グローバルであればいい、という考え方は幻想であって、我々は迂闊にグローバルに乗ってはいけない。一方、「ブルーシート」というのは、日本では、悲惨な場面が映像に映りそうになると、かならずブルーシートが視聴者の目線を遮るのだが、本当に全部をブルーシートで覆ってしまってよいのか?直視しなくて良いのか?という問題意識を指している。2015年の難民危機の時に、クルド人の3歳の子供が遺体となってトルコの浜辺に打ち上げられた写真が世界を駆け巡ったことがあったが、日本語の新聞・雑誌でこの写真を大きく取り上げたのはニューズウィーク日本版のみであった。日本人だけがこの時、蚊帳の外にいた。悲惨な場面には目を背けてしまうことは、不都合なものは見ないことにする、嫌なことは起こらないと考えるということと共通する日本人の思考形態。本当にこれでいいのか?と、ブルーシートが出てくるたびに考えてみてほしい。

*駅長さん登場!*

北海道恵庭市の道と川の駅「花ロードえにわ」林義和駅長

札幌と新千歳空港の中間に位置する恵庭市は、「花のまち」として知られています。国道36号(恵庭バイパス)沿いにある「花ロードえにわ」は、2020年3月12日に、全面リニューアルして、「花のまち」にふさわしく、花々が来訪者を歓迎する道の駅です。

Q.「道と川の駅」、どうして、「川」が入っているんですか?

「花ロードえにわのすぐ近くに漁川(いざりがわ)が流れていて、秋口になると鮭が遡上することで有名な川なので、道と川の駅となりました。そして、恵庭市はガーデニングが盛んな街で、この道の駅の隣にある『恵み野地区』はガーデニングが盛んで、きれいな花の町なので、それで『花ロード』と名前になりました」

Q.3月のリニューアルで、どのように変わりましたか?

「内部が大幅に変わりまして、テーマが、アウトドア! イートインコーナーにテントやカヌーを飾り、テントの中で食事ができるようにもなっています。人気のカレーは、アウトドアで使うスキレット鍋を使って提供しています。恵庭名産のかぼちゃを使った美味しいカレーです」

Q.恵庭バイパス(国道36号)はどんな道路ですか?

「札幌、新千歳空港、苫小牧、室蘭を通る道で、交通量が多く北海道の大動脈と言ってよく、トラックがかなり走っていますね」

Q.リニューアルして、どんな道の駅に再出発していきたいですか?

「地域の防災なども積極的に取り組んでいまして、今回リニューアルとともに、防災倉庫を改めたり、緊急用に耐震性の貯水槽を設けたりしていますので、地域の皆さんも気軽に利用できるような道の駅にしていきたいと思っています」

道と川の駅「花ロードえにわ」
所在地:北海道恵庭市南島松817番地18
電話:0123−37−8787
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道と川の駅 花ロードえにわ ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。