道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.11.02

第47回のテーマは「日本人と小選挙区制」

番組アシスタントの新保友映です!

今回は、衆議院議員の任期があと1年になりましたから、いつ解散か、という雰囲気の中、「日本人と小選挙区制」について、大石さんが熱くお話しします。

新保 日本で小選挙区制が始まったのはいつからでしょうか?

「小選挙区制を導入したのは、25年ほど前で、1994年に選挙制度が改正され、1996年に第一回の小選挙区制に基づく衆議院選挙が行われました。果たして、この選挙制度は私たちの国に馴染んだのだろうか?というと、違うような気がしてならないんです」(大石)

新保 小選挙区制と中選挙区制、どう違いがあるのでしょうか?

「かつて中選挙区制は一番多い選挙区だと5人区がありました。5人区ですと、政権を維持する政党は3人を当選させないといけない。それぞれの候補者が特徴を出さないと3人は当選できません。結果、彼らは他の候補者との違いを表す拠り所として、専門的知識(農業、インフラ、教育、福祉)を磨いてきました。〝族議員〟と悪く言われていましたが、いわゆる専門議員でもあったんです。ですから、省庁の職員も必死に勉強したわけで、政と官の間に知的な緊張が生まれていました」(大石)

新保 小選挙区制での議員はどうなんですか?

「小選挙区になって専門性のある議員が育たなくなりました。農業も、インフラも、教育も、福祉も、すべてが分かる議員なんて無理なんですが、今の選挙制度はそれを要求する制度になっているように思えます。野党も、与党の要求に対して反対しないと票にならないから「反対だ、反対だ」と言い続け、議論が深まっていきません」(大石)

新保 小選挙区制は日本には向いていない選挙制度なんですか?

「日本人は1対1のギリギリとした戦いは好きではないんです。もともと〝和〟を好む国ですし、チームで仕事をしてきた国です。ですから、中選挙区制は、勝ち負けをはっきりつけたくないという日本人の感覚に合っていたのです。ところが世界中の国は、ほとんどが小選挙区制でしたから、選挙制度に詳しい政治学の先生方からは、わが国の中選挙区制はおかしいと指摘され、小選挙区制に変わっていきました。ところが、イギリスの小選挙区制と比べると面白いことが分かります。〝鉄の女〟と呼ばれたサッチャーさんは、大学では化学を学びながら、イギリスの経済や財政に関心を持ち、在学中から政治家志向があり、卒業後すぐに保守党で政治家を目指します。しかし自分とは関係もない選挙区、それも労働党に勝ったことがない選挙区を与えられ、何度も負けているんです。その後、保守党の支持者が多い選挙区を与えられますが、保守党から出馬を希望する者が150人もいて、その中を勝ち抜かないと立候補できませんでした」(大石)

新保 強い意志がないと立候補もできないんですね!

「彼女は、ディスカッションやディベート、面接などを受けて、いかに論理的に主張することができるか、そんなテストを受けて、勝ち残り、やっと保守党の候補者になっていくんです。この政党による候補者選びは、オープンなプロセスとなっています。これに対し、わが国では、党による候補者選びのプロセスが明らかにされていません。また、中選挙区制がもっていた「選挙民による政治家の世代交代」という機能を喪失してしまったことや、選挙のたびに風が吹いて「チルドレン」が生まれてしまうといったことも、小選挙区制の弊害です。小選挙区制になって日本の政治家はどれほど育っているのか、これは国家の根幹ですから、小選挙区制についてもっと議論をすべきだと思います」(大石)

このあとも大石さんが、「日本の小選挙区制の問題点」について熱く語っています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

前回、「戦争を知らない政治家ばかりの時代になると大変なことになる」という田中角栄の話を紹介した。戦争を知っている政治家はリアリズムを失うと国を失うということを肌で知っていた。中曽根康弘氏も竹下登氏も戦争を知る政治家だ。橋本龍太郎氏は戦争のことはほとんど記憶にないはず。小泉純一郎氏になると戦争を全く知らない。こういう戦争を知らない世代の政治家が新自由主義経済学を信じ込んでしまった。新自由主義経済学は、「小さな政府、規制緩和、自由化、民営化」を目指して、デフレ下でも歳出削減を進めた。これが財政再建論に集約されている。この結果、国民の貧困化が進み、労働者の非正規雇用化が進み、結婚できない所得層が生まれ、子供の数が減り、生活保護が急増し、働かざるを得ない主婦が増えている。これは政治が目指す方向では絶対にないはず。政治は国民を豊かにするために存在している。にもかかわらず、新自由主義の観念論から抜け切れていないのはなぜか。いま日本はリアリズムを失っている。何がリアルなのか、事実に理解を深め、「おかしい」と思ったら「おかしい!」という声を上げるべきで、我々は何が事実であるのか、もっと関心を持つべきである。

*「駅長さん登場!」*

香川県小豆島町の道の駅「小豆島オリーブ公園」営業推進部部長の佐伯哲さん

瀬戸内海を見下ろす小高い丘に広がる園内には、2000本のオリーブの木と、130種類のハーブが栽培されていて、地中海ムード満点の「オリーブ記念館」や「ギリシャ風車」、天然温泉、宿泊施設もあります。また、実写版「魔女の宅急便」のロケ地で、〝インスタ映え〟する写真が撮れることでも人気がある道の駅です。

Q.ほうきにまたがって写真を撮る観光客が多いとか?

「無料で貸し出しをしているほうきにまたがって、ジャンプした姿を、スマホで連写すると、誰でも空を飛んでいるような写真が撮れるんですよ」

Q.海が見下ろせて、白い風車もあって、まるでエーゲ海の島にいるようですね?

「小豆島はギリシャのミロス島と姉妹島を結んでいます。オリーブ公園では、一年を通じで、オリーブの収穫体験やオリーブとハーブに触れることができるイベントを開催しています。オリーブ公園産のオリーブオイルを使用した料理や、オリーブの粉末を混ぜて、エキストラバージンオリーブオイルをかけたソフトクリームが一番人気になっています」

Q.温暖で雨も少ない瀬戸内海ですが、災害が起こったことは?

「近年大きな災害はありませんが、昭和49年と51年には、6日間で1400ミリの豪雨に遭って、土砂崩れなどの甚大な被害を受けた経験があります。道の駅も地域の防災機能の役割も求められていますので、サンオリーブという施設はいま地域の避難場所として指定されています」

Q.これからどんな道の駅を目指しますか?

「コロナ禍で小豆島も大変厳しい状態にあります。当駅は観光地として小豆島の吸引力を高める役割を持っていると考えていますので、12月からは小豆島全体で、復路のフェリー代金が無料になるキャンペーン等も開催しています。GOTOトラベルもありますので、ぜひこの機会に日本のオリーブ発祥の地、小豆島に東京方面からもお越しいただきたいですね」

道の駅「小豆島オリーブ公園」
所在地:香川県小豆郡小豆島町西村甲1941-1
電話:0879-82-2200
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅小豆島オリーブ公園ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。