道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.10.26

第46回のテーマは「日本語の危機」

番組アシスタントの新保友映です!

今週は、日本人の自信の喪失が日本語の乱れにつながっているという話を、大石さんが熱くお話しします。

新保 どんなところに大石さんは、日本語の乱れを感じますか?

「特にカタカナ語の氾濫ですね。政府や各省庁、政治家が安易にカタカナ語を使い、わかったような雰囲気になっていることが問題です。新型コロナで、『クラスター』『オーバーシュート』『ロックダウン』など、カタカナ語が乱れ飛びました。また、2001年の『e-Japan(イージャパン)』。なぜ日本人が日本の政策をやるのにアルファベットで表記しなければならないのでしょうか。国土交通省の『水害リスクライン』もどんな意味かすぐにわかりませんし、文科省の『スーパープロフェッショナルハイスクール』や『EdTech(エドテック)』に至っては・・・。エドテックは、江戸時代の技術かと思ってしまいました」(大石)

新保 気がつけば「GoToトラベル」もそうですね!

「九州大学の施 光恒(せ てるひさ)教授が『英語化は愚民化』という本を出していますが、彼は、例えば、『ヘイトスピーチ』という言葉を法務省がそのまま使っていることが問題だと言っています。ヘイトスピーチを『国籍や人種に基づく不当な差別発言』と表現することで、「何が不当なのか」「公正な環境を作るためにはどうすればいいのか」といった問いかけが自動的に浮かんでくるはずなのに、ヘイトスピーチという言葉で片付けているうちは、そういう連想が働かない・・・、と言っています」(大石)

新保 カタカナ語は使いやすいですが、奥深さがないんですね!

「言語社会学者の鈴木孝夫先生は、日本語は知識格差ができない言語だと言っています。音読みと訓読みが漢字にあって、漢字にひらがなとカタカナが混じっている、これは素晴らしい表記方法です。たとえば、漢字で『猿人』と書くと、日本人なら誰でもがイメージできます。これを英語で書くと『pithecanthrope(ピテカントロープ)』といって、この単語を知っていないと猿人とはわからない。名門エール大学で、『pithecanthrope』という単語を見せて、どんな意味かわかった人は誰もいなかったそうです。単語を知っている知識階層と、知らない階層に分断されてしまっているんです」(大石)

新保 言われてみると日本語って素晴らしい言語なんですね!

「明治時代から日本語をやめて英語にしたほうがいいと、何回も議論が起きましたが、言語を捨てるということは日本人が日本人であることを捨てるということなのです。日本語を失うということは、日本人の発想を失う、日本人の優しい心を失うのと同じことなのです」(大石)

新保 なぜ日本人はカタカナ語に傾倒しているのでしょうか?

「結局のところ、日本人が自信を喪失しているからだと思います。1995年に財政危機宣言が出て、この年、日本経済はアメリカ経済の7割のレベルまで来ていました。それがズルズルと落ちてきて、世界全体の18%のGDPがあった国が、いまは5%。そして所得もどんどん下がり続けています。リーマンショック以降、賃金が全く上がっていない国は世界の中で日本だけです。この原因は財政再建至上主義です。民間がお金を使わない時なのに、政府もお金を使わない。財政赤字が大変だからと言っています。赤字を減らしていけと、メディアも、政治家も、みんなその流れに乗って、科学技術すら世界から大きく劣後し始めているんです。これで日本人に自信を持てとはいえません」(大石)

このあとも、日本人が自信を取り戻すために、大石さんが熱く語っています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

10月26日は「原子力の日」ということで日本の原子力発電について話したい。日本では観念論ばかりが飛び交っていて、「原子力発電は良くない」「危険だ」「日本から無くすべきだ」という声が主流になっている。原子力発電なしでやっていけるのかを考えて欲しい。田中角栄が「戦争を知らない政治家ばかりの時代になると大変なことになる」と述べたことがある。戦争を知っている政治家はリアリズムを失うと国を失うということを肌で知っていた。アメリカとの戦争はリアリズムで考えると勝てるはずがなかった。それと同じことが起こりつつある。原子力発電への観念論がその典型だ。地球温暖化が気象異常を生み出す現在、二酸化炭素を排出しない原発にはもう少し真摯に向き合う必要があるのではないか。

具体的には、

・2020年8月31日の日本経済新聞は「中国原発、稼働世界一へ」と見出しをつけた世界の原発事情を紹介している。それによると、運転中の原発はアメリカが9800万キロワット、フランスが6200万キロワット、中国4500万キロワットであるが、中国はいま11基が建設中で、40基以上の建設計画があり、やがてアメリカを越えるだろうとの見通しだという。

・中国の原子力技術の向上、原発輸出の拡大を危惧し、アメリカは2020年の7月には「原子力エネルギーリーダーシップ法」を成立させた。発電量の80%以上を化石燃料に依存している日本は大丈夫か?(日本の原発発電量は631万キロワット)

・さらに注目すべきは、中国の原発は強力な偏西風の日本の直上流で運転され、また建設されようとしていることである。万が一の事故の場合に放射能を含んだ風は、中国本土よりも日本の方に多く流れてくることを考えておかなければならないのだ。

*駅長さん登場!*

千葉県鋸南町の道の駅「保田小学校」大塚克也 校長(駅長)

富津館山道路の鋸南保田インターを降りて、信号を左折し、すぐのところにある道の駅「保田小学校」は、廃校となった小学校をリノベーションして2015年にオープンしました。二宮金次郎像や国旗掲揚塔などがそのまま活用されているほか、理科室を活用したレストランや、教室が宿泊施設にもなっています。

Q.なぜ、小学校を道の駅に?

「全国的に廃校がクローズアップされています。統計では年間4〜500校が廃校になっています。さらに使用されていない学校は1,600校と言われています。ここ保田小学校も2014年に廃校になりましたが、インターの近くにあり、アクアラインを使えば都心からも近く、ロケーションがいいので、何か利用方法があると思い、都市と町民の交流の場として、道の駅になりました」

Q.コンセプトがあるそうですね!

「学校の備品は捨てない、これがコンセプトです。机、跳び箱、ビーカーなど、すべて残しています。さらに学校を再現していて、8時45分からラジオ体操をして、9時から校歌斉唱、校旗掲揚をして、そして学校(道の駅)が開校(開店)します。12時から給食タイムで、17時に閉校しているので、校旗を下ろして、1日が終わるというように学校を再現しています。給食はアルミのお盆に容器、先割れスプーンで食べます」

Q.南房総は、昨年の台風で大変な被害が出たのでは?

「鋸南町は甚大な被害を受けました。道の駅は3.11以後、有事の時の避難場所となっています。それに備えて、非常電源、太陽光発電、地域住民にお風呂の提供、暖かいカップ麺や飲み物を出して、心のケアをしてきました」

Q.これからどんな道の駅を目指しますか?

「鋸南町は、農業と水産業しかなくて、人口も8,000人あまりでしたが、台風の影響で、さらに人口が減っています。保田小学校の役割として、人口の流入を目指して移住定住促進です。移り住んでもらうことがこれからの目標です」

道の駅「保田小学校」
所在地:千葉県安房郡鋸南町保田724
電話:0470-29-5530
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅保田小学校ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。