道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.10.05

第44回のテーマは「世界の外側にいる日本人」

番組アシスタントの新保友映です!

今週は、宗教のお話から国土学へとお話が展開していきます。外国の方は日曜日に礼拝に行って信仰が厚いですよね。一方、日本人は、お正月にお寺や神社へ参拝し、ハロウィンやクリスマスを楽しみ、結婚式を教会で挙げたり、困ったときの神頼みだったり、どうしてそのようになったのか、大石さんが熱くお話しします。

新保 今回のコロナ対策でも、日本と海外では大きな違いがありましたね!

「我が国は自粛を要請しました。自粛というのは自らが判断するもので要請されるものではありません。自粛を破って街に出ても罰せられることもありませんが、多くの国では外出規制を破ると罰則が付いていました。自粛を要請する日本と、厳しい罰則や罰金を取る他国との違いは何なのか、これは全員がルールを守らないと全員の死につながる、その経験をしてきたかどうかの違いだと私は考えています」(大石)

新保 これも国土の違いから生まれてくるんですか?

「我が国では自然災害によって多くの人々が亡くなるという経験をもとに、人の死を受け入れてきましたが(自然災害死史観)、ユーラシアの国々では紛争によって多くの人々が亡くなるという経験が繰り返されたので、紛争死で世の中を見るようになったのです(紛争死史観)。ルールを守らないと全員が死んでしまう、従って強制的に守らせる、ということになったのです」(大石)

新保 多くの人にルールを守らせるというのは大変では?

「これは私の仮説ですが、それを可能とするために彼らは『一神教』というものを受け入れたのではないかと思うのです。その一神教は、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教です。この三つの宗教は共通聖典として旧約聖書を持ち、ほぼ世界を覆っていると言ってもいいかもしれません。非常に強い縛りを持った宗教です」(大石)

新保 一神教と多神教で、国民の違いが出てくるのでしょうか?

「民族の経験の違いが、一神教か多神教かを選択させたと思います。紛争を経験してきた民族は、敵と戦うとき、軍団が一つにまとまらないと勝てません。それを束ねるために受け入れた宗教が一神教です。神が人々に厳しく命じる一神教を信じることで、ユーラシアの人々は生き延びることができたわけです。我々日本人は一神教を必要とはしませんでした。いつ起こるかわからない自然災害だったので、敵の攻撃をみんなで守らないと、みんなの命を失うという経験をしていません。ユーラシア人は、そのような経験を何度も繰り返してきたんです」(大石)

新保 一神教と多神教、どっちがいいかというお話ではないんですね。

「誤解のないように言っておきますが、民族の経験が、一神教か多神教か、それを選択させているわけで、どっちが優れているとか、どっちが優秀とか、どっちがより好ましいとかそういう話をしているわけではありません、そういうものに頼らざるをえない人々と、そうではなかった我々…、日本人は違う者に頼る事になります」(大石)

このあとも、大石さんが、「日本人はなぜ世界の外側にいるのか」について興味深くお話しています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のすっきり納得!経済教室*

 今回は『経済学者の署名運動』について考えてみたい。東日本大震災が発生したその2ヶ月後、日本の経済学者が日本経済新聞に復興増税を提案した。本来であれば政府が大型国債を発行して人々を救済し、いち早く復興すべきだと言うのが、経済学者の仕事ではないか。復興費用は国債で十分なのに増税すべきと言ったこの学者の提案が元となり、増税をすることになった。いまでも我々は所得税から復興特別税を支払っているのだ。きっかけは伊藤隆敏東大教授と伊藤元重東大教授が主導した学者有志の提言ということになっているが、なんと全国の110名を超える学者が提言内容に同意し参加している。これはどう見ても署名運動と言わざるを得ない。そもそも署名運動とは、力のない人々が、自分たちでは実現できないので、多くの声を集めてそれを実現しようとすることだ。それなのに非常に力のある東京大学の経済学者が署名運動を行うというのはどう考えてもおかしい。どの分野であれ、大学教授などの研究者はそれぞれが独立して存在しており、その独立性が研究の「独自性と全体としての多様性」を確保する原動力になっている。とりわけ、経済というのは極めて多くの考えや見方があり、1つの仮説・学説にはまとめきれないもの。反対意見を言わせない経済学者の署名運動は、非常に危険なことだと思う。

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。