道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

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2020.08.24

第40回のテーマは「なぜ日本人は権力を嫌うのか?」

今週は、新保アナウンサーさんが体調不良のため、私、ニッポン放送・東島衣里が、アシスタントを務めさせていただきました。

初めての「国土学」にちょっと緊張しましたが、あらゆるジャンルに関わる学問ということで、大石さんのお話を興味深くうかがうことができました。

さて、今週のテーマは、「なぜ日本人は権力を嫌うのか?」。権力が好きだという人はそういないと思うんですが、大石さんのお話を伺って、(なるほど!)と納得の連続でした。

東島 「なぜ日本人は権力を嫌うのか」というテーマですが、外国人は違うのでしょうか?

「今回のコロナ騒ぎで、日本では外出規制をするのに、自粛を要請しています。一方、ヨーロッパでは、大変厳しい罰則付きの外出規制が実施されています。ある国では、守られなければ罰金5000万円か禁固6ヶ月という罰則が課せられるようです。日本では考えられません。日本人は、そのような権力の発動は大嫌いで、受け入れません」(大石)

東島 どうして日本とヨーロッパでは「権力」に対する考えが違うんですか?

「これも国土学なんです。我々日本人は小集落民で、江戸時代の村の数は6万4,000村といわれています。一村当たりの人口はせいぜい400から500人ほど。全員が顔見知りで、みんなで力を合わせて村を維持していました。その中で、気まずい思いをすることは、絶対のタブーでした。ですから、村の決め事は、全員で話し合って決めていました」(大石)

東島 小さな村の中は、権力者が支配せず、村人の話し合いで決めていたんですね。

「日本の国土は、その地形から、孤立した村落が多く存在していました。私が建設省時代、兵庫県豊岡市の事務所に勤務していた時、国道9号(京都市と下関市を結ぶ国道)の兵庫県下にある難所『春来峠』のトンネルが完成しました。その時、地元の人が『この峠の両側では今でも言葉が微妙に違う』と教えてくれました。昭和50年の話ですが、ほとんど交流がない集落が各地に存在していたんです」(大石)

東島 江戸時代ではなく、昭和の時代にもそういう集落があったんですね。

「日本人は絶対的権力を知らないし、求めない国民でした。ヨーロッパには、絶対的権力を有する支配者の存在があり、彼らは権力集中を民衆にわかりやすく示すための普遍的な宝物を持っていました。イスタンブールのトプカプ宮殿の宝石などが代表です。一方、日本においては「権力」は脇役でした。つつましい暮らしをしながら貧窮化していった徳川将軍家がその代表ではないでしょうか。」(大石)

東島 ヨーロッパの民衆は、絶対権力に服従しなければ、生きていけなかったわけですね。

「童話でも、ヨーロッパでは、一人の英雄が、竜を退治して、お姫様と結婚して末長く幸せになったという話が多く、日本の童話は、村のみんなが幸せになる物語が多いんです。」(大石)

東島 いまの日本は、外国の考えを受け入れるべきなのでしょうか?

「今回、新型コロナ対策で、日本は自粛を要請しましたが、外国のように強制的に規制しないといけない、というのは短絡的な考えだと思っています。コロナに対して、世界とやり方が違いますが、要はコロナにどう立ち向かうのか、日本は日本流で立ち向かえばいいと、私は思います」(大石)

今回は、私・東島にとって初めての国土学でしたが、いままでになかった新しい視点を持つことができました。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )

    大石久和(おおいし ひさかず )

    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。