道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.07.20

第36回のテーマは「令和2年7月豪雨災害」

番組アシスタントの新保友映です!

7月、九州を中心に日本各地で大変な豪雨被害が出ました。きょうは、大石さんに「令和2年7月豪雨災害」についての話をしていただきます。

新保 今回の豪雨被害、大石さんはどう思われますか?

「今回に限らず、去年の東日本台風、一昨年は西日本豪雨、三年前が九州北部豪雨というように、毎年大変な豪雨が被害を及ぼし、多くの方々の命を奪っている、この状況が残念で仕方がありません。行政の対応には限界があり、いかに避難するか、そういう方向に話をしたがる人がいますが、決してそれだけではないと思うんです。最近の災害で高齢者の逃げ遅れが問題になっていますが、日本では助けなければ助からない人が増えています。こうした現状を鑑みれば、もちろんいかに避難するかも大事ですが、いかに被害が無いようにするか、いかに避難しなくてもいいようにするか、という議論が行われなくてはなりません」(大石)

新保 なぜそのような対策が進められていないのでしょうか。

「財政が厳しいから、財政破綻の危険があるから、といったことが多くの人に刷り込まれていて、そこから議論が始まっていることに問題があると思います。政府は国民の最大の保険機関であり、最終の保険機関です。その政府が日本人の命を救わなくてどうするんだ、というのが私の気持ちです。今回いくつもの橋梁が流されたことで、かなり長い間、経済にも人々の暮らしにも悪影響が及ぶことになると思います」(大石)

新保 以前、徳川家康が、利根川や荒川の流れを変えて、治水事業を成し遂げたというお話を伺いました。

「徳川家康だけではなく、この時代、全国の大名が、それぞれの藩の領域にある河川に手を入れています。中でも加藤清正は、熊本(肥後熊本藩)の大きな河川のほとんどについて、改修を手掛けています。今回の球磨川流域も昔からいろいろ手が入れられてきました。むしろ、現在の方が、現在の技術力に比べて、十分なことが行われたか、ということを考えてもいい、そんな気がします」(大石)

新保 川辺川ダムに関する熊本県知事の発言は、どう思われましたか?

「知事になられた当時は、〝脱ダムブーム〟といった時代でした。投票によって選ばれる知事ですから、そういった流れに反することはできない、ということがあったと思います。しかし長い間、熊本県政を行ってこられたのですから、球磨川の治水について、もう少し研究を深めていただきたかったという感じがします」(大石)

新保 これからも起こる豪雨被害を、どうしたらいいでしょうか?

「人間の存続と治水の問題は、東アジアのモンスーン地域に住むわれわれにとって避けられない必然のテーマです。また、30年前に比べて、雨の降り方、降水量が倍増しています。一方、治水のインフラを整備する予算は、この30年間、日本だけが半減しています。アメリカもイギリスもほぼ倍増です。どこの国もそうです。日本だけが財政が厳しいからという理由で、治水インフラを半減して、人の命を失っています。新型コロナウィルスへの対応では、日本のIT技術の遅れが顕在化してしまいましたが、この分野(治水インフラ整備)でも残念な姿を世界に晒してしまいました。世界の人々は、「日本よ、しっかりしろ!」と言っているように思います」(大石)

今回は、大石さんが、いまこそ治水インフラの整備に力を入れるべきだと、熱く語っています。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のすっきり納得!経済教室*

 今回は『日本の競争力が大変な勢いで落ちている』という残念な話です。スイスのビジネススクール「IMD」が、毎年「世界競争力ランキング」を発表しています。1996年頃まで、日本は1位〜3位の間にいましたが、それ以降、日本の順位は落ち続けて、昨年は30位となり、韓国(28位)に初めて抜かれました。今年のランキングでは、日本はさらに34位に転落。韓国は23位にランクアップ。私は声を大にして言いたいのは、日本の政治がこの発表に対して、ほとんど反応がなく、反省もなく、議論がまるでないことです。私たちがこの30年でやってきたことを重点的に検証しないといけないと思います。

 教育費の公的負担も、OECD(経済協力開発機構)の中で日本が最低です。博士号の取得者が、この10年間減り続けているのは、先進国の中でも日本だけです。博士号を取ったら高い給料が取れないことになっているんです。こんな馬鹿なことになっているのも、世界で日本だけなんです。日本の若い人たちが力を発揮できない環境が生まれていて、それも「世界競争力ランキング」の34位に現れていると思うのです。

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。