小説家の凪良ゆう さんが登場。
今年、2度目の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんに
受賞作の『汝、星のごとく』(講談社)、
そして、その続編である最新作『星を編む』(講談社)について
成り立ちや、作品に込められた思いなど伺いました。
最新作『星を編む』(講談社) コチラ
2度目の本屋大賞の受賞
今年、『汝、星のごとく』(講談社)で2度目の本屋大賞を受賞。
受賞の一報を聞いた時、びっくりして言葉がでないまま涙がでてきた。
今までに2度受賞しているのは恩田陸さんだけだったので、
自分と恩田陸さんを一緒に考えることができず、
ノミネートしていただけただけでありがたいと思っていたので
驚きすぎて声が出なかった。
本屋大賞は、リアルタイムで本を読まれる方に
一番近い書店員の方々たちが選ぶ賞なので、
書き手としては嬉しい賞。
『汝、星のごとく』の続編となる『星を編む』を講談社から刊行。
前作『汝、星のごとく』の重要人物の一人、主人公の高校時代の先生である
北原先生の過去を書いた「春に翔ぶ」という一遍がある。
本編は暁海と櫂の物語なのでこの話をいれると、
物語として余分のものになってしまう。
しかし、読者はどうして北原先生がこのような人なのかと思うのではないかと、
前作で書かれていたなかったその謎めいた過去を今回書いた。
一冊の小説の中でも、設定としては様々なバックボーンを考えている。
どういった過去があって、こういう人物になったのかということを
積み重ねていかないと人物は書けない。
小説の中に出ているところは氷山の一角のようなところがある。
今作で、普段は外に出さない海面の下に隠れているところを
書けたのが嬉しかった。
『汝、星のごとく』
『汝、星のごとく』は暁海と櫂の純粋な恋愛小説。
若い頃、自分が好きだった作家が
とても素敵な恋愛小説を書かれていて憧れていた。
自分が作家になった時、憧れもあり、
恋愛小説に一度挑戦してみたいという気持ちがあった。
主人公の幼い頃からの15年が書かれている
最初考えていた時は、もっと恋愛に偏るかと思ったが、
人生15年の中、人は恋愛だけして生きてるわけではなく、
特に高校生から30歳過ぎまでは、様々な変化がある時期なので、
恋愛だけでなく、人生模様がどうしてもはいってしまう結果になった。
“誰かを比較をしない、正しくなくてもいい自分の人生を生きればいい、
人に依存しなくてもいい、利用してもいい、頼らなくてもいい”
この自立ということが作品の根底に流れている。
女性が経済的に自立するということは、
自由に生きていく上で外せない要素のひとつなので、
ヒロインの暁海を通じて強く書いたところである。
リアルではちょっとどうなの?という関係だと思う。
書くのに勇気が必要だった。
デリケートな部分でもあり、読者からどんな反応があるのか、
嫌われるかもしれないと思ったが、
自分が書きたいところだったので、どんな反応が返ってきても受け止める。
言葉と文章
自分はいつも人物になりきって書いている。
人物が変わると同じ内容のことを言っていても
言葉は変わる。
生まれていくる言葉、文章については、
たまに、後から読み返して、自分がよくこんなことを書いたなと
思うこともある。
自分が書いているので、
自分のどこかに眠っていた言葉だとは思うが、
どういう作用で小説の中に浮かび上がっていくのか、
そのシステムはわからない。
これが言語化できる作家がいるだろうか。
凪良さんにとっての書店
小さいころから結構さびしい境遇だったので、
物語というのは、全然別の世界に連れて行ってくれる
一番身近な手段だった。
子どもの頃から本屋さんが好きだった。
家に帰っても家族がいなかったので、
淋しくなると、人恋しくなると近所の本屋さんに行っていた。
本屋さんが近くにあって本当によかった。幸せだった。
本屋大賞を受賞し、書店を訪れる機会も多いが、
今本を読まれる方に一番近い書店の方と、
話ができるというのは嬉しいし、刺激にある。
また、どの書店に行っても、
ベストセラーは当たり前に展開されているが、
書店員の方の好みによって、展開されている本が違う。
それが興味深い。
今は個性的な本屋さんも多く、
一店舗一店舗違うので面白い。
書店員の方が独自に作られている棚は、
書店員の方の好みや書店の個性が出ていて面白い。
『星を編む』
2023年11月『星を編む』を講談社から刊行。
『汝、星のごとく』と『星を編む』はあらすじだけをかいつまむと、
両方ともありふれた話。
なので、どうやって読んでいただくかということでは、
人物一人一人のリアルさや、2人の息遣いを
どこまで感じてもらえるかが勝負だと思っていたので、
リアルさということに気を付けて書いた。
最初は、こんな変哲もない話を
誰が楽しんで読んでくれるだろうかと怖かった。
もっとミステリーチックな設定のような読者の方が
楽しんでくれるような設定も考えていたが、
最終的に担当編集者の方と相談し、
この話は余計な仕掛けをする話ではない、
直球で勝負しましょうと言われ、心が決まった。
しかし、書いている間中心配だった。
自分は自分の人生を歩くというのが根本にある。
その人なりの人生を全うすれば、
それは誰に文句をいわれるものではない。
どこまで自分を生きていけるかが大事だと常に思っている。
作中にもあるが、他人は誰も責任とってくれない。
最後は自分の判断で生きていくことがいいと思う。
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