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2023.11.24

宮崎哲弥さんに聞く、日本語の裾野を広げることに役に立つルビの重要性

評論家の宮崎哲弥さん登場。

著書『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書)

について伺いながら、日本人の国語力や新しい言葉を覚える喜びについて

さらにルビの重要性などについても伺いました。

 

宮崎哲弥さんの著書:

『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書) コチラ

 

ルビの重要性

漢字のルビの必要性についてラジオで述べた。

マネックス証券の松本大さんが、もっとルビをふっていこうと

ルビ財団を創設し、

一つの社会運動のようにおこなっていることに共鳴した。

現代は、ルビをふらなくても読めるように、

難しい漢字を使わなくなったということがある。

高名なアナウンサーが陸上選手の紹介の際に、

「慧眼(けいがん)」を「すいがん」と読んでしまい、

ネットニュースにもなり訂正したということがあった。

彼は「慧眼」にルビがふってなかったので、

子供の頃に「すいがん」と覚えてしまい、

大人になるまで、ルビがなかったので、そのまま読んでしまった。

これはルビがなかったからだと思う。

彼は、ルビを制限して使うようになってしまった、

ルビが事実上廃止された戦後の国語政策の犠牲者だと思っている。

 

 

国語力の低下と立て直し

『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書)を出版。

「高級語彙」は、事実上専門用語のこと。

「上級語彙」とはそんなに専門用語ではないが、

日常的に頻繁に使わない言葉を表現している。

しかし、夏目漱石や太宰治の作品などには頻繁にでてくるなど、

近代文学、戦中、終戦直後のメディア、特に新聞を読むために

必須の語彙だと思う。

だんだんルビの事実上の廃止と漢字の制限によって

どんどん使われる語彙が制限されるようになり、

日本人の国語力が低下してしまったという事実があり、

それに抗いたかった。

多くの言葉を操ることができるようになることが

国語の進化と考えているので、

今の流れは明らかに国語力が退化していると言える。

 

 

新しい言葉を知り、覚えることの楽しみ

中学生の頃から、初めて出会う言葉や未知なる言葉を書き留めて、

ノートに単語帳として作っていた。

それがこの本の土台になっている。

知らなかった言葉を知った時に感動がある。

中学3年生になると、背伸びして大人の本を読むようになる。

そこで知らない言葉がたくさんでてくる。

新しい言葉に出会うと、美しい蝶々や甲虫を見つけたように喜びを感じる。

戦前の本は基本的に総ルビ。

自分が最初に読んだ『吾輩は猫である』は、総ルビだった。

昔は新聞にもルビがふってあった。

ルビは太古の昔からある。

漢字で構成された言葉を日本に入れ、日本語化していく、

日本語の文字体系、文法体系に組み込んでいく際、

太古の昔から「振り仮名」があった。

これはどのように日本語化していくかの日本人の知恵。

言語の歴史、日本語の成り立ちを考えられ、楽しかった。

エッセイでも小説でも、ブログに書く評論でもいいが、

何かを表現するとき,特に詩というのは,

言葉と言葉の間の意味を言葉によって

表現しようというところがある。

言葉の連なりの中から、言葉では表現できないもの,

言葉を超えたものを言葉の中に見出すということも

言葉を多く知らないとできない。

 

 

『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』

『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書)では、

15000語を超えるいろいろな語彙の中から500語を選んだ。

この本は、普通の語彙集と違い、紹介する言葉が

一番最初は本文の中に埋め込まれている。

これを「初見の用例」と名付けた。その後に辞書的な定義があり、

近現代文学から選んだ用例が書かれている。

「初見の用例」を考えたのは

自分たちが普通に新しい言葉に出会うときの状況をつくりたかった。

読者は、「この言葉知らない」と思った時に、できれば推測してほしい。

そのあとに辞書的な定義を見て、

こういうことだったのかと思うと記憶に残ると考えた。

自分が使える言葉を増やす楽しむことを知ってほしい。

語彙は「理解語彙」と「使用語彙」の2つがある。

「理解語彙」はこの言葉を知っていて理解できる。これが第1段階。

これを会話や手紙など、能動的に自分で使えるようになる。

これが「使用語彙」。

まずは「理解語彙」にして、

さらに、それを「使用語彙」にして使ってもらえると最高である。

 

 

ルビの復活と語彙の再建

ルビの必要性の一つは、外国人や子どもたちが

国語学習をするための日本語の裾野を広げることに役に立つこと。

また、戦後の国語改革というのはルビ廃止と漢字制限を同時におこなった。

これは、ルビを振るような言葉は使わせない。優しい漢字だけ使えというもので、

自分はこれを優しさの強制と思っている。

これが国語力の低下など、今になってその効果が表れている。

日本人全体の問題で何とかしなければいけない。

そのための有力な手段のひとつがルビの復活させる。

同時に大人の語彙を再建していこうというのが自分の考え。

新潮選書から『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』を出版

来年第2弾がでる。

言葉を覚えていくたびに世界が開けてきて、光が当たり、

知らなかった一面が明けてきて、平坦じゃない世界が見えてくる。

今はこのようなことが大切。

とても言説とか、言葉遣いなどが単純化していて、

複雑な思考や微妙な感じ方が伝わらなくなってしまっているような気がしてならない。

わかりやすいが、すごく単純な思考をふりまいたり、

もっと複雑な感じ方があるのに、それをきちんと伝えなかったりするというのは、

平易な言葉、単純な言葉ばかりを使い続けることによって

陥った罠のような気がする。

 

 

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