あさナビ

2023.11.17

音楽家の久石譲さんに聞く音楽制作の現場

日本を代表する音楽家の久石譲さんが登場。

音楽との出会いや、作曲家、指揮者、ピアニストなど

久石さんの幅広い活動について、

さらに、数々の名曲を生み出してきた作曲方法や

ジブリ作品の音楽制作の裏側についても伺いました。

 

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久石譲さんと映画音楽

「風の谷のナウシカ」が、宮崎駿さんとの最初の映画。

ファーストソロアルバム「INFORMATION」を発表したあと、

レコード会社が宮崎駿さんと関係があり、

話が自分のところにまわってきて、ジブリ作品に携わるようになった。

映画音楽の作曲は、通常実写の場合は、

締め切りの1か月前か2か月前くらいから作る。

台本を読み、監督と打ち合わせをし、送られてくるラッシュを見ながら作る。

しかし、宮崎駿さんの作品の場合は、関わっている時間が長い。

作り始めたらしいということで絵コンテがおくられてきてから

2年くらいかけている。

メロディを作るなど実作業にすぐに入りはしない。

宮崎さんが何を作ろうとしているのかを理解するために、

こちらも勉強をしないといけない。

「もののけ姫」の時は内容が重かったので、

宮崎駿さんの対談などの本を全部読むなどした。

宮崎さんはあまり説明をしない。行間を読まないといけない。

今の映画は説明しすぎ。

『君たちはどう生きるか』は見た瞬間、これまでの作品と違うと思った。

今回は絵が完成するまで一切こちらにみせてくれなかったので、

結構ギリギリのところで音楽を作った。

今、現代音楽の作品でミニマルミュージックを作曲しており、

その方法論をこの映画ではとった。それは宮崎さんも喜んでくれた。

 

 

ミニマル・ミュージックとの出会い

ミニマル・ミュージックは、短いフレーズを何度も繰り返し、

それが少しずつずれたりし、微細な変化を聞かせていく方法論。

1965年くらいにアメリカに始まった。

いきすぎた不協和音の現代音楽で観客がついていけないと思い、

一番シンプルなものが世界中で始まった。

これはロックのミュージシャンも含め、いろいろな人に影響を与えた。

しかし、日本では残念ながらこの流れはほとんどなく、

日本の音楽界は無視してきた。

なので、自分がやらなければという思いで、

「ミュージック・フューチャー」というコンサートシリーズを開催するなど

世界の最先端の音楽を紹介するということをしている。

ミニマル・ミュージックというのが結果的に自分にはあっていた。

今でもその方法をとって作曲している。

映画音楽を作曲するようになってメロディを書くようになった。

ミニマル・ミュージックと合体させたり、混ぜたりすることで、

幅広く表現できているかと思う。

「コンポジション(composition) 」とは、構成するという意味がある。

4分、5分の音楽、シンフォニーになると1楽章で15分、

それをどうやって構成していくか。作曲はとてもロジスティックに考えていかないと、

感覚だけで勝負しようとしてもどこかでうまくいかない。

自分は作曲だけでなく、指揮もするが、

指揮をする際、他の作曲家の楽譜を読むと、いろいろ発見や刺激を受ける。

インプットをしないとアウトプットできない。なので指揮はやめられない。

 

 

作曲家の道へ

小学校くらいからバイオリンをちょっと習っていた。

中学校でブラスバンドにはいり、

自分はわりと上手かったので、1年でレギュラーになったが、

自分が人前で演奏するより、

自分が夜コツコツ書いた譜面をもっていって

みんなに演奏してもらうほうが好きだったので、

作曲家になろうと思った。これが中学2年か3年くらいの時。

楽器はトランペットやサックスなど全部やり、

ピアノも中学にはいった頃はもう始めていた。

今の自分は、コンサートで緊張することはないが

高校の時にピアノの先生の発表会で弾いたときは、

とても緊張して、演奏が止まってしまったりということがあった。

このことは、今でもトラウマのように覚えている。

 

 

指揮者としての活動

クラシックの名門レーベルのドイツ・グラムフォンと専属契約をし、

第1弾として今年6月に『Symphonic Celebration』をリリース。

これは世界中で売れ、アメリカのビルボードのクラシックチャートで

1位を獲得。これは46年ぶりの快挙。

10月にはアナログ盤をリリース。

ヨーロッパは根強くアナログ盤のニーズがあるが、

この数年、世界的にアナログ盤に回帰している。

アナログ盤の音のあたたかさのようなものにもう一度魅かれだした。

2021年日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任。

2025年4月からは同楽団の音楽監督に就任する。

自分は作曲家でプロ指揮者ではないと思っている。

長い間オーケストラと仕事をしてきて、一生に1回ぐらい、

全責任を負う立場でオーケストラと付き合ってもいいかと思った。

今のような首席客演指揮者だと音楽だけ考えていればいいが、

音楽監督だと、オーケストラの様々な決定事項に触れるなど

“組織としてのオーケストラ”ということに踏み込んでいかなければいけない。

ヨーロッパの音楽監督は、スポンサーの接待で

パーティに出なければいけなかったりするが、そういうことは苦手。

 

 

音楽がもつ力

「風の谷のナウシカ」の中の1曲を歌っているのは、3歳か4歳の頃の自分の娘。

実際に使うかわからないから、誰かいないかということで、

児童合唱団に入っていた娘を呼び、風邪を引いていたがそのまま録り、

それが今でも流れている。

例えば自分の子供にバイオリンなど楽器を習わせたとき、

途中で絶対に辛くなることがあり、勉学などもありやめてしまう。

でもできるだけつづけた方がいい。

楽器がもし弾ければ、音楽に触れられる。人生が豊かになる。

もし楽器がひけなかったとしても、

ある年齢だからとあきらめずに、何かひとつ楽器を定めて、練習すれば、

アマチュアのオーケストラはいれてくれると思う。

聴いているほうから参加することは結構楽しいと思う。

人間というものが食べて寝るなど欲望的なことだけでなく、

少し自分が豊かになるというときは、お金ではなく、

音楽や絵などで自分自身がステップアップしたり、

自分自身がこういうことができるんだということをもっていると

すごく人生が豊かになる。

本当の意味での豊かさは、自分でつくっていく、

その中の一つに音楽があると思うので楽器を習うといいと思う。

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