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2023.03.10

環境再生のプロである矢野智徳さんに聞く 自然や環境を再生させる方法

「大地の再生」で知られる、

環境再生医、造園技師の矢野智徳さんが登場。

 

「大地の血管である水脈」と「空気」に着目し、

全国各地で環境改善・自然治療を行ってきた

環境再生のプロフェッショナルである矢野さんに、

自然や環境を再生させるには何が必要なのか

(撮影:田中トシノリ)

 

「大地の再生〜結の杜づくり〜」 詳しくは コチラ

「結の杜基金」 詳しくは、コチラ

 

大地の呼吸不全 

自然環境が失われたり、川の氾濫や土砂崩れなどは

この数十年で起こっていること。

この背景には、自然の地形、植生や、

空気や水の動く気象の状態を変えるような大きなエネルギーをかけた

人による開発が引き金になっていることは否めない。

「大地の呼吸不全」がいろいろな異変に繋がっている。

始めは水はけだけで考えていたが

水はけの工事をしても土の中の状態がよくならず、

水はけだけが原因ではないと思った。

そして、雨の中の作業をしているとき、水が浸透しているところから

プクプクと空気が泡で出てきているのをみて、空気だと思った。

土の中の空気が動けば水が動くということが現場で見えてきたと

恩師に話したところ、そのような話は聞いたことがない、

土の中の空気の動きを研究している分野はないと言われた。

そこから、先生と土の中の空気の動きを追うようになった。

始めから災害的なことに着目したのではなく、

造園の庭の中で、植物や小動物の状態が良くなったり、

呼吸が改善されているということを手掛ける中で、

これは、海から山まで同じことがおこっているのではないかと思った。

日本列島でも、小さな庭でも、盆栽の小さな一木一草の植物の空間も、

脈と土とその場の形で環境が出来上がっている。

 

 

環境再生医・診断方法

災害現場だけでなく、改善を頼まれる場所は、

自然の奥山や里山、住宅や道路など多種多様。

依頼は地形が壊れる、建物がかびる、傾くなど

流域で起きてくる多種多様な環境状態の不具合の改善。

診断は単純。

診断するときに、大地と、その上に生活している動植物、

大地と地上を動いている空気や水の気象という

3つの分野をチェックしていく。

計測器をもって動くのではなく、五感で測定する。

動物たちがやっていることと同じ。

気象で言えば、どこから風がきて、どこから水がきて、どこへ動くか。

動植物はいい呼吸をしているか。大地の安定度、水はけと乾燥。

その状態を「良い」か「普通」か「悪い」かの

三種類に基本的に分ける。それを五感で測定する。

それができるようになって、単純に環境が見えてきた。

どこを歩いていても、大地の状態、動植物、人の生活状態、

気象の状態がわかる。

五感で測定をすることは誰にでもできるが

皆、あまりそれをフル活用していない。

自分は仕事上毎日フル活用してきたのである。

 

 

日本一周の旅

実家が植物に関連する仕事で、自分自身も自然地理学を大学で学んでいた。

昼間仕事をして、夜間授業にでていると、眠たくなってしまう。

勉強したくて来たのになぜ眠たくなってしまうのかという疑問を持っていた。

学んでいる地域は、北海道から沖縄まで、行ったことがないところが

ほとんどで、実際に知らないからだと思った。

そして、放火による火事で命拾いをしたこともあり、本

気で勉強しようと思った。

そのためには眠たくならないように、実物を先にみて、実感すれば、

先生の話が聞けると考え、日本一周へ。

最初は小笠原へ。そこから出発して半年かけて沖縄へ歩いて行った。

時間が無くなり、鹿児島から自転車で東京にもどり、

冬の北海道へ軽バンで向かった。

日常生活が自然の中に浸かっていた。動物と同じ生活ができた。

そしてそれぞれの地域を体感できた。安全や命ということが身に染みた。

自分の身を守ることと地理学という視点で見ることと、

命がけで命と向き合って観察をすることが

あの1年で一番大きなことだった。

このときの経験が今に生かされている。

仕事として向き合うようになった時に、この時体験できたこと、感じたことが

現場で観察することとつながっている。

 

 

大地の再生

都会という場所はコンクリートの植木鉢にいるよう。

仕切られたコンクリートの下が深い大地とつながっているのは

植木鉢の底穴でつながっているというのと同じような構造。

地上や地下の空気や水が浸透していくが、

穴が詰まるように、地下水脈と地上の水脈が滞るところがでてくる。

施術としては、表層から空気や水が浸透していくので。

詰まっているところを解消するのではなく、

大気と大地の一番接している表層5cmをいつも浸透しやすい状況に保ってあげる。

地形の落差をつけ、大地を拓くように、穴を掘ってあげる。

起伏や段差をつけると、土の中で大気が動き、

それを追いかけるように水が動く。

植木鉢の木が痩せて行ってしまった時の施術も同じ。

動物たちは大地に穴をあけて、空気の循環を促しながら生活している。

動物がやっているような、点と線の脈の地形をケアする作業としての

水脈改善、ケアをやってあげればいいと考えた。

動物たちは空気が通らなくなり、この場所で呼吸できなくなると、去って行く。

しかし、ここに人間が空気を入れてあげると動物たちが戻ってくる。

生活できる場所として戻ってきて、また穴をあけ、生活環境を守ろうとする。

動物たちはそれを植物とスクラムを組んでやっている。

そこから、この生き物たちと環境改善をしていけばいいと分かった。

 

木々の総移植工事と大地の再生講座

現在取り組んでいる課題の一つが「東京都の区立小学校の木の総移植」

小学校の増築に伴い、小学校の横にある小さな公園が解体され

植物も含めすべてゴミになってしまう。ということで、

以前から仕事をやらせてもらっていた医者の方から、

植物を救ってほしいと依頼があった。

時間や経済、人の都合で命やモノを簡単に処分し、

新しいものをもってきて小学校の施設になっていくというのは、

教育現場として、まずいのではないかと思い、役所に相談した。

具体的には、植物を掘り取り、そのお医者さんの敷地にクレーンで移植。

今年の夏に建物ができたら、また戻す。

これがひとつの大地の再生。

見た目の植物ではなく、脈の機能を保全してくれる生き物として、

戻すことで、そこの大地と生き物がスクラムを組み、

空気と水の循環が再生していく、

大地の再生講座も行っている。

学びながら地域の方と協働することで「結(ゆい)」の作業が生まれる。

説明したり、見てもらいながら一緒に作業をしている内に、人が増え、

ひとりで説明できなくなり、適当に倣って自分で学んでもらうようにした。

それをやっていると、群れのようになり、その中で経験がある人が軸になり、

自然と、できない人に説明できるようになった。みんなが連携をしだした。

各集落で作業をやっていると昔は同じようなことをしていたとよく聴かされる。

これが「結」の作業。

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