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2023.03.10

「ニッポン手仕事図鑑」の大牧圭吾さんに聞く日本の伝統工芸を継承するための取り組み

「ニッポン手仕事図鑑」編集長の大牧圭吾さんが登場。

ニッポンの職人たちの技と思いを伝える動画メディア

「ニッポン手仕事図鑑」について、

さらに、2021年から始めた「後継者インターンシップ」など、

後継者を考えている職人さん、職人を目指す方に向け

日本の伝統工芸を継承するための取り組みを伺いました。

ニッポン手仕事図鑑 HP  コチラ

ニッポン手仕事図鑑 YouTube (動画) コチラ

 

「ニッポン手仕事図鑑」

「ニッポン手仕事図鑑」は、2015年1月に立ち上げた動画メディア。

職人の方が紹介される時、技術や完成されたモノの素晴らしさを

フォーカスされがちで、作り手の思いを伝える機会がなかなかない。

そこで、職人の方がどのような思いで作っているのか、

どのような思いで消費者の方に向き合っているのかということを

少しでも届けられたらと思い、「ニッポン手仕事図鑑」を立ち上げた。

今まで90本以上制作。

映像を見た人が買いにきてくれた、新しい販路開拓のきっかけになった

などの声がきけるようになり、

少し役に立てていると思えるようになった。

自分が追っている職人の方たちは日用品を作っている方で、

作家ではない、

たくさんのものを高いレベルで作り続けることができ、

飾って美しいというだけでなく、使う道具として、機能的なもので、

使う人が楽しくなるようなものを作り続けている人が多い。

使って初めて価値が感じられるものだと思う。

そして、日常的に使ってもらうことが伝統工芸を守ることにも繋がる。

さらに、その作り方だからこそ、50年、100年、

短くても10年、20年使い続けられるものが多く、

地球環境、社会問題に対しても価値のあるものである。

そのような点を注目されることで、伝統工芸の産業が変わってくると思う。

技術と思いが掛け算されて伝統工芸は次の世代に繋げていける。

 

 

「後継者インターンシップ」とは

2021年から「後継者インターンシップ」を始めた。

映像を作っている中で深刻な後継者問題に直面した。

職人になりたい若い方が通う学校は、自分たちが把握したもので

全国で140校ある。

後継者不足の問題を抱えている産地がある反面、

職人になりたい若者も実は多くいる。

たとえば自分たちの「後継者インターンシップ」では

1回あたり現地に5~6名連れて行くことが多いが

その人数枠に対し、10倍近くの応募がある。

その中から選考して5~6人に絞り込み、

現地で職人の方と話したり、技術を教えてもらったりして、

1~2人が後継者として選ばれていく。

一つの工房が育成できる人数には限りがあるので

応募者全員をつれていくことができない。

昨年度、「後継者インターンシップ」により、

全国で13人の後継者が誕生したが、応募してくれた方は428人。

後継者になれなかった人が400人以上いる。

その人たちが、別の産地に行く機会があればいいが、

なかなかそのような機会を日本の産業の中でつくれてはいない。

職人の道にうまく誘導してあげられればと思う。

 

 

「後継者インターンシップ」による効果

スローガンは、「日本で一番職人さんを愛するメディア」。

今、伝統工芸が衰退して消滅してしまうか、

もう一度、一つの産業として残っていくかの瀬戸際だと感じており、

今だからこそ、やれることをやっていこうと

メンバーと共に動いている。

学校は技術を教えていても、

後継者を探している職人の方に関する情報が少ない。

後継者を探していることを地元の人やハローワークに話すことが

限界だったりするので、学校で情報をキャッチすることが難しい。

自分たちは職人さんと出会う機会が多く、

後継者を探しているという話を聞いたりする。

また、行政との取組もおこなっているので、

行政側からの地元の産業を残すために、

「後継者インターンシップ」を一緒にやってほしいという依頼もある。

福岡の東峰村に小石原焼、高取焼の産地があるが、

昨年3人の後継者が誕生した。その実績から、別の工房が

インターンシップをおこなってくれて、2つの工房が2人ずつ採用してくれた。

昨年と今年で7人の後継者が誕生したという良い連鎖も起こっている。

今まで後継者がいないと言っていた地域に

仕事をやりたいという若い人が多いということを可視化できた

2年やって、まだまだだが、ひとつ形にできたという手ごたえはもっている。

 

今後の目標~職人さんによるオンラインスクール~

コロナ禍で衰退してしまった伝統工芸もあった。

やはり、伝統工芸は観光と一緒に盛り上がっている産地が多いので、

観光が止まってしまったことで、大きな打撃をうけたと話を聞いている。

しかし、その反面、おうち時間を贅沢にしようというところで

改めて伝統工芸に目を向ける人もいた。

職人の方たちが提供できる価値は、作ったものだけでなく、

その体験や考え方に価値を感じている人が多い。

今後、職人さんが講師となるオンラインスクールをやりたい。

職人さんたちから学びたい人には、未来の後継者もいれば、

現役の職人さんや、一般のビジネスマンもいる。

いろいろな学びを提供できる職人さんがたくさんいるので、

学べる場所をつくりたい。

職人さんが出向くというのは難しいのでネット上で

「日本初」という冠を付けて職人育成のための、

現役の職人さんによるオンラインスクールを作りたい。

成功している職人さんから学ぶことで、

次の世代の職人さんの育成できると共に、

職人さんも新しいところで収益源をつくることができる。

物を売る以外の収益を得られれば、

技術継承者の雇用を増やそうとことにつながっていくのではないかと思う。

また、同じ立場の職人さんがここまでやっているということを共有することで

自分も負けずにやろうというモチベーションになると思うので、

専門家でなく、職人さんが直接教えることには価値があると思う。

 

 

伝統工芸の継承に、今必要なこと

職人の方たちの中には、毎月給料を払う直接雇用ができないと、

職人を育成できない、やってくれる人がいないと思っている人もいる。

自分たちのインターンシップには、

職人として半分仕事をして、生活のための仕事を半分するという形で

すこしずつ技術を学ぶというケースもある。

雇用の形もひとつではないと伝えることが必要だと思う。

コロナ禍で展示会がなくなったり、観光客がいなくなったりで、

発信する場が奪われてしまっているので、

Zoomでの対談番組をおこなったり、情報発信をする場を

つくってあげることから始まると思う。

後継者がいないと途絶えてしまうという声を

職人の方があげられる環境を整えてあげることが必要だと思う。

皆にできることは、伝統工芸のモノを日用品として使用すること。

たとえば、西川登竹細工はしっかりつくられているので

20年、30年は使える。

大量生産のものよりコストパフォーマンスが高く、

また、最後ゴミになっても環境を破壊しない。

しかし、モノが置いてあるだけでは、モノはそこまで語ってくれない。

道具として使ってくれた人が、近くの人に道具としての魅力を

ひと言、ふた言、語ってくれることで状況は変わってくると思う。

伝統工芸はこれだけ手間をかける意味があるのか?と

言われることがあるが、そこにはしっかり意味があることが多い。

それを動画やいろいろな場で届けていければと思っている。

 

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