おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
7/12の1本目は、実話を基に1990年代を描いた初めてのイラク映画
『大統領のケーキ』

カンヌ国際映画祭でW受賞するなど、イラク映画史上初の歴史的快挙を成し遂げたイラク出身の脚本家で監督のハサン・ハーディが、自身の子供時代の体験をもとに描き出しました。

舞台は、1990年代のイラク。当時の大統領サダム・フセインは、国連からの制裁で人々が食糧不足に苦しむ中、自分の誕生日を盛大に祝うことを国民に強制していました。
誕生日を2日後に控え、クラスで“ケーキを作る係”を決めるくじ引きが行われました。もし用意できなければ重い罰が待っています。そのくじ引きで「大統領のケーキ係」に選ばれてしまったのは、祖母と二人暮らしの貧しい家庭の9歳のラミア。
翌朝、ラミアは祖母に連れられて、父の形見の時計と、“友達”の雄鶏ヒンディと共に町へ出かけます。しかし、祖母の目的は、ケーキではなくラミアを養子に出すことだったのです。
思わず逃げ出したラミアは、自分がケーキの材料を集めれば、大好きな祖母とずっと暮らせると信じて、クラスメイトのサイードと協力して町を駆け回ります。
十分なお金も時間もなく、あるのは知恵と想像力だけ。果たして、“名誉あるケーキ作り”の行方は?

1990年代を描いた初めてのイラク映画ということで、撮影はイラクで行われました。ほとんどの方が初めて目にする景色ではないでしょうか。
例えば、ラミアが住んでいるのはメソポタミア湿地帯。電気もなく、移動はすべて葦の間を滑るように進む船、情緒ある美しい風景です。アブラハムが生まれたと言われるウルの神殿=ジッグラトが映っていたり、サダム・フセインが若い頃よく通っていたレストランでも撮影されました。
イラクといえば、戦争のイメージが強くなってしまいがちですが、古くからの歴史と豊かな文化が感じられます。

驚いたのは、ラミアとサイードを演じる少女少年はもちろん、キャストは全員が演技未経験者。ハーディ監督は演じるより「その場で生きること」を大切に、出演者たちと話し合いながら撮影を進めたそうです。
特に、ラストシーンの目の演技が素晴らしく、「ラミアとサイードは確かにそこで生きている」と思えました。

『大統領のケーキ』というタイトルの可愛らしさとは裏腹に、とても切ないお話でした。それでも、理不尽な社会の中で、どんな困難にぶつかっても、何か道を見つけて立ち向かっていくラミア。そのたくましさが、自分もしっかり生きていこう!と思える力を与えてくれるのです。
宝物のようにそっと心の中にしまっておきたい作品です。

『大統領のケーキ』
7月10日(金) 新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式サイト:映画『大統領のケーキ』公式サイト|7.10(金)新宿ピカデリーほか全国公開
監督・脚本:ハサン・ハーディ
出演:バニーン・アハマド・ナーイフ、サッジャード・モハンマド・カーセム、ワヒーダ・サーベト、ラヒーム・アルハジ プロデューサー:リア・チェン・ベイカー エグゼクティブ・プロデューサー:エリック・ロス、マリエル・ヘラー
2025年/イラク、アメリカ、カタール/105分/アラビア語/シネスコ/カラー/5.1ch/英題:The President’s Cake /日本語字幕:星加久実/字幕監修:中町信孝/配給:松竹/PG12
© 2025 TPC FILM LLC. All Rights Reserved.

2026.09.20
サンデー早起キネマ『襲名』
おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ” 9/20の3本目は、先日行われたヴェネチア国際映画祭で「シネマ&アーツ賞」の最優秀作品賞に輝く三池崇史監督...

2026.09.20
サンデー早起キネマ『雌鶏』
おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ” 9/20の2本目は、世界初、主演はニワトリ!“ニワトリの視線”を通して、人間社会をコミカルかつシニカルに描き出...

2026.09.20
サンデー早起キネマ『ナギダイアリー』
おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ” 9/20の1本目は、松たか子さん主演。何を選び、どう生きていくのか…人生観を揺さぶる人間ドラマ 『ナギダ...

2026.09.14
今週は健康について考えるコーナー「血液のがん・悪性リンパ腫」についてお伝えしました。
杏林大学医学部 血液内科学 教授 荒井俊也 先生にお話を伺いました。 「悪性リンパ腫」は、白血球の一つであるリンパ球が異常を起こして“がん化”した病気で...

2026.09.13
サンデー早起キネマ『さとこはいつも』
おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ” 9/13の3本目は、3人の【さとこ】たちが、自分の物語を書くことで交差していく、自由でみっともなくて愛おし...