スポーツ伝説

2024.01.06

2024年1月1日~5日の放送内容

【箱根駅伝 第99回・駒澤大学】
 2023年の第99回箱根駅伝。レース前から優勝候補の大本命と言われていたのが、駒澤大学です。駅伝シーズンの幕開けを告げる2022年10月の出雲駅伝と11月の全日本大学駅伝で優勝し、箱根に勝てば大学駅伝三冠という大偉業が懸かっていました。そんな駒澤大学の絶対エースが、1万メートル日本歴代2位の記録と世界選手権出場の実績も持つ、当時4年生の田澤廉選手。全日本大学駅伝では4年連続で区間賞に輝くなど駅伝にもめっぽう強く、自身最後の箱根駅伝で有終の美を飾るかどうかに注目が集まっていました。ところが本番の1ヶ月前に新型コロナウイルスに感染。大会2週間前になって練習を再開したものの、ベスト状態には程遠いものがありました。それでも田澤選手は2年連続で花の2区を任され、襷を2位で受け取ると、区間3位の好タイムをマーク。エースの走りで2位を死守しました。
 この年の駒澤大学には、どうしても勝ちたい理由がもうひとつありました。コーチ時代も含め、30年近くにわたって陸上競技部を指導してきた大八木弘明監督の勇退が決まっていたのです。学生三大駅伝は最多の26勝、箱根駅伝では4連覇の経験がある名将の大八木監督でしたが、三冠は過去2度のチャンスがありながら、いずれも実現できませんでした。大八木監督に最後の箱根で三冠達成を。この結束力に加え、名将の決断も冴え渡ります。勝負を分ける山登りの5区と山下りの6区に1年生を抜擢。その期待に応えるように、5区の山川拓馬選手はトップを維持して逃げ切り往路優勝。復路スタートの6区は伊藤蒼唯選手が区間賞の走りを見せ、最終的に10人の選手が全員、区間5位以内で走るという選手層の厚さで駒澤大学は箱根駅伝を制し、史上5校目となる大学駅伝三冠達成を果たしました。

 

 

【侍ジャパン 井端弘和監督】
 昨年11月に東京ドームで開催され、野球日本代表・侍ジャパンが優勝を飾った「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」。井端監督は若手主体のチームを率いて、みごと栄冠に導きました。この大会は、オーバーエイジ枠の選手を除き24歳以下、または入団3年目以内の選手という制約があり、ドリームチームは作れません。しかし優勝は絶対条件。そんな難しい役目を、日本球界への恩返しと井端監督は喜んで引き受けました。現役時代、荒木雅博選手と鉄壁の二遊間を形成し、中日の黄金期を支えた井端監督。その後巨人に移籍し、15年に現役を引退。翌年からの3年間で巨人と侍ジャパンのコーチを兼任して、17年のアジアプロ野球チャンピオンシップ優勝に貢献しました。22年からはU-12の監督に就任して少年世代の育成を担当。幅広い世代での指導者経験を買われ、井端監督はトップチームの監督に抜擢されたのです。
 井端采配の特徴は、選手の潜在能力を測る目と、適材適所の起用です。その1つが、所属する北海道日本ハムでは先発の根本悠楓投手を中継ぎで起用したこと。韓国との決勝戦では、3回に2点を先制された後、5回から起用。そこから3イニングを1安打無失点に抑え、この好投が6回の同点劇を呼びました。延長タイブレークまで縺れたチャンピオンシップ決勝で、巨人のルーキー・門脇誠選手が放ったサヨナラヒットも、10回に代打で登場した先頭の埼玉西武・古賀悠斗選手が送りバントで1・2塁のランナーをきっちり進めたことが勝利の要因と言えます。古賀選手にはプレッシャーがかかる場面でしたが、井端監督は強化合宿の時から、タイブレークになったらバントの役目で使うことを伝えていました。そうやって備えていたからこそ、初陣を優勝という最高の形で締めくくることができたのです。

  
     
【プロ野球 小久保裕紀監督】
 長年活躍したホークスだけでなく、3年間在籍した読売ジャイアンツでも生え抜き選手以外では初となるキャプテンを務めて、現役時代からリーダーシップを発揮していた福岡ソフトバンクホークスの小久保新監督です。指導者としての第一歩は2013年、野球日本代表・侍ジャパンの監督就任でしたが、結果は15年のプレミア12が3位。17年のWBCは準決勝敗退と、目指していた世界一には届きませんでした。それでも選手からの信頼が厚かった小久保監督は、21年に一軍のヘッドコーチとして古巣のホークスに復帰します。翌22年から2軍の指揮を執り、若手たちを徹底的に鍛え上げると、就任2年目の昨シーズンは3年ぶりにウエスタン・リーグを制覇。2軍日本一を決めるファーム日本選手権でもジャイアンツを破り、4年ぶり5回目のファーム日本一へと導きました。
 小久保監督の1軍監督就任が発表されたのは、それから2週間後のこと。就任会見で小久保新監督が訴えたのは、美しいチームづくりです。1軍の戦いを見た中で「美しさ、美意識が一番欠けているのではないか。首脳陣、選手たちと、いかに美しくあるかを共通認識として持ち、チームを作っていく」と宣言して話題を呼びました。また、新入団選手には、成長の三原則を早くもアドバイス。1つめが「素直であること」。2つめは「勉強熱心なこと」。3つめは「プラス発想をすること」。美しいチームづくりと成長の三原則をもとに、小久保新監督は4年ぶりのリーグ優勝と日本一奪回を目指します。

  
【プロ野球 阿部慎之助監督】
 昨年も4位に終わり、2年連続Bクラスの屈辱を味わった読売ジャイアンツ。その再建を託されたのが、44歳の阿部新監督です。現役時代は巨人の正捕手として通算2132安打、ホームラン406本の輝かしいキャリアを積み重ね、2019年に現役を引退。翌年から昨シーズンまでは2軍監督や1軍のコーチを歴任し、20年以上に渡ってジャイアンツのユニフォームを着続けている、まさに生え抜き中の生え抜きです。背番号は、指導者として4年間つけていた「80」番から、原辰徳前監督の「83」番を志願して継承しました。理由は、原前監督の現役時代の背番号8と、プロ入りした時の監督である長嶋茂雄さんの背番号3が並んでいるから。2人の恩師の”ジャイアンツ魂”も継承したい、という熱い思いがあったのです。
 阿部新監督の初仕事は、就任直後に行われたドラフト会議です。母校・中央大学の後輩、西舘勇陽投手を1位で指名。日本ハムと競合し抽選となりましたが、阿部監督が交渉権獲得のカードを引いて思わずガッツポーズ。最高の初仕事となりました。これまでの指導者生活で阿部監督が若手選手に求めていたのは、”努力する天才”を目指してほしいというものでした。その姿勢は監督になっても変わりません。ドラフト後に行われた秋季キャンプでは、『くったくたになるまで』をテーマに掲げ、自ら打撃投手やノッカーを務めて猛練習を繰り返しました。また選手にはオフの心得として「一日、一瞬たりとも、野球を忘れない」「毎日大丈夫かなと不安になって、不安に駆られて生活してくれ」という2箇条を伝え、24年の戦いはもう始まっていると諭しました。選手とともに汗をかき、努力の末に目指すのは、もちろん優勝です。

 

【プロ野球 銀次選手】
 「東北、仙台が大好きです。今年の初打席、あの大声援は一生忘れません!」昨年の11月23日、本拠地・楽天モバイルパーク宮城で行われた東北楽天ゴールデンイーグルスの「ファン感謝祭」で引退の挨拶をしたのは、イーグルスで18年間プレーした銀次選手です。岩手県出身の銀次選手は、盛岡中央高校から2005年の高校生ドラフト3位で、この年船出をしたばかりの東北楽天に入団。1軍デビューはプロ5年目の10年と遅咲きでしたが、12年に初めて規定打席に到達し、レギュラーの座をつかみます。続く13年も主力として活躍してシーズン途中から3番打者に定着。打率3割1分7厘と結果を残し、球団史上初のリーグ優勝と日本一に大きく貢献しました。14年には、自己最高の打率3割2分7厘。19年にはキャリア最多のシーズン161安打をマーク。18年間で放った通算1239安打は、生え抜き選手として史上最多の数字です。
 ドラフトはキャッチャーで指名された銀次選手ですが、その後内野手に転向したため、1軍の試合でマスクを被ったことは一度もありませんでした。ところがプロ14年目の19年4月、東北楽天はベンチ入りしていたキャッチャーを全員使い果たしてしまい、9回から急きょ、捕手経験のある銀次選手が1軍で初マスクをかぶることになったのです。緊急事態にもかかわらず、延長戦を含む4イニングを無失点で切り抜けてファンの喝采を浴びました。昨シーズンの1軍出場はわずか6試合でしたが、9月25日の北海道日本ハム戦で、同点の9回ワンナウト満塁のチャンスに銀次選手は代打で登場。北海道日本ハム・伊藤大海投手から、値千金の決勝タイムリーを放ちます。結果的にこのヒットが、銀次選手の現役最後のヒットとなりました。打っては抜群の勝負強さを見せ、守ってはチーム事情に応じてさまざまなポジションをこなしてみせた銀次選手。今年からはチームのアンバサダーとして、東北地方での地域貢献活動などに取り組みます。

  
来週のスポーツ伝説は……
 1/ 8(月) プロ野球 山﨑福也投手
 1/ 9(火) プロ野球 西川龍馬選手
 1/10(水) プロ野球 森唯斗投手
 1/11(木) 大相撲  一山本大生関
 1/12(金) 大相撲  美ノ海義久関

              お楽しみに!!

    パーソナリティ
    • 滝本沙奈
      滝本沙奈
      滝本沙奈

      滝本沙奈

      生年月日:1984年6月6日
      出身地:東京
      学歴:青山学院大学文学部英米文学科卒
      趣味:マリンスポーツ(ダイビング、サーフィン、釣り)
      資格:PADIオープンウォーターダイバー、おさかなマイスターアドバイザー

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