ニッポンチャレンジドアスリート

2025.12.22

吉田彩乃(パラ陸上・車いす)

2006年生まれ、横浜市出身の18歳。先天性の脳原性まひのため両脚に障がいがあり、車いすで生活しています。中学2年生から本格的に車いす陸上を始め、2023年、高校2年生のとき、初めて出場した海外の大会・杭州アジアパラ競技大会の女子100mで4位。その後も100mをメインに走り、2024年、神戸で行われた世界パラ陸上では5位となり、パリパラリンピックでは8位入賞を果たしました。高校卒業後は、岡山へ移住し、パラスポーツの実業団チーム「WORLD-AC」に加入。3年後のロス・パラリンピック出場を目指しています。

◾️吉田選手が車いす陸上を知ったのは、地元・横浜で行われたパラトライアスロンの大会に「子ども記者」として参加したことがきっかけだった。

「横浜こどもスポーツ基金というところが、パラトライアスロンの大会の子ども記者というプロジェクトみたいな、運営というか、をされていて。そのプロジェクトに参加させていただたことが、この競技を知ったきっかけになります」

「パラトライアスロンを観戦して、写真を撮って、レース後に選手にインタビューをして。その自分が撮った写真とインタビューした内容を記事にするっていうような内容でした」

「ランの部分の競技用車椅子に乗って走っている選手の姿にすごく感銘を受けて。自分もこんな風になりたいなと思ったのがきっかけになります」

◾️吉田選手は、小学6年生のとき、地元の障がい者スポーツ文化センター「横浜ラポール」で車いす陸上のクラブに加入。普段使っている車いすで走っていた。

「車いすでこう、スピードを出して走るっていうのは、やっぱり日常生活ではあまり経験がないことだったので。思いっきり体を動かして、なおかつ、誰かと競うっていう経験ができたのは大きかったかなと思います」

「日常車でも出場できる大会があるので、その大会にはちょくちょく出場してはいた感じです」

◾️2020年、中学2年生のときに、車いす陸上の大会で好成績を収めた吉田選手は、副賞として競技用の車いす「レーサー」を獲得。本格的に競技をスタートした。

「競技用の車いすとなったら、入手するのも、金額的にもそうですし、難しい部分もあるんですけど。こういった形で、大会の副賞としていただけるっていうのは、これから始めたい選手にとってはすごくありがたいし、自分もその1人でした」

◾️2021年、選手を発掘する「J-STARプロジェクト」で、吉田選手は4期生に選ばれた。

「素直に嬉しかったのも記憶していますし、やっぱりそれまでは、得られる情報だったりとかも限られていたので。右も左も分からない状態だったんですけど、それがかなり見えてきたというか。世界が広がったような瞬間ではありました」

◾️2022年、高校1年生のとき、吉田選手は日本パラ陸上競技連盟の強化育成指定選手に選ばれた。練習と学業との両立は?

「陸上の方にも重きを置けるように、通信制に通うことを選択して。もちろん学業の方にも精一杯取り組むんですけど、陸上の方にもしっかり取り組んでいけるように。そこは学校選びを工夫したような形になります」

◾️2023年、高校2年生のとき、吉田選手は中国で行われた杭州アジアパラ競技大会に出場。初の海外遠征、吉田選手は女子100mで、メダルまであと一歩の4位だった。

「世界の選手と走るっていうのは初めての経験だったので、自分とその世界との差っていうのをすごく明確に感じて。もっと強くなりたいな、速くなりたいなという風な、原動力になりました」

◾️ 2024年9月、吉田選手はパリパラリンピックに出場。「脳性まひ・車いす」T34クラス・女子100m、1種目のみのエントリーだった。決勝での吉田選手のタイムは、20秒07で8人中8位。世界の壁を感じる結果になった。

「出場が決まった時はものすごく嬉しかったんですけど、いざ出場してみたら、それに対して満足はしてないというか、悔しさだったりとか、今後に対する意欲の方が大きいような大会になりました」

「この決勝のレース、スタートラインに臨むまでも、ほんとにこう、素晴らしい歓声に包まれながらスタートラインに立ったので。その瞬間もそうですし、ゴールした瞬間の大歓声もそうですし。『自分はこのために生まれてきたんだな』って思えるような、本当に素晴らしい経験をすることができました」

◾️今年6月のジャパンパラ陸上競技大会で、吉田選手は女子100m・800mでともに優勝。9月にインドのニューデリーで行われた世界パラ陸上では、女子100mで6位となり、着実に成果を残している。

「このジャパンパラもそうですし、インドの世界選手権でもそうなんですけど。今つけてきている力、実力とかは、練習の成果はきちんと出せたかなという風に思っています」

「インドの世界選手権に関しては、本当にスタートはすごくうまく決まって。やっぱりその後に力のある、フィジカルのある選手に追い上げられてしまって、逆転されてしまってのゴールっていう感じだったので。もっとフィジカルをつけていかなきゃいけないなとすごく強く感じましたし、自分のいいところと足りないところっていうのは、すごく明確になったレースだったかなという風に思っています」

◾️ロスパラリンピックに出場するために、必要なタイムは?

「17秒台っていうのはマストになってくると思いますし、今のこの世界記録っていうのは、もう16秒台に入ってきているので。来シーズンは18秒をコンスタントに出せるようにして、2年後は17秒台を出していけるように努力していきたいなと思っています」

◾️吉田選手に、これからの夢を聞いてみた。

「競技に関する目標、夢っていうのは世界一になることなんですけど。自分が世界一になることで、自分と同じ境遇の障がいをもった子どもたちにとって希望の光というか。そういった、いい影響を与えられるような選手になりたいなという風に思っています」

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